SGLT2阻害薬 SGLT2 Inhibitors;SGLT2i

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

腎皮質の近位尿細管に存在するSGLT2のグルコース再吸収を選択的に阻害することにより,腎糖排泄閾値(renal threshold for glucose;RTG)を低下させ,過剰なグルコースを尿糖として排泄させ,血糖値を低下させる.

近位尿細管のSGLT2の下流にあるSGLT1の予備能を用いることで尿糖排泄量が制限される仕組みになっており,低血糖が起こりにくい.

薬理

SGLT2:sodium-glucose co-transporter 2,ナトリウム-グルコース共輸送体2

血液中に存在するグルコースは腎臓の糸球体で濾過され,健康成人では原尿中のグルコースのほぼ100%が近位尿細管で再吸収されて,血液中に戻る.
→腎臓の近位尿細管に特異的に発現しているSGLT2とSGLT1が重要な役割が役割を果たしている.

健康成人ではグルコースはほぼ完全に近位尿細管で再吸収され,尿中に検出されないが,糖尿病患者では原尿中のグルコース濃度が高く,SGLTの糖再吸収の限界を超えるため,尿中にグルコースが排泄される.
・血糖値があがるほど糖排泄量が多くなる.
・正常血糖では,糸球体濾過された180g/日のグルコースのうち,SGLT2とSGLT1はそれぞれ約160gと約20gを再吸収しているが,このときSGLT2は50%,SGLT1はわずか15%が働いているのみであり,特にSGLT1は大きな予備能を残している.

糖再吸収能の限界にあたる血糖の値は「腎糖排泄閾値 renal threshold for glucose;RTG」と呼ばれ,健康成人ではRTGが180mg/dL程度とされているが,2型糖尿病患者ではRTGが健康成人よりも上昇しており(210~240mg/dL程度),糖の再吸収能が高くなっており,近位尿細管のSGLT2発現が亢進していることが知られている.

SGLT2阻害薬によってSGLT2が阻害されると,近位直尿細管に大量のグルコースが流入するため,SGLT1が100%稼働してグルコースを再吸収することになる.
・その結果,尿糖として排泄される糖の量は,1日当たりグルコース換算で約70~80g,カロリー換算で約300kcalを排泄する.

さかえ 2020年12月号

SGLT2

腎臓の近位尿細管起始部(S1分節)の管腔側に限局して分布.

グルコースに対して低親和性であるが,大容量の輸送能を有していることから,原尿中に移行したグルコースの約90%を再吸収する
→親和性低く,経済的な再吸収

SGLT1

主に小腸に発現(その他:腎臓・気管・心臓・大腸)
・腸管からのグルコース・ガラクトースの生体内吸収に重要な役割を果たしている.

近位尿細管の遠位部(S3分節)に存在し,グルコースに対して高親和性であるため,SGLT2で再吸収されなかった原尿中の残りのグルコース(約10%)を再吸収する.
→親和性高く,SGLT2が取り逃したグルコースをパワフルに再吸収.

血糖変動への影響

血糖値を全体的に下げる.
・食前血糖値や夜間深夜帯血糖値の低下.

食直後の血糖上昇を抑える効果は弱い.
・食直後の腸管からの糖吸収を介した循環血液内への糖の流入速度に,同薬による尿細管での再吸収阻害を介した糖排泄速度が追い付かないことに起因すると推測される.
・食後高血糖のみを示す初期の肥満2型糖尿病症例の場合は,その効果に限界がある.

インスリン抵抗性改善

脂肪組織に対しては脂肪分解・血中遊離脂肪酸増加を引き起こし,これが脂肪サイズ・脂肪量の低下や肥満抑制に作用する.

肝臓では糖新生が増加する一方で,遊離脂肪酸の増加に伴うβ 酸化の亢進・脂肪合成減少により脂肪肝を改善する.

骨格筋では異所性脂肪を減少する.

長期的には膵β細胞機能やインスリン抵抗性を改善することが期待されている.

グルカゴン増加

グルカゴン産生抑制作用の減弱
・尿への糖排泄により血糖値が低下するため,血中インスリン濃度が低下(インスリンにはグルカゴン抑制作用がある)

膵α細胞からのプレプログルカゴンの分泌増加

降圧作用

Dapagliflozin は,12週間前の服用で,プラセボに比べ,座位収縮期血圧を4.8 mmHg 低下させた.

日内変動に対する効果は不明.食塩負荷肥満マウスではdipperが,non-dipperになる.

Osmotic diuresis(浸透圧利尿)
Mild natriuresis:初期のナトリウム喪失は代償される.
Decreased body weight
Effect on vascular stiffness
Reduction of serum uric acid

利尿作用

Na利尿(作用が弱い)+水利尿(腸管うっ血,肝うっ血,間質うっ血を改善)
→心不全を改善

腎臓にはNaを再吸収する機構が複数あり,近位尿細管で6割,Henle係蹄で3割,遠位尿細管で7%,集合管で2-3%が再吸収され,残り1-2%が尿中に排泄される.
・近位尿細管でNaの再吸収を阻害しても他の機構が代償的に再吸収するため,近位尿細管に作用する利尿薬はない.
・SGLT-2阻害薬を投与してもNaの再吸収は進行する.

NaがClを伴って再吸収されると,水透過性の高い近位尿細管は管腔内が等張になるよう,水も再吸収する.
1)SGLT-2阻害薬を投与すると、グルコースの再吸収が抑制されたままNaとCl,水が再吸収されることになり,NaとClの尿細管濃度は大きく低下する.
2)Cl濃度の低い溶液がHenle係蹄に移行すると,Henle係蹄での再吸収はCl濃度依存的であるため,さらに大きく抑制されることになる.
→SGLT2阻害薬を投与すると,Naは代償的に再吸収されるが,水はそのまま排出される.

心保護効果

心血管イベントを抑制するGLP-1RAは心不全に対して中立的であり,SGLT2iは心不全に対して優位性を持った唯一の薬剤になる.
→心不全を持ったT2DMには,SGLT2iが第一選択になってくると思われる.

メカニズムとして,
1)ケトン体増加により,β-ヒドロキシ酢酸が心臓でエネルギー源として利用される.
2)血中グルカゴン濃度が増加→グルカゴンは心収縮増強作用を持つ.

EMPA-REG OUTCOME(エンパグリフロジン)

心血管疾患の既往者に対し,empagliflozinはplaceboに比し,3P-MACEを14%減少させ,心血管死を38%減少,心不全による入院を35%,全死亡を32%減少させた.

CVD-REAL Study(ダパグリフロジン,カナグリフロジン,エンパグリフロジン)

2型糖尿病患者(36万3,240例、うち約70%が心血管疾患の既往歴なし)における心血管イベントリスクを,SGLT2阻害薬の投与を開始した患者群とDPP-4阻害薬(どの薬剤でも可)の投与を開始した患者群とで比較した観察的研究

SGLT2阻害薬の投与開始群は,DPP-4阻害薬の投与開始群と比較して,全死亡(HR: 0.61; 95%CI: 0.54, 0.69),心不全による入院(HR: 0.68; 95%CI: 0.60, 0.78),総死亡と心不全による入院の複合評価項目(HR 0.67; 95%CI 0.60, 0.74),心筋梗塞(HR: 0.90; 95%CI: 0.81, 0.99),脳卒中(HR: 0.84; 95%CI: 0.76, 0.93)のリスク低下と相関を示した.
・既存の心血管疾患の有無にかかわらず,心不全の死亡率および入院率が低下させた.
empagliflozinのベネフィットは薬剤クラスの効果であることを示唆している.

腎保護効果

利尿作用

全身の代謝改善(血糖低下,脂質改善,体重減少)

過剰となっている糖の再吸収の減少→酸化ストレスの改善

tubuloglomerular feedback(TGF) mechanism
GFRが低下すると輸入細動脈の抵抗を変化させGFRを維持しようとする.
・遠位尿細管ではNaClが増加し,GFRが保たれたと判断し輸入細動脈拡張を解除し,腎糸球体内圧の低下等を来たし腎保護に有用に働く(TGF機構の活性化)
→糸球体内圧の低下(RAS系の抑制)
*通常の利尿薬では,RAS系が亢進する

副作用

自覚症状

頻尿・多尿,口渇,便秘

尿路感染症

血糖コントロール不良な女性患者,尿路感染症の既往がある患者,尿路系の基礎疾患(神経因性膀胱など)を有する患者,尿中の菌量が10^4CFU/mLより多い無症候性細菌尿がある場合は使用を避ける.
尿路敗血症urosepsisになる可能性あり.

頻尿あるため,膀胱内貯留時聞が短くなり,亜硝酸塩は偽陰性になることがある.
白血球反応も高比重尿で偽陰性となることがある.
→必ず尿沈渣も提出する.

性器感染症

女性の膣炎は基本的にカンジダ膣炎(2~5%),膣トリコモナス症,細菌性膣症の3つに分類されるが,ブドウ糖を発酵するCandida属によるカンジダ膣炎と,大腸菌なども原因となる細菌性膣症に注意する.
→性器部分の掻痒感が症状として多く,軽症であれば抗真菌クリームですぐに改善することが多いため,早めの発見が重要.

男性の場合,亀頭包皮炎(0.1%と稀)を起こすことがある.

入浴などによって清潔を保持することで頻度が減る可能性が指摘されている.

皮膚障害

皮膚症状は薬疹,発疹,皮疹,紅斑など非重篤のものを含めれば 500 例以上が報告され,最も頻度の高い副作用となっている.
・一つの機序として,乾燥に伴う発汗異常の関与が考えられる.角層の乾燥により汗腺の狭窄などを生じ,真皮内への汗の漏出が炎症反応をひきおこす.
・全ての種類の SGLT2 阻害薬で皮膚症状の報告がある.
・皮膚症状が全身に及んでいるなど症状の重症度やステロイド治療がなされたこととなどから重篤と判定されたものも 80例以上に上っている

あるSGLT2 阻害薬で皮疹が出現し一旦改善した後,別の種類の SGLT2 阻害薬に切り替えたところ,直ちに皮疹が再燃した例も数例あり,SGLT2 阻害薬の間で交差反応性があることが示唆されている.

乾燥を防ぐことが重要で,そのためには水分を補給すること,ゆっくり入浴すること,入浴直後に保湿剤を十分外用すること,入浴中は体を石けんで洗いすぎないことなどが効果的とされている.

ケトアシドーシス

SGLT2iを使用すると脂肪分解が進むため,肝臓でケトン体産生が増加し,血中ケトン体濃度が若干上がる.
→シックデイや手術のときなど摂食不良状態が重なるとケトン体が過剰になり,発症する.

リスクは3倍以上に増えると報告されている.

「摂食不良のときのSGLT2阻害薬休薬」「極端な糖質制限をしない」「インスリンを減らしすぎない」「アルコールを過剰摂取しない」ことが重要

一定数の症例では,正常血糖に近いレベルの高血糖でケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis;euDKA)を発症している(下記参照).
・代謝学的なストレスが加わる状態(手術,高強度の運動,心筋梗塞,脳卒中,重症感染症,長時間の空腹状態など)に置かれていた.

骨量減少?

尿中へのカルシウム排泄を促進すること,蛋白異化亢進によるサルコペニア,体重減少による荷重負荷の軽減による骨量減少の可能性が懸念されている.

メトホルミンを基礎薬として,ダパグリフロジンのプラセボ対照の2年間の臨床研究では,骨量,骨代謝マーカーの有意な変化は認めていない.

脳梗塞?

使用方法

推奨症例

比較的若年で,糖尿病歴が浅い.

肥満傾向が強い.

他剤で効果不十分な症例

適正使用に関するRecommendation

インスリンやSU 薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には,低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる.患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと.

75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア,認知機能低下,ADL低下など)のある場合には慎重に投与する.

脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること.利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する.

発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する.

全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には,血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので,血中ケトン体を確認すること.

本剤投与後,薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し,皮膚科にコンサルテーションすること.また,必ず副作用報告を行うこと.

尿路感染・性器感染については,適宜問診・検査を行って,発見に努めること.問診では質問紙の活用も推奨される.発見時には,泌尿器科・婦人科にコンサルテーションすること.

インスリンの減量

血糖コントロール良好(HbA1c<7.5%)な場合
・開始時に基礎および追加インスリンを10~20%前後を目安に減量することを検討する.

血糖コントロール良好でない(HbA1c≧7.5%)場合
・服薬開始時の基礎および追加インスリンは減量しないかあるいはわずかな減量にとどめる.

経過中、血糖コントロールが改善し低血糖が顕在化した場合
・血糖自己測定や持続血糖モニタリングの結果に応じ,患者自身で責任インスリン量をすみやかに減量できるよう指導する.
・患者にはインスリンを極端に減量することは控えるよう指導する.
・基礎インスリンの減量は治療前の20%を越えることは避け,慎重に減量すべきである.

SU薬の減量

グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる.

グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる.

グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる.

周術期

手術が予定されている場合には,術前3日前から休薬し,食事が十分摂取できるようになってから再開する.

不適合症例

腎機能低下例(GFR 30mL/min未満)
・尿中への糖排泄は,糸球体濾過量に依存するため,CKDでは尿糖の排出が悪く,薬剤も尿細管まで到達しにくくなり,効果が期待できない

後期高齢者
・安全性が十分に確立されていない.
→特定使用成績調査で登録された患者総数は約15000例以上に登るが,対象患者の約1/3が75歳以上であり,利尿薬併用例も一定数含まれていた.1年間の観察結果,安全性プロファイルは総じて臨床試験で得られたものとほぼ一貫していた.
・脱水症状を自覚しにくい.

極端に痩身な患者
・エネルギーロスによる体内のグリコーゲン貯蔵量の低下を引き起こし,筋肉量の低下によるインスリン抵抗性の増大や,サルコペニアの可能性がある.

骨粗鬆症
・高齢者,閉経後の女性,骨折のリスクが高い患者

尿路感染症,性器感染症のリスクが高い患者

十分な水分摂取ができない患者

1型糖尿病(インスリン療法との併用)

イプラグリフロジン,ダパグリフロジンは1型糖尿病への適応が追加された.

エビデンス

海外の14個のRCTのメタ解析では,SGLT2阻害薬群はプラセボ群に比し,HbA1c値の0.4%の低下,空腹時血糖値12mg/dL以下,体重2.7kg減少,収縮期血圧3.4mmHgの減少,インスリン使用量の1日6単位の減少などがみられている.

・本邦のイプラグリフロジンの第Ⅲ相臨床試験でも,同等の有効性が確認された.
・CGMを用いた検討(DEPICT試験)では,TIRが有意に増加し,MAGEの改善も認めている.
・低血糖の頻度はプラセボ群とほぼ同等,重症低血糖の頻度も有意な増加なし.
・性器感染症のリスクは,プラセボ群の3倍.
・DKAについては,下記参照.

正常血糖アシドーシス euglycemic ketoacidosis;euDKA

血糖値の上昇が抑制され,正常血糖 or 軽微な血糖上昇にとどまった段階でケトアシドーシスへ進行する.

DKAについては.ほとんどの研究でリスクの増加が認められた(プラセボ群と比較し,3倍以上増加).
なかでも,euDKAが数多く含まれていた.

機序

1)腎での尿糖排泄亢進により生ずる負のエネルギーバランスや血糖低下
 →代償機転としてのグルカゴン上昇,インスリン分泌低下
 →脂肪組織での脂肪分解や肝でのケトン体産生

2)患者が,低血糖予防のためにインスリンを過度に減量した場合や基礎インスリンを中断した場合

3)腎でのNa再吸収の低下が尿細管でのケトン体排出を抑制する可能性が示唆されている.

危険因子

★基礎インスリン/追加インスリンの過度な減量
★インスリンポンプトラブル
過度な糖質制限
過度なアルコール多飲
過度or長期間の運動
感染症
脱水

ケトーシスが疑われる場合の対策

欧米では,SGLT2阻害薬服用中に,体調不良・嘔気・腹痛などのケトーシス症状を自覚したら,自宅で血中ケトン体と血糖を測定し,その結果をもとに,早急にSGLT2阻害薬を中止し,積極的に十分な糖質(軽症の場合30g程度)を摂取し,通常の必要量の約1.5倍の追加インスリンを皮下注射すること,水分をできるだけ接種することが推奨されている.

上記対応でも改善しない場合は,医療機関を受診する.

初期治療の現場でも,最初の輸液は,生理食塩水ではなく,十分なブドウ糖(10%前後が目安)を含む輸液を積極的に行う必要がある.

FreeStyleリブレ使用者の場合,β-ケトン測定電極を利用することで,自宅でのケトン体測定が可能となるが,本邦ではまだ保険適応が認められていない.

患者選択

専門医の指導により適切なインスリン治療・自己血糖測定・持続血糖モニタリングを行い,それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ検討する.

日頃から自己血糖測定を行っていない場合や,インスリン注射を打ち忘れるなど不適切な治療により血糖コントロールが不良な場合は避ける.

ケトアシドーシスリスクが高い症例も避ける(上記リスク参照)

タイトルとURLをコピーしました