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常染色体劣性の代表的遺伝的早老症で,思春期以降に白髪・白内障などさまざまな老化兆候が出現することから,代表的な「早老症候群」の一つに数えられている.
1904年にドイツの医師オットー・ウエルナーにより初めて報告された.
疫学
1997 年のMatsumotoらの報告では,これまで全世界で1,300名程度の患者が報告され,そのうち800名以上が日本人と本邦で特に頻度が高い(約80%).
現在,日本の患者数は約2,000名と推定されるが,その多くは見過ごされていると考えられる.
原因
第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ)のホモ接合体変異が原因と考えられている.
*この遺伝子変異が,なぜ特徴的な早老症状・糖尿病・悪性腫瘍などをもたらすかは未解明
*DNAヘリカーゼ=2本鎖DNAを1本鎖にする細胞分裂の際に重要な酵素
病態
思春期以降に成長が止まり,全身組織の老化を認める.
皮膚石灰化沈着症が好発し,20歳前後からの皮膚萎縮や毛細血管拡張を伴うなど強皮症様変化を認める.
→強皮症との鑑別が必要.
死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり,平均死亡年齢が40歳代半ばと言われてきたが,最近の国内外の報告では寿命が5~10年延長し,60歳を超えて普通に生活する患者も少なくない.
粥状動脈硬化を生じやすい背景として,インスリン抵抗性を伴なう耐糖能障害や高TG血症,内臓脂肪の蓄積など,メタボリックシンドロームに類似の病態がみられる.
高LDL-C血症も伴いやすい.
上皮性腫瘍:非上皮性腫瘍=1:1であり,非上皮性腫瘍が多いという特徴がある.
悪性黒色腫や骨肉腫,造血系腫瘍など間葉系腫瘍が多い.
上皮性腫瘍としては,甲状腺癌や近年では肺癌の合併が多い.
腱の石灰化は,しばしば疼痛を伴なう.
足部の皮膚潰瘍は難治性であり,患者のADLを低下させ,下肢の切断を必要とすることが少なくない.
症状
20歳台より,白髪・脱毛などの毛髪変化,白内障(両側性の場合が多い),高調性の嗄声,腱など軟部組織の石灰化,皮膚の萎縮や角化・潰瘍,四肢の筋・軟部組織の萎縮,高インスリン血症を伴う耐糖能障害,性腺機能低下症などが見られるようになる.
低身長である場合が多い.
アキレス腱の石灰化は,特異度が高い.
・WRN遺伝子診断確定症例の76%に観察とする報告あり
治療法
根本的治療法は未開発.
白内障は通常手術を必要とする.
糖尿病に対しては一般にチアゾリジン誘導体が著効を示す.
高LDL-C血症にはスタチンが有効である.
四肢の難治性皮膚潰瘍に,保存的治療が無効な場合には,他部位からの皮膚移植を検討する.
体幹部の皮膚創傷治癒能は通常損なわれていないため,甲状腺癌・肺癌等に対する手術適応は,本疾患以外の患者と同等に考えてよい.