かぜ症候群,感冒 The common cold

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

鼻腔から喉頭までの上気道粘膜の非特異的カタル性炎症

〇主にウイルスなどの感染による上気道(鼻腔や咽頭など)の炎症性の病気で,咳嗽・咽頭痛・鼻汁・鼻詰まりなど局所症状(カタル症状),および,発熱・倦怠感・頭痛などの全身症状が出現した状態.
〇鼻症状や咽頭・喉頭症状などが主であり,高熱を伴うことが少なく,通常は数日で改善し,1週間以内に自然治癒する.

■カタル(catarrh)
 感染症の結果生じる粘膜の滲出性炎症.粘膜腫脹と粘液と白血球からなる濃い滲出液を伴う病態.

■特徴
1)病原微生物が単一ではない.
2)症状が多彩.
3)病原微生物の分離同定が困難.
4)原因微生物に対する治療法が確立されていない.

疫学


・エンテロウイルスに含まれるコクサッキーウイルスA,B群やエコーウイルスも多く,次いでアデノウイルスやRSウイルスも多い.
→これらのウイルスは,呼吸器以外にも眼や消化器,中枢神経系,皮膚などにも感染して多彩な臨床症状を示す.

〇ウイルス以外では,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,一般細菌などが含まれる.
 ウイルスが重感染することもあり,ライノウイルス+アデノウイルス,ライノウイルス+エンテロウイルスなどが報告されている.

〇年間を通じてみられるが,秋~冬に流行が多い.
・誘因として,個体の条件(免疫不全,脱水,疲労,飲酒,喫煙など)や環境の変化(乾燥,寒冷)が重要である.

病態

原因微生物

病原の90%前後をウイルスが占める.

ライノウイルス,コロナウイルス

〇ライノウイルスのライノは鼻の意.原因として1番多い.
・温度感受性があり,33℃では増殖するが39℃では増殖できないとされている.
・判明しているだけで113以上もの血清型があり,流行を起こしやすいものは限られている.
〇コロナウイルスは2番目に多い.
→ともに鼻の不快感や乾燥感,くしゃみ,鼻汁(水様から粘性→二次性なら膿性),鼻閉.

アデノウイルス

・咽頭痛,嚥下痛,咽頭粘膜の発赤・腫脹,発熱.

クループ:パラインフルエンザウイルス

・小児に発症する喉頭気管支炎で,声門下での気道の炎症性狭窄による犬吠様咳嗽(barking cough),吸気時喘鳴(stridor)を伴う呼吸困難を認める.
・治療には,ステロイドと0.1%アドレナリンのネブライザー吸入.

ヘルパンギーナ:コクサッキーA群

・夏期に主に乳幼児に流行しやすく,突然38~40℃の発熱が1~3日続き,咽頭粘膜(軟口蓋,特に前口蓋弓)に数個~十数個の直径1~2mmで灰白色の粘膜疹(丘疹→水疱→小潰瘍と進展する)およびその周囲に紅暈が出現することが特徴.
・通常は軽症で対症療法のみ.

手足口病:コクサッキーウイルスA16型・A10型,エンテロウイルス71型など

・夏期を中心に10歳以下の小児に流行する.
・潜伏期は2~7日で,かぜ症状に加えて手足の発疹と口腔内の水疱をきたす.通常は軽症で対症療法のみ.

プール熱(咽頭結膜炎):アデノウイルス

・乳幼児に流行するアデノウイルスによる感染症で,発熱・咽頭炎・結膜炎を3徴とする.
・プールの水を媒介にして感染しやすい
・4~5日間の潜伏期の後,38~40℃の高熱が4日~1週間持続し,咽頭の腫脹と結膜炎を伴う.
・対症療法が中心となる.感染力が強く,症状改善後も2日間は登校は禁止とする.

乳幼児細気管支炎:RSウイルス

・冬季に流行し,強い咳嗽や呼気性の喘鳴を訴える.
・まれに(1~3%)重症化し,入院を要することがある.
・鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットが使用可能だが,入院児のみが保険適応となっている.
・治療は対症療法が主体であるが,基礎疾患のある乳幼児には抗RSウイルス単クローン抗体であるパリビズマブ(ジナジス®)の予防投与が認められている.

症候・診断

鼻,のど,咳の3つが揃えばかぜ,1つだけの症状ならかぜ以外を考える.

非特異的上気道炎型

・急性の,鼻炎症状(くしゃみ・鼻汁・鼻閉),咽頭炎症状(咽頭痛や違和感),下気道炎症状(咳嗽・喀痰の有無は問わない)といった,3症状が同程度に存在している状況.
・3領域にわたる多彩性は,発熱の有無に関わらず,ウイルス感染の特徴で,抗菌薬不要のかぜと診断できる.

鼻炎型

・鼻炎症状(くしゃみ・鼻汁・鼻閉)が主体であり,アレルギー性鼻炎や細菌性副鼻腔炎との鑑別が問題になる.
⇒発熱や咽頭痛があれば風邪,鼻鏡で粘膜が蒼白であればアレルギー性鼻炎
・発熱や倦怠感などの全身症状がほとんどなく,2~4日程度で改善する.
・ライノウイルスとコロナウイルスによるものが大部分を占める.

【鑑別】
・副鼻腔炎:膿性鼻汁,後鼻漏,頬部痛.
・アレルギー性鼻炎:水溶性鼻汁,鼻閉,発作性反復性のくしゃみが3主徴
・血管運動性鼻炎

鑑別:副鼻腔炎

・症状が7日間続き,膿性鼻汁,上顎歯や顔面痛(特に片側のみ),片側の上顎洞の圧痛,初期治療後の悪化(double worsening)がある場合疑わしい.
・ウイルスの場合,7~10日以内で治る.
・細菌性の場合も治る場合は10日以内で治ってしまう.
⇒症状が10日以上続いたり,再燃する場合のみに細菌性を考えるのもよいだろう.
・X線ならWater’s view(上顎洞と前頭洞),CTで診断できるが,ウイルス性か細菌性か区別できない.米国ではX線のルーチン検査は推奨されていない.

咽頭炎型

・咽頭痛が主症状の場合.所見として咽頭の発赤や咽頭後壁のリンパ小節腫脹がみられる.扁桃腺炎の併発もこれを含めた病型.大半がウイルス性であり,自然治癒する.
・全身症状はやや強く,発熱を伴う.
・アデノウイルスが最も多いが,細菌二次感染例ではレンサ球菌の関与が多い.

【鑑別】
  抗生物質投与が必要とする3大疾患(A型溶血性連鎖球菌咽頭炎,細菌性副鼻腔炎,肺炎)の合併を否定する.
■A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎(扁桃腺炎):Centor Score
■伝染性単核球症様症:扁桃の薄広い白苔,後頭部リンパ節腫脹,肝牌腫
■亜急性甲状腺炎:甲状腺の圧痛

鑑別:A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎(扁桃腺炎)

 抗生物質はリウマチ熱の予防,化膿性合併症の予防,症状の軽減,感染拡大の予防のため.
〇診察のポイント:のどの赤み,扁桃,リンパ腺
*溶連菌感染はのどがかなり痛い.唾飲んで痛がらない場合は可能性低い.
○Centor Score(溶連菌感染)
1)37.7℃以上の発熱の既往
2)扁桃の滲出液の存在
3)圧痛を伴うリンパ節の腫脹
4)咳がないこと
 0~1点:可能性低い( 0点:2%,1点:3% )→対症療法
 2~3点:不明(2点:8%,3点:19%)→迅速検査
 4点:可能性高い(4点:41%)→抗生物質処方
○迅速抗原検査:10~15分程度で結果が得られる.
・感度は80-90%,特異度は95%以上.
○咽頭培養
・golden standard(両側の扁桃あるいは扁桃化と咽頭後壁をしっかり拭ってちゃんととれば感度90%,特異度95-99%).
・ただ培養には1~2日の時間を要するため,再診という条件つき.

鑑別:伝染性単核球症

・若い層に多く,熱が1か月続く.
・85%で扁桃が白い膜に覆われている.後頚部リンパ腺がごつごつと触れ,1/3に眼球周囲の腫脹がみられる.半数に脾腫が認められる.
・血液検査を行えば,異型リンパ球(目視)を認め,GPTよりLDHが優位な肝酵素の上昇を伴うため,診断は容易.

気管支炎型

・咳嗽が主症状の場合で,発熱の有無を問わない.
・90%以上がウイルス性であるが,マイコプラズマ・クラミジア・百日咳などの関与は5~10%といわれている.
・肺炎との鑑別が問題となるのは,Vital Signsの変化(脈拍>100bpm, 呼吸数>24/分,体温>38℃)や聴診所見(呼吸音の左右差や雑音の存在)がなければ,胸部X線写真は不要とされる.

【鑑別】
・咳喘息:夜間~早朝,wheeze(-),β刺激薬が有効,肺機能検査
・気管支喘息:夜間~早朝,wheeze(+),肺機能検査
・百日咳:百日咳抗体

鑑別:気管支炎,肺炎

・下気道症状(咳がひどい/痰が多いあるいは膿性)のときに診断され,確定的な検査方法があるわけではない.
・肺の聴診:口を開けて深呼吸するよう指示.完全に吐ききった状態から深呼吸させる.しかし,肺炎の診断においてcrackleの感度50-60%,特異度60-70%と低め.
・胸部レントゲン写真の検討.

高熱型(インフルエンザ型)

・突然の発熱を症状とする病型で,感染の病巣を示す局所症状(鼻汁・咽頭痛・咳嗽・腹部症状など)を認めない場合.

【鑑別】
・ほとんどはウイルス感染だが,インフルエンザと敗血症の鑑別が必要.
→インフルエンザ迅速検査キット
→基礎疾患がある症例で高熱・頻脈・血圧低下 があれば,敗血症を疑う.

微熱・倦怠感型(急性/慢性)

・かぜの軽症例では急性の微熱や倦怠感のみを訴えることも多い.
・局所症状なく,強い倦怠感や食欲低下がある場合,急性肝炎を鑑別に(重症化すれば,黄疸や尿の黄染あり).
・慢性の経過であれば,CRPや赤沈などの炎症反応の評価が診断に有用.
・陰性であれば,心身症的な病態や慢性疲労症候群などを考慮し,陽性であれば細菌性心内膜炎・亜急性甲状腺炎・膠原病・悪性腫瘍などが鑑別.

頭痛を伴う場合

【鑑別】
・髄膜炎:過去最悪の頭痛か?,髄膜刺激徴候(Jolt Accentuation→Neck Flexion Test),髄液検査
・細菌性副鼻腔炎

診察

口蓋扁桃

・腫脹,発赤,滲出物→扁桃腺炎
・べたっとした白色の膜→伝染性単核症

咽頭後壁

・リンパ小節の腫脹→ウイルス性感冒,インフルエンザ

リンパ節

○ウイルス性
・後頭部のリンパ節が腫大.軽度の圧痛を認めることが多い.

○細菌性咽頭炎
・扁桃リンパ節から胸鎖乳突筋周囲のリンパ節にかけての前頸部リンパ節群の有痛性腫脹

○扁桃腺炎
・顎下リンパ節が腫大.圧痛を伴う.左右差がある.

治療

一般療法

○安静,保温,保湿,栄養や水分の補給.
咳嗽・喀痰などの症状を増悪させるため,喫煙者には禁煙を指導する.

対症療法

総合感冒薬(消炎鎮痛薬+抗ヒスタミン薬+鎮咳薬)

・症状が軽いときに.

■PL配合頼粒:非ピリン系
・サリチルアミドとアセトアミノフェンは体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張し,熱の放散を盛んにし,解熱効果を,また両者により鎮痛作用は増強される.
・抗ヒスタミン作用とカフェインによる中枢神経興奮作用により不快感を除去する.
・第一世代抗ヒスタミン薬が入っているので眠気がくる.

■SG配合頼粒:ピリン系

発熱

・発熱自体は生体防御に有利に働くため,安易な薬剤の使用を慎み,基本的には頓用で投与する.

■アセトアミノフェン(カロナール®)
 基本的にはこっち.

■NSAIDs(ロキソニン®など)
 解熱・鎮痛が強い場合.
 胃粘膜障害,腎不全,アスピリン喘息のリスクあり

鼻汁,鼻閉,くしゃみ

・眠気や口渇などの有害事象の少ない第二世代抗ヒスタミン薬(アレジオン®,アレグラ®,アレロック®).
・抗コリン作用から,緑内障や前立腺肥大など下部尿路閉塞疾患がある場合は禁忌.

鎮咳薬,去痰薬

上気道感染症に伴う湿性咳嗽に対しては咳を抑えることは推奨されない.
〇ムコダイン®500mg1錠 3T(3×):粘液修復薬
〇ビソルボン®4mg1錠 3T(3×):粘液溶解薬
〇メジコン®15mg1錠 咳嗽時:非麻薬性鎮咳薬,咳反射抑制
〇フスコデ®=ジヒドロコデインリン酸塩(咳を抑える)+dl-メチルエフェドリン塩酸塩(気管支を弛緩)+クロルフェニラミンマレイン酸塩(気管支を弛緩)
 眠気はフスコデに含まれるクロルフェニラミンマレイン酸塩の作用が主な原因.

咽頭痛

 感冒薬で適したものはない.
〇トランサミンカプセル®250mg 3Cap

抗菌薬

・ウイルス性は基本的に適応ではない.
・しかし,ウイルスの上気道粘膜への先行感染が細菌感染を続発させることがあるので,明確な細菌感染を疑われる症状・所見がある場合は適正に抗菌薬を使用する.

適応例

〇3日以上の高熱持続,膿性の喀痰・鼻汁,扁桃腫大と膿栓・白苔付着,中耳炎や副鼻腔炎の合併
〇WBC・CRP上昇といった強い炎症反応,ハイリスクの患者(高齢者など)

ペニシリン系

・肺炎球菌,インフルエンザ菌に感受性があるものを選択.
・副作用が1~10%に出現.
サワシリン®(amoxicillin:AMPC)→成人250mg錠 3T(3×),小児20~40mg/kg/日(3×)

βラクタム系

・肺炎球菌,インフルエンザ菌に感受性があるものを選択.
・気道への組織移行性は低いものが多い.
・エンピリックに低容量で用いるのは望ましくない.
セフゾン®(cefdinir:CFDN)→成人100mgカプセル 3T(3×),小児は細粒9~18mg/kg/日(3×)  腸管吸収がよくないので,あまりおすすめでない・・・

マクロライド系

・マイクプラズマ肺炎や百日咳をカバー.
クラリス®(clarithromysin:CAM)→成人200mg錠 2T(2×),小児ドライシロップ10~15mg/kg/日(2×)
ジスロマック®(azithromycin:AZM)→3日間で終了,成人250mg 2T(1×),小児は細粒10mg/kg/日(1×)

漢方薬

かぜ症候群の漢方治療
漢方薬の目的は,かぜ症状を緩和するだけでなく,ウイルス感染の自然治癒を早める(熱産生を高める)ことにある....

・漢方は食後ではなく,食間に内服

■葛根湯(麻黄を含む)  7.5g(3×)
ある程度体力のある人向け
・急性期:悪感・発熱・頭痛があり,汗が出ていない
・急性喉頭炎・急性扁桃炎の初期

■麻黄附子細辛湯  7.5g(3×)
元から虚弱,冷え性体質
・急性期:軽度の鼻炎・喉頭炎の症状,悪感で顔面蒼白

■小青竜湯 9g(3×) 湿性咳嗽
・急性期:鼻炎で鼻水・くしゃみ・鼻閉

■小柴胡湯 7.5g(3×)
・亜急性期:熱が上下して悪感と発熱が交互.

■麦門冬湯 9g(3×) 乾性咳嗽
・咳こみ,痰なし

麦門冬湯 Bakumondoto
ツムラ麦門冬湯エキス顆粒 9g(3×)乾性咳嗽・咳こみ,痰なし・上皮細胞が障害を受けたことにより放出さ...

患者さんへの説明

1)かぜ症候群は,一般に3~7日間で自然軽快するものである.
2)基本治療は,自宅安静と対症療法であり,十分な休養と水分・栄養補給が重要である.
3)ほとんどがウイルス感染によるものであるが,インフルエンザ以外では確実に有効な抗ウイルス薬は存在しない.
4)抗菌薬はウイルス感染そのものを治すものではなく,頓用することによって副作用や耐性菌が出現する.
・2018年のAMR臨床リファレンスセンターの調査では,抗菌薬が風邪に有効と回答した人は49.9%,インフルエンザに有効と回答した人は49.2%と半数近くの人が誤解しているという結果が得られている.
・抗菌薬処方があると患者満足度も簡単に上がる傾向にあるが,風邪への抗菌薬処方は副作用を2.6倍に増やす.
5)いわゆる風邪薬は,症状を緩和することを目的として用いる対症療法の薬である.
6)発熱は身体がウイルスと闘っている免疫反応で,生体防御反応と考える.氷冷で冷やすなどして,高熱や痛みなどの症状が激しい場合にのみ,解熱・鎮痛薬を頓用で服用する.
7)症状の持続(4日以上)や悪化がみられる場合には,速やかに医療機関を受診する.
8)患者,家族ともにうがい・手洗いを励行し,易感染の同居者がいれば,接触を避けるようにする.
9)冬に流行するかぜ症候群のウイルスは高い温度と湿度に弱いので,部屋の温度を20℃以上に,湿度を50%以上に保つようにする.

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