ラトケ嚢胞 Rathke’s cleft cyst;RCC

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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・ヒトの胎生期に下垂体前葉が形成される過程においてトルコ鞍内に遺残した嚢胞から生じるとされる非腫瘍性嚢胞性病変である.
 1839年ラトケ嚢を記載したドイツの解剖学者の名に由来.
・内溶液は粘液・泥状~キサントクロミック様と多彩.
・無症候性のことが多いが,嚢胞の増大,壁の炎症/出血などにより頭痛,視力視野障害,下垂体機能障害などを来す.
・壁の慢性炎症により上皮の重層化(扁平上皮化生)や二次性下垂体炎を合併することがある.

疫学

・剖検では高頻度にみられる(~30%).
・大多数は無症候性で,良好な長期予後.増大,炎症,出血などにより,ごく一部が症候化.
・症候性のラトケ嚢胞は全年齢層(特に20~ 50歳)にみられ,女性に多い(1:2).

病理

■単房性嚢胞
単(重)層の繊毛を有する立方・円柱上皮細胞,Goblet細胞と基底細胞からなり基底膜をもつ.
■壁の部分的な破綻・出血など
1)上皮の重層化・扁平上皮化生
2)周囲に慢性炎症(異物性肉芽腫性炎)・黄色肉芽腫→二次性下垂体炎(不可逆的な前葉・後葉機能障害)

症候

症状

・ラトケ嚢胞の症状も多彩だが一般に頭痛(球後・前頭部痛,32.1~81%),視力視野障害(14.3~55.8%),前葉機能障害(30~69.4%),高プロラクチン血症(25%),尿崩症(2~21%)などが多く,ほかにも複視や無菌性髄膜炎などを呈する.
・内分泌障害は腺腫と異なり,小さなラトケ嚢胞でも生じることのあるのが特徴(二次性下垂体炎) とされる.
・頭痛,特に発作性の前頭部痛は間欠的炎症反応を反映する所見とされ,時には卒中様の激しい頭痛で発症するが,術後は軽快することが多い.
 その理由として,嚢胞内容液が髄腔内に漏出し,無菌性髄膜炎を生じるためとされている.
・最近,ラトケ嚢胞内に出血を呈し,頭痛や視力障碍を呈するラトケ嚢胞卒中 Rathke cleft cyst apoplexyという病態が報告されている(下垂体卒中との鑑別が難しい).

画像診断

・ラトケ嚢胞の内溶液は主にタンパク濃度を反映しさまざまなMRI信号強度を示し,T1強調像で高信号なほど内容液の粘調度が高いことが多い.
画像(他サイトへ)
・実質成分を欠くこと,壁は薄く造影されないこと,嚢胞内にwaxy nodule(intracystic nodule)と呼ばれる球状塊が存在することなどが特徴だが,慢性炎症・重曹扁平化により壁の肥厚・造影などの非特異的な所見を呈すると頭蓋咽頭腫との鑑別が困難になる.
・発生部位は前葉・後葉の聞が多いが,さまざまで鞍上部にみられることもある.

治療

・多くを占める無症候例はwait and seeが原則である.
 多くの例で予後は良好(時には自然縮小も)だが,下垂体機能障害が潜行する例が稀にあり,注意が必要.
・症候例は外科治療の適応となる.
 初回は経蝶形骨洞的嚢胞開放術が原則.
 再発(再貯留)例には嚢胞切除術.
・視障害に比べ下垂体機能障害の術後改善率は低い.
 術後の再発率は報告により大きく異なる.
・一部の炎症病態に対してステロイド治療が有効な可能性があるが,今後の課題.

手術の適応

・視機能障害
・進行性の下垂体機能障害
・難治性頭痛
・明らかな増大傾向
・(鑑別困難例)

経過観察

・経過観察中に約1%/年が外科治療を要した.
■特に慎重なfollow upが必要なincidental RCC
・慢性炎症の潜行による下垂体機能障害のリスクが高い症例
→若年者,比較的大きな嚢胞,Cyst with T1-high intensity,反復する頭痛

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