急速進行性糸球体腎炎 rapidly progressive glomerulonephritis;RPGN

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なすび医学ノート

腎炎を示す尿所見を伴い数週から数ヶ月の経過で急速に腎不全が進行する症候群

1)腎炎を示す尿所見とは糸球体性血尿(多くは顕微鏡的血尿,時に肉眼的血尿もみられる),蛋白尿,赤血球円柱,顆粒円柱を指す.
2)糸球体腎炎の中で,最も重篤で放置すれば腎臓の予後のみならず,生命の予後も危なくなる.一部は肺病変を合併し,さらに重篤となる.

疫学

腎疾患のうちでRPGNは比較的稀な疾患であるが,日本での患者数は増加傾向にあり,2010年度の日本の新規受療者数は約1,600~1,800人と推定されている.

・発症頻度は一般には100万人に15人程度であるが,65歳以上ではその頻度は3倍になる.

予後

本疾患の予後は,約32.6%の患者が経過中に腎死に至り維持透析療法を施行,さらに維持透析例も含め26.9%の患者が個体死に陥る.
・死亡原因としては50.0%の患者が感染症によるもので,肺感染症を含む肺合併症による死亡が59.4%を占めている.

日本の2002~2007年の調査結果では,6ヶ月生命予後は86%にまで改善してきているが,死因の半数は感染症であることに変わりはない.
・6ヶ月腎予後も,1998 年以前の73%と比べて82%まで改善してきている.

分類

半月体形成性腎炎の病型分類は,腎生検の蛍光抗体法所見から,
①糸球体係蹄壁に免疫グロブリン(多くはIgG)の線状沈着を認める抗糸球体基底膜(GBM)抗体型
②糸球体係蹄壁に免疫グロブリンや免疫複合体の顆粒状の沈着を認める免疫複合体型
③糸球体に免疫グロブリンなどの沈着を認めないpauciimmune型
の3型に分類されてきた.

本邦のRPGNの頻度は,抗GBM抗体型(Goodpasture症候群を含めて)6.3%,一次性pauci-immune型(半月体形成性腎炎(pauci CrGN)や同様の腎組織を呈する顕微鏡的多発動脈炎(MPA)を含めて)約60%,免疫複合体型の多くは他の糸球体腎炎やSLE(ループス腎炎),膠原病に続発するものであり,原因不明の免疫複合体型RPGNはわずか3.4%である.
・欧米のようにWSによるものは非常に少ないのが特徴.

抗好中球細胞質抗体関連血管炎 ANCA-associated vasculitis;AAV

抗糸球体基底膜抗体腎炎 Anti-glomerular basement membrane antibody nephritis

症候

高齢者に不明熱,血尿,腎機能低下を認めた場合,必ず本疾患を疑う.

全身倦怠感,食欲不振,発熱,関節痛,風邪症状,さらに短期間の体重減少を認めることがある.

ANCA関連血管炎である顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)では,肺症状(咳嗽,血痰,呼吸困難感など),神経症状(手足のしびれ,筋力低下など),紫斑,消化管出血,強膜炎などを認めることがある.

尿所見・腎機能

ほぼ全症例で血尿を認め,肉眼的血尿を呈することもある.
蛋白尿の程度は軽度~ネフローゼ症候群までさまざま.

発症時すでに高度の腎機能障害に進行している症例も多く,乏尿・無尿,浮腫,高血圧を呈することもある.

診断

急速進行性糸球体腎炎早期発見のための診断指針

1)尿所見異常(主として血尿や蛋白尿,円柱尿)
2)eGFR<60 mL/分/1.73 m2
3)CRP 高値や赤沈促進
上記1)~3)を認める場合,「RPGN の疑い」として,腎専門病院への受診を勧める.
ただし,腎臓超音波検査が実施可能な施設では,腎皮質の萎縮がないことを確認する.

なお,急性感染症の合併,慢性腎炎に伴う緩徐な腎機能障害が疑われる場合には,1~2 週間以内に血清クレアチニンを再検し,eGFR を再計算する.

急速進行性糸球体腎炎症候群確定診断指針

1) 数週から数カ月の経過で急速に腎不全が進行する(病歴の聴取,過去の検診,その他の腎機能データを確認する).3 カ月以内に30%以上のeGFR の低下を目安とする.
2) 血尿(多くは顕微鏡的血尿,まれに肉眼的血尿),蛋白尿,円柱尿などの腎炎性尿所見を認める.
3) 過去の検査歴などがない場合や来院時無尿状態で尿所見が得られない場合は,臨床症候や腎臓超音波検査,CT などにより,腎のサイズ,腎皮質の厚さ,皮髄境界,尿路閉塞などのチェックにより,慢性腎不全との鑑別も含めて,総合的に判断する.

顕微鏡的多発性血管炎

腎病理

組織学的には,半月体性糸球体腎炎にほぼ対応する.

1)定義は,半月体が50%以上の糸球体に見られることであり,その他の所見はさまざま.
2)ボウマン嚢側の上皮細胞が2層以上に増殖した場合を半月体形成があると判断する.

厳しい糸球体毛細管炎による壊死性病変を呈するANCA関連血管炎に伴う腎炎では,基底膜がしばしば融解して断裂し,毛細管腔が断裂し,毛細管腔が破裂し,管外性病変を起こす.

急性期治療

副腎皮質ステロイド薬(corticosteroid;CS)単独治療

RPGNの回復が期待できるか,全身の血管炎症状が強いため積極的治療の適応があり,かつ免疫抑制薬の併用が好ましくない場合にCS単独治療が推奨される(推奨グレードC1).
・RPGNの多くは未治療では腎生存を期待できないのに対し,CSの投与により腎機能改善が得られることが以前より知られている.
・その後のANCA関連腎炎に対する非ランダム化比較試験(非RCT(randomized controlled trial)) において,CSとシクロホスファミド(cyclophosphamide:CY)併用がCS単独療法より腎予後がよいことが示され,CS+CY併用療法は海外での標準初期治療となっている.

経口vs.静注パルス療法

腎炎の進行が速く,早期の効果を得たい場合,あるいは出血などの重篤な全身合併症を伴う場合に,静注ステロイドパルス療法への経口CSの追加を考慮してもよい(推奨グレードC1).
・高用量のCS経口薬とステロイドパルス療法の効果を比較したRCTは存在しないが,静注パルスは経口と比べて短期間で強い免疫抑制効果および抗炎症効果が期待できる.
・70歳以上は経口のみとしているが,量は十分量投与する.

免疫抑制薬

ガイドラインでは,初期治療においてCSに加えての免疫抑制薬の併用療法は,推奨グレードBとして推奨している.

・ANCA関連血管炎に対してはCS+CY併用療法が海外での標準寛解導入療法となっている.
・感染症をはじめとした重篤な副作用の誘因となるCYに関して,日本では70歳以上の高齢者や透析を必要とする患者へのCYの積極的な使用は推奨していない.

経口vs.静注療法

ガイドラインでは,経口と静注で腎機能予後および生命予後に差を認めず,両治療法とも腎機能予後および生命予後を改善する,としている(推奨グレードB).

・4つのRCTを用いたメタ解析では,静注CY群と経口CY群との間で,腎機能および生命予後に差を認めていない.
・静注CY群では,経口CY群に比して,白血球減少症の頻度が少なかったが,再発率が高かった.

リツキシマブ

ガイドラインでは,副作用などにより既存治療が行えないか既存治療が効果不十分の場合,あるいは再発を繰り返すANCA陽性RPGNに対し,推奨している(推奨グレードB).

・ANCA関連血管炎の病態形成に自己抗体であるANCA産生が関与していることより,B細胞を標的とした治療が試みられ,最近の2つのRCT(重篤な腎炎合併患者を対象としたRITUXVAS試験と比較的軽症の新規または再発性の患者を対象としたRAVE試験)により,リツキシマブの有用性が証明された.
・寛解率,腎機能改善度,副作用発現率にCY治療群との有意差はなく,その後の追跡調査では再発率にも差は認めていない.
・初期治療としてのリツキシマブとCSの併用は,腎予後および生命予後を改善する可能性がある.
・日本に多い腎限局型のANCA関連RPGN(特にMPO-ANCA(myeloper-oxidase ANCA)型)の割合や有効性の比較については記載されておらず,また,感染症のリスク,長期の安全性,特に悪性腫瘍,白質脳症の発症リスクについては明らかでないため,これらを考慮しつつ慎重に判断する必要がある.
・海外のガイドラインでは,CYが使用できない場合には,リツキマシブとステロイドの併用が勧められているが,本邦のガイドラインでは並列に使用することも可能と勧められている.

血漿交換療法

ガイドラインでは,重篤な腎障害や肺胞出血などの合併例では,腎機能予後を改善する可能性があるため,血漿交換療法の併用が推奨されている(推奨グレードC1).

・発症早期のANCAの積極的除去による治療効果を期待して,特に重篤な腎障害や肺胞出血を合併した患者に対して行われてきた.
・最近のシステマテックレビューやメタ解析は,血漿交換療法が治療開始後の末期腎不全の進展リスクを減少させることを示している.

保険適応となっているのは,現時点で全身性エリテマトーデス,抗GBM抗体病のみ.

免疫グロブリン大量療法 intravenous gammaglobulin;IVIG

○ANCA型RPGNに対し感染症や難治性合併症の併存により高用量ステロイドと免疫抑制薬の併用療法による標準治療が実施困難な例に対する治療オプションの一つとして有用な可能性があり,2014年のガイドラインでも使用してもよい(推奨グレードC1)としているが,現在のところ保険適応外.
○従来療法抵抗性のEGPAの神経障害に対しては,乾燥スルホ化人免疫グロブリンの有効性が運動障害症状に対して認められ,2010年より保険適用となっており,治療抵抗性神経障害や心機能障害の改善結果,ステロイド減量効果が報告されている.

維持療法

○ANCA陽性RPGNの寛解=「腎機能の悪化を認めず,糸球体性血尿や赤血球円柱を含む腎炎性尿所見が消失した状態」および「血管炎症状の消失した状態」.
・蛋白尿の消失は必ずしも陰性化しないことが多い.

副腎皮質ステロイド薬

○CSによる維持療法は腎機能予後および生命予後を改善するために推奨され(推奨グレードA),さらにPSLによる治療開始8 週以降の20 mg/日未満における減量スピードは,PSL換算で0.8 mg/月以下のペースで減量することが推奨されている(推奨グレードB).
・本薬の使用群と非使用群を直接比較したRCTはないが,12カ月以内の早期中止群での再発率が高いとのメタ解析結果が示されている.
・プレドニゾロン(prednisolone:PSL)の減量速度が0.8 mg/月より速い群はそれより遅い群に比較して再燃率が有意に高いことが,日本の後向きコホート研究で示されている.
・日和見感染の可能性も考慮し,高齢者や透析患者などではPSLの投与期間や量に関してさらなる検討が必要であろう.

○維持療法では,0.2-0.3mg/kg/日.
↓3か月以降はアザチオプリンを併用.

免疫抑制薬

腎機能予後および生命予後を改善するために,RPGNの維持療法として,CSに加えて免疫抑制薬を併用することが推奨されている(推奨グレードB).

ANCA関連血管炎に対する寛解維持療法として,免疫抑制薬の中では従来CYが使用されていたが,CYより安全性の高いアザチオプリン(azathioprine;AZA)の再燃率に関しての非劣性が示され,AZA 2 mg/kg/日の投与が推奨されている.
・上記のRCTは海外で行われたものであり,多発血管炎性肉芽腫症と比べてMPAが圧倒的に多く,80歳以上の高齢者での発症が稀でない日本のANCA陽性RPGN患者の維持治療として,CSに免疫抑制薬を併用することには,慎重な配慮を要する.

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