resistance to thyroid hormone;RTH
甲状腺ホルモン受容体(thyroid hormone receptor;TR)の機能異常により,甲状腺ホルモンへの反応性が低下する疾患.
甲状腺ホルモンが高値となるため,Basedow病と誤診されやすい.
なすび専用のまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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疫学
常染色体優性遺伝による家族内発生を認め,頻度は4万人に1人程度と稀.
原因
甲状腺ホルモンに対する反応性が低下する原因として,TRβ遺伝子変異によってリガンドであるT3との結合性や転写共役因子との結合や乖離に障害が起こることが挙げられる.
病態
不適切TSH分泌症候群を呈し,組織での反応性低下に対して甲状腺ホルモン高値となることで代償するため,甲状腺腫以外の症状に乏しく,治療を必要としない場合が多い.
不適切TSH分泌症候群 syndrome of inappropriate secrestion of TSH;SITSH
血中甲状腺ホルモン濃度高値にもかかわらずTSHが抑制されず,不適切にTSHが分泌されている状態.
甲状腺中毒症状
RTHの多くがTRβの機能異常であり,TRαは正常であるため,TRαが優位に発現している一部の組織では甲状腺ホルモン濃度上昇による甲状腺中毒症状を呈する.
TRにはα・βの2つのアイソフォームが存在し,組織によってそれぞれの発現量が異なるために,症例によって多彩な症状を呈する.
TRβが優位に存在する視床下部や下垂体では甲状腺ホルモンに対する反応性が低下するため,その代償としてTSH分泌が促進され,甲状腺ホルモン濃度が上昇する.
TRαは骨格筋と心筋で有意に発現しているため甲状腺に対する応答は保たれており,甲状腺ホルモン濃度上昇によって中毒症状を認め,頻脈や心房細動が持続する.
診断
SITSHの所見があるもののうち,約80%は「見かけ上のSITSH」であったとも報告されており,期間を空けての再検査や異なる検査キットでの確認が必要.
「真のSITSH」であった場合に,TSHの他にTSH産生腫瘍(TSHoma)がある.
→頭部MRI検査とTRβ遺伝子解析(まずは家族歴の確認)が必要.
頭部MRI検査にて1cm以上の腺腫(macroadenoma)を認める場合→TSHomaとしての検査を優先
上記以外の症例→microadenomaの存在の有無を問わずTRβ遺伝子解析の適応
・TSHomaのうち,約18%が1cm未満のmicroadenomaと報告されている.
RTH家系の約15%で,TRβ遺伝子変異を伴わない.
→遺伝子検査でTRβ変異を認めていなくても,否定することはできない.
治療
治療を必要としない場合が多いが,頻脈や心房細動を生じる場合にはβ遮断薬などによる対症療法が有効であることが多い.
抗甲状腺薬は推奨されない.
・TSH分泌が促進され,甲状腺腫増大や下垂体のTSH産生細胞の過形成を招く可能性がある.
・抗甲状腺薬自体による肝障害・無顆粒球症などの重篤な副作用のリスク.