低栄養 undernutrition

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なすび医学ノート

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低栄養には,栄養摂取が不十分で蛋白質とエネルギーが同時に不足している蛋白・エネルギー低栄養(protein-energy malnutrition;PEM)と特定の栄養素が不足している場合とがあるが,一般的には前者が大部分を占め,個々の栄養素についても,複合的に欠乏していることが多い.

疫学

世界的には,開発途上国での低栄養が問題となっており,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,途上国の人口の30%以上が飢餓や低栄養の状態にあるとしている.

先進国においても,低栄養状態は稀なことではなく,米国では外来患者の最大15%,長期療養施設入所者の25~60%,入院患者の35~65%は低栄養状態にあると推定されている.

原因

途上国では,低栄養は貧困・飢餓が原因であることが多いが,先進国では,急性あるいは慢性疾患に伴う二次的な栄養不足が原因であることが多い.

悪性腫瘍,消化管疾患,肝硬変・末期腎不全・HIV等の慢性疾患,敗血症・手術・外傷後・熱傷後等の侵襲性の急性疾患では,全身性の消耗,消化管障害,栄養利用障害ならびに代謝異常等が生じ,低栄養に陥る.

その他,アルコール依存症,過度の食事制限,神経性食欲不振症ならびに菜食主義者等の食事嗜好や偏食に伴う低栄養もみられる.

高齢者も低栄養のリスクが高い一群であり,基礎疾患を抱えていることが多く,食事摂取量の低下を来たしやすい.

病態

免疫異常

栄養,免疫,感染症は互いに関係しており,低栄養状態は一種の免疫不全状態と言える.

細胞性免疫の低下→胸腺,リンパ節,扁桃,脾臓等リンパ組織の萎縮,末梢血リンパ球数の減少,Tリンパ球(特にCD4陽性Tリンパ球)の減少や機能低下がみられる.

自然免疫が低下→マクロファージやナチュラルキラー(natural killer:NK)細胞といった貪食細胞の機能低下

液性免疫低下→IgGやIgAの抗体産生低下が報告されている.

消化管粘膜の萎縮→細菌が腸管粘膜を通過し,血液中へ侵入しやすくなる.

粘膜からのIgA分泌も低下→生体バリア機能の低下

感染症

低栄養と関連する感染症として報告が多いのは,肺炎,細菌性・ウイルス性下痢,麻疹,結核など.

術後感染症,インフルエンザを含む上気道炎,HIV患者でのAIDS進行との関連性も報告されている.

結核

低栄養は,結核菌に対する特異的な細胞性免疫反応を低下させ(T細胞の遊走や増殖の抑制,肉芽腫形成の不安定化,防御的サイトカイン産生の低下,マクロファージ活性の低下),結核発症の重要なリスク因子となる.

高齢者における低栄養

高齢者は,基礎疾患を有することが多く,加齢による食欲の減退,うつ・認知症などの心理的要因,咀嚼能力の低下等さまざまな要因により,低栄養に陥りやすい.

高齢者での低栄養は,身体機能の低下につながり,感染症発症リスクも高まることから,低栄養は死亡の独立した危険因子となっている.

加齢現象として細胞性免疫は低下していくが,低栄養が加わると,さらに複合的な免疫能の低下が起きる.

神経性食欲不振症における感染症

神経性食欲不振症では,細菌感染発生時の致死率増加が報告されている.

1)リンパ球数の減少,血清IgG濃度の低下,CD4/CD8比の変化,T細胞活性化の減弱・B細胞との協調阻害,炎症性サイトカインの変動が報告されている.
2)細菌感染発症時でも体温上昇を来たしにくく,それが診断の遅れ,重症化につながるのではないかという見方もある.
3)るい痩による呼吸筋低下のために,菌のクリアランスが低下し,定着・重症化につながるという機序も考えられる.

評価

病歴,身長,体重,体重変化,食事摂取量低下といった確認しやすい項目でスクリーニングし,るい痩,体重減少ならびに消化器症状があれば,疑いやすい.

診察

筋肉量や皮下脂肪の減少,浮腫等の体液貯留所見

血液検査

アルブミン,プレアルブミン,総コレステロール,コリンエステラーゼ,トランスサイレチン,レチノール結合蛋白の低値等,複数の所見があれば,低栄養と考える.

周術期や重症疾患における低栄養

1)周術期の患者は侵襲状態にあり,組織修復のためにエネルギー必要量が増加している.
2)集中治療管理を要する重症患者では,元々,慢性飢餓状態にある患者も多いうえ,急性ストレスによる蛋白異化亢進や代謝異常が生じ,栄養状態の悪化がみられやすい.

手術前の低栄養は,術後感染症のリスクを高める

適切な栄養投与が予後改善するうえで重要
1)手術後早期に経腸栄養を開始することが感染性合併症を減らし,創傷治癒や入院期間短縮につながることが報告されている.
2)栄養投与法については,経静脈栄養より経腸栄養の方が,感染症発症,死亡,臓器障害のリスクが低いため,可能な限り,経腸栄養が望ましい.

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