腎機能評価

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

糸球体濾過量 glomerular filtration rate;GFR

単位時間あたりの全糸球体で濾過される血漿量.

糸球体濾過によってのみ排泄され,尿細管での分泌や再吸収などがない物質が,1分間に除去される血漿量(クリアランス)

GFRは,慢性腎臓病(CKD)の診断と重症度分類,薬剤投与量設定に必須の情報として,日常診療において広く使用されている.

腎臓は,1日におおよそ180L(血漿125mL/min)を濾過している.

腎機能は腎臓のサイズ,体表面積に比例し,正常なGFRは90mL/min/1.73m2以上.
・若年成人のGFRは約120~130.
・加齢とともに徐々に低下し,日本人の加齢によるGFR低下速度は0.36mL/min/1.73m2という報告がある(個人差が大きい).

推算式による算出法

クレアチニン creatinine;Cr

なすび院長
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最も簡便に利用できる腎機能のマーカー

日本人の推算GFR算出式(CKD診療ガイド2012)

注:酵素法で測定されたCr値を用い,血清Cr値は小数点以下2桁表記を用いる
注:体表面積1.73㎡の標準的な体型(170cm,63kg)に補正した場合のGFR
75%の症例が実測GFR±30%の範囲に入る程度の正確さ

推算式は,血清Crが定常状態であることが前提条件!
急性腎障害のような血清Crが急性に変動する病態では使用できない

なすび院長
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腎排泄性薬剤投与時に場合は,体表面積補正を外す必要がある.
→eGFR(mL/min)=eGFR(mL/min/1.73㎡)×BSA/1.73

Cockcroft-Gault式(推定Ccr)

年齢,体重,血清Cr,性別の4つのパラメータから24時間の実測Ccrを推算する
*Ccrを推算するため,基本的にGFRより高値.

薬剤投与時の腎機能評価に用いられてきた.
日本人の場合は,0.789をかけるとGFRに近い結果が得られる.

クレアチニン

筋収縮に必要なクレアチニンから一定量が非酵素的に代謝され産生される最終代謝産物.
分子量113の小分子.
→クレアチニンは蛋白と結合せず,糸球体で自由に濾過され,再吸収されずに尿中で排泄されるため,糸球体濾過量の指標として用いられてきた.

ほとんどが筋で産生されるため、クレアチニンの産生量は筋肉量で比例する.
・同じ腎機能であっても血清Crには個人差がある.
・個人の日内変動は8%程度.
・性別,年齢,人種,栄養状態などの影響を受ける.
→女性や高齢者などの筋肉量が少ない患者では,血清Crは低めになる.
→長期の入院や臥床によっても,筋肉量は減少する.
・感染症,高熱,外傷などにより20~100%の尿中排泄の増加がみられる.
・肉類の摂取により腸管からのCr吸収が増加し,血中濃度および尿中排泄が増加することも知られている.
・慢性的に蛋白摂取量が少ない場合は,筋肉が減少し,血清Crは低下する.
・体液の希釈でも血清Crは変動する.
・シメチジン,ST合剤(トリメトプリム),抗HIV薬(ドルテグラビビル,コビシスタット)は尿細管でのCr分泌を抑制するため,血清Crが上昇する.

近位尿細管の有機アニオン輸送体(OAT2),有機カチオン輸送体(OCT2,OCT3)を介して分泌される.

初期or軽度の腎機能低下時(GFRが60前後)では,血清Crは上昇しないか上昇してもわずかであるため,Crだけでは腎機能低下を見落としてしまう可能性がある.

測定法

HPLC(high-performance liquid chromatography)法 国内
酵素法.
真の血清クレアチニン値に近い値が得られる反面,クレアチニンクリアランスの値は真のGFRとの乖離が大きくなる.

IDMS(同位体希釈質量分析法) 国際的

シスタチンC cystatin C;Cys-C

なすび院長
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クレアチニン値はGFR 30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し,シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇しるため,腎機能障害の早期診断にたいへん有用.

保険適応になっているが,3ヵ月に1回の測定が限度

シスタチンCは分子量13250Da、アミノ酸120残基よりなる低分子の一本鎖のポリペプチドであり,システインプロテアーゼインヒビターの1つ.

全身の有核細胞から常に一定の速度で産生・分泌され,低分子で,他の血中蛋白質とは結合せず,また複合体も形成しない性質をもつ.
・年齢,筋肉量,食事,運動などによる影響をほとんど受けない.
・糸球体基底膜を自由に通過し,近位尿細管で99%以上再吸収され,異化される.
→Cys-Cの血中濃度は一定.0.8(0.5~1.0)mg/L.
日内変動は6.8%程度とされる.

性別,身長,徐脂肪体重,血清アルブミン値,肥満,甲状腺機能異常,ステロイド・シクロスポリンなどの薬剤の使用,CRP高値の状況では,血清Cys-Cに影響が出る可能性が指摘されている.

高度腎機能低下例では,Cys-Cは腎外での代謝・排泄により4~5mg/dLで頭打ちとなるため,注意.
→血清Cys-Cが3mg/dL以上では,用いない方がベター

糖尿病症例では8.5%高値となるとの報告もある.

実測による算出法

クリアランス  clearance

尿中に排泄される特定の物質について,1分間に何mLの血漿が完全に浄化されるかを示す.
Cx=Ux×V÷Pxで定義される.
→物質Xのクリアランスの量の血漿は,その物質Xを尿中へ排泄される量と同量含んでいる.

イヌリンクリアランス Cin

イヌリンは植物により産生される多糖類で, ヒトに投与すると, 糸球体で濾過され原細管では再吸収も分泌もされずに,そのまま尿中へ排泄される.

なすび院長
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GFR測定に理想的な物質であり,国際的にもGFR測定のゴールドスタンダードとなっている.

イヌリンクリアランスは,GFRを正確に測定する正確な方法であるが,外因性の物質を投与しなければならない煩雑さがあるため,内因性の物質であるクレアチニンにクリアランス(Ccr)が代用される.

イヌリード注®
日本では2006年に認可され,CinによるGFR実測が可能となった.

開始時に500mLの飲水,完全排尿(膀胱留置カテーテルが必要)や頻回の採血が必要.
イヌリードは,調整に約100℃での溶解が必要.
→非常に手間がかかる.

イヌリンクリアランスは,クリアランス試験は試験の初めに500mLの水を飲み、さらに点滴静脈注射量300mLが加わるので、心不全やむくみのある患者には慎重に行う.

イヌリンは人の胎盤を通過し、胎児に入るとの報告があり、妊婦には必要性の高い時だけ施行する.
授乳婦もクリアランス実施後数日間は授乳の中止が勧められる.

なすび院長
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日常診療では,腎移植ドナーに対する正確な腎機能評価が必要なときなどに限られる.

標準法

1%イヌリンを含む生理食塩液を正確に持続静注し,30分間隔で畜尿と中間点採血を3回行い,3回のクリアランスの平均値を求める.

煩雑で患者負担がより大きいため,簡易法が推奨.

簡易法

イヌリンの持続静注下で1時間程度の畜尿を行い,畜尿前後での採血2回でクリアランスを求める.

クレアチニンクリアランス Ccr

クレアチニンは尿細管から一部が分泌されるため,クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量を過大評価することが多い.
→イヌリンクリアランスより約30%高値=CcrはGFRを30%ほど過大評価
*腎機能の悪化に伴い,Crの尿細管からの分泌量が増えるため,腎機能低下例ではGFRをより過大に評価する傾向.

日本人におけるCinとCcrとの対比測定の結果から,GFRへの補正に×0.715の係数補正を行う.

一般成人の尿中Cr排泄量は,筋肉量によって差があるが,男性では20~25mg/kg(日本人平均値20.2mg/kg/day),女性では15~20mg/kg(日本人平均値16.7mg/kg/day)が目安とされている.
検査時には尿中排泄量をチェックし,畜尿の過不足を評価することが重要!
・畜尿不備の場合もあるため,検査を複数回行うことで,Cr排泄量が安定しているか確認することも有用.

2時間法と24時間法があるが,24時間法は飲水負荷が必要なく,同時に尿蛋白量やNa排泄量を測定できるため,臨床的に広く使われている.

排泄率 fractional excriton;FE

・糸球体で濾過されたものが尿中に排泄される割合.
→その物質のクリアランスと糸球体濾過量の比に等しい.

尿細管機能

病理学的な尿細管間質の障害は腎予後を的確に表す予測因子.

尿細管はそのセグメントにより機能が多彩であり、単独のマーカーで尿細管機能全般を的確に表すのは難しい.

β2-MG(β2 microglobulin)

分子量11.8kDaの低分子蛋白であり、糸球体を容易に通過し、近位尿細管で再吸収される。
⇒尿細管障害時には再吸収が阻害され、尿中の排泄量が増加する。
尿のpHが6.0以下の酸性尿ではβ2-MGは不安定で抗原性を失うため、保存の際にはNaOHを加え、pHを6.5以上にしてから暗所保存する。

NAG(N-acetyl-β-D-glucosaminidase)

尿細管上皮細胞のライソゾーム由来の酵素.

これらの酵素が尿中に逸脱することにより尿細管上皮細胞の障害を推測する.

尿中NAG活性は室温で徐々に低下し、数日で失活するため、できるだけ採取後早く早期に測定する.

性差(男性>女性),日差(早朝>日中)が知られており,随時尿ではその判定に注意.

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