シェーグレン症候群 Sjögren’s syndrome;SS

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なすび医学ノート

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涙腺,唾液腺等の外分泌腺にリンパ球が浸潤し,それに伴い腺組織が障害される自己免疫疾患.

2015年は指定難病に加わり,診断基準と重症度分類を満たす場合は医療費助成の対象となった.

疫学

全国疫学調査(2011年)では,患者数は68,483人(有病率0.05%)と推定された.
・1993 年の調査では,年間受療患者数は約17,000 人であり,患者数は増加傾向.
・有病率は欧米に比べて低く,本邦では診断されていない潜在患者が相当数存在すると考えられる.

男女比は1:17.4で圧倒的に女性に多い.
発症年齢のピークは40~60 歳代.

予後

一般的に予後は良好で,標準化死亡率の有意な上昇を認めない.
悪性リンパ腫は予後に影響する合併症として注意が必要.
予後に影響する特定の腺外病変は明らかではないが,腺外病変の存在は予後に影響するリスク因子として考慮することが適切とされる.

原因

原発性(一次性)と,膠原病に合併する二次性がある.

病型は一次性/二次性SSが58.5%/39.2%,一次性SSのうち腺型/腺外型は69.1%/24.7% であった.
・二次性SSに合併する膠原病ではRAが38.7%と最も多く,次いでSLEが22.2%,関節リウマチは約2割.

病態

涙液や唾液等の分泌が低下し,眼や口腔等に乾燥症状を呈する.

病理組織学的には,涙腺や唾液線において導管周囲の著しいリンパ球浸潤,腺房の萎縮や消失,小葉内及び小葉間間質の線維化,脂肪変性等を認める.
・浸潤するリンパ球はCD4陽性T細胞が優位

明確な病因や発症機序は不明であるが,HLA(human leukocyte antigen)等の遺伝的素因に環境要因が関与して発症するとされる.
・環境要因として,Epstein-BarrウイルスやヒトT細胞白血病ウイルス等のウイルス感染や熱ショック蛋白を産生する感染症が想定されている.
→構成成分の一部または感染により,アポトーシスに陥った腺細胞からの自己抗原が提示され,自己反応性T細胞が認識することで自己免疫応答が惹起され,慢性炎症が生じる.
→最終的に細胞傷害性T細胞が誘導され,CD4陽性細胞傷害性T細胞はFas/Fasリガンドを介して,CD8 陽性細胞傷害性T細胞はパーフォリン,グランザイムBを介して腺上皮や腺房細胞をアポトーシスに陥らせ,腺組織の破壊が進行する.

リンパ球浸潤が強くなると,B細胞の割合が増加する.
・自己抗体産生や高ガンマグロブリン血症,偽リンパ腫や悪性リンパ腫の発現と関連する.

分類

他の膠原病を合併しない一次性SSと,関節リウマチや全身性エリテマトーデス等の膠原病を合併する二次性SSに大別される.

一次性SSは,病変が涙腺,唾液腺等の外分泌腺に限局し,ドライアイやドライマウス等の腺症状(乾燥症状)のみを呈する腺型と,病変が外分泌腺以外の全身諸臓器に及び,多彩な臓器病変や検査異常を呈する腺外型に分類される.

症候

日内会誌2017;106:2035-2042

腺症状(乾燥症状)

主症状は腺症状であり,眼や口腔の乾燥症状が代表的だが,自覚症状のない患者もいる.

眼乾燥症(ドライアイ)

自覚症状としては,涙が出ない,眼がゴロつく(異物感),眼が熱い(灼熱感),眼が疲れる(眼精疲労),眼が充血する,眼がかすむ,眩しい等.

眼科的に乾性角結膜炎が認められる.

口腔乾燥症(ドライマウス)

自覚症状としては,口腔内乾燥感,唾液粘稠感,口腔内灼熱感,飲水切望感,夜間の口腔内疼痛,味覚異常,食物摂取困難,嚥下困難等である.

他覚所見として,口腔内乾燥・発赤,舌乳頭萎縮,溝状舌,歯牙・口腔内汚染,口角びらん,う歯多発,歯肉炎・歯周炎,反復性の耳下腺・顎下腺腫脹等を認める.

腺外症状・合併症

全身に多彩な症状を呈する.比較的軽症のものが多いとされるが,重症のものや予後に影響をおよぼすものもある.

発熱

微熱であることが多い.

皮膚病変

環状紅斑,高ガンマグロブリン血症性紫斑皮膚血管炎が特徴的である.
レイノー現象,凍瘡・凍瘡様紅斑も認められる.
薬剤アレルギーが多く,薬疹が生じやすい.
腺症状の範疇になるが,発汗障害や乾皮症も呈する.

肺病変

気道乾燥やそれに伴う気道過敏性亢進の関与もあり,乾性咳嗽を高頻度に認める.
気道病変,間質性肺疾患が特徴的で,気道病変は細気管支病変が多い.
間質性肺疾患ではnonspecific interstitial pneumonia(NSIP)が最も多く,次いでusual interstitial pneumonia(UIP),lymphocytic interstitial pneumonia(LIP),organizing pneumonia(OP)を認める.
肺高血圧症の合併は少ないが,生命予後に影響する重要な病態である.

腎病変

尿細管間質性腎炎,遠位尿細管性アシドーシスが特徴的である.
糸球体腎炎は少ない.
無症候性が多く,一般尿検査では正常または軽度の異常のみであることが多い.
尿細管障害の評価には,尿中β2-ミクログロブリンが有用である.

尿細管性アシドーシス renal tubular acidosis;RTA
尿細管腔への酸排泄を障害されることによって起こる代謝性アシドーシスの病態の総称.診断時の尿anion ...

神経病変

末梢神経障害では多発性ニューロパチー(感覚障害が主),脳神経障害(三叉神経炎,視神経炎等),多発性単神経炎等を認める.

自律神経障害も生じ得る.

中枢神経障害では脳症,無菌性髄膜炎が多く,脳白質・脊髄病変(多発性硬化症様)を認めることがある.

診断に先行して神経症状が出現する患者や,無症状の神経障害を有する例が少なくない.

関節病変

RA様の関節症状を呈するが,SSでは罹患関節5 関節未満の対称性多関節炎であることが特徴である.

X線写真上骨びらんは少なく(5%),抗CCP抗体陽性率も低い(7%).

血液異常・リンパ増殖性病変

貧血,白血球減少,血小板減少を認める.
・病態はさまざまだが,軽症であることが多い.

多クローン性高ガンマグロブリン血症(60~80%)やクリオグロブリン血症(5~10%)も見られる.

悪性リンパ腫の発生率が健常人や他の膠原病に比べて高い.

組織型はB細胞系, 特に辺縁帯リンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫,節性辺縁帯リンパ腫)が多い.

持続する耳下腺腫脹,紫斑, 血清C3・C4 低下等がリスク因子とされる.

消化器病変

唾液量低下に伴う嚥下障害や胸焼け等の食道炎症状が見られる.

胃病変では慢性萎縮性胃炎が最も多く,胃MALTリンパ腫のリスクも高い.

消化管運動障害と自己抗体(抗M3 ムスカリン作動性アセチルコリン受容体抗体,抗ガングリオニックアセチルコリン受容体抗体)の関連性が報告されている.

肝臓病変では,原発性胆汁性肝硬変,自己免疫性肝炎が主である.

自己免疫性甲状腺疾患

多くは慢性甲状腺炎(橋本病).

その他

抗SS-A抗体陽性女性から出生する児の約10%に新生児ループスが,約1%で先天性心ブロックが発症する.

主に妊娠18~24 週に出現するため,同時期には頻回に評価を行い,早期発見に努める.

内科・産科・小児科の連携による管理が必要である.

免疫学的検査所見:自己抗体

抗SS-A抗体の陽性率は50~70%と高頻度だが,特異性は低い.
・抗SS-A抗体は新生児房室ブロックの不整脈を1~2%起こすことがある.

抗SS-B抗体の陽性率は20~30%だが,特異性が高く診断意義が大きい.
・通常抗SS-B抗体陽性の場合,抗SS-A抗体も陽性.

抗核抗体は80~90%, リウマトイド因子は約70%で陽性.
・抗核抗体陰性でも抗SS-A抗体陽性の場合がある
→膠原病を疑う場合には抗核抗体と抗SS-A抗体を共に測定することが望ましい.

診断

IgG4 関連疾患,その他の膠原病,ドライアイ・ドライマウスを呈する疾患との鑑別が重要.

シェーグレン症候群改訂診断基準(厚生省研究班,1999年)

本邦で汎用され,指定難病の医療費助成制度の申請時にも使用されている.
下4項目のうち,いずれか2項目以上を満たせばシェーグレン症候群と診断する.

1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)口唇腺組織で4 mm2 あたり1 focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
B)涙腺組織で4 mm2 あたり1 focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上

2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)唾液腺造影でStage Ⅰ(直径1 mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
B) 唾液分泌量低下(ガムテスト10 ml/10分以下,またはサクソンテスト2 g/2分以下)があり,かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)シルマーテストで5 mm/5分以下で,かつローズベンガルテストでスコア(van Bijsterveld score)3以上
B)シルマーテストで5 mm/5分以下で,かつ蛍光色素(フルオレセイン)テストで陽性

4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)抗SS-A/Ro抗体陽性
B)抗SS-B/La抗体陽性

疾患活動性評価と重症度判定

自覚症状や全身症状を評価する統一指標が求められるようになり,EULARタスクフォースが2つの疾患活動性指標を作成した.
・質問票形式で患者自身が自覚症状を評価するEULAR Sjögren’s Syndrome Patient Reported Index(ESSPRI).
・医師による全身症状を評価するための活動性指標EULAR Sjögren’s Syndrome Disease Activity Index(ESSDAI).計算サイト(他サイトへ)

2 つの指標は疾患活動性の変化を見出すことに対する感度に優れるが,両指標間に相関関係は乏しい.

本邦の指定難病制度における重症度分類としてはESSDAIが使用されており,5 点以上が重症として医療費助成の対象となっている.

ESSDAIで高い活動性の項目がある場合,また,疾患活動性評価において点数が高いほど生存率が低下するとの報告もある.

治療

腺外症状の有無で異なる.
腺症状のみであれば,対症療法が主体となる.

ドライアイ

眼科に継続的なフォローを依頼する.
治療は点眼薬(人工涙液点眼薬)が中心となるが,涙点プラグ挿入も行われる.
保湿メガネも考慮したい.

ドライマウス

口腔衛生管理,日常生活指導が重要.

薬物療法としては,人工唾液,口腔湿潤剤,含嗽薬等による局所療法と唾液分泌促進薬(ピロカルピン,セビメリン)によるものがある.
・唾液分泌促進薬は厚労省研究班拡大SS分科会による調査ではSS患者における使用率が31.7%であるが,会話困難や嚥下困難等の改善効果もあるため,より積極的に使用してよい.
・ステロイド薬の全身投与による涙液・唾液分泌量の改善効果についてエビデンスは乏しく,再発性唾液腺腫脹やその疼痛を改善させる目的以外で腺症状に対する使用は推奨されない.

腺外症状を有する場合

活動性や病状に応じてステロイド薬,免疫抑制薬を使用するが,コンセンサスが得られた使用法はなく,効果も確立したものではない.

二次性SSの場合は合併する膠原病の治療と併行して腺症状に対する治療を行う.

生物学的製剤

近年,有用性が報告されている.
リツキシマブ,アバタセプトは腺・腺外症状に,ベリムマブは腺外症状に有効である可能性が示されている.
本邦においてRA合併二次性SS患者に対するアバタセプトの有用性を検証した結果では,アバタセプトはRAの疾患活動性に加え,涙液・唾液分泌量及び眼・口腔乾燥症状を有意に改善している.

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