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sick day
糖尿病患者が感染症などの発熱・下痢・嘔吐をきたす,または食欲不振のため食事が摂れない状況.
糖尿病患者におけるさまざまな急性疾患の併発・外傷などの身体的・精神的ストレス下ではしばしば血糖コントロールが悪化する.
原因疾患と血糖の適切な管理がなされない限り高血糖が進行し,糖尿病ケトアシドーシスあるいは高血糖高浸透圧症候群への進展リスクが高まる.

経口糖尿病薬・インスリン治療を行っている患者は絶対に自己中断で経口糖尿病薬・インスリンを中断したり,極端に減量しないことを日頃から指導するのが重要!
病態
ストレスホルモンやカテコールアミンの分泌亢進
①感染,発熱,疼痛,外傷などを併発すると,コルチゾールをはじめとするストレスホルモンに加え,カテコールアミンの分泌が亢進する.
→コルチゾールはそのインスリン拮抗作用と肝糖新生により,カテコールアミンは膵β細胞のインスリン分泌の抑制と肝でのグリコーゲンの分解・糖新生亢進により,糖尿病ではいずれも血糖上昇に働く.
炎症性サイトカインの増加
シックデイ(特に感染症)では血中にインターロイキン(IL)-1,IL-6,TNF-αなど炎症性サイトカインが増加する.
→インスリン抵抗性の亢進はインスリン需要の増大を招く.
→IL-1は視床下部-下垂体系に作用して副腎皮質からコルチゾールの分泌を促進する.
ケトーシス
糖質の摂取不足は脂肪分解を招き,生じた大量の遊離脂肪酸(free fatty acid:FFA)は肝でのβ酸化によりケトン体が産生され,ケトーシスを引き起こす.
対応
速やかに病院を受診させる場合
・発熱,消化器症状が強いとき
・24時間にわたって経口摂取ができない/著しく少ないとき
・尿ケトン体強陽性,あるいは血糖値が350mg/dL以上のとき
・意識状態の変容がみられるとき
入院治療の適応
・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)
・高浸透圧高血糖症候群(HHS)
・高血糖を伴う重症感染症
・脱水が高度で,経口摂取も困難な時
・外来治療にも関わらず,高血糖が続く時
・高血糖と感染症を伴う高齢者
・1型糖尿病小児で経口摂取が困難な時
1型糖尿病の場合(インスリン依存性)
1型糖尿病患者の場合は,食事量に関係なく,中間型または持効型溶解インスリン注射を継続することを原則とする.
追加インスリンの量は,通常時の5割以上の食事摂取が可能なときには5割から通常量を基本量とし,食事摂取がより少量であるときには通常量の3~5割を基本量とする.
1日4回(各食前と寝前)あるいはさらに頻回の血糖自己測定により,血糖値200mg/dL以上なら追加インスリンを増量,80mg/dL以下なら減量して調節する.
血糖自己測定と同時に尿ケトン体を測定することが望ましい.
2型糖尿病の場合
インスリン分泌促進薬(SU薬・速効型インスリン分泌薬)
食事量が1/2程度の時は半量,食事量が1/3以下のときは服薬を中止する.
α-GI
消化器症状が強いときは中止する.
ビグアナイド薬
シックデイの間は中止するか,それによって血糖が上昇しないように,シックデイが続けば来院させて投薬の変更等を考慮する.
SGLT2阻害薬
シックデイの間は中止.
インクレチン関連薬
シックデイの聞の使用については,現在,コンセンサスが得られていない.
DPP-4阻害薬については食事がまったく摂れない場合や下痢・阻吐が続けば中止するとの考えが多い.
GLP-1受容体作動薬については,食事がまったく摂れない場合は中止するとの意見や2ヵ月以内の新規導入例を除き,注射を継続するとの意見もある.
いずれにしても血糖自己測定値を参考にインスリンへの切り替えも含めて対処する.
インスリン
インスリンの分泌能が著しく低下している患者の場合には, 1型糖尿病のシックデイの対応に準ずる.
インスリンの分泌能がある程度保たれている患者の場合はその分を考慮し,たとえば食事量が普段の1/3~ 1/2なら通常量の1/2量のインスリンを,食事ができなければ通常量の1/5量のインスリンを,というように食事が摂れないときのインスリン量を1型糖尿病の対応より少なめに設定する.
患者指導(シックデイ・ルール)
脱水症と糖質摂取不足による脂肪分解や蛋白異化を阻止するためには,1日に2Lの水分と100~200gの糖質摂取が必要.
・できるだけ摂取しやすい形(粥・麺類など)でエネルギー・炭水化物を補給する.最低でも,1日100g以上の炭水化物を摂取することを目標とする.
・水分は少なくとも1000mL/日以上は摂る.味噌汁や野菜スープなどミネラルを含むものが望ましい.
水分は1日1L以上はとる!(塩分やカリウムといったミネラルが入ったものがおすすめ)
炭水化物(糖分)は1日100g以上はとるようにする!
体が弱っているときは消化がよく、口当たりがよいものを選ぶとよい.