個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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大動脈およびその主要分枝や肺動脈,冠動脈に閉塞性 or 拡張性病変をもたらす非特異的大型血管炎
1908年に日本人の眼科医・高安右人により報告されたことに端緒を有する.
2015年に「高安動脈炎」へ統一された.
厚生労働省指定の指定難病.
疫学
本邦では比較的稀.
近年の特定医療費受給者証所持者数から4000~6000名前後の患者がいると考えられる.
特に女性で発生率が高い(男女比 約1:8).
女性の初発年齢は20歳前後にピークがあるが,中高年で初発の症例も稀ではない.
アジア,中近東に多く,いずれの地域でも女性に多い傾向がみられる.
原因
不明
病態
大動脈とその第1分枝血管,そして,肺動脈に狭窄・閉塞または拡張を来たし,脳虚血発作,大動脈弁閉鎖不全,大動脈瘤,心不全,失明,腎不全,肺高血圧症,肺動脈瘤などの重篤な合併症を来たすことがある.
高血圧
約4割
予後と大きく関連する.
両側鎖骨下動脈狭窄を伴う例では,上肢の血圧は大動脈圧より低値を示し,過小評価される.
発生機序
1)腎血管性高血圧(約2割)
2)大動脈狭窄性高血圧(異型大動脈縮窄症)
3)大動脈弁逆流性高血圧
4)大動脈壁硬化性高血圧
大動脈弁逆流症
予後を規定する重要な合併症
症候
初診時愁訴としては,倦怠感・発熱・頭痛・頚部痛など,非特異的な症状が多い.
すでに血管病変の進行を示唆するめまい,失神,視力障害,手のしびれ,高血圧も多い.
所見
脈拍・血圧の左右差
頚部 or 腹部血管雑音の聴取
頸動脈洞反射の亢進
血液検査
診断に有用な特異的な血液・生化学検査はなく,現状では,非特異的な炎症の指標であるC反応性蛋白(C-reactive protein;CRP),赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation rate;ESR)が診断に最も有用なマーカーとされる.
疾患活動性と血清IL-6とが相関する可能性が報告されている.
診断
造影CT,造影MRI,頸動脈超音波検査
CT,MRIでは,主に大動脈とその分枝血管の壁肥厚と造影効果を評価できる.
18F-FDG-PET-CT
大動脈壁へのFDG取り込みが疾患活動性と相関するという報告が多くされていることを踏まえ,で2018年4月から保険適応となっている.
→他の検査で病変の局在診断や活動性の診断(可視化)が難しい場合に,非常に有用であると期待されている.
治療
早期の副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制剤の開始による血管病変の進展抑制は,患者の予後,QOLの改善に重要.
副腎皮質ステロイド薬
GC初期治療量は,0.5~1.0mg/kg/日が推奨される.
再発しやすい(半数以上)ために,PSLの減量は,①症状,②血液炎症マーカー,③画像所見で寛解状態にあることを確認しながら慎重に進める.
→PSL 20mg/日未満に達したら,1ヵ月あたり1.2mgを超えない減量速度にする必要があると推奨されており,PSL維持量は5~10mg/日としている.
→減量過程で再発した場合は,免疫抑制薬or生物学的製剤を併用して漸減を進める.
免疫抑制薬
ステロイド治療抵抗性を示す症例,副作用で減量を余儀なくされる症例
免疫抑制薬のシクロホスファミド(CY),メトトレキサート(MTX),アザチオプリン(AZA),シクロスポリン(CyA),ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などの併用が推奨されるが,効果はいずれも十分とは言えず,限定的と考えられている.
TNF-α阻害薬
少数症例の臨床試験が行われ,初期成績は比較的良好.
難治性TAK患者の大半で一旦は寛解をもたらすものの,再発が3割以上でみられ,2割の患者が副作用で治療を中止されることが報告された.
↓
RCTによる有効性の検討はなされておらず,結論に至っていない.
IL-6受容体抗体 tocilizumab;TCZ
2017年8月に保険適用承認(TAKT試験)
降圧療法
腎血管性高血圧あるいは本態性高血圧に準じる.
頸動脈に狭窄病変を有する例では脳血流量が低下している可能性があり,脳血流に対する十分な配慮が必要.
血行再建術
外科的治療は,活動性炎症の消退を待ったあと,あるいは副腎ステロイド薬によって抑制した後に実施するのが望ましい.
適応
1)降圧薬により有効な降圧が得られなくなった場合
2)降圧治療により腎機能低下が生じる場合
3)うっ血性心不全をきたした場合
4)両側性腎動脈狭窄の場合
経皮的腎動脈形成術 PTRA
1)低侵襲
2)術後の降圧効果・降圧薬の減量が報告されている.
外科的バイパス術
長期開存率が高い.
大動脈弁置換術
一般の大動脈弁逆流症の適応に準じる.