風疹 rubella

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

風疹ウイルスによって起きる感染で,発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とするウイルス性発疹症.

俗に“三日はしか”と呼ばれている.

症状は不顕性感染から、重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで風疹と診断することは困難.

風疹に伴う最大の問題は、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome;CRS)が出現することにある.
→男女ともがワクチンを受けて、まず風疹の流行を抑制し、女性は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要.

2008年から5類感染症全数把握疾患に変更となり、すべての医師に最寄りの保健所への届出が義務づけられるようになった.

疫学

1990年代前半までの我が国では,5~6年ごとに大規模な全国流行がみられていた.

男女幼児が定期接種の対象になってから,大規模な全国流行は見られなくなったが,2004年に推計患者数約4万人の流行があり,10人の先天性風疹症候群が報告された.

2011年にアジアで大規模な風疹流行が発生し,海外で感染を受けて帰国した後に風疹を発症する成人男性と職場での集団発生が散発的に報告されるようになった.
・報告患者の9割が成人.
・男性が女性の約3.5倍.
・男性は20~40代に多く,女性は20代に多い.

病態

風疹ウイルス

Togavirus科Rubivirus属に属する直径60〜70nmの(+)鎖の一本鎖RNAウイルス.
エンベロープを有する.

血清学的には亜型のない単一のウイルスで,E1蛋白質の遺伝子解析によって13の遺伝子型に分類されている.
・2004年の流行では1jが主流であったが,2012年以降国内では検出されていない.
・2011年以降、南・東・東南アジアで流行中の2Bと1Eが国内に侵入し,これらが定着し拡大している.

上気道粘膜より排泄されるウイルスが飛沫を介して伝播される.
・風疹の基本再生算数(R0)は5~7.

感染は経気道的に侵入したウイルスが鼻粘膜~気道の上皮細胞に局所の感染を起こして増殖した後,局所のリンパ組織~全身へと広がり,血中のウイルス量が最も増加した時期に発疹を生じる.
・発疹の出現は抗原抗体反応の結果と考えられている.

合併症

基本的には予後良好な疾患であるが,高熱が持続したり,血小板減少性紫斑病(1/3,000〜5,000人)、急性脳炎(1/4,000〜6,000人)などの合併症により,入院が必要になることがある.

成人では,手指のこわばりや痛みを訴えることも多く,関節炎を伴うこともある(5〜30%)が,そのほとんどは一過性である.

先天性風疹症候群 Congenital rubella syndrome;CRS

免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると胎児の流・早産の原因となるほかに,胎児が感染すると奇形児を出産する危険がある.

感染は母体のウイルス血症→胎盤感染→胎児の感染の経路をとるが,母体の感染イコール先天性風疹症候群発生ではなく,感染の時期が問題になる.
・母体の感染時期による先天奇形の発生頻度は妊娠1ヵ月で50%,2ヵ月で30%,3ヵ月で29%,4ヵ月で5%といわれている.

身体の各部の臓器の奇形が報告されており,単一奇形ばかりではなく多発奇形も多い.
・中でも低体重,心奇形,脳性麻痺,聴力障害,白内障が多い.
・感音性難聴は最も頻度が高く,80~90%に見られる.

症候

症状

感染から14〜21日(平均16〜18 日)の潜伏期間の後,発熱・発疹・リンパ節腫脹(特に耳介後部/後頭部/頚部)が出現する.
・ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後約1週間とされているが,解熱すると排泄されるウイルス量は激減し,急速に感染力は消失する.

発熱は風疹患者の約半数にみられる程度.
・不顕性感染が15~30%程度存在する.

発疹は顔から出現しはじめ,次第に頸→体幹→四肢へと広がる.
・性状は小さな鮮紅色の丘疹で時に出血斑やそう痒を伴う.
・多くの場合,発疹は淡紅色で小さく,皮膚面よりやや隆起しており,全身に広がるにはさらに数日間を要することがある.
・通常色素沈着や落屑はみられないが,発疹が強度の場合にはこれらを伴うこともある.

リンパ節は発疹の出現する数日前より腫れはじめ,3〜6週間位持続する.

カタル症状,眼球結膜の充血を伴うが,これも麻疹に比して軽症である.

血液検査

・白血球数減少.

診断

流行時には臨床症状,発疹の性状から診断が容易であるが,その他の時期では臨床症状に加え急性期血中IgM抗体の証明が有効な手段

血清診断

保険適応になっており,一般的に最も多く用いられる.

赤血球凝集抑制反応(HI),酵素抗体法(ELISA)が代表的.
・急性期と回復期のペア血清で,抗体価が陽転あるいは有意上昇(HI法4倍以上,EIA法2倍以上)することにより診断する.

急性期に風疹特異的IgM抗体が検出されれば,単一血清での診断も可能であるが,発疹出現3日以内では陽性になっていない場合もあり(偽陰性),発疹出現後4日以降に再検査が必要となる.
・風疹以外の疾患で弱陽性になる場合があることや(偽陽性),長期間風疹IgM抗体価の弱陽性が続く症例があることが報告されている.

(ウイルスの分離)

基本であるが通常は行われず,健康保険適応ではない.

急性期の咽頭ぬぐい液,血液,尿から風疹ウイルス遺伝子をRT-PCR法,リアルタイムRT-PCR法等の方法で検出する方法が最も早期診断に有用であるが,実施可能な機関は限られている.

治療

対症療法が治療の中心で,発熱,関節痛にはアスピリンを投与する.
発疹の掻痒が強い場合には抗ヒスタミン薬を投与する.

患者の隔離が大切.
感染力は麻疹ほどではないが,ウイルスの排泄は発症前後1週間あるので,この間は注意する(先天性風疹症候群の患児では生後数か月~1年以上にわたりウイルスを排泄する).

未罹患者に対しては風疹生ワクチンの接種を行う.

隔離

学校保健安全法では,風疹は第二種の学校感染症で,発疹が消失するまで出席停止.

感染症法では,5類感染症.
・会社勤務者が感染した場合には,男女を問わず感染防止の観点から発疹が消失するまで出勤は控える(出勤途上で不特定多数の男女,特に妊婦に感染させるおそれがあるため)

予防

弱毒生ワクチンが実用化され,広く使われている.

風疹生ワクチン

現在,MR(麻疹・風疹)混合ワクチンが定期接種に導入され,1歳と小学校入学前1年間の幼児(6歳になる年度)の2回接種となっている.
・本邦では1977年8月~1995年3月までは中学生の女子のみが風疹ワクチン定期接種の対象であったが,1995年4月からその対象は生後12カ月以上〜90カ月未満の男女(標準は生後12カ月〜36カ月以下)に変更になった.
→対象世代(1962年4月2日から1979年4月1日生まれ)の男性に対して原則無料で風疹の抗体検査・予防接種を実施している.

HI価<8倍(陰性)→全例でワクチン接種推奨
HI価8倍・16倍→妊娠希望者はワクチン接種推奨,確実な予防を希望する場合に相談
HI価≧32倍→ワクチン接種不要

タイトルとURLをコピーしました