サルコイドーシス sarcoidosis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変を全身の諸臓器に形成する原因不明の疾患.

全身性疾患ではあるが,主なる病変部位は肺(縦隔,肺門リンパ節,肺),次いで,眼,皮膚である.

疫学

・性差は少ない.
・好発年齢には20歳代の若年層と40歳代以降の中高年層の二つのピークがある.
・20歳代では男女差はないが,40歳代以後は女子症例が多い.
・発症頻度のみならず,病像,臨床経過において人種差,民族差の大きい.

死亡の要因

肺の線維化病変(主に気管支,細気管支周囲の間質)の進展による呼吸不全死に加えて,線維化病変の進展によるブラの形成,そしてこのような組織変化を背景として難治性の感染症(アスペルギルス,非定型抗酸菌症など)に陥る症例が少なくない.

心病変による死亡例もある.

予後因子

肉芽腫病変の持続に関与する因子と線維化病変の進展に関与する因子との2種類がある.

肉芽腫病変持続に関与する因子
発見/発症時に,①高年齢患者,②症状発現者,③肺野病変例,④肺外病変を有する症例が消失群に比較して多いことが挙げられている.

原因

病因物質は見いだされていないが,サルコイドーシスと同様な類上皮細胞肉芽腫病変形成を主徴とし,原因物質の明らかな結核症,慢性ベリリウム肺の病変形成機序との比較から,本症の発症機序に関しては以下のような説明が行われている.

1)不明の病因物質(抗原)によって,マクロファージの活性化,次いで,Tリンパ球の活性化,増殖が起こり,また,Tリンパ球の病変部位への移行によって,マクロファージ・Tリンパ球性胞隔炎が惹起される.
2)これらの細胞によって産生される種々のサイトカイン,生理活性物質の作用によって,単球由来のマクロファージが活性化され,さらに類上皮細胞に分化し,類上皮細胞肉芽腫病変が形成されるものと理解されている.

病態

類上皮細胞肉芽腫は,多くの場合,自然消退するが,一部の症例では,肉芽腫病変の遷延化が起こり,また,線維化病変に進展することがある.

高Ca血症

5/1~14.3%と低頻度.

発症機序
サルコイドーシスでは肉芽腫やマクロファージの産生する1ある-ヒドロキシラーゼにより活性化ビタミンの産生を亢進させるため,通常働くnegative feedbackが働かず,活性型ビタミンDが過剰先生され,腸管からのCa吸収を促進さる.

腎病変

1)Ca代謝異常による糸球体・尿細管障害,腎石灰沈着症,尿路結石症
・主な原因
2)糸球体病変
3)肉芽腫性間質性腎炎

肝サルコイドーシス

大多数は無症候性で,腹痛・黄疸・悪心・王音・肝脾腫大を呈するのは5~30%と頻度は比較的低いため,発見されにくい.

予後は一般的に良好であるが,時に進行性の線維化を来たし,肝硬変や門脈圧亢進症などを生じることがある.

画像上の特徴的な所見や肝機能障害を呈さないサルコイドーシスの場合も,肝生検を行えば全体の50~80%の症例で肉芽腫を検出できるとの報告がある.

(悪性リンパ腫)

悪性リンパ腫をはじめとした悪性疾患との関連も指摘され,悪性リンパ腫の同時発症の報告もある.

症候

健康診断の普及している本邦では,健康診断時に自覚症状なく,胸部X線上のBHL所見から発見される症例が多い.
・半数以上の症例が無症状で発見されている(特に若年者).

症状発見例の発見動機をみると,眼症状が圧倒的に多く(50%),特に中年以降の女性において多い.
次に,咳,ごく軽度の呼吸困難,胸痛などの呼吸器症状(10~15%),発熱,倦怠感などの全身症状(10%)が発見動機.
・多くは感冒様症状で受診した際にたまたま撮影された胸部X線所見で発見された症例で,正確にサルコイドーシス病変による呼吸器症状というわけではない.
・皮膚症状が発見動機となる症例の頻度は欧米に比較して低い(10%).

症状

1)形成された肉芽腫病変による圧迫症状
2)肉芽腫形成部位における機能不全
3)後遺症としての瘢痕・線維化病変
によるものであるが,加えて眼病変,結節性紅斑にみられるような発病初期の血管病変による症状もある.

血液検査

高Ca血症を5.1~14.3%で呈する.

肺機能・血液ガス検査所見

Ⅲ期の進展期症例では,拘束性換気障害,拡散機能障害,低酸素血症が認められるが,Ⅰ,Ⅱ期では異常所見を認めることは少ない.

ツベルクリン反応

陰性例が多い.陽性であっても強陽性を示すことは稀.

血清ACE

70~80%以上の症例では血清ACE(angiotensin-converting enzyme)高値が,特に肺野病変例では80%以上の頻度で高値所見が認められる.

気管支肺胞洗浄 bronchoalveolar lavage;BALF

細胞所見で以下の所見が認められる.
1)回収細胞数の増加
2)リンパ球%の増加
3)リンパ球CD4+/CD8+比の増加

胸部X線

Ⅰ期:両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy;BHL)のみ
Ⅱ期:BHL+肺野病変
Ⅲ期:肺野病変のみ
に分類されることが多い.

・胸部X線所見上の異常陰影が存在しても,すべての症例が呼吸困難を呈し,呼吸不全に進行するわけではない.
・10年以上陰影が残存していた症例のなかで,このような経過をたどる症例は20~25%程度であり,症例全体からみれば5%以下である.
・発症後5年以内に呼吸困難を呈するような症例もあるが,呼吸困難を呈した多くの症例では,発症から呼吸困難出現までに,15年以上の年月を要している.

胸部CT

・胸部X線単純写真では認められない程度のリンパ節腫脹もよく認められる.
・X線単純写真に比較して高い頻度で肺野病変が見いだされる.

サルコイドーシスに認められるCT上の肺野病変としては,病期によってさまざまな所見が認められる.
1)病変は気管支血管束周囲に分布していることを反映しての気管支肺動脈束の不均一な腫大
→線維化しやすい
2)小葉間隔壁,細気管支周囲,葉間および胸膜面に沿う微細粒状影
3)気管支壁肥厚像
4)大小の結節影
5)スリガラス様陰影ground-glass opacity
6)末梢肺野の局所収縮像(特に上肺野)

心エコー

心室中隔基部の壁菲薄化は診断特異度が高い.

局所壁運動異常およびびまん性壁運動低下,心室瘤,心膜液貯留,弁逆流などが見られる.

心臓MRI

心室中隔基部の壁菲薄化,局所心室瘤,冠動脈支配域に一致しない心筋の菲薄化の有無.

遅延造影の特徴は,1)心基部よりの中隔,次いで側壁に比較的多く存在するが,いずれの部位にも存在しうる,2)心外膜側or全層性に局在する.

(PET-CT)

保険適応外だが,多臓器の病変を把握するために有意義.
診断のための必要な生検部位を決定する上でも早期に検討.

診断

サルコイドーシスの病名は,病理組織学的所見に基づく病名であるので,基本的には病理組織所見,生検所見が必要.

多くの症例では,以下のような所見から臨床的に診断可能.
1)画像所見上のBHLは本症を疑う大きな根拠となる.
2)加えて,眼病変,皮膚病変が認められれば,まず本症である可能性が高い.
3)画像で多彩な肺野病変が認められるが,病変の見た目に対して呼吸器症状に乏しい場合,本症を疑う.
4)ツベルクリン反応陰性所見,血清ACE高値所見,BALF細胞所見(細胞数の増加,リンパ球%の増加,リンパ球CD4+/CD8+比の増加所見)は,本症を疑う大きな根拠となる.
・サルコイドーシス以外の疾患でも認められることがあるので注意が必要.

病理組織診断(確定診断)

簡便,安全,確実の3条件から,以下のような生検部位の選定順位が示されている.
1)皮膚病変,表在リンパ節腫脹部位があれば,まず第一に行う.陽性率も高い.
2)経気管支肺生検では,胸部X線所見上肺野に病変が認められなくとも,50%以上の症例で陽性所見が得られる.
3)前斜角筋リンパ節生検では70~80%に陽性所見.
4)縦隔鏡下リンパ節生検では100%近い陽性率.
5)外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検/開胸肺生検)は,上記での診断ができず,他のびまん性肺疾患との鑑別が必要な場合に限って行われるべき.

生検による非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変の確認はサルコイドーシスと診断する大きな根拠となるが,非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変が認められるのは,サルコイドーシスだけではない.
・結核症,真菌症においても同様の病変が認められることがあるので,生検材料については培養検査を含めて細菌学的検査を行う.

治療

・原因不明の疾患であり,根治療法は今のところない.
・肉芽腫病変形成維持の阻止と線維化病変への進展防止,合併症の治療が基本的目標.

・肺サルコイドーシスの多くの症例では,肉芽腫病変は寛解し,予後良好の経過をたどるが,一部の症例では肉芽腫病変から線維化病変に進展し,予後不良の経過をたどる.
・稀だが,心病変による死亡例もある.

肺(肺門,縦隔リンパ節,肺)病変が認められるが,無症状の場合
→無治療で経過を3~6か月観察し,治療の必要性について判断する.

咳,呼吸困難などの症状が強い場合
肺野病変の急激な増悪による,あるいは再燃(特にステロイド減量後)の場合は,ステロイドの経口投与を行う.
有効な場合→ゆるやかに減量,中止する.
無効な場合→できるだけ早く投与を中止する.

呼吸不全に進展した場合
酸素療法(在宅酸素療法)
・肺感染症に罹患しやすく,感染症は病変増悪の大きな理由になるので,感染の合併の早期診断と適切な抗菌薬投与が必要.
・酸素療法後の余命は1~2年であることが多い.
・医学的には肺移植療法の積極的適応となる.

ステロイド治療

現在までに知られている本症に有効な薬剤はステロイドだけだが,激しい症状に,有効量を短期間に限って投与する.

1)本症には自然寛解が多い.
2)ステロイドは短期間の評価では確かに症状を改善し,胸部X線所見の改善をもたらすけれども,長期間にわたる観察では有効であったとの報告は少ない.
3)本症の発症から,肺の線維化病変への進展には10~15年を要する.
・長期間,線維化病変進展防止の目的でステロイドは副作用のリスクが高い.

経過観察

胸部X線の推移

無症状発見群では,胸部X線所見上の異常所見は,1年目に50~60%,3年目に80%前後が自然消退する.
・無症状発見群においては,呼吸不全から不幸な転帰に至る症例はきわめてまれである.
・BHLの消退とともに,肺野病変が出現した後,病変の消退する症例も少なくない.
・肺野病変の出現が,そのまま悪化と評価されるわけではない.

症状発見群では,無症状発見群に比較して,胸部X線異常陰影の消退は遅い.
・ステロイド投与の有無にかかわらず,1年目20~30%,3年目50%程度で,10年目にも,40%程度の症例では残存(不変/進展)像がみられる.

活動度の指標

血清ACE高値,BALFリンパ球増加所見などは,サルコイドーシスの活動期症例に認められる所見であり,活動度の指標となる.

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