全身性エリテマトーデス systemic lupus erythematosis;SLE

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なすび医学ノート

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多彩な自己抗体の産生に伴い免疫複合体(Immune Complex;IC)が形成され,全身の組織に沈着して慢性炎症が起こる全身性自己免疫疾患.

経過中に寛解と再燃を繰り返し,多臓器障害(関節,皮膚,肺,腎,中枢神経など)を伴い,同時に壊死性血管炎や間質性腎炎を生じる症例もみられる.

疫学


男女比は 1:10 と圧倒的に女性に多く,発症年齢は 20~30歳代にピークがある.

原因

遺伝学的要因を背景として,さまざまな環境因子が作用することにより発症するheterogeneous な疾患と考えられている.

SLE 患者の一部は,遺伝的,もしくは自己抗体によりDNase I活性が低下しているためNETs のクリアランスが低下し,細胞外に存続するNETs が抗原となり病態に関与していると考えられる.

ribonucleoproteinを抗原とするIC は好中球に作用してNETs を誘導する作用があり,ループス腎炎の腎生検組織においてもNETs が観察される.

SLE におけるNETs は,健常人と比較して増加しているLDG で誘導されやすく,貪食能は低いものの炎症性サイトカインやⅠ型IFN 産生に関連する遺伝子発現を介してSLEの慢性炎症に関与する.

病態

免疫学的に,Tリンパ球の機能異常と Bリンパ球の活性化亢進がもとになり,多種の自己抗体と非特異的免疫グロブリンの産生が亢進している.
→IC の形成と補体の活性化により,多臓器に炎症,障害を惹起する(Ⅲ型アレルギー反応).

自己抗体のなかでは,特に,抗2本鎖DNA(抗ds-DNA)抗体が病態形成に重要.

病理学的には,フィブリノイド変性を特徴とする炎症像が,全身の血管・結合組織に認められる.
*特に,皮膚や腎糸球体によく現れる.

SLE分類基準

11の基準のうち4以上が満たされれば,SLEの感度・特異度とも95%.
*時期によってはSLEでありながら4つの基準を満たしていないことがありうる.
*11項目から4項目以上選択の組み合わせは1,816通りとなり,個々の患者で多様性があることが特徴的.

①蝶形紅斑
②ディスコイド疹(角化・栓化を伴う紅斑性丘疹)
③光線過敏症
④口腔内/鼻咽頭潰瘍
⑤非びらん性関節炎:散発性、小関節性、対称性、移動性
⑥漿膜炎:胸膜炎(37%)or 胸水 or 心膜炎(29%) or 心嚢水
⑦蛋白尿:>500mg/dl or ディップスティック3+ or 心嚢水
⑧痙攣 or 精神症状
⑨溶血性貧血(直接Coombs+)or 白血球減少(<4000uL) or リンパ球減少(<1500/uL) or 血小板減少(<10万/uL)
⑩抗核抗体(+)
⑪抗ds-DNA抗体(+) or 抗Sm抗体(+) or 抗リン脂質抗体(+)

症候

多彩で,自然経過 or 治療により病型が移行することもよく認められる.

臨床的には免疫複合体型(ループス腎炎)と抗リン脂質抗体型に分ける.
・免疫複合体が高値で血清補体が減少する場合は,糸球体腎炎・血管炎が生じやすく,ループス腎炎が典型例.
・抗リン脂質抗体型(血栓型)は,皮膚のリベド(網状皮斑),肺梗塞,脳梗塞,Budd‒Chiari症候群,習慣性流産を起こしやすい.
・両者を併せ持つ場合は,治療に難渋する場合が多い.

全身症状(84%)

発熱(微熱から高熱に至るまでさまざま),全身倦怠感,体重減少,リンパ節腫脹などの頻度が高い.

皮膚・粘膜症状(81%)

頬部紅斑(蝶形紅斑),光線過敏症が SLE に特徴的で,その他,円板状皮疹,手掌・手指紅斑,網状皮斑,口腔内潰瘍,脱毛,Raynaud(レイノー)症状などがしばしばみられる.

蝶形紅斑の鑑別→混合性結合組織病,皮膚筋炎,パルボウイルスB19感染症など

筋骨格系(85%)

関節痛が主体で,腫脹は比較的軽度.
通常,骨の破壊は起こさない.

骨破壊を伴わずに,手指関節の変形のみを認める場合を Jaccoud(ジャクー)型関節炎と呼ぶ.

腎症状(ループス腎炎)(60~70%)

SLE の予後を左右する最も重要な所見.

漿膜炎症状

血管炎によるとされる.

胸膜炎が最も多く(30~40%),次いで,心膜炎,さらに少ないが腹膜炎もみられる.

精神神経症状(中枢神経性(CNS)ループス) (10~40%)

頭痛などの軽微な症状から,脳血管障害や痙攣発作などの中枢神経症状,躁うつ症状,統合失調症様症状,意識障害などの多彩な精神症状を示す.

治療が遅れると重篤な後遺症を残す.

心肺症状

漿膜炎を除くと,頻度はいずれも10%以下と低いが,心筋炎,Libman-Sacks心内膜炎,急性肺胞出血,間質性肺炎などがある.
・特に急性肺胞出血は予後が悪く,迅速な対応が必要.

その他

ときに急性膵炎や,腸間膜血管炎による虚血性腸炎などにより,激しい腹痛をきたすことがある.

膀胱壁結合組織の炎症によって膀胱炎症状(ループス膀胱炎)を起こすこともある.

検査

血液検査

軽度~中等度の貧血を示す.
・ときに溶血性貧血を起こす.

白血球数(特にリンパ球数)減少が特徴的で,血小板数もしばしば減少する.

急性相反応では,赤沈は著明に亢進するものの,CRP は弱陽性あるいは陰性にとどまるのが特徴.

尿検査

活動性ループス腎炎では持続性蛋白尿(程度はさまざまで,ネフローゼ症候群を呈することも多い),顕微鏡的血尿(時に肉眼的血尿)と活動性を示す多彩な尿沈渣(赤血球,白血球,赤血球円柱,顆粒円柱,上皮細胞などが同一標本上で認められるtelescoped sediment)を呈する.

尿細管障害の指標として,尿中α1・β2ミクログロブリン・NAG活性,尿比重が用いられる

免疫学的検査

抗核抗体(ANA)はほぼ100%陽性であり(均等/斑紋型),陰性の場合はSLEは否定的.

核抗原のなかで,抗ds-DNA抗体は特に重要で,SLE全体の約70%,活動期SLEの80%以上が陽性となり,その値は疾患活動性を反映し,かつ疾患特異性も高い.

抗DNA抗体には,抗2本鎖(ds)DNA抗体と抗1本鎖(ss)DNA抗体の2種類がある.
・抗ss-DNA抗体の診断的価値は低い。

抗Sm抗体の感度は15~30%と低いが,特異度が98%程度であり診断項目に採用されている.
・small nuclear ribonucleoprotein (snRNP)分子の一部の蛋白質を認識する自己抗体.
・陽性患者では腎障害が多く認められる。

抗SS-A/Ro抗体(15~35%)や抗U1-RNP抗体(40%)もしばしば陽性となるが,特異性は低い.

抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体,抗β2-GPI抗体,ループス抗凝固因子などを含む)が約30%に陽性.
・妊婦に与える影響で重要.
・妊娠高血圧症候群、流産(20~40%)、死産(~10%)、胎児発育不全(~37%)、新生児予防(~6%)を合併。
・抗リン脂質抗体陽性の妊婦から心ブロックを有する児が出生するリスクは約1~2%。

ICが血清中にしばしば陽性となり,Ⅲ型アレルギー反応を反映する.

低補体血症が特徴的で,血清中の C3,C4,CH50 の値が疾患活動性に反比例して低下する.
・IC 形成によって補体活性化が起こり,消費されるためであると考えられる.
・特に活動性ループス腎炎がある場合,C3 の低下が著明.

高γ-グロブリン血症が高率にみられる.
・Bリンパ球の多クローン性の活性化

病理

ループスバンドテスト
・紅斑部位の表皮真皮接合部にγ-グロブリンや補体の沈着が認められる.
・活動性の紅斑部では 90%以上陽性となる.

治療

SLE-DAI(SLE-disease activity index)
疾患活動性

ヒドロキシクロロチン hydroxychloroquine;HCQ

プラケニル®

抗マラリア薬であり、マラリアの治療や予防のために用いられている.
2015年に保険診療での投与が可能になった.

SLE患者血清のNETs誘導活性を低下させる作用を有している.

SLE患者全般で再燃,死亡ならびに感染症リスクの低下などが示されている.
→「全てのSLE患者に投与されるべき薬剤」として位置づけられている.

注意すべき副作用として,投与初期に出やすい重症薬疹と,重症例では失明に至る網膜症がある.
・網膜症は累積投与量が増加すると起こりやすく,使用に際し,投与前や投与後も定期的な眼底検査が必要.

妊娠

妊娠における危険因子
poor obstecic historyの既往
腎障害
心障害
肺高血圧
間質性肺障害
高疾患活動性
高用量ステロイド投与
抗リン脂質抗体症候群
抗SS-A抗体
抗SS-B抗体陽性
多胎妊娠

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