難治性喘息 refractory asthma,重症喘息 severe asthma

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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コントロールに高用量吸入ステロイド薬および長時間作用性β2刺激薬,加えてロイコトリエン受容体拮抗薬,テオフィリン徐放製剤,長時間作用性抗コリン薬,経口ステロイド薬,IgEやIL-5を標的とした生物学的製剤の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不能な喘息

吸入療法だけでは症状や発作のリスクをコントロールできない喘息も全体の5~10%存在している.

難治性喘息は,一般に重症喘息と呼ばれるが,重症喘息には難治性喘息患者と併存症への反応が不完全な患者が含まれる.

病態

若年発症アレルギー型

乳幼児期から小児期に発症し,アレルゲンに対するⅠ型アレルギー応答を伴う,食物抗原を含む多種のアレルゲンに感作され,アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど他のアレルギー疾患を合併しているタイプ(multiple allergies and severe asthma型)が重症化しやすく,そのまま成人の重症喘息に移行することが多い.

多種アレルゲン感作を規定している因子として,乳児期の皮膚バリア機能脆弱性とそれに伴うアレルゲン経皮感作が注目されている.

成人発症肥満関連型

女性に多く,腹部脂肪による横隔膜挙上と肺内気道の狭小化,腸内細菌叢の変化,ビタミンD不足などさまざまな要素の関与が推定されている.

成人発症肥満関連型

診断の見直し

 喘息の初期診断は,非専門医や開業医などでなされる場合が多く,また症状出現時に来院した場合は,呼吸機能検査を十分に行わずに治療が開始されるケースが多いため,治療に反応しない喘息においては,常に診断の見直しを行うと共に,喘息と類似する症状を伴う疾患を除外する必要がある.

【喘息と鑑別すべき他疾患】
■上気道疾患:咽頭炎,喉頭蓋炎,vocal cord dysfunction(VCD)
■中枢気道疾患:気管内腫瘍,気道異物,気管軟化症,気管支結核,サルコイドーシス
■気管支~肺胞領域の疾患:COPD,びまん性汎細気管支炎,肺線維症,過敏性肺臓炎
■循環器疾患:うっ血性心不全,肺血栓塞栓症
■薬剤:アンジオテンシン変換酵素阻害薬などによる咳
■アレルギー性呼吸器疾患:アレルギー性気管支肺真菌症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,好酸球性肺炎
■その他の原因:自然気胸,迷走神経刺激症状,過換気症候群,心因性咳嗽

難治化に関与する併存症および寄与因子

慢性副鼻腔炎

喘息の重症化に関与する最も重要な併存症.

1)好酸球性重症喘息患者においては,好酸球性副鼻腔炎を合併する頻度が高い.
・本邦での好酸球性副鼻腔炎の喘息合併率は41.6%と非常に高率
2)副鼻腔炎の病態は,喘息の気道炎症の病態と深く結びついており,”one airway, one disease”と呼ばれ,両者は切り離せない関係性にある.

 鼻茸を合併するもの,合併しないものに分けられる.
鼻茸の合併率は,喘息が重症になるにつれて上昇する.
・重症喘息の1つのタイプであるアスピリン喘息患者では,36~96%に鼻茸が合併することが報告されている.

肥満

喘息発症のリスクであると共に増悪にも関係しており,治療抵抗性の寄与因子となり,難治化することが多い.
・特に中高年の女性の肥満は,喘息の重症化と極めて関連性が高い.

体重減少により,喘息コントロール状態が改善することが知られており,肥満改善に対する指導も重要.

睡眠時無呼吸症候群

肥満と関連する病態として,睡眠呼吸障害も喘息の重症化として関係している.
・終夜睡眠ポリソムノグラフ検査による評価でぇあ,AHI≧15回/1hrの閉塞性睡眠時無呼吸の有病率は,重度の喘息患者の88%,中等度の喘息患者の58%に及ぶことが報告されている.

肥満と関係する場合が多いが,肥満のない症例も少なからずみられ,日中に眠気を感じない症例も多い.

服薬アドヒアランスおよび吸入手技の見直し

まず最初に行うべし!

1)標準的治療で喘息のコントロールが不十分な場合の80%は,服薬アドヒアランスあるいは吸入手技に問題があるとされる.
・吸入ステロイド薬は,吸入操作の習熟が必要なこと,使用後にうがいを行う必要があることなどから,内服薬に比べると習慣化されにくい.
・症状が改善すると,使用を中断してしまう傾向にある.
・ドライパウダー製剤の場合には,薬剤のエアロゾル化30L/分以上の吸入流量が必要であり,特に低肺機能の高齢者においては,治療に対するアドヒアランスが良好であっても,十分な薬剤が吸入されていないケースがあり,注意が必要.

2)難治の場合は,喘息患者の背景(環境や行動)に立ち返り,喫煙習慣,ペットの飼育,室内じん,大気汚染,ストレス,薬剤のコンプライアンスなどに注意する必要がある.

3)鼻炎や副鼻腔炎,胃食道逆流,高血圧/心疾患患者,気道感染,COPD/肺気腫,精神疾患を有する者の治療も工夫を要するが,これらの疾患の治療も併せて行う.

治療

抗IgE抗体療法

オマリズマブ ゾレア®

・2009年1月に製造承認された,本邦初の抗体治療薬.
・現在まで多くの喘息患者への投与がなされ,エビデンスも構築されてきている.

IgE抗体のCε 3 ドメインがマスト細胞上にある高親和性受容体(Fcε RI)に結合し,そこに抗原が架橋結合して炎症性メディエーターが放出されるが,抗IgE抗体であるオマリズマブは遊離IgE抗体のCε 3 に結合し,IgE抗体とFcε RIの結合を阻害する.
・新しい仮設として,抗ウイルス自然免疫の賦活化作用が注目されている.

喘息増悪抑制効果があるが,症状やQOL,呼吸機能改善効果は必ずしも高くない.

小児では,重症かつ複数のアレルギー併存症を有するが,呼吸機能が比較的保たれているタイプが奏功しやすい.

成人では,アレルゲン感作の程度よりも,呼気一酸化窒素濃度高値(19.5 ppb以上),末梢血好酸球増多(260/μl以上),血清ペリオスチン高値(50 ng/ml以上)の3 つが報告され,これらが高値の群は,オマリズマブにより有意に喘息増悪頻度を抑制する.

オマリズマブを投与開始し,効果があった場合,いつまで投与を続けるべきか悩ましい.
・明確な答えは未だないが,5 年間投与後に中止群と継続群に分け,その後,1 年間の経過をみたところ,喘息非増悪率は,投与継続群で67%,中止群で48%であった.
→長期投与後に一旦休薬することが可能な症例もあることが示された.

FeNoと末梢血好酸球数は,2型炎症の指標となる.

抗IL-5抗体療法

メポリズマブ mepolizumab

ヌーカラ® 2016年3月に承認

 血中及び組織中好酸球を調節するサイトカインであるIL-5に高い特異性及び親和性で結合するヒト化モノクローナル抗体.
→好酸球の生存および増殖を阻害する

 好酸球性重症喘息にメポリズマブを投与した喘息患者においては,プラセボ群と比較し,増悪抑制効果や1秒量の改善,QOLの改善,さらに経口ステロイド減量効果を示した.

 喀痰好酸球比率3%以上または呼気NO 50 ppb以上または血中好酸球数300個/μl以上の好酸球性喘息患者を対象に,メポリズマブによる喘息増悪抑制効果を検討したところ,喘息増悪リスクは半減したことから,重症の好酸球性喘息患者に対する効果が証明された.

ステップ4の治療として,好酸球数150/μL以上,または過去1年で300/μL以上を認めた患者に対して推奨

ベンラリズマブ benralizumab

IL-5の受容体であるIL-5Rα受容体に対する阻害抗体
→好酸球の生存延長や増殖,活性化を抑制する

 メポリズマブと異なり,ADCC活性を有しており,抗体が細胞表面上のIL-5Rα受容体に結合するとNK細胞や単球を誘導し,IL-5Rα受容体発現細胞を傷害することができる.
1)骨髄や末梢組織に存在している好酸球の前駆細胞に対しても効果を発揮する.
2)血中好酸球の抑制効果がメポリズマブよりも高い.
3)3回目の投与以降は8週間隔で投与可能

抗IL-4Rα抗体療法

デュピルマブ dupilumab

Th2サイトカインであるIL-4の受容体であるIL-4Rα受容体に対する遮断抗体

 IL-4受容体は2種類存在し,IL-4受容体α鎖(IL-4Rα)と共通γ鎖からなるタイプ1受容体と,IL-4RαとIL-13受容体α1からなるタイプ2受容体(IL-13の受容体でもある)がある.
→デュピルマブはIL-4もIL-13のシグナルを抑制できる.
→タイプ2重症喘息への有効性が臨床で示されている.

■IL-4
 免疫系をTh2型炎症に誘導したり,IgE産生を誘導するなど,アレルギー性炎症において上位に位置するサイトカイン.

■IL-13
 Th2細胞やILC2細胞から産生され,気道リモデリングや粘液産生など喘息の基本となる病態に関わっている.

抗アセチルコリン受容体拮抗薬

チオトロピウム

アセチルコリン受容体の中でもM3受容体に対する拮抗作用が特に強い.

気管支熱形成術 bronchial thermoplasty;BT

 温度が65℃になると気管支平滑筋は傷害されるが,他の組織には傷害が生じないことを利用し,喘息の肥厚した気管支喘息筋を減少させ,平滑筋収縮力を低下させることで,喘息症状を改善させる.

 方法としては,経気管支鏡的に挿入し,内径3~10mmの中枢気管支を対象に,プローブから高周波エネルギーを気道壁に通電加熱することで,気管支平滑筋量を減少させる.

 臨床試験においては,重症喘息の喘息症状を改善し,増悪を抑制する効果が報告されている.

 現時点でレスポンダーを同定するバイオマーカーがないこと,長期の有効性や安全性に関しては不明であり,肺炎や予想外の合併症が発生する可能性があることから,生物学的製剤の選択が優先されるべきとされている.

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