破傷風 tetanus

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

破傷風は,破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する毒素のひとつである神経毒素(破傷風毒素)により強直性痙攣をひき起こす感染症.

全数報告対象(5類感染症)であり,診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出なければならない.

破傷風菌は芽胞の形で土壌中に広く常在し, 創傷部位から体内に侵入する.
侵入した芽胞は感染部位で発芽・増殖して破傷風毒素を産生する.

疫学

もともと致命率が高い (81.4%)感染症であったが,1952年に破傷風トキソイドワクチンが導入され,さらに1968年には予防接種法によるジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン(DTP)の定期予防接種が開始され,以後、破傷風の患者・死亡者数は減少した.
but!それでも致命率が高い(20~50%).95%以上が30才以上の成人.

病態

破傷風菌(Clostridium tetani)

偏性嫌気性菌で好気的な環境下では生育できないため,通常は熱や乾燥に対し高い抵抗性を示す芽胞の形態で世界中の土壌に広く分布している.
→誰にでも感染が成立する可能性があり!

破傷風菌はその芽胞が創傷部位より体内に侵入し感染する.
・転倒などの事故や土い じりによる受傷部位からの感染が多い.
・破傷風菌の芽胞は極めて些細な創傷部位からでも侵入すると考えられている.

新生児破傷風は,衛生管理が十分でない施設での出産の際に,破傷風菌の芽胞で新生児の臍帯の切断面が汚染されることにより発症する.

破傷風菌が産生する毒素には,毒性が高い神経毒(破傷風毒素=テタノスパスミンTetanospasmin)と,毒性が問題にならない溶血毒(テタノリジンTetanolysin)の2種類がある.

強直性痙攣

特徴的な症状で,主な原因は破傷風毒素,
潜伏期間(3 ~21日)の後に局所(痙笑・開口障害・嚥下困難など)から始まり,全身(呼吸困難や後弓反張など)に移行し,重篤な患者では呼吸筋の麻痺により窒息死することがある.

症候

潜伏期を経て特有の症状を呈し,その段階は4期にわけられる.
第Ⅰ期(開口障害)から,第Ⅲ期(全身性痙攣)が始まるまでの時間をオンセットタイム “onset time”といい,これが48 時間以内である場合,予後は不良であることが多い.

軽症:第Ⅱ期に留まるり第Ⅲ期に至らないもの
中等症:第Ⅲ期に至るもonset timeが48時間以上のもの
重症:第Ⅲ期に至りonset timeが48時間以内のもの

潜伏期

通常1~2週間であり,短い場合で1日,長い場合は数ヶ月以上.
感染源が明らかでない場合もある.

第Ⅰ期(前駆症状期)

潜伏期の後,口を開けにくくなり,歯が噛み合わされた状態になるため,食物の摂取が 困難となる.
首筋が張り,寝汗・歯ぎしりなどの症状もでる.
1~2日間持続する.

第Ⅱ期

次第に開口障害が強くなる.
さらに顔面筋の緊張・硬直によって前額に「しわ」を生じ,口唇は横に拡がって少し開き,その間に歯牙を露出し,あたかも苦笑するような痙笑(ひきつり笑い)といわれる表情を呈する(破傷風顔貌).
数時間~1週間ほど続く.

第Ⅲ期(痙攣持続期)

生命に最も危険な時期.
頚部筋肉の緊張によって頚部硬直をきたし,次第に背筋 にも緊張・強直をきたして発作的に強直性痙攣がみられ,腱反射の亢進,バビンスキーなどの病的反射,クローヌスなどがこの時期に出現する.
交感神経過緊張(排尿・排便障害、血圧変動、不整脈、体温上昇、発汗過多)等がみられる.
2~3週間持続し呼吸不全,心不全で死亡することも多い.

第Ⅳ期(回復期)

全身性の痙攣はみられないが,筋の強直・腱反射亢進は残っている.
諸症状は次第に軽快してゆく.
2~3週間は続く.

診断

破傷風治療の要である抗破傷風ヒト免疫グロブリン (tetanus immune globulin;TIG)療法は,発症初期に実施することが望ましいので,破傷風の治療には早期診断が重要.

強直性痙攣などの破傷風特有な症状により臨床的に診断されることが多い.
・破傷風の診断では感染部位を特定することは重要であるが,必須ではない.
・外傷の有無に関わらず,開口障害や嚥下困難などが認められた場合には破傷風を疑う必要がある.

破傷風抗体価

TIG投与前の患者血清中の破傷風抗体価を測定し,免疫状態を推測することができる.
発症防御レベル(0.01 単位/mL)以上であるなら,破傷風でない可能性がある.

TIGの投与の有無,抗体の測定方法に注意が必要.
・TIG 投与後では,受動的に導入された抗体と過去に接種されたワクチンにより誘導された抗体を区別する ことはできない.
・測定方法が中和試験ではなく,ELISA法や凝集法であるなら,正確に中和抗体価をあらわしていない可能性がある.

菌の分離

臨床症状(強直性痙攣)から診断されることが多く,検査時にはすでに抗菌薬の投与後で,菌の検出が困難な場合が多い.

菌の分離,さらにその菌株からの毒素の検出が行われれば診断がより確実(病原体診断)になるため,細菌学的検査として行うことが望ましい.

治療

治療として,TIGの投与や,さらに感染部位の充分な洗浄やデブリードマンを行い,抗菌薬を投与する.
・創傷部位を適切に治療することにより,感染の可能性が低くなる.

対症療法として,抗痙攣剤の投与,呼吸や血圧の管理も重要.

破傷風予防処置

破傷風菌を存在させない.
破傷風菌の増殖しやすい条件を作らない.
→洗浄・ブラッシング・デブリードマン
 疑わしい創は開放創

【リスクの高い創】
受傷してからの時間:6時間以上
創の性状:複雑(剥離・創面が不整)
創の深達度:1cm以上
受傷機転:挫傷・刺創・熱傷・凍傷・銃創
感染徴候:あり(発赤・腫脹・疼痛)
壊死組織:あり
異物:あり(土壌・糞便・唾液)
創部の虚血:あり
創部の神経障害:あり

予防:ワクチン

生体に抗体(抗毒素)を産生させる能動免疫.

破傷風トキソイド

破傷風菌が出す毒素を無毒化したワクチン.

10年間持続するが,抗体価上昇に4日必要.

【スケジュール通りの予防接種終了後10年以上経過】
低リスク創傷:破傷風トキソイドを受傷直後に1回投与
高リスク裂傷:上記に加えて,発症予防として抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与を考慮

現行の「予防接種法」では,若齢者を対象に定期予防接種として,ワクチン接種が推奨されている.
生後3カ月以上90カ月未満→4回ジフテリア・破傷風・百日咳ワクチン(diphtheria-tetanus-pertussis vaccine;DTP vaccine)
11歳以上13 歳未満に1回→沈降ジフテリア・破傷風混合トキソイド (Diphtheria-Tetanus vaccine;DT vaccine)

【スケジュール通りの予防接種完成または不明】
*現在の成人の多くは十分な破傷風抗体を保有していない.
低リスク裂傷:破傷風トキソイドを受傷直後と1ヵ月後,6ヵ月後以降の3回投与
高リスク裂傷:上記に加えて,発症予防として抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与をする.

・Booster効果で,発症防御抗体レベル(0.01単位/mL)を超える抗体価を獲得することが可能.
→初回免疫(受傷直後と1ヵ月後)と追加免疫(6ヵ月後)に計3回.
・10年毎に追加接種を行えば,防御抗体レベル以上の血中抗体価を維持することができると考えられている.

発症のおそれがある患者の予防処置としては,予防接種歴に応じて沈降破傷風トキソイドの接種が行われる.

回復した患者でも十分な免疫が誘導されないので,ワクチン接種をして免疫を獲得することが望ましい.

抗破傷風ヒト免疫グロブリン (tetanus immune globulin;TIG)療法

テタノグロビン-IH®

破傷風毒素に対する特異的治療薬.
毒素に対する抗体(抗毒素)を投与する受動免疫.
*即効性はあるが,免疫は持続しない.

組織に結合していない血中の遊離毒素を特異的に中和することができるが,既に組織に結合した毒素を中和することができないと考えられている.
→可能な限り早期に実施する.

発症予防

筋注:250IU(基本はこっち)
静注:通常250IU,重症外傷1500IU
・静注は,血中移行率が低く,抗体価上昇に時間を要する.

発症後

筋注:最低5000IU以上
静注:軽~中等症1500~3000IU,重症例3000~4500IU
・熱傷患者では熱傷部位から免疫グロブリンを含む体液が漏出するために,投与量を増量する.
・呼吸や血圧の管理が可能な集中治療室などで実施することが望ましい.

抗生物質投与による混合感染防止

Penicillin G 200~400万単位静注 4~6時間毎

Cephalosporin(第1~3世代)
 Cefazolin 1~2g静注 8 時間毎
 Ceftriaxone 1~2g静注 24時間毎

対症療法

鎮静剤

筋弛緩剤

自律神経機能障害に対する治療

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