罹患関節は左右対称性.
抗環状シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide;CCP)抗体やリウマトイド因子などの自己抗体を高頻度に認める.

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問診
診察で直接把握できるのは,診察時の病態であり,個々の患者の関節病態を正確に把握する ためには,詳細な病歴・問診が必須.
1)関節症状の発症様式,およびこれまでの罹患関節の部位を聴取し,全体像を把握.
2)特に炎症の関与に関する情報収集が重要.
・特に「朝のこわばり」は問診でのみ捉えられる情報であるが,個人によって表現が大きく異なる.
・画一的なこわばり時間だけではなく, 安静後の動き始めに認められ,一定時間後に改善するのは特徴的


視診
主に罹患部位の腫脹,発赤および 変形を評価する.
RA診療では関節変形を来たす 前に診断し,治療開始することが理想であるが,典型的な変形は一見しただけでRAを強く疑わせる根拠となりうる.
正確な評価には,触診 および可動域制限評価を組み合わせることが必要.
触診
関節の熱感,圧痛および腫脹の検出により,主に滑膜炎の有無を判断する.
特に関節腫脹はRAの主病変である滑膜炎症を反映し,RAの診断および活動性評価における最も重要な評価項目.
関節構造で腫脹を来たす部位は,骨および軟部組織に分けられる.
1)骨由来の腫脹が滑膜炎症を直接反映することは少なく,また触診上容易に鑑別可能であるため,RA診療において骨性腫脹は関節腫脹に含めない.
2)軟部組織の腫脹の原因は必ずしも滑膜組織に限られないが,滑膜組織以外の軟部組織の腫脹(靭帯の 腫脹,皮下浮腫など)はしばしば滑膜組織の炎症の波及を意味し,また触診によるその鑑別は困難である場合が多い.
可能な限り滑膜組織の腫脹(滑膜増殖,滑液貯留)を特異的に捉えることが診断の精度を上げる.
触診により滑膜組織とそれ以外の腫脹を鑑別するためには,
1)各関節における滑膜組織(関節滑膜,腱鞘滑膜,滑液包)の解剖学的位置を知っていることが最も重要.
2)想定される滑膜組織の位置に2方向以上から挟み込むように圧力を加え,内部の弾力性,流動性を感じるようにする.
3)特に腱鞘滑膜の評価においては,当該関節を他動的に屈曲伸展し,滑膜組織の挙 動を他方の手で触れる.

スワンネック変形
関節可動域評価
関節は様々な原因で可動域が制限される.
関節症状で,早期に認められる可動域制限は,疼痛および関節腫脹による場合が多く,炎症性病態を示唆する兆候である.
より時間の経過した関節における可動 域制限の解釈には注意が必要.
RAに典型的な関節変形に可動域制限を伴う場合は RAを強く疑う根拠となるが,亜脱臼が多発し可動域制限が乏しいムチランス変形はRAに特異的.
進行した変形性関節症では可動域制限を伴う関節変形を来たす.
加齢,廃用などによる筋腱・靭帯・関節包の拘縮は関節の可動域制限を来たし,また強皮症による著しい皮膚硬化も関節の可動域制限を来たす.
検査所見
マトリックスメタロプロテイナーゼ-3 matrix metalloproteinase-3;MMP-3
MMP-3 は主に滑膜表層細胞で産生され,軟骨構成成分のプロテオグリカンやフィブロネクチン,Ⅳ型コラーゲンなどをその基質としてを分解する酵素
血清MMP-3 の高値は増殖性滑膜炎を意味する.
1)RAにおいては,滑膜細胞の増殖が早期からみられ,滑膜細胞でのMMP-3の産生が関節破壊に関与する可能性がある.
→RA滑膜組織内のMMP-3が増加すると,同時に血清中のMMP-3濃度も上昇する.
2)既存のRA検査(ESR,CRP,RF,IgG-RF)との相関はないことから,MMP-3はこれらの検査とは独立したものと考えられる.
3)RA以外にSLEや糸球体腎炎などでも上昇することがあり,この検査で陽性であればRAと診断できるような特異性が高い検査ではない.
4)健常者,変形性関節症では陽性になることはほとんどない.
血清MMP-3は,早期RA診断の一助になることと,関節破壊の指標としてRAの予後推定に役立つ可能性がある.
リウマトイド因子 rheumatoid factor;RF
近年,RF・抗CCP抗体のRA診断における有用性が広く認識され,健診・人間ドックを含む様々な状況で,これらの検査が施行される頻度が増加した.
低頻度ではあるが,RAの関節症状よりも関節外臓器病変が前面に出る場合がある.
例えば,間質性肺病変の基礎疾患検索で, 関節症状は乏しいがRFは陽性という状況が生じうる.
RAの確定診断は,基本的には関節病変が 存在して初めて議論されるべきであるが,前RA 病態とその他の疾患の鑑別のためには,RA以外にこれらの血清所見を来たす疾患を知っている必要がある.
RA診断におけるRF陽性の特異性の低さはよく知られており,特にガンマグロブリン産生が亢進する多くの病態で,しばしばRFが陽性となる.
→RA以外でしばしばRF陽性となる疾患・病態とし て,自己免疫性疾患・自己炎症性疾患(Sjögren症候群,血管炎症候群,Castleman病,IgG4関連疾患など),甲状腺疾患,肝疾患,加齢などが挙げられる.
抗CCP抗体
CCP:cyclic citrullinated peptide 抗環状シトルリン化ペプチド
RA診断における感度80%程度,特異性89~98%とともに高い.
1)抗CCP抗体が強陽性の 場合は,関節病変が典型的でなくとも前RA病態 を考慮する必要がある.
2)発症2年未満のRAでも,70%程度の陽性率がある.
3)抗CCP抗体陽性例は陰性例より骨破壊が進みやすい.
4)他疾患の陽性率はSLE 14%,MCTD 15%,強皮症17%,シェーグレン症候群14%,多発筋炎/皮膚筋炎27%,血管炎18%とう報告がある.
5)結核やHIV(human immunodeficiency virus)などの感染症による偽陽性の可能性も,稀ではあるが念頭に置く必要 がある.
画像診断
レントゲン
骨びらんや反応性骨変化(骨棘など)を検出する.
→今まで(検査時点まで)のダメージの総和
診断,炎症と損傷の検出,アウトカムの予後予測,治療反応性の予後予測,疾患進行のモニタリングに有用.
骨びらんと関節裂隙狭小化をスコアリングする.
トータルシャープスコア
・両側の手指関節と足趾関節の骨びらんと関節裂隙狭小化の総和で抗リウマチ薬のアウトカム評価に大きく貢献する.
・最も代表的だが,治療後でスコアが改善することは少ない.
CT
骨びらんや反応性骨変化(骨棘など)を検出する.
→今まで(検査時点まで)のダメージの総和
MRI
今まで(検査時点まで)のダメージの総和に加え,滑膜・腱鞘・付着部・骨内部の炎症を検出し,進行中の関節障害も表す.
身体診察における関節炎よりも高感度に関節病変を検出でき,関節滑膜炎,関節周囲の炎症(腱鞘滑膜炎や腱付着部炎など),骨びらん,骨髄浮腫を検出する.

エコーやMRIで検出される骨びらんは治療後の変化に乏しいが,滑膜炎や骨髄浮腫などの炎症性変化は,抗リウマチ治療に反応して,そのスコアは改善することが多い.
エコー
今まで(検査時点まで)のダメージの総和に加え,滑膜・腱鞘・付着部・骨内部の炎症を検出し,進行中の関節障害も表す.
身体診察における関節炎よりも高感度に関節病変を検出でき,関節滑膜炎・関節周囲の炎症(腱鞘滑膜炎や腱付着部炎など),骨びらんを検出する.
鑑別診断
関節症状を来たす疾患 RAの関節症状は必ずしも疼痛だけではなく, 腫脹,こわばり,可動域制限,変形など多彩な 関節症状が生じ得る.よって,これらの関節症 状を来たす疾患はRAの鑑別疾患となり,様々な 疾患が挙げられる

発症様式および罹患関節による関節炎の鑑別
