食塩感受性高血圧 salt-sensitive hypertension

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なすび医学ノート

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食塩の過剰摂取が血圧上昇と関連することは,INTERSALTなどの観察研究で報告されている.

ヤマノミ・インディアンはもっとも低血圧な民族(最高血圧 100mmHg前後,最低血圧 60mmHg)であり,加齢に伴う血圧上昇はない.
→「塩の文化」がない.平均Na排泄量は0.9mmoL/日.

原因

腎でのNa再吸収

食塩摂取による血圧上昇の程度(食塩感受性)は個体によって非常に大きく異なる.

Guyton仮設モデル

食塩の中でもNa摂取の増加は腎でのNa排泄の増加を必要とし,それに見合った血圧の上昇を必要とするという考え.

過剰に摂取されたNa→体液増加,心拍出量増加→血管収縮を増強→血圧を上昇→Na排泄増加

このモデルでは,再吸収を担う輸送体であるNCC(Na+-Cl- cotransporter,Na+-Cl-共輸送体)やENaC(epithelial Na+ channel,表皮型Na+チャネル)の調節異常が食塩感受性の本態になる.

血管拡張不全原因説

食塩負荷後のNa貯留は健常人と食塩感受性高血圧患者では差が認められない一方,負荷後に起きる血管拡張が食塩感受性高血圧患者で抑制されている.

交感神経系

肥満や慢性腎臓病の食塩感受性モデル,遺伝性食塩感受性ラットのおいては,食塩負荷による中枢での交感神経活性化が示されている.
・逆に中枢での活性化遮断は腎交感神経抑制を介して高血圧を改善する.

腎交感神経活性化はα作用による腎血流増加とNa+再吸収増加,β作用によるレニン分泌増加によって血圧上昇に寄与する.
・食塩負荷による腎交感神経活性亢進が,WNK4(塩分排泄遺伝子)の発現を抑制し,遠位尿細管起始部にあるNa+/Cl-共輸送体(NCC)の活性化を経て,Na再吸収が亢進し高血圧が起こる
・最近では,β2刺激がエピジェネティック調節を介してNCCを活性化して食塩感受性を惹起することもわかってきている.

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系

強力な血管収縮物質であるアンジオテンシンⅡ(angiotensin Ⅱ;AⅡ)は血管平滑筋の受容体AT1(AⅡ receptor 1)に結合して血管収縮を起こすとともに,腎でのNa+輸送体を活性化して再吸収を増加させる.

RA系は循環中のみならず,脳・心ならびに腎など組織局所にも各コンポーネントを発現している.

AⅡによって分泌が刺激されるアルドステロンは,腎尿細管では鉱質コルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor;MR)に結合してENacを活性化して,血圧を上昇させる.

MRは本来,リガンド依存性に活性化されるが,食塩摂取によってアルドステロン分泌は抑制されるため,正常個体では食塩負荷のみでは血圧上昇が起きない.

But 食塩感受性ラットでは,尿細管(接合尿細管・集合管)のRac1(低分子GTPase)が食塩負荷によって活性化され,MRをリガンド非依存的に活性化する.

胎児期負荷

母体へのストレス(低タンパク食)

糖質コルチコイドの増加(ストレス応答ホルモン)
胎盤での防御機構の低下

胎児への糖質コルチコイド暴露の増加

視床下部室傍核(paraventricular nucleus;PVN)
DNMT3a発現の低下

AT1a遺伝子DNA脱メチル化

AT1a遺伝子発現上昇の持続
エピジェネティック変化(記憶となって効果が残存)

成人後食塩感受性高血圧

視床下部室傍核(paraventricular nucleus;PVN)は,血圧制御中枢の一つで交感神経の中枢である頭側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla;RVLM)にニューロンが投射しており,PVNニューロンのAT1受容体活性化は交感神経を介した血圧上昇に関与していると考えられている.

病態

Non-dipper型血圧日内リズム

生理的な血圧日内リズムでは,入眠後の血圧は日中平均値よりも10~20%低下し,dipper型血圧リズムと定義される.生理的な夜間降圧が阻害される現象は,non-dipper型血圧リズムと定義され,CKD をはじめとする様々な病態において生じ得る.

腎におけるNa排泄能低下が食塩感受性亢進の本態であり,①糸球体限外濾過係数の低下,あるいは②尿細管 Na 再吸収の亢進に起因し,食塩感受性高血圧において日中に十分に Naを排泄できない代償に発揮される圧-利尿の表現型こそが「夜間降圧の阻害=nondipper型血圧日内リズム」であると考えられている.

実際,血圧が食塩非感受性の病態ではdipper型,感受性の病態ではnon-dipper型の血圧日内リズムを伴うことが多い.

エビデンス

INTERSALT研究

DASH-Sodium研究
412人を対象に1カ月間すべての食事・飲料を完全にコントロールしたクロスオーバー試験.
→食塩の血圧に対する用量依存的な相関が示された.
→果物と低脂肪乳製品を豊富に含むDASH食では通常食よりも血圧は低かったが,それでも減塩によりさらなる降圧が得られた.

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