全身性硬化症(強皮症) Systemic sclerosis;SSc

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なすび医学ノート

厚く硬い皮膚(皮膚硬化)と血管病変(Raynaud現象と小血管障害)を特徴とし,関節,内臓諸臓器の結合組織を侵す原因不明の疾患.

疫学

本邦での有病率は人口10万に対して約10人と推定され,SLEの約1/4.

男女比は1:7で女性に多い.
好発年齢は35~55歳で,小児ではきわめて稀.

分類

全身性硬化症は3型に分類される.

広汎性皮膚硬化型

皮膚硬化が四肢近位部,体幹に及ぶ

限局性皮膚硬化型 limited cutaneous SSc;lcSSc

・四肢末梢に限局する
・皮膚硬化が手指,手,顔あるいは前腕に限局する型で,内臓病変の頻度も比較的低く,予後もよい.

オーバーラップ型

原因

病因は不明であるが,病像形成に関与すると考えられている因子として,次の三つが挙げられる.

免疫異常

液性免疫異常としては,各種の抗核抗体(抗トポイソメラーゼI抗体〔抗Scl-70抗体〕,抗セントロメア抗体,抗核小体抗体),リウマトイド因子が高率に検出される.
→これらの免疫異常が病像形成にどのような役割を果たしているかは不明.

細胞性免疫の異常としてTリンパ球(CD4+細胞)機能に異常が認められ,この異常と後述する線維芽細胞のコラゲン産生との関連が注目されている.

小血管の異常

血清中に血管内皮細胞の障害因子が見いだされ,内皮細胞の損傷から血管病変が形成される可能性が示唆されている.

結合組織の異常

病変部位にコラーゲン線維の集積が認められ,本症の培養線維芽細胞ではコラゲンやグリコサミノグリカンの産生が亢進している.
・原因として,線維芽細胞自体の異常と産生調節機構の異常が考えられている.

病態

予後を左右する因子として,腎,心,肺病変が重要.
皮膚硬化が体幹に及んでいる症例の予後も悪い.

皮膚病変

皮膚硬化が最も特徴的.

硬化は四肢の末梢部や顔から始まり,対称性に体幹部へと広がっていく.
・病初期には手指,手背あるいは顔の真皮が浮腫性に腫脹し(浮腫期),手指はソーセージ様になる.
・進行するにつれて真皮のコラーゲンの増加により皮膚は板状に硬化し,つまみにくくなる(硬化期).
・顔は仮面様となり,鼻が尖り,口はつぼまって口周囲に放射状のしわを呈する.

経過とともに皮膚硬化は一見軽快したように薄くなり萎縮期となる.

硬化範囲は症例によってさまざまで,手指にのみ限局する(手指硬化,強指症)ものから,体幹を含めてほぼ全身に及ぶ症例まである.

皮膚硬化が認められない症例もあり,sine sclerodermaと呼ばれている.

さらに,色素沈着および脱失,毛細血管拡張,皮下石灰沈着が認められる.
・毛細血管拡張は,顔,手,Vネック,口唇内側に好発し,斑状あるいは血管腫様を呈する.

血管病変

Raynaud現象がほとんどの症例で認められる.
・寒冷刺激,あるいは精神的ストレスによって,手指の動脈が一過性に収縮するために皮膚の色は蒼白となり,続いてチアノーゼ(紫色)に変わり,回復時には紅潮する現象である.
・皮膚小動脈の内腔の閉塞症状として,手指末端に小潰瘍や陥凹性瘢痕が認められる.
・やや太い動脈が閉塞すると,深い皮膚潰瘍あるいは壊疽が生じる.
・SLEやSjoegren症候群などでも認められ,特異性は低い.

関節・筋・腱症状

関節のこわばりと関節痛は高頻度に認められる.
・特に,病初期には,多発性の関節炎を呈することもしばしばある.
・持続した関節炎に皮膚,関節周囲組織の線維化や腱鞘炎が加わると屈曲拘縮を呈する.

筋病変としては軽度の筋痛や筋力低下,および皮膚硬化に関連した筋萎縮が認められる.
・多発性筋炎と区別できない近位筋の筋力低下を呈する例もあり,多発性筋炎とのオーバーラップoverlap(重複)症候群と分類される.

腱の慢性炎症の結果,大腿四頭筋腱付着部や前脛骨筋の腱に摩擦音を聴取したり,触知することがある.

消化管病変

口腔病変
舌小帯の肥厚と短縮および舌の呈出障害が高頻度に認められる.

食道病変
・最も頻度が高い内臓病変で,疾患特異性が高く,診断的価値も大きい.
・食道下部の平滑筋層の萎縮と置換性線維化のために,蠕動の低下および拡張がみられる.
・自覚的には固形物を嚥下するとき,食道下部につかえた感じを認める.
・胃液が逆流して食道炎(逆流性食道炎)を合併すると,胸やけや胸骨下部に痛みを感じる.

小腸病変
・腸管の蠕動低下と拡張による腹部膨満感,下痢と便秘の繰り返しが認められる.
・蠕動の低下によって腸内細菌叢が増殖して吸収不良症候群を呈する.
・X線上では十二指腸の下行脚と上行脚の拡張(ループ徴候)がみられる.
・さらに進行すると偽性腸閉塞を呈することがある.

大腸病変
・注腸検査では腸管の拡張,広い茎の憩室様所見(偽憩室,嚢状形成)がみられ,後者は疾患特異性が高い所見.

呼吸器病変

肺線維症
・消化管病変に次いで高率に認められる.
・自覚症状は労作時の息切れと乾性のせきで,聴診上fine crackle(Velcro(ベルクロ)ラ音),捻髪音を認める.
・胸部X線所見として下肺野に網状粒状陰影を認める.
・進行すると輪状となり,ついには蜂巣肺を呈する例もある.
・胸部CTは感度が高い検査で,初期病変の発見に有用.
・肺機能検査では,自・他覚所見を認めない初期から拡散障害(DLCOの低下)が認められ,続いて拘束性障害(%VCの低下)を呈する.

肺高血圧症
・肺線維症に続発する変化としても生じるが,肺血管病変として発症することが多い.
・頻度は低いが予後不良を示す病変として重要.
・特発性肺高血圧症よりも予後不良であり,3倍高い死亡リスクを示す.

心病変

原発性の心病変として心筋病変と心膜炎がある.

心筋病変
・心筋の線維化による伝導障害や心不全.
・心筋病変の発生機序には冠動脈の間欠的なれん縮による心筋障害が想定され,狭心痛が重要な症状と考えられている.

心膜炎
・臨床症状を呈することはまれであるが,心エコー図上では心嚢液の貯留がしばしばみられる.

腎病変

SSc患者の約半数に強皮症腎クリーゼとは異なる腎機能障害(軽度な蛋白尿やCr上昇)が確認されている.

強皮症腎クリーゼ
・突然,高レニン血症を伴う悪性高血圧をきたし,急速に進行して腎不全に陥る.
・小葉間動脈の内膜肥厚による内腔の狭窄,輸入細動脈のフィブリノイド変性がみられる.
・頻度は5~10%であるが,予後が悪い.

抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)陽性
・正常血圧のまま急速に腎不全を呈する

間接的な原因
・D-ペニシラミンによる蛋白尿
・NSAIDsによる薬剤性腎障害
・心不全や肺高血圧を原因とするarterial underfillingなど

CREST症候群

皮下石灰沈着 calcinosis
Raynaud現象
食道下部の拡張と蠕動低下 esophageal dysfunction
手指硬化(強指症) sclerodactyly
毛細血管拡張症 telangiectasia

限局性皮膚硬化型の亜型に分類される.
皮膚硬化が軽度なCREST症候群は経過が長く予後のよい型.

症候

初発症状

ほとんどの例がRaynaud現象(40~60%),関節症状(20~40%),浮腫感やこわばり感などの皮膚症状(20~30%)で発症する.

尿検査

検尿では蛋白尿がときどきみられるが,大量の蛋白尿は呈さない.
 腎クリーゼでは多彩な尿沈渣所見を示す.
 検便で脂肪滴が認められると,吸収不良症候群の可能性がある.

血液検査

末梢血では低色素性貧血を示す.

血清化学で筋原性酵素(CKなど)の軽度の上昇がみられる.

炎症反応では赤沈値がしばしば亢進し,CRPも時に陽性を示す.

免疫学的検査

液性免疫異常が高率にみられる.

高ガンマグロブリン血症は約半数の例に認められる.

免疫複合体は検出されるが,低補体血症は呈さない.

抗核抗体は80~95%の例で検出される.
・染色型はspeckled型,discrete speckled型,核小体型がほとんどである.

リウマトイド因子も30~40%に認められる.

抗ENA抗体のうち,抗topoisomeraseI抗体(抗Scl-70抗体)は本症に特異的に認められる.
・特に,広汎性皮膚硬化型で高率に検出される.
・限局性皮膚硬化型,特にCREST症候群には染色体のセントロメア領域に対する抗体が認められ,抗セントロメア抗体と呼ばれる.

抗U1-RNP抗体は約20%の例で陽性を示すが,LE細胞や抗DNA抗体はほとんど検出されない.

抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性の症例は,急速に皮膚硬化が進行するびまん性皮膚硬化型で,腎クリーゼを併発しやすいことが知られている.
・日本人強皮症患者の陽性頻度が5%と欧米に比べ少ないが,腎クリーゼと最も強く関連する.

X線検査

骨関節X線所見としては,手指末節骨先端の吸収像や,皮下石灰沈着がみられる.

診断

顔や四肢の末梢に著しい皮膚硬化が認められれば本症と診断できる.
・皮膚硬化が軽度な早期例や内臓病変が前景をなす症例の診断は必ずしも容易ではない.

鑑別診断

特に皮膚硬化が手指に限局する症例では,SLE,皮膚筋炎,混合性結合組織病,Raynaud病と鑑別する必要がある.

浮腫性
浮腫性硬化症

硬化性
好酸球性筋膜炎
カルチノイド症候群
アミロイドーシス
ポルフィリア
POEMS症候群(Crow-Fukase(クロウ-深瀬)症候群)
好酸球増多-筋痛症候群など

萎縮性
Werner症候群など

皮膚硬化が軽度
Raynaud現象を呈する疾患
内臓病変が類似している特発性肺線維症や原発性肺高血圧症

病理

基本的病変は,
①間質の線維化
②小血管病変
③実質細胞の萎縮
④単核球の浸潤
から成っており,病像はこれらが種々の程度に組み合わさって形成されている.

皮膚

初期では真皮の浮腫,血管周囲の単核球の浸潤,コラゲン線維の膨化.

血管

小動脈の内膜の肥厚とともにコラゲン線維の増加がみられる(硬化期).

消化管

平滑筋層の萎縮と置換性線維化がみられる.

下葉の横隔膜の直上,胸壁側から始まる肺線維症と,頻度は低いが肺動脈の末梢で内腔狭窄が生じる.

腎臓

葉間動脈の内膜肥厚と,腎クリーゼを呈すると輸入細動脈にフィブリノイド変性がみられる.

治療

生活指導

Raynaud現象の予防には,寒さを避ける工夫が最も大切であり,血管収縮作用があるタバコは肺病変にも悪影響があるので禁じる.

皮膚を常に清潔に保ち,その保護にはハンドクリームをつける.

関節拘縮の予防に入浴後マッサージや体操を行う.

消化がよく,栄養価の高い食事をとるようにする.

薬物療法

本症を治癒させる根本的な薬剤はないので,対症的薬物療法が中心となる.

Raynaud現象や皮膚潰瘍などの血管病変に対して,プロスタグランジンE1の点滴静注や,Ca拮抗薬,プロスタサイクリン製剤などの血管拡張薬が用いられる.

関節炎などの炎症症状には非ステロイド系抗炎症薬が用いられる.

消化器症状では,逆流性食道炎に対しては制酸薬やH2受容体拮抗薬あるいはプロトンポンプインヒビターを,吸収不良症候群に対してはカナマイシンなど非吸収性の経口抗生物質を投与する.

皮膚潰瘍には抗生物質の含まれた軟膏を用いる.

肺高血圧

・エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタンなど)が有効であることがRCTにて証明されており,PDE5阻害薬(シルデナフィルなど)とともに使用される.
→生存率の改善は,特発性肺高血圧症よりも低いものの全身性強皮症に伴う肺高血圧症でも示されている.
・早期に専門医に紹介し,右心カテーテル検査を含めた精査後に開始する.

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