抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 syndrome of inappropriate secretion of ADH;SIADH

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なすび医学ノート

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血漿浸透圧が低値であるにも関わらず、下垂体後葉からのバゾプレシン(arginine vasopression;ADP)の抑制が不十分であるために,抗利尿作用が持続した病態.

バゾプレシン arginie vasopressin;AVP
ヒトでは抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone;ADH) ・視床下部視索上核および室傍核の大細胞ニ...

高齢者でSIADHを疑った場合は,MRHEも鑑別に挙げておくこと!

低Na血症,低ナトリウム血症 hyponatremia
血清ナトリウム(Na)濃度が 135mEq/L 未満の状態いくつかの例外を除けば,血漿浸透圧(張度)の...
ミネラルコルチコイド反応性低Na血症 Mineralocorticoid-responsive hyponatremia of the elderly;MRHE
・高齢者でみられ,腎性Na喪失(遠位尿細管での再吸収低下)により軽度の脱水を伴う低ナトリウム血症をきたす....

病態

SIADHでは低浸透圧血症があるにもかかわらず,下垂体後葉または腫瘍組織からのADH放出が持続し,抗利尿状態が続く.

尿への自由水排泄が低下し,低浸透圧血症と低Na血症が持続する.
・健常者ではAVP分泌が抑制され,水利尿が促進される.

尿浸透圧は血漿浸透圧を越えて上昇し,体内水分と循環血液量は増加に傾き,血清Naは希釈され低下する.
→過剰なAVP分泌により腎集合尿細管におけるV2受容体およびアクアポリン2のdown regulationが起こり,水利尿は軽度回復する.

腎糸球体濾過量は低下せず,レニンおよびアルドステロン分泌は抑制に傾く.

心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌亢進
→低Na血症の存在にもかかわらず,Naの尿中への排泄が持続し低Na血症は助長される.

日内会誌2014;103:849-854

Reset osmostat

SIADH の一概念.

ADH分泌の浸透圧閾値が正常より低い値でreset されている状態であり,原因としてはSIADHの原因となる疾患の他,結核,四肢麻痺,低栄養,妊婦,衰弱者などで見受けられることがある.

多くの場合,血清Na値もreset値の近く(120~130mEq/L)で安定しているのが特徴である.

運動関連低Na血症

マラソン等長時間の持久運動中およびその後はAVP分泌が亢進し,この状態で水分を過剰摂取すると,低Na血症を発症することがある.

原因

腫瘍

肺小細胞癌,頭頚部癌,膵癌,前立腺癌,悪性リンパ腫など

ADHおよびその特異的結合蛋白であるニコチン反応性ニューロフィジンが合成され,血中に放出される.

中枢性

外傷,腫瘍,感染症(髄膜炎・脳炎),血管障害(くも膜下出血・脳梗塞・脳出血),水頭症,Guillain-Barre症候群,精神病など
汎下垂体機能低下症やACTH単独欠損症による血清コルチゾールの低下

血漿浸透圧によるバゾプレシン分泌経路あるいはバゾプレシンニューロンを直接的に刺激する.

肺疾患

肺炎,COPD,呼吸不全,結核,肺腫瘍,重症喘息,無気肺,気胸,肺アスペルギルス症など

胸腔内圧の上昇・静脈還流の減少が左心房の容量受容器に感知され,迷走神経を介するADH分泌抑制機序(tonic inhibition)が解除される.

薬剤

ADH analogue→vasopressin, ternipressin, DDAVP, oxytocin
向精神薬→三環系抗うつ薬, haloperidol, SSRI(fluoxetine, paraxetine, sertraline), monoamine oxidase inhibitor, carbamazepine, chlorpropamide
抗癌剤→vincristine, vinblastine, cyclophosphamide
その他→ACE阻害薬(lisinopril), NSAIDs, thiazide, clofiblate, tolbutamide, bromocriprine, lorcainide, ST合剤, theophyline

内因性のバゾプレシン分泌を刺激するか,バゾプレシンの腎臓における抗利尿作用を増強する.

その他

嘔吐,痛み,術後などのストレス,大腸内視鏡・心カテ後,アルコール離脱など

症候

臨床所見

1)SIADHに共通する身体所見としては,皮膚や粘膜の乾燥,あるいは血圧の低下などの脱水症状を認めず,脈拍の緊張はよく,また浮腫や胸腹水を認めない.
神経症状は低ナトリウム血症の程度と,その出現速度によって決定される.
2)血清Na値が120mEq/Lを下回ると,全身倦怠感,食欲不振を訴え,さらに傾眠と筋けいれんを加えて,110mEq/Lを下回ると全身けいれんや昏睡を伴う水中毒に陥る.

検査所見

SIADHの検査成績としては,低ナトリウム血症と低浸透圧血症が主徴として認められる.

尿浸透圧は血漿浸透圧を上回り,尿中へは1日20mEq以上のNaが排泄される.

腎機能と副腎皮質機能は正常に維持される.

血漿レニン活性,血漿アルドステロン値および血中尿酸値は低下に傾く.

血中ADH値は血清Naの低下による低浸透圧血症の存在にもかかわらず相対的高値を示す.

水負荷試験で水利尿は低下している.
 水負荷試験は血清Na濃度をさらに低下させるので血清Na濃度が120mEq/Lを下回っている患者では実施を控え,また心不全,肺うっ血あるいは腎不全などがある患者でも病態を増悪させることもあるので禁忌となる.

診断基準

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)
確実例:I および II のすべてを満たすもの

I.主症候

脱水の所見を認めない

II.検査所見

1.血清ナトリウム濃度は135 mEq/Lを下回る.
2.血漿浸透圧は280 mOsm/kgを下回る.
3.低ナトリウム血症,低浸透圧血症にもかかわらず,血漿バソプレシン濃度が抑制されていない.
4.尿浸透圧は100 mOsm/kgを上回る.
5.尿中ナトリウム濃度は20 mEq/L以上である.
6.腎機能正常.
7.副腎皮質機能正常.

III.参考所見

1.倦怠感,食欲低下,意識障害などの低ナトリウム血症の症状を呈することがある.
2.原疾患の診断が確定していることが診断上の参考となる.
3.血漿レニン活性は5 ng/mL/hr以下であることが多い.
4.血清尿酸値は5 mg/dL以下であることが多い.
5.水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する.

IV.鑑別診断

低ナトリウム血症を来す次のものを除外する.
1.細胞外液量の過剰な低ナトリウム血症:心不全,肝硬変の腹水貯留時,ネフローゼ症候群
2.ナトリウム漏出が著明な細胞外液量の減少する低ナトリウム血症:原発性副腎皮質機能低下症,塩類喪失性腎症,中枢性塩類喪失症候群,下痢,嘔吐,利尿剤の使用
3.細胞外液量のほぼ正常な低ナトリウム血症:続発性副腎皮質機能低下症(下垂体前葉機能低下症)

治療

原疾患の治療が基本

水制限

原疾患にかかわりなく,SIADHに共通した治療は水制限.
 1日の総水分摂取量を15~20mL/kgに制限する.

ADHの腎作用は集合管における水再吸収の促進で,体内における水貯留量の増大が,SIADHの成因である.水摂取量の抑制により全体水分量を低下させ,低ナトリウム血症を改善させることができる.

Naの補正

食塩を経口的に投与する(例:成人の場合,食塩9g/分3/日)

著明な低Na血症,Na≦120mEq/Lかつ意識障害などの中枢神経系症状を伴う場合

低Na血症を速やかに改善させるために,3%高張食塩水を点滴で投与する.

フロセミドの投与による水利尿も適宜併用する.

脳の脱髄性病変などを避けるため,血清Naの上昇速度は10mEq/L/24hrs,18mEq/L/48hrsまでとする.
*Na≦110mEq/L,低K血症,低栄養,アルコール中毒,肝障害などの危険因子を伴う場合はより緩やかに補正
*補正速度が上回った場合は,速やかに3%食塩水を中止!5%ブドウ糖液の投与など,再度Naを低下させることを検討する.

血清Na値が120mEq/Lを上回る,もしくは低Na血症に伴う神経症状(意識障害)が改善した時点で,3%食塩水の投与は中止する.

薬物療法

腎におけるADH作用を阻害するデメクロサイクリン,または炭酸リチウムの投与も,SIADHによる低ナトリウム血症を改善させる.

中枢神経系障害に由来するSIADHの治療には,ジフェニルヒダントインが有効.

バソプレシンV2受容体拮抗薬

モザバプタン(フィズリンⓇ)

異所性バソプレシン産生腫瘍に起因し,既存の治療で不十分な場合に限り,成人にはモザバプタン30mgを1日1回食後投与する.
→まず3日間使用し,有効性が認められた場合に限り,引き続き7日間まで継続投与することができる.
*国内では未承認.

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