ステロイド 感染症

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

〇副腎皮質ステロイド薬投与例における易感染性は,一般細菌の場合,発症時点の投与量が影響するのに対し,結核,ウイルス,真菌(ニューモシスチス)のように,細胞性免疫が関与する病原体では,先行する数カ月間の投与量が関連するとされる.

○一般細菌感染のみならず、結核・ウイルス・真菌・原虫などの日和見感染のriskが上昇する.特にprednisolone 40mg/day以上では厳重な注意が必要
○感染症が発症した場合は状態によってsteroidの減量を行う.

ステロイドの免疫抑制作用

○最も大きな影響は,細胞性免疫低下(特にCD4陽性T細胞の低下)
○低用量~中等量のステロイドは,末梢血のT細胞減少,特にnaive CD4陽性T細胞やTh17陽性T細胞,CD8陽性T細胞に影響する.
○さらに高用量のステロイドは,IL-2産生抑制,リンパ節からのリンパ球放出の抑制ならびにアポトーシスの誘導などにより循環するT細胞が枯渇される.
 その他,Th1サイトカインの産生が抑制され,Th2優位の免疫応答へシフトする.
→Th1優位の免疫反応は細胞内寄生菌や真菌,ウイルスに対する感染免疫を担当するため,それらの日和見感染症を発症しやすい.

白血球の血中動態への影響

○好中球↑
・好中球が骨髄貯蔵プールから末梢血へ動員され,好中球のアポトーシスが抑制されるため.好中球が血管壁に接着して血管外の炎症部位への遊走が抑制される.
・通常は好中球がおおよそ6~7割を占め,リンパ球は2~3割
○単球↓
○リンパ球(CD4陽性T細胞選択的)↓
○好酸球↓
○好塩基球↓

好中球機能への影響

○好中球:遊走能・貪食能・殺菌能の低下
・低用量~中等用量で限定的であるが,高用量では大きく低下する
○単球:遊走能・殺菌能・表面レセプター発現の抑制
○好酸球:遊走能・殺菌能の抑制
○Tリンパ球:活性化抑制,増殖分化抑制,CD8の反応抑制
○Bリンパ球:血清免疫グロブリンの減少,活性化・増殖抑制
○NK細胞:特に影響なし

可溶性メディエータへの影響

○プロスタグランジン・ヒスタミン・ロイコトリエン産生↓
○IL-1,IL-2,IFN-γ,TNF-αの産生↓
→マクロファージの貪食能やオプソニン化された細菌のクリアランスが低下,マクロファージや単球の組織への集積も低下,マクロファージによるMHC-ClassⅡへの抗原提示も低下(獲得免疫低下)
○補体への影響は少ない
○抗原-抗体複合体のクリアランス低下

代表的な感染症

細菌感染症

PSL 5mg/day以下 RR 1.29
PSL 5~10mg/day RR 1.81
PSL 10mg以上 RR 3.01

吸入でも肺炎のリスクは上がる.

結核

○中等用量~高用量のステロイドは,細胞性免疫の低下を誘導し,結核の発症リスクを増大させる.
・PSL 15mg/day内服,1ヵ月以上で発症リスクが7.7倍に増大.15mg/day未満でも2.8倍.
・低用量でも1ヵ月以上内服する場合は注意が必要.

〇吸入ステロイド投与でも高用量の場合には,結核発病のリスクは2 倍程度になる.

○結核のハイリスク患者やIGRA陽性例では,潜在性肺結核治療として,イソニアジド(5mg/kg/day)もしくはリファンピシン(10mg/kg/day)を用いる.

○ステロイド使用時にはIGRAが偽陰性を示すことがあり,評価に注意が必要.

ニューモシスチス肺炎

○AIDSでは,CD4陽性リンパ球<200/μLが危険因子として知られるが,非HIV患者では,PSL換算20mg/day,4週以上で発症リスクが増大し,予防投与が推奨される.
・PSL換算 16mg/day,8週以上でもリスクが上がるという報告もある.N Eng J Med 2004;350: 2487-98
・非HIV感染症でのメタ解析の結果では致死率は40%前後と非常に高い.
・2012年にニューモシスチス肺炎の予防に対するST合剤の投与が公知申請で認められ,保険診療での投与が可能になった.
・予防内服を行えた症例でのニューモシスチス肺炎の発症は極めて稀

○ST合剤:1回1錠を連日 or 1回2錠を週3回
○アトバコン内用懸濁液(サムチレール®)

クリプトコックス症

○スクリーニングには,血清クリプトコックス莢膜多糖(グルクロノキシロマンナン)抗原検査が有用

ウイルス感染症

○帯状疱疹ヘルペスは,低用量ステロイドでもしばしば経験される.
○その他,サイトメガロウイルス感染症やB型肝炎ウイルスの再活性化など

治療

○γ-globulinが低下した症例ではγ-globulin製剤の投与を行うことがある.IgGを600mg/dL以上(IgG 600 mg/dL以下は液性免疫不全)に維持にすると,感染の危険を軽減できることが示唆されているが,予防効果については十分なエビデンスはない.

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