重症熱性血小板減少症候群 severe fever with thrombocytopenia syndrome;SFTS

医学ノート(なすび用)

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ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルス(SFTSウイルス;SFTSV)によるダニ媒介性感染症(フタトゲチマダニやタカサゴキララマダニなど).

2011年に中国で,2013年1月に本邦で報告された新興感染症.

感染症法による4類感染症に指定されている.

発症直後から急速に重症化し,致死率が25~30%と極めて高い
→迅速な診断と治療が望まれる.

疫学

2020年で573例が報告されている.
・60歳以上が約90%を占める.
・高齢者で致死率は高くなる.

発症は5~8月(マダニの活動時期)に多く,西日本を中心に報告されている.

国内の大規模調査では,死亡率は27% or 31%と報告されている.

病態

感染経路

SFTSウイルスを保有しているマダニに刺されると感染する.

SFTSウイルスは,成ダニから幼ダニへの経卵伝播サイクルと,哺乳類との水平伝播サイクルとが共存する.
・イノシシ,シカ,アライグマ,ハクビシンなどから高率に抗SFTS抗体が検出されている.
・ネコやイヌもSFTSを発症することが確認され,飼い主が濃厚接触して感染した事例が報告されており,社会問題になっている.

SFTSウイルス感受性は,ネコ科動物が一番高く,次いでヒト,イヌの順番.

ウイルス血症を伴っている動物の解体時に血液などの体液に触れたり,医療従事者が患者体液に触れたりすることで感染が成立すると言われている.
→院内感染や家族内感染などヒト-ヒト感染も起こりうるため,適切な感染予防対策を熟知することも重要.血液・ウイルス汚染物の扱いには細心の注意.

高炎症性サイトカイン血症による多臓器障害

出血傾向,DIC,多臓器不全,血球貪食症候群が予後不良の原因.

SFTSウイルスはB細胞(特に形質芽球様B細胞)とマクロファージに感染し,全身のリンパ組織で増殖することが明らかにされた.

予後不良因子としては,高齢者,血中SFTSウイルス量高値,中枢神経症状発症,多臓器障害,高炎症性サイトカイン血症などが挙げられる.

症候

感染すると6〜14日の潜伏期を経て,発熱,消化器症状(食欲低下・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛)が多くの症例で認められ,その他頭痛,筋肉痛,意識障害や失語などの神経症状,リンパ節腫脹,皮下出血や下血などの出血症状などを起こす.
・半数以上で意識障害を伴う.
・消化器症状を高率に認めるのが,リケッチアとの鑑別ポイント.

重症例では,出血症状,意識レベル低下などの中枢神経症状を来たし,急激に多臓器不全に陥る.
しばしば血球貪食症候群を伴う.

一旦軽快傾向を示すと,1~2週間で症状は軽快し,通常再燃を認めることはない.
この期間に回復傾向が認められない場合には死に至ることが多い.
→予後が発症後1~2週間で決まる

約半数のSFTSの患者で,マダニの刺し口がなく,刺された事実が確認されない.

検査所見

白血球減少,血小板減少,AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められる.

横紋筋融解や筋炎を示すCK高値の頻度が高い.
→SFTSを疑う重要な所見.

血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがある.

DICを示す血液凝固系の異常も認められる.

高度の炎症症状があるにも関わらず,炎症バイオマーカーであるCRPは正常か軽度の上昇に留まる.
→他の疾患との鑑別診断に有用

診断

確定診断は,血液や組織からのSFTSウイルスゲノムの検出

SFTSを疑う患者を診たときは保健所に相談する.
→SFTSV遺伝子検査が実施できる体制が整備されている.

鑑別診断

リケッチア症(ツツガムシ病・日本紅斑熱)
・特徴的皮疹(日本紅斑熱では手掌にも認める)
・刺し口(日本紅斑熱では明らかでないこともある)
・CRP強陽性

成人Still病
・発熱と一致した特徴的皮疹
・白血球増加
・CRP強陽性

血管内リンパ腫
・ランダム皮膚生検

レプトスピラ症(Weil病)
・結膜充血
・土壌,汚染水
・保菌動物(ネズミなど)との接触歴

薬剤熱
・重症感に乏しい
・薬剤服用歴

輸入感染症(マラリア・デング熱など)
・海外渡航歴,蚊刺咬歴
・末梢血塗抹標本
・皮疹

日本では稀な疾患(アナプラズマ症・エーリキア症)
・顆粒球や単球の封入体

治療

治療は対症的な方法しかなく,有効な薬剤やワクチンはない.

初期段階では細菌などによる敗血症も考慮して経験的治療を開始する.
・日本紅斑熱やツツガムシ病も考慮し,テトラサイクリン系の抗菌薬を併用する.

急性劇症型の感染症であるため,過剰な免疫反応を抑制する薬剤を併用することも必要.
→高炎症性サイトカイン血症や血球貪食症候群に対しては,ステロイド薬が使用されるが,重篤な真菌感染症の合併が報告されており,投与は慎重に.

わが国では2016年からファビピラビル(アビガン®)を用いた臨床試験が行われている.
in vitro,マウスのin vivo実験ではSFTSウイルスの増殖を抑制する.

最も重要なことは,マダニに刺されないこと
→マダニ生息地で活動する際には,肌を露出せず,必要に応じて,マダニ忌避剤などを使用することも有用.

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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

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