めまい Vertigo,Dizziness

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

前庭入力系,視覚系,体性感覚系の3入力系の異常により生じる「自己と周囲の間の異常感覚」.

内耳(前庭迷路)や前庭神経に起因する末梢性めまい(vertigo)は回転感を特徴とし頭位による影響が大きい.

脳幹・小脳病変に起因する中枢性めまい(dizziness)は回転感を伴わない方向の定まらない不安定感,宙に浮いた感じを特徴とする.

1)中枢性めまいでも脳幹梗塞の延髄外側症候群では回転性めまいが生じるように,必ずしもめまいの性状のみでは鑑別が困難とされる.
2)大脳皮質にはvestibular cortexという前庭神経からの投射線維を受ける領域があり,脳幹・小脳以外の中枢病変でもめまいをきたす.
3)薬剤による起立性低血圧(α遮断薬,Ca拮抗薬,L-DOPAなど),不整脈に伴う脳虚血,心身症などでもめまいは生じる.
4)前下小脳動脈閉塞のように難聴やめまいのみが出現症状となる脳梗塞もあり,脳血管障害によるめまいを見逃さないことが重要.

病態

頻度

末梢前庭障害 35~55%
心理的要因 10~25%
脳血管障害 5%

緊急性疾患

・低血糖
・急性心筋梗塞,心タンポナーデ,出血性ショック,大動脈解離,頻脈性不整脈
・肺塞栓症
・脳血管障害(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血,脳動脈瘤など)
・中枢神経性感染症(急性小脳炎,髄膜炎,脳幹脳炎)

準緊急性疾患

・徐脈性不整脈,狭窄性弁膜症,閉塞性肥大型心筋症,肺高血圧症
・多発性硬化症,神経ベーチェット,てんかん
・前庭神経炎
・メニエール病
・良性発作性頭位眩暈症
・突発性難聴
・薬物中毒(ストレプトマイシン,カナマイシン,ネオマイシン)

その他の疾患

・起立性低血圧(薬剤性:α遮断薬,Ca拮抗薬,L-DOPA)
・片頭痛
・飲酒,乗り物酔い
・心因性

末梢性めまい peripheral vertigo

良性発作性頭位変換性眩暈,Meniere病,突発性難聴,薬物(アミノグリコシドなど),梅毒,外リンパ

Meniere病

良性発作性頭位眩暈症 benign paroxysmal positional vertigo;BPPV
1)特定の頭位で誘発される持続の短い(数分以内)めまいの反復.2)耳鳴を来さないことが特徴症候...

良性発作性頭位変換性眩暈 BPPV

以下の5条件が必須
1)寝返りでの誘発
 「(重力の影響を排した)寝返りでも起こりますか?」
 「座位から臥位になる際に起こりますか?」
2)体動からめまい感の発症までの潜時
3)めまい感の減衰
 「じっとしていると一旦は治まりますか?」
 「めまいが軽くなったり,一旦消えてしまう時間はありますか?」
4)持続時間はおよそ2分以内
5)体動を繰り返すうちに慣れを生じる

メニエール病 Meniere's disease
回転性めまい/蝸牛症状の反復,数時間から1日程度続くめまい時に両側性.内リンパ水腫が本態変動する感音難聴(内耳...

持続知覚性姿勢誘発めまい Persistent Postual-Perceptual Dizziness;PPPD

1)最近,診断が困難であった立位・体動・視覚で誘発される持続時間の長いめまい症.
2)BPPVなど他のめまい症をきっかけに発症することが多く,その恐怖感から心因要素も大きい.

持続知覚性姿勢誘発めまい Persistent Postual-Perceptual Dizziness;PPPD
最近,診断が困難であった立位・体動・視覚で誘発される持続時間の長いめまい症.特徴1)慢性の浮遊...

前庭神経炎

1)回転性めまいをきたし,他の神経症状を欠く.発症に先行して感冒様症状などを呈することも多い.
2)めまいは数日から1週間にも及ぶが,めまいの大発作は通常1回のみ.
3)回復期に前述のBPPV様のめまいを生じることがある.
4)温度刺激検査などで,患側の高度前庭機能低下が認められる.
5)リハビリなどにより早期に中枢性代償が働くことをめざす.

中枢性めまい central vertigo

1)急性のめまい症をきたす脳梗塞でも,神経局在徴候を示すのは20%とされる.
2)最終診断が脳梗塞であった症例の12%は,48時間以内の頭部MRI拡散強調画像がなく,画像診断不能であったという.

椎骨脳底動脈循環不全

1)めまいは,椎骨脳底動脈系の一過性脳虚血発作の一症状として重要である.
2)めまいは一過性であるが,このほか複視,運動失調,視野異常,構音・嚥下障害,顔面のしびれなどの他の症状を合併することが多い.

Wallenberg症候群

1)延髄背外側部の障害による症候群で,後下小脳動脈などの閉塞で生じる.
2)めまいのほかに,障害側で顔面の温・痛覚低下,角膜反射低下,Horner徴候,軟口蓋・声帯の麻痺,小脳失調,筋緊張低下を認め,反対側の体幹・上下肢の温・痛覚低下を認める.
3)眼振としては純回旋性眼振がよく知られているが,必ずしも純回旋性眼振とは限らず,水平性眼振がみられる場合もある.

その他の中枢性めまい

前下小脳動脈症候群,上小脳動脈症候群をはじめとするその他の脳梗塞・脳出血,小脳腫瘍,多発性硬化症などによってめまいをきたしうる.

平衡障害 Dysequilibrium

椎骨脳底動脈疾患,聴神経腫瘍,髄膜腫,髄膜炎・脳炎,多発性硬化症,薬物性(抗てんかん薬/アルコール/睡眠薬など),てんかん,脳震盪後症候群,大脳皮質疾患(モヤモヤ病/細菌性動脈瘤),神経血管圧迫症候群

両側前庭機能低下

1)原因としてアミノ配糖体による内耳障害,髄膜炎,梅毒性内耳炎,特発性などがある.
2)Romberg徴候陽性となる.
・両脚起立検査において,開眼時には体平衡は比較的安定しているが,閉眼にすると体平衡障害が著明に増悪する.これは,両側前庭機能低下のある患者の場合,体平衡維持に関して視覚に依存している部分が大きいことを意味している.
・体動時に動揺視を訴える(前庭眼反射が障害されているため).この体動時の動揺視をjumbling現象と呼ぶ.

脊髄小脳変性症

1)脊髄小脳変性症には多くのタイプがあるが,多くの症例において中枢性平衡障害をきたす.
2)開眼時にも平衡障害が認められる.
3)注視方向性眼振,垂直性眼振などの中枢障害を示唆する眼振所見もしばしば認められる.
4)ENGでsaccadic pursuit,ocular dysmetria,OKNの障害などが認められる.
5)四肢の小脳症状が認められる場合もある.
5)症状は進行性で家族歴を有する場合も多い.

心因性めまい

うつ病や不安障害のような心理的要因のめまいには典型的な回転性めまいは少なく,動悸,息切れ,胸部不快などを合併し,「今にも倒れそうだ」「地震のようだ」「自分の体が揺れている」といった表現をすることが多いという.

診断

病歴聴取

性状

回転性めまい(vertigo):周囲や自分が回る.
 末梢性めまいが多いが,脳幹・小脳の急性障害でも生じる.

浮動性めまい(dizziness):身体が浮くような.
 中枢性めまいや全身性疾患に伴うめまいであることが多い.

平衡失調(disequilibrium):身体がふらつく
 両側前庭障害により生じ,めまいは感じないが歩行やバランスが悪い.

発症様式

末梢性めまい:突発性・周期性

中枢性めまい:程度が軽く,持続性

発症時期

頻度と経過

単発性or反復性or進行性

誘因

特定の頭位,圧刺激,音響刺激など

他の神経症状

蝸牛症状,顔面の感覚障害,嗄声,構音障害,複視など

■蝸牛症状
・耳鳴りと難聴の有無.通常,中枢性めまいは伴わない.
・末梢性めまいのうち,前庭性も蝸牛症状は伴わないが,内耳性は蝸牛症状を伴う.

頭位や体位との関連

末梢性めまい:頭位や体位転換により変動する.良性発作性頭位眩暈症(BPPV)

基礎疾患

高血圧,糖尿病,高脂血症など

内服薬

身体診察

HINTS plus

1)~3)すべて陰性なら感度100%,特異度96%.
→感度,特異度ともに頭部MRIを超える(発症3時間以内の脳梗塞に対するMRIの感度は73%)

1)Head Impulse testでcorrective saccadesあり
・正面に立った検者の鼻を注視してもらいつつ,患者の頭を20°横に向け,素早く顔を正面に回旋して戻す.
・前庭動眼反射を評価
・目が行き過ぎて中央に戻れば(corrective saccades),前庭神経障害を示唆する.患側へ頭を振ったときに目が行き過ぎる.
・中枢性なら前庭眼球反射は正常.
・発症初日は見つけやすいが,前庭神経は慣れてくるので,日が経つと陽性に出にくくなる.
・感度98%,特異度85%.

2)Nystagmus (眼振):注視方向交代制眼振なし(あれば中枢性を疑う)

3)Test of Skew(斜偏位) 斜偏奇なし
・正対する検者の鼻を注視してもらいつつ,左右の目をパッパッと手掌等で交互に隠す.
・目が垂直に偏位したら中枢性.
・時計回り(右目が上がり,左目が下がる)に動けば橋部より下の病変
・反時計回り(右目が下がり,左目が上がる)なら橋部より上の病変

4)聴力正常
・急性の難聴の有無を確認

血圧

急激な血圧上昇や血圧低下の確認.起立性低血圧の有無.

■シェロングテスト Schellong test
 起立性調節障害の診断のための検査である.臥位で血圧,脈拍を測定後,10分間起立させ,立位のまま,再び血圧,脈拍を測定する.収縮期血圧が21mmHg以上低下,脈圧が16mmHg以上狭小化,あるいは脈拍が21/分以上増加した場合,陽性とする.

注視眼振検査

座位正面位で行う.
正面,左右,上下約30度の各点を注視させ,注視時の眼球運動を観察する.

1)定方向性眼振,注視方向性眼振,垂直性眼振,回旋性眼振などの有無に注意.
2)眼球運動制限の有無,左右眼が共同運動しているか,視標追跡がスムーズかをチェックする.
→頭位変換眼振,Dix-Hallpike test

後半規管型→回旋性

水平半規管型・クプラ型→水平性,頭位変換に伴う交代制の眼振(潜時,減衰,持続時間2分以内を確認することが重要)

中枢性→両側方注視眼振,垂直方向性眼振

神経学的所見

意識レベル,髄膜刺激症状,運動麻痺などの局所神経徴候

耳鼻咽喉一般所見

1)特に下位脳神経(第9~12脳神経)の麻痺の有無,中耳炎の有無に注意.
2)顔面知覚の障害,顔面神経麻痺についてもチェック

血液・尿検査

血液:貧血,糖代謝,電解質,肝機能,腎機能,梅毒血清反応,コレステロール,TGなど

動脈血液ガス:呼吸不全や循環不全の程度の評価

画像

胸部X線撮影

心拡大,うっ血,胸水など

頭部単純CT

くも膜下出血,脳出血,脳梗塞の他,脳腫瘍や脳膿瘍など器質的疾患の有無

■頭部CTの適応
・はっきりした頭痛も一緒に起こる場合
・高齢者で初めての回転性めまい・嘔吐
・高血圧
・症状がひどく,途中からコーヒー残渣様嘔吐になる場合
・頭位を安静に固定していても,嘔吐が持続する場合

頭部MRI・MRA

発症6時間以内の脳梗塞を診断⇒MRI拡散強調画像(DWI: diffusion weighted imaging)
 DWI→超急性期の虚血巣の検出
 MRA→頸動脈の狭窄病変や閉塞病変のスクリーニング

心電図

不整脈や虚血性心疾患の有無

耳鼻科的検査

治療

急性期

1)まず心身の安静を図り,当人にとって楽な姿位を保ち,いわゆる鎮暈薬や鎮静薬を投与する.
2)悪心・嘔吐を伴う場合には非経口的に投与し,制吐薬も併用する.

BPPVではメイロンがよく使用され,作用機序として内耳の血流増加,高浸透圧による内リンパ水腫軽減などが言われているがエビデンスはない.
メイロン注(7%) 1回20~40mL ソルデム3A 200mLに加えて点滴静注

内服可能なら・・・
中枢性制吐薬:ナウゼリン10mg 1T or トラベルミン 1T
不安が強い場合:セルシン2mg 1T

帰宅させる場合

■脳血管拡張(いずれか)
 アデホス顆粒10% 1g/包 3包 3×毎食後
 メリスロン6mg 3~6T 3×毎食後
 セファドール25mg 3~6T 3×毎食後

■自律神経調整薬
 グランダキシン50mg 3T 3×毎食後

■抗不安薬

■漢方
 39番 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

原因に合わせた治療

1)めまいを反復する症例では,背景疾患の追及と並行して薬物対症療法を継続する.
2)めまいの誘因を早くにとらえることが重要であるが,全例の原因を明らかにすることは必ずしも容易ではない.
→種々の薬物投与は単にめまいを除くというだけの目的ではなく,心理的な側面からも無視できないうえ,「治療的診断」となる場合も少なくない.

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