腎血管性高血圧 renevascular hypertension;RVHT

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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片側あるいは両側の腎動脈主幹部,もしくはその分枝の狭窄性病変・閉塞により,腎血流が低下することによって,腎の傍糸球体細胞からレニンが多量に分泌され,副腎からアルドステロンが過剰分泌される高血圧性疾患

 腎灌流圧の低下に基づくレニン-アンジオテンシン(RA)系の亢進が高血圧症の病態に関与している.
 必ずしもレニンの上昇をみない症例も多数存在し,高血圧の発症,維持,機構には種々の要因が複雑に関与しているものと考えられる.

 外科的治療により高血圧の完治が期待できる二次性高血圧症の 1 つであり,腎機能の維持改善も期待される.

疫学

1)全高血圧症の約1%程度といわれている.
2)重症あるいは治療抵抗性高血圧症における頻度は 10~45%であるが,軽症から中等症まででは 1%以下である.
3)一側性の腎動脈狭窄は 70~80%,両側性は 20~30%に存在する.
4)欧米での検討では,末期腎不全の基礎疾患の10%前後を占めている.

病態

腎動脈狭窄に伴い腎灌流圧の低下によるレニン分泌が亢進した結果,体液の水・Na が貯留し血圧が上昇する.

一側性腎動脈狭窄
非狭窄側では血圧上昇に伴う腎血流の増加によりレニン分泌は抑制され,水・Na は排泄増加を示すため,水・Na の貯留は認められない.
・非狭窄腎に対する高血圧の長期間の持続とアンジオテンシンⅡ の増加は腎硬化症ならびに動脈硬化を促進し,非狭窄腎の機能も低下させる.
・腎機能低下により体液量が増加することでレニン分泌は抑制される.

両側性や片腎の腎動脈狭窄
初期にはレニン分泌の亢進が認められるが,慢性期には体液貯留に伴いレニン分泌は抑制される.

1)高血圧が成立している時期には必ずしも血漿レニン活性(plasma renin activity; PRA)は高くない.
2)より進行した状況では,末梢血管抵抗の増大に加えて体液の水・Na の貯留も加わり,悪性高血圧を呈するようになる.

両側性狭窄もしばしばあり、虚血性腎症と呼ばれる進行性の腎不全をきたす.

原因

動脈硬化性腎動脈狭窄症 atherosclerotic renal artery stenosis;ARAS

1)~90%
2)中高年に好発
3)多くが起始部に好発するが,時に本幹遠位部にプラークを伴う狭窄病変を呈するものもある.
4)基礎疾患として,動脈硬化を促進する高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙などの比較的長期合併がある.
5)全身の動脈硬化性病変として冠動脈狭窄,頸動脈狭窄や下肢動脈狭窄などの腎外血管病変の合併が高率に認められる.

線維筋性異形成 fibromuscular dysplasia;FMD

1)~10%
2)若年女性に好発し,好発部位は本幹末梢であり,さらにより末梢分枝にも病変が多発することがある.
3)原因は不明.
4)動脈壁組織における肥厚部位の違いにより,中膜型(90%),内膜型(~10%),外膜型(~1%)に分類される.
5)血管撮影上,“数珠玉状(string of beads)”を示すものと,管状(tubular)もしくは局所の狭窄(focal,unifocal)を呈するものがある.
6)脳動脈,腹腔動脈,上腕動脈,冠動脈など腎外動脈にも血管病変の合併がある.

高安動脈炎 Takayasu’s arteritis

1)数%
2)若い女性に好発.
3)大動脈とその主要分枝,肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞または拡張病変をきたす原因不明の非特異的炎症疾患.
4)発熱,倦怠感などの非特異的全身症状と狭窄ないし閉塞をきたした動脈の支配臓器に特有の虚血障害,拡張病変による動脈瘤がその病態の中心をなす.

その他

先天性奇形,大動脈解離,腎外からの腎動脈圧迫,血栓・塞栓など

症候

身体診察

上腹部血管雑音,血圧の左右差,血圧の上肢・下肢差をみる.

検査所見

尿蛋白陽性
赤沈亢進

低K血症
腎長径の左右差.

PRA 高値,血漿アルドステロン濃度(PAC)の高値
・本症においてPRA上昇を示すものは50~80%であり,本態性高血圧でも 20%に上昇を認める.

診断

スクリーニング

1)30歳以下で発症した高血圧症,もしくは55歳以上で発症した重症高血圧症
2)急速に悪化した,治療抵抗性,もしくは悪性高血圧症
3)高血圧の病歴が短い、あるいは最近増悪
4)ACE阻害薬またはARB開始後に急速な腎機能悪化
5)原因が明らかではない腎臓サイズの萎縮もしくは腎臓サイズの左右差
6)原因不明の急速に発症した肺水腫
7)原因不明の腎不全(透析療法の開始を含む)
8)多枝冠動脈疾患
9)原因不明のうっ血性心不全
10)再発性の狭心症
11)末梢動脈疾患の合併
12)腹部血管雑音(50%)

腎動脈ドップラーエコー

腎動脈血流を計測し,血流速度から動脈狭窄を判断する.

1)RASの検出に感度・特異度が高く,非侵襲的で廉価.
感度84~98%,特異度62~99%
2)腎内血流の評価(血流量,加速時間AcT,resistive index:RI)で血行動態や血管抵抗を評価できる.
3)測定値が術者の手技に依存すること,ドプラエコーの特性から末梢病変や多枝病変の評価が難しく,血管の蛇行・患者の肥満の程度や腸管ガスが測定に影響するなどの問題点がある.

狭窄後の収縮期最高流速(PSV)が180~200cm/秒以上,または腎動脈PSV/大動脈PSV比(RAR)が3.5以上のとき,血行動態的に有意な狭窄があると判定する.

・PSV 180cm/秒以上を指標とした際の腎動脈狭窄症(狭窄度60%以上)診断の感度は100%,特異度は81%
・RAR 3.5以上を指標とした際の感度は79%,特異度は93%
・PSV 180cm/秒以上かつRAR 3.5以上を指標とした際の感度は79%,特異度は97%と報告されている.

血行動態的に有意な狭窄とは,以下の場合を指す
1)形態的に狭窄率が50~70%で,かつ収縮期圧較差が20mmHg以上(あるいは平均圧較差が10mmHg以上)
2)形態的に狭窄率が70%以上

腎サイズや腎内動脈血流波形パターン(RI)も腎障害の指標となる.

造影MRI,MRアンギオグラフィー(MRA)

腎動脈エコーの実施が困難な場合

1)腎動脈主幹部狭窄の検出には優れるが,分枝部以降の狭窄の検出には限界がある.
2)感度/特異度ともに高く有用.
3)副腎病変の有無の検索や評価もでき,PTRAの適応判断にも有用.
4)血管壁の肥厚を含めて活動性,比較的早期の高安動脈炎の検出にも有用.
5)ガドリニウム造影剤は腎機能低下例(eGFR<30)には禁忌
6)造影剤を用いない非造影MRAは,造影MRAとほぼ同等の精度とする報告があるが,検査時間を要し,使用装置や検査担当者の技量に依存する.
7)金属を有する場合は施行できない(ステント留置後の評価はできない)

CT血管造影 CTA

1)エコーやMRAと比較すると,感度・特異度ともに優れているといわれる.
2)既に腎機能が低下している症例が多いので.造影検査は避ける.
3)CTAの空間・時間分解能はMRAや動脈造影よりも優れており,鮮明で高品質な画像が得られる.
4)石灰化病変では狭窄を過大評価することがある.

選択的腎動脈造影

1)腎動脈超音波,MRA,CTAでも狭窄が明らかでない場合,PTRAの施行を検討する場合に考慮

レノグラム・腎シンチグラム

99mTc-diethylenetriaminepentaacetic acid(99mTc-DTPA)
99mTc-mercaptoacetyltriglycine(99mTc-MAG3)

1)DTPAは主に糸球体濾過,MAG3は主に尿細管分泌を反映し,狭窄側や健側の左右の分腎機能を評価できる利点がある.
2)カプトプリル負荷レノグラムには分腎機能,腎血流の左右差を評価できる利点がある.
3)スクリーニングとしては適しておらず,補助的に使用することが望ましい.

治療

治療にはバルーンカテーテルを用いた経皮経管的腎血管形成術(percutaneous transluminal renal angioplasty;PTRA),あるいは外科手術による血行再建と薬物療法とがある.

血行再建

percutaneous transluminal renal angioplasty;PTRA

侵襲が少なく,再狭窄を起こしても繰り返して行うことができる.
最近では例外を除いて第一に選択される治療法となっている.

血管拡張+ステント術を検討すべき症例
 治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧薬投与でも無効)
 増悪する悪性高血圧
 繰り返すうっ血性心不全
 急性肺水腫
 ARB,ACE阻害薬で腎機能が悪化する症例
 進行する腎機能障害
 両側の腎血管狭窄
 単腎の腎血管狭窄
 線維筋性異形成

線維筋性異形成では,手技的に困難でない限り,PTRAが優先される.

1)PTRAの初期成功率は高く,粥状動脈硬化と高い降圧効果や,降圧薬の減量や中止が期待できる.
2)降圧効果は,若年者や高血圧罹患歴が短い者で大きいことがメタ解析で示されている.
3)基本的にステントを併用しないことから,術後の再狭窄は少なくない.

線維筋性異形成性RVHTは約85%の高い治癒率とされているが,粥状動脈硬化性RVHTは内服単独療法と比較して,死亡率に差がなかった.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1310753

粥状動脈硬化性でのPTRA併用は,ステントの併用なしでの初期有効率はやや低く,再狭窄率も高い(ステントを併用することで再狭窄率の低下は期待できる.

血管炎による血管狭窄病変では,血管炎が活動期である時期に手術療法やカテーテル治療を施行しても,血管からの出血・解離・穿孔や血管吻合部の不全など患者の生命予後にも関わる重篤な周術期・術後の合併症の頻度が高いため,免疫抑制療法を十分に行った上で行う.

術後も血管炎の再燃や活動性病変のコントロールが不十分な場合は再狭窄や新規血管病変の出現・進行が患者の予後を大きく左右する.

大動脈・腎動脈バイパス形成術

腎動脈内膜摘除

薬物療法

腎血管性高血圧への効果的な薬物療法は確立されていないものの,これまでのPTRAの有効性を検証したRCTでの薬剤は,降圧薬・スタチン・アスピリンの組み合わせとなっており,これらに禁煙,糖尿病の血糖管理などを組み合わせることが効果的

RAS阻害薬

 急激な血圧低下や腎機能悪化の可能性があるため,少量から開始する.

 両側狭窄や単腎に対しては,用いない.

Ca拮抗薬

 RAS阻害薬で降圧不十分な場合に併用する.

×利尿薬

 循環血漿量低下によるレニン上昇,腎血流低下の可能性があることから使用しない.

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