甲状腺腫瘍 thyroid tumor

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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当ブログは一切の責任を負いません.

頸動脈エコー,CT,MRI,PET-CTなどの他の画像検査を施行した時に高頻度(13~50%)に甲状腺腫瘤が発見されるようになり,臨床的にもその取扱いや診断方法の選択などが問題となっている.

甲状腺腫瘍には良性腫瘍である濾胞腺腫と悪性腫瘍である甲状腺癌があるが,臨床上最も頻度が高いのは非腫瘍性疾患である腺腫様結節や腺腫様甲状腺腫.

甲状腺偶発腫(インシデンタローマ incidentaloma)

甲状腺に対して超音波検診を行い,甲状腺結節が偶然に発見される,頸動脈超音波・胸部CT・PET-CTで偶然に甲状腺結節が見つかるなどの,偶然,画像診断で発見された甲状腺結節は偶発腫と呼ばれる.

偶発腫は特別のものではなく,サイズが同じであれば触診で見つかる結節と同じ頻度で甲状腺癌が存在するので,対応は通常の甲状腺結節と同じ.

一般的に米国では,超音波で検出される甲状腺結節の頻度は,女性20~50%,男性17~30%.
本邦において,超音波を用いた甲状腺検診を行い,32% に結節性病変を認めると報告されている.

種類

非腫瘍性病変

嚢胞 Throid Cyst

腺腫様結節 Adenomatous Nodule

腺腫様甲状腺腫(多結節性甲状腺腫) Adenomatous Goiter

良性腫瘍

濾胞腺腫 Follicular Adenoma

悪性腫瘍

分化癌

乳頭癌 Papillary Adenocarcinoma
細胞診により特徴的な核所見を有する.すりガラス状核(ground glass nucleus),核溝(nuclear groove),核内細胞質偽封入体(intranuclear cytoplasmic pseudoinclusion body),さらに砂粒小体(psammoma body)などであり,核の重なり,乳頭状細胞塊などがみられる.

濾胞癌 Follicular Adenocarcinom
細胞診ではfollicular neoplasmと診断され,良悪性の鑑別が困難.小濾胞構造に核異型性や核小体,細胞分裂像が悪性を示唆する.

低分化癌

未分化癌 Anaplastic Carcinoma
強い細胞異型性が特徴で,大型の紡錘形細胞や多核巨細胞などが混在する.
好中球の混在も多く細胞変化が強い.

髄様癌 Medullary Carcinoma
円形,紡錘状形または多角形のC細胞由来の癌細胞が充実性に集簇する.

悪性リンパ腫 Malignant Lymphoma
慢性甲状腺炎との異同が問題となるが,比較的小型で細胞質が乏しく,分化度が低い細胞塊がばらばらに採取される.核小体の顕著さと核縁の切れ込み像が特徴である.

転移性癌

境界病変

良悪性判定困難な甲状腺腫瘍.
「線維性被膜を有し,明らかな乳頭癌の核所見を欠く非浸潤性の濾胞上皮由来の腫瘍」

非浸潤性甲状腺濾胞性腫瘍 noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features;NIFTP
・乳頭癌様核を有する.
・被膜を有する濾胞型乳頭癌(follicular variant of papillary thyroid carcinoma;FV PTC)と診断されたうち,浸潤性増殖(被膜・脈管浸潤)を伴わないものは,予後良好.
→悪性腫瘍と分類されないことで,患者の精神的負担を軽減できるとともに,予後の良い低リスクの腫瘍に対する過剰治療を防ぐことができる.

疫学

甲状腺腫瘍における悪性腫瘍の頻度は疫学的調査,集団検診,ドック検診,剖検例などによって異なるが,健常人で偶発的に甲状腺結節が発見された場合,悪性腫瘍である確率は3.7~15.9%.

甲状腺癌の組織型での頻度は,2004年の統計によると,乳頭癌92.5%,濾胞癌4.8%,未分化癌1.4%,髄様癌1.3%.

甲状腺癌は,本邦では年間罹患数が2003年で8069人で2007年における甲状腺癌での死亡数は1558人(男性518例,女性1040例).

本邦の2003 年における甲状腺癌推定罹患数は8069例で全癌の1.3%を占め,男女比は1:2.99.わが国における甲状腺癌の有病率は人口1000人当たり1.3(男性0.6,女性1.9)と推定される.

本邦の2007年における甲状腺癌による死亡数は1558例(男性518例,女性1040例).人口10 万人当たりの粗死亡率は男性0.84,女性1.61,年齢調整死亡率は男性0.49,女性0.64.

症候

・甲状腺癌は頸部腫瘤による圧迫症状以外は,自覚症状がほとんどない.時に反回神経への浸潤により嗄声が起こる.

診断

触診,画像検査で甲状腺結節を発見

問診:病歴,家族歴
身体所見
甲状腺機能評価

超音波検査(嚢胞性病変 or 結節性病変)

甲状腺結節の評価→経過観察 or シンチグラフィ(123Ⅰ or 99mTc)

穿刺吸引細胞診(FNA)

治療方針決定

問診

家族歴
・髄様癌であれば,MEN2の可能性
・乳頭癌には家族性のものがある.

頸部や頭部への放射線被曝歴

【悪性腫瘍の可能性を高める病歴】
A:放射線被曝歴
B:甲状腺腫瘤の合併または既往,体重増加,甲状腺疾患の家族歴(良性甲状腺腫瘤)
C2:生殖歴,食事/ 嗜好因子

身体診察

なすび院長
なすび院長

甲状腺結節診療の第1歩は触診である!

1)患者の前方から甲状軟骨の直下にある輪状軟骨を触れる.
2)甲状腺峡部は輪状軟骨の下にあるので,その高さで両親指を交互に気管前面から横に移動させて親指で甲状腺を感じ取る.

正常甲状腺は触知しないが,甲状腺がびまん性に腫れているときや結節があるときには親指に触れる.
→触診で甲状腺結節を触れたら,結節の正常を正確に把握する.硬さ,可動性の有無,表面の性状(平滑かごりごりしているか)など

一般的に,悪性では結節は硬く,可動性がなく,表面不整であり,良性では結節は軟らかく,可動性があり,表面平滑.
*あくまでも原則であり,例外もある.

触診にて甲状腺の結節を触れても,甲状腺癌の頻度は3~5%程度であり,多くは良性.

頸部リンパ節腫大の有無も触診にて必ず確認する.

悪性を強く疑う所見としては,急速な増大,硬い結節,周囲組織に固定,甲状腺癌の家族歴あり,所属リンパ節の腫大,声帯麻痺など.

甲状腺機能検査

なすび院長
なすび院長

機能性甲状腺結節を否定するために甲状腺機能をチェックする

甲状腺中毒症があり,甲状腺に結節性病変を認めた場合は,自律性機能性結節(autonomously functioning thyroid nodule;AFTN),単発性であればPlummer病,多発性であれば中毒性多結節性甲状腺腫(toxic multinodular goiter;TMNG)の可能性がある.
→甲状腺シンチグラフィでhot noduleかどうか確認する.

甲状腺自己抗体(TPO-Ab,Tg-Ab)

基礎に橋本病があるかを調べる.

腫瘍マーカー

サイログロブリン(Tg)

TgはTSH依存性に甲状腺濾胞上皮細胞で特異的に産生されるタンパクで,甲状腺ホルモンの基質となる.

血中濃度は6~30ng/mLであるが,測定上サイログロブリン抗体(TgAb)が存在すると低値となるため,一度はTgAbを測定しておく必要がある.

血中Tgが高値を示す特徴として,Basedow病など甲状腺刺激物質による刺激,腺腫様甲状腺腫や乳頭癌,濾胞癌などでのTgの異常分泌,亜急性甲状腺などの甲状腺組織の破壊による漏出によるものなどがある.

濾胞性腫瘍の鑑別として,血中Tgが1000ng/mL以上の高値を示す場合は,濾胞癌の診断の補助となりうる.

血中Tgの測定は,甲状腺癌で甲状腺全摘術後に局所や遠隔転移があると一旦正常化した血中Tgが再上昇してくるため,再発のマーカーとしてきわめて有用.

癌胎児性抗原(CEA)

CEAは代表的な腫瘍マーカーであり,主として腺癌のマーカーとして用いられるが,喫煙,加齢,男性でやや高値となり,また臓器特異性は低い.

甲状腺では髄様癌で特異的に高くなるため,血中CEAが高い場合は,一度は甲状腺の超音波検査をしてスクリーニングをしておく必要がある.

甲状腺機能低下症では,CEA高値となるので注意が必要.

カルシトニン

カルシトニンは甲状腺傍濾胞細胞から分泌されるペプチドホルモンであり,血中カルシウムの上昇により分泌促進され,昼間にピークをもつ日内変動があるため,早朝空腹時の採血が望ましい.

女性より男性で高値となり,加齢により減少するため,年齢・性別ごとに基準値が決められている.

血中カルシトニンの正常上限値は100pg/mL(RIAでの測定).

カルシトニンは甲状腺傍濾胞細胞と同じ起源の神経内分泌細胞を含む臓器からも分泌されており,血中カルシトニンが高値を示す疾患としては髄様癌,多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A),異所性産生腫瘍として肺小細胞癌,膵腫瘍,褐色細胞腫などがある.

遺伝子検査

新WHO分類では,遺伝的背景にも焦点が当てられている.
・分化型の甲状腺腫瘍を,通常型乳頭癌に多いBRAFV600Eタイプと濾胞型乳頭癌~濾胞性腫瘍に多いRASタイプに大別する.

予後予測については,TERT promoter変異の重要性が指摘されている.

RET遺伝子

髄様癌でMEN2型が疑われる場合,術前に十分なインフォームドコンセントを行った上で,RET遺伝子の変異を検討する.

遺伝性髄様癌の原因遺伝子は10番染色体長腕にあるRET遺伝子の生殖細胞系列変異(germline mutation)である.

90%のMEN2A家系では,エクソン10または11に変異を認め,コドン634のシステイン残基の変異が多い.またMEN2B家系では95%がMet918Thr変異により発生する.

RET遺伝子変異が認められた場合は,術式は甲状腺全摘とし褐色細胞腫の合併を調べ,さらに家族検索を行う必要がある.

超音波検査

最も有用であり推奨される.
甲状腺癌に対する感度は43~100%,特異度66~93%,尤度比は2.76~13. 8.

1)内部エコーレベルが高~等は良性所見として有用.
2)粗大な高エコーは良性悪性いずれにもみられる.
3)所属リンパ節腫大は悪性所見として有用.
4)良性所見を呈する結節の多くは,腺腫様甲状腺腫,濾胞腺腫である.
5)悪性所見を呈する結節の多くは,乳頭癌,濾胞癌,悪性リンパ腫,未分化癌である.
6)良性所見を呈しうる悪性疾患は,微少浸潤型濾胞癌および10 mm以下の微小乳頭癌,髄様癌,悪性リンパ腫.
7)微少浸潤型濾胞癌は,良性所見を示すことが多い.
8)10 mm以下の微小乳頭癌は,境界平滑で高エコーを伴わないことがある.
9)髄様癌は,甲状腺上極1/3 に多く,良性所見を呈することがある.
10)悪性リンパ腫は,橋本病を基礎疾患とすることが多く,境界明瞭,内部エコー低,後方エコー増強が特徴的である.
11)悪性所見を呈しうる良性疾患は,亜急性甲状腺炎,腺腫様甲状腺腫.
・亜急性甲状腺炎は,炎症部位である低エコー域が悪性所見を呈することがある.
・腺腫様甲状腺腫では,境界部エコー帯を認めない場合や境界不明瞭なことがある.

悪性を疑う所見があった場合,積極的に穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology;FNAC)を行い,病理診断していくことが重要.

CT・MRI

CTは甲状腺癌に対する感度78. 6%,特異度81. 3%,尤度比4. 2 .

結節の詳細な所見は超音波に劣るが,縦隔内甲状腺腫など大きな腫瘍の診断や気管,食道など周囲組織への浸潤の程度をみるのに有効.

FDG-PET は甲状腺癌に対する感度60~100%,特異度61~65.8%,尤度比1.52~2.92.

核医学検査

99mTcシンチでcold nodule,201TIでhot noduleの場合は悪性が考えられる.

123Iシンチは甲状腺摂取率の測定や機能性結節の診断に用いられる(検査前1週間はヨード制限が必要).甲状腺癌に対する感度92.3%,特異度17.2%,尤度比1.11.

131Iシンチは甲状腺癌の遠隔転移を調べるのにも用いられる.
*未分化癌はヨウ素取り込み能がないため,用いることはできない.

近年18FDG-PETが行われる頻度が多くなってきたが,悪性腫瘍以外にも橋本病や良性疾患でも同様に取り込まれ,疑陽性例がしばしばみられるので注意が必要.

123Iまたは131I-MIBGシンチは褐色細胞腫の診断に有用であるが,甲状腺髄様癌でも一部取り込みがみられる.

99mTc-MIBIシンチは副甲状腺腫瘍の診断に用いられるが,時に甲状腺の結節性病変との鑑別が必要な埋没副甲状腺腫瘍の検出にも有効.

201Tlシンチグラフィは甲状腺癌に対する感度65~100%,特異度71%,尤度比13.9.

病理診断

穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology:FNAC)

適応

充実性結節
・20mm径より大きい場合
・10mm径より大きく,超音波検査で何らかの悪性を示唆する所見がある場合
・5mm径より大きく,超音波検査で悪性を強く疑う場合

充実性成分を伴う嚢胞性結節
・充実性成分の径が10mmを超える場合
・充実性成分に悪性を疑う超音波所見がある場合

手順

*穿刺前に抗凝固剤や抗血小板薬などを内服していないか事前にチェックする.

・通常超音波ガイド下で22~23Gの針を直接装着あるいは延長チューブに接続してから10~20mLのディスポーザブル注射器を用いて行う.
・穿刺方法にはプローブの端からプローブに平行に針の刺入ラインがみえるように行う平行法とプローブの中央から垂直に刺し針先が点状にみえる交差法とがある.
・エコー下で針先が目的部位に到達したのを確認後,シリンジに0.1~2mLの陰圧をかけて針先をわずかに上下したり回転させて細胞を採取する(3~10秒間).
・その後陰圧を解除して針を抜く.採取した細胞塊はすばやくプレパラートに吹きつけ,塗抹法はすりあわせ法ではなく圧挫法で標本を作り,エタノール液で固定し,Papanicolaou染色する.一部は冷風で乾燥固定しHE染色用とする.

細胞診の判定(ベセスダ方式:The Bethesda System)

現在の判定方法はベセスダ方式となり,標本が適正か不適正かにまずわけてから正常あるいは良性~悪性の4区分に分類される.

乳頭癌では,核内封入体や核溝などの特徴的な所見からほとんど診断可能であるが,濾胞癌の場合は被膜浸潤と血管侵襲でもって診断されており,細胞異型は主要な判定基準とはならない.
→濾胞癌の場合は,臨床所見や超音波所見を加味して総合判断をしていく.

不適正(inadequate)
・標本作製不良(乾燥,変性,固定不良,末梢血混入,塗抹不良)のため,あるいは病変を推定するに足る細胞成分が採取されていない(コロイド,泡沫細胞,濾胞上皮,腫瘍細胞のいずれも全く認められないか,あるいはごく少量)のため,細胞診断不能な標本を指す.
・献体不良とした標本は,その理由を記載する.

適正(adequate)

正常あるいは良性(normal or benign)
・悪性細胞を認めない標本を指す.
・本区分には正常甲状腺,嚢胞,腺腫様甲状腺腫,Basedow病,甲状腺炎(急性・亜急性・慢性),Riedel)などが含まれる.

鑑別困難(indeterminate)
・細胞学的には良・悪性の鑑別が困難な標本を指す.
・本区分には濾胞性腫瘍(好酸性腫瘍を含む)で腺腫と癌との鑑別が困難な標本,腺腫様甲状腺腫と乳頭癌との鑑別が困難な標本,腺腫様甲状腺腫と濾胞性腫瘍との鑑別が困難な標本,橋本病と悪性リンパ腫との鑑別が困難な標本,橋本病の好酸性腫瘍と癌の鑑別が困難な標本などが含まれる.
→悪性腫瘍である可能性があり,遺伝子発現を調べ,良悪性を鑑別する分子診断法の導入が期待される.

悪性の疑い(malignancy suspected)
・悪性と思われる細胞が少数または所見が不十分なため,悪性とは断定できない標本を指す.
・本区分には種々の悪性細胞が含まれるが,その多くは乳頭癌である.
・なお良性疾患で本区分に含まれる可能性があるものは,異型腺腫,腺腫様甲状腺腫,橋本病などがあげられる.

悪性(malignant)
・各々の組織型に応じた細胞所見を示す悪性細胞を認める標本を指す.
本区分には乳頭癌,濾胞癌,低分化癌,未分化癌,髄様癌,悪性リンパ腫,転移癌などが含まれる.

治療

嚢胞のfollow up

囊胞の場合,癌の頻度は非常に低いので,超音波にて小さな囊胞で,明らかに良性であるときは経過観察で良い.

囊胞形成の乳頭癌もあるので,超音波にて怪しい充実部は超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行うべき.

超音波にて良性と判断しても,充実部から超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を一度は行うことが望ましい.
・充実部に穿刺針が届かない場合は,液を全部抜いてから超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行うと良い.
・囊胞液を単純に抜くだけでも,結節は縮小することも多い.

複数回穿刺吸引しても再貯留するサイズの大きな例や再度の腫瘍内への出血例で圧迫症状や不安を訴えるときには,手術を考慮しても良い.

甲状腺良性結節のfollow up

悪性を疑う所見がなければ,年に1回エコーでfollow up.

悪性を疑うエコー所見がある,または腫瘍サイズ20mm以上あれば,FNACを施行する.

甲状腺機能亢進症があれば,123I甲状腺シンチで機能性かどうかを確認する.

FNAC後→ベセスダ方式:The Bethesda Systemに基づいた対応

不適正(inadequate) 癌の確率10%
FNACを再施行する.

適正(adequate)

正常あるいは良性(normal or benign) 癌の確率1%以下
・FNACで良性と診断されている症例でも,偽陰性が5%程度存在する.
・50%以上の縮小,増大率はそれぞれ0~20% , 4~22%と報告されている.
・経過とともに増大する例が多い.
→少なくとも数年間は12~18ヵ月毎に超音波検査を施行し,経過観察する.
・超音波画像で明らかな結節の増大や形状の変化がみられた場合はFNACを再施行する.
・診断の精度を高める目的で,FNACの再検を考慮してもよい.
・甲状腺ホルモンによるTSH 抑制療法は積極的に推奨できない

鑑別困難(indeterminate)
鑑別困難A-1→腺腫様結節・濾胞腺腫・濾胞癌・濾胞型乳頭癌などが推定 癌の確率5 ~ 15%
鑑別困難A-2→腺腫様結節・濾胞腺腫・濾胞癌・濾胞型乳頭癌などが想定 癌の確率15 ~ 30%
鑑別困難A-3→腺腫様結節・濾胞腺腫・濾胞癌・低分化癌・乳頭癌が推定 癌の確率40 ~ 60%
鑑別困難B→乳頭癌・髄様癌・悪性リンパ腫・橋本病・異型腺腫などが推定 癌の確率40 ~ 60%
・濾胞性腫瘍が疑われる場合は,外科的切除を行い組織診断をする.良性の可能性が高いと判断されれば,超音波検査所見も参考にした上で,6~12ヵ月毎に超音波検査を行いつつ経過を見ていってもよい.
・濾胞性腫瘍以外が疑われる場合は,FNACを再検する.

甲状腺臨床で,一番頭を悩ませるのは,濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別.
穿刺吸引細胞診で鑑別困難A-3 もしくはB,超音波にて低エコー,辺縁不整,Dopplerによる腫瘍内の血流増加など濾胞癌を疑う所見がみられたときには手術を検討する.

悪性の疑い(malignancy suspected)
濾胞癌・乳頭癌・低分化癌・髄様癌・悪性リンパ腫などが推定 癌の確率80%以上
・外科的切除を行う.

悪性(malignant)
濾胞癌・乳頭癌・低分化癌・髄様癌・未分化癌などが推定 癌の確率99%以上
・外科的切除を行う.

手術

甲状腺癌での手術では,その存在部位や大きさ,リンパ節転移の有無によって片葉切除とするか,亜全摘とするか,全摘とするかはまだ意見がわかれている.
・欧米ではほとんどが全摘術を施行し,その後131Iによるablationを行っている.

絶対的適応

絶対的適応になるのは,乳頭癌,濾胞癌,髄様癌であるが,良性の濾胞腺腫でも結節のサイズが4cm以上で充実性で内部の血流も豊富である場合は,濾胞癌との鑑別は困難であり,手術適応となる.

相対的適応

手術の相対的適応としては,悪性リンパ腫,未分化癌,転移癌,縦隔内甲状腺腫のように気道を圧迫するほどに増大している場合などがある.

結節性甲状腺腫の手術適応

・大きな腫瘤を形成している(3cm以上,4cm以上で議論がある)
・増大傾向あり
・圧迫またはその他の症状
・整容性に問題がある
・超音波検査で癌が否定しきれない
・細胞診断で癌が否定しきれない
・縦隔内へ結節が進展している
・機能性結節である
・サイログロブリン(Tg)値が異常高値である(1000ng/dL)

131I内用療法

・分化癌の遠隔転移が対象.未分化癌では期待できない.
・甲状腺全摘後で131Iの取り込みがある例で行う.

放射線療法(外照射)

・悪性リンパ腫の局所療法として行う.時に未分化癌に対して行うこともある.

化学療法

・悪性リンパ腫のstageⅡ以上ではCHOP療法を行う.
・B細胞リンパ腫の場合はリツキシマブを併用するのが標準となっている(R-CHOP療法).
・未分化癌に対して,マルチキナーゼ阻害薬の有効性が明らかとなっている.

エタノール注入療法 percutaneous ethanol injection therapy;PEIT

比較的大きな甲状腺嚢胞で排液を行っても再貯留する例と自律性機能性結節(autonomously functioning thyroid nodule[AFTN];Plummer病)がよい適応.
・Basedow病の手術後の再発例や甲状腺癌の転移巣に対しても行われることがある.
*甲状腺囊胞に対するPEITは,保険収載されているが手技に熟練を要するためにどこでもできるわけではない!

PEITは外来で短時間で施行でき,医療費も安価で,また安全性,治療後の合併症がほとんどない点から,自律性機能性結節に対しては治療の選択の一つになり得ると考えられる.

通常超音波下で,充実性病変の場合は腫瘍血管を狙って行い,また嚢胞性病変の場合は排液後に無水エタノールを注入する.

場合により繰り返しPEITを行う.

(TSH抑制療法)

結節の増大を抑えるためにTSHが感度以下になるよう甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS®)を投与する.

穿刺吸引細胞診で良性の場合,経過をみてもいいが,甲状腺ホルモン薬によるTSH抑制療法を試みても良い.
・AACEでは,禁忌でなければ,穿刺吸引細胞診で良性なら甲状腺ホルモン薬によるTSH抑制療法も選択肢に入れている.
*3つのメタアナリシスで,一部の症例には有効であることは証明されているが,比較的ヨード摂取が少ない国からのデータであり,ヨード摂取が十分な米国,日本では成績は芳しいものではない.

甲状腺良性結節に対する甲状腺ホルモン剤投与によるTSH抑制療法は,1年以内の短期では有意な縮小が得られるとの報告が多いが,長期的にはその有効性は少なく,甲状腺ホルモン剤投与による心血管系や骨粗鬆症の合併症を考慮すると,甲状腺ホルモンによるTSH 抑制療法は積極的に推奨できない.

予後

良性腺腫が癌化することは極めて稀なので経過良好であるが,濾胞癌との鑑別が困難であり,注意が必要.

乳頭癌や濾胞癌の分化癌では,たとえ転移があってもその予後は良好である.
・10年単位で生存可能である.
・早期診断,早期治療(手術)が重要であり,初回手術療法の成否と癌細胞の分化度が予後を左右する.

年齢が若く,小さい癌(直径2cm以下)で,転移がないほど予後良好である.

発見治療後の予後は以下が目安.
 乳頭癌:予後良好.10年生存率85%
 濾胞癌:予後良好.10年生存率65~80%
 未分化癌:非常に予後不良.5年生存率0%
 髄様癌:予後やや不良.10年生存率60%.
 悪性リンパ腫:予後は組織型,stageによる.5年生存率60%(5~85%).

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