強皮症クリーゼ scleroderma renal crisis;SRC

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なすび医学ノート

強皮症の経過中に発症した急性腎不全.
典型例は高血圧で気づかれ,急速に悪性高血圧・乏尿性腎不全に至る.

著明な高血圧の合併.

微小血管症性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia)
→ビリルビンの上昇,LDHの上昇,ハプトグロビンの低下
→血算のスメアで破砕赤血球

疫学

・強皮症腎は欧米の頻度(5~10%)に比して,本邦では比較的頻度が低いとされている。
・ほとんどがびまん性全身性強皮症に生じ,発症5年以内に多い.

原因

遺伝的要素(エンドセリン受容体遺伝子多型)

血管内皮細胞の活性化
↓↑
血管障害(腎弓状~小葉間動脈の血管内皮の増生,フィブリン血栓を伴う血小板凝集)
 ←→細胞要素(線維芽細胞の活性化,筋線維芽細胞への分化)
 ←→自己免疫要素(RNAポリメラーゼ抗体,免疫細胞活性化)

腎血流低下(血管内膜肥厚,線維性の”onion skinning”→閉塞性脈管障害)
↓↑
RAAS亢進(傍糸球体装置の過形成)

SRC

病態

・腎の細動脈レベルでのコラーゲン線維の増加や血管平滑筋細胞の増殖により血管内腔の狭小化をきたし,腎灌流圧の低下が契機となりレニンが分泌され高血圧をきたす.
・腎臓での血管攣縮によりアンジオテンシンⅡが産生され,これがさらに血管攣縮をきたすという悪循環に陥っている.

・血管病変は,血栓性血小板減少性紫斑病と類似し,微小血管傷害性溶血と消費性血小板減少を生じることがある.

・腎クリーゼの前には皮膚症状がしばしば急速に悪化するが,貧血の存在や心嚢水貯留もリスク因子とされている.
・感染,寒冷刺激や脱水,NSAID,ステロイド大量投与などを誘因として,輸入細動脈の攣縮が起きて強皮症腎クリーゼとなることも指摘されている.
・ステロイドは,血管内皮障害を促進させ,強皮症患者における腎クリーゼの誘発因子となることが知られている.

高血圧

・時に頭痛や網膜障害,脳症を伴う.
・RAAS亢進に伴う体液貯留と相まってしばしば急性肺水腫を来たす.

腎障害

・強皮症腎クリーゼは,強皮症のおよそ5~15%で突然に悪性高血圧を呈して出現し,急速に腎不全に至る.
・しばしば乏尿/無尿となる.
・腎疾患は通常強皮症発症後の比較的早期,すなわち,ほとんどが最初の5年以内に発生する.

血栓性微小血管障害(TMA)またはTTP/HUSによる腎障害

血管内皮障害に伴って微小血管血栓形成をきたし,臨床検査では,末梢破砕赤血球,溶血性貧血,血小板減少,LDH上昇,ハプトグロブリン低下を示す.

一部においては,血中にATAMTS13抗体の出現が認められ,血漿ATAMTS13活性の低下を呈する.
・免疫抑制療法や血漿交換に反応する.
・SLEと比べると少ない.

正常血圧腎クリーゼ

正常血圧にも関わらず発生する腎クリーゼ(約10%)

ANCA関連腎炎

MPO-ANCA陽性.組織学的には半月体形成性腎炎の像.

症候

尿検査

・蛋白尿や顕微鏡的血尿は軽度であることが多い.
・細胞または円柱が認められない.

血液検査

ときに血栓性微小血管障害症(血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,腎障害)を呈する.

血清ハプトグロビン低下
・主に肝で産生されるハプトグロビンは溶血で血中に遊離したヘモグロビンと速やかに結合し,細網内皮系細胞のレセプターを介して取り込まれて分解処理される.
→遊離型ヘモグロビンの毒性が中和される.

MPO-ANCA
腎クリーゼにはMPO-ANCA陽性顕微鏡的多発血管炎との関連も報告されているため,ANCA値の測定が必要である.

腎病理

糸球体は虚血に陥り,係蹄壁の肥厚と蛇行(winkling)が認められる.

小葉間動脈の内膜の著明なムコイド肥厚によって血管内腔の狭小化が認められる.
→タマネギ状変化 onion-skin leision

細動脈にはフィブリノイド変性が認められる.

治療

治療を行わなければ,強皮症腎クリーゼは1~2カ月以内に進行した腎不全に至る.

血圧コントロール

積極的な血圧コントロールの早期開始により腎機能の安定または改善が期待しうる.
一時的にさらに腎機能が低下することは覚悟.

短時間作用型アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル)は強皮症腎クリーゼの第一選択とされ,腎機能と全体的な罹病率と死亡率に対して最も有効.
・初期治療として,ARB単独使用は推奨されない.
・カプトプリルは12.5~25mgより投与し,過度な血圧低下を回避しながら,適時用量調整して,24時間で150-170mmHg程度,72時間で<140mmHgを目標とする.

血圧の調節不良や副作用出現の場合は,Ca拮抗薬(ニフェジピンなど)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ロサルタンなど)を併用するか,変更する(ARBはまだ明白なエビデンスはない).

長期的な投与に対しては,長時間作用型ACE阻害薬(エナラプリルなど)への変更もありうる.

腎代替療法

・腎機能が進行性に悪化する場合は,透析療法が必要となる.
・治療により,血圧が安定し腎機能の改善を認める場合があるが,腎不全が慢性に経過し1~2年以内に透析が必要になることもしばしば.
.AN69膜を使用する積層型ダイアライザーは,ACE阻害薬の治療中には禁忌.

(エンドセリン受容体拮抗薬 endethelin receptor antagonists;ERAs)

ACE阻害薬投与で抑制しても改善が不十分な場合に期待されている.

エンドセリン1は血管内皮細胞より産生されるvasoconstrictorであり,血管収縮のみならず,基質産生を経て血管のリモデリング・線維化を引き起こす.
・SRCでは,非SRCより血清エンドセリン1濃度が高く,腎組織での発言も亢進している.

(補体活性阻害薬)

(エクリズマブ eculizumab;ECZ)

補体C5に結合するヒト型リコンビナント・モノクローナル抗体であり,C5からC5aとC5bへの分解およびC5aとmembrane attack complexの形成を抑制する.

SSc-TMAと補体活性化の関係が示唆されている.

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