偽膜性腸炎 pseudomembranous colitis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

○抗菌薬の投与に関連して発生する抗菌薬関連腸炎の主なものに,偽膜性大腸炎と急性出血性大腸炎があり、このうち偽膜性大腸炎は,Clostridium difficile が関与して発生し,大腸粘膜における偽膜形成を特徴とする.
・起因薬剤としては,第2世代セフェムや第3世代注射剤が目立つが,カルバペネム系薬剤やニューキノロン系にまで及んでいる.
・どの抗生物質でも,どの投与ルートでも偽膜性腸炎が発症しうる可能性がある(昔はクリンダマイシン,今はニューキノロンに多い)

疫学

○高齢者や悪性腫瘍・血液疾患など,基礎疾患を有する患者に広域スペクトラムを有する抗生物質を投与した際に多く認められる.
○特に多剤併用使用の場合には注意が必要である.

○消化管手術後のC.difficile関連疾患(CDAD)による院内死亡率はCDAD患者3.4%と,非CDAD患者の1.6%に比べ有意に高かったとの報告がある.

病態

○抗菌薬投与による菌交代現象で異常増殖したC. difficileの産生する毒素により発生する.
・抗菌薬関連下痢症の70~80%は非特異的であり,同定された原因の20%がC.difficile.
・壊死組織,フィブリン,炎症細胞などからなる偽膜が,主として直腸,S状結腸粘膜に形成される.
○その他のリスク因子として,長期入院,PPI投与,高齢者(65歳以上),免疫抑制状態,消化管術後,CDIの既往があがる.

Clostridium difficile

○大型の嫌気性グラム陽性桿菌で,芽胞を形成し,破傷風菌,ボツリヌス菌などの仲間である.
○産生するtoxinにはA, Bの2種類が存在する.

toxin A

○強力なenterotoxinであり,構造は異なるもののcholeratoxinと同様の働きを示し,腸液の増加と腸管血管・粘膜の透過性の亢進を来たし腸液と蛋白の漏出から下痢を引き起こす.

toxin B

○単独での細胞障害性は弱いが,toxin Aにより細胞透過性が亢進した状態ではtoxin Bが細胞内に容易に入り込み,強い細胞障害性を発揮し病状を悪化させる.
○toxin Aの1,000~10,000倍の毒性を持つとされ,同様に後者の経路が想定されている.
○toxin Aと協同的に作用し、より強い組織傷害を示すことが確認されている。

症候

○症状は抗生物質投与後5~10日に発生する下痢,発熱(30~50%),腹痛(30%),血便である.
・症状の程度は,投与された薬剤の抗菌力や抗菌スペクトラム,体内動態や患者側の年齢,免疫力,全身状態によって左右される.
○重篤な場合にはイレウスや中毒性巨大結腸症に発展する場合がある.
○罹患部位は,直腸・S状結腸を中心とした左側結腸がほとんどで,口側大腸はまれである.

高齢者や重篤な基礎疾患を有する者,手術後の患者で、抗生物質投与後の患者で下痢を呈した場合には本症を疑う!

血液検査

○白血球数(WBC)の増加(50-60%)平均15000-16000/μL,CRP 上昇,低蛋白血症,電解質異常など.

糞便検査

○GDHとtoxin A/B同時検出可能な検査キットの使用が一般的.
 GDH陰性かつトキシン陰性→CDI除外
 GDH陽性かつトキシン陽性→CDI確定
 GDH陽性かつトキシン陰性→?便培養(CCFA培地)を施行し,コロニーで毒素検査

GDH

○C. difficileが特異的に産生する酵素(CD抗原)の検出.
・陽性なら,C. difficileが存在する(毒素産生の有無は問わない).
○感度 0.96(0.86-0.99),特異度 0.96(0.91-0.98)

toxin A/B

○C. difficileが特異的に産生する毒素の検出.
○感度 0.57(0.51-0.63),特異度 0.99(0.98-0.99)

便培養

○毒素産生性のC.difficile自体の検出
○最も高感度.
○通常の培養方法と大きく異なるため,検査室に目的を伝達する.
・嫌気性菌なため,正しく行わないと検出率が低下する.
・専用培地が必要
・症状のない人でも3%程度検出される.
○培養後同定されたC.difficileに対して,toxin検査を実施する.

遺伝子検査 Nucleic acid amplification test;NAAT

○C.difficileが特異的に産生するtoxin遺伝子の検出が一般的.
○感度 0.95(0.92-0.97),特異度 0.98(0.97-0.99).
・感度が良いため,偽陽性(過剰診断)を招く恐れあり.
○海外ガイドラインで推奨.

大腸内視鏡検査

○主として直腸から S状結腸にみられる特徴的な黄白色類円形の偽膜の存在.
・内視鏡診断で重要な所見であるが,Clostridium difficile以外の細菌でも観察されることがあるので注意が必要である.
・偽膜が融合したり,膜状やびまん性に認める場合には,潰瘍性大腸炎,虚血性大腸炎,感染性腸炎との鑑別が必要
・偽膜が薄い膜状の場合(薄膜型)には慎重に観察しないと見過ごされることがある.
・小さな偽膜が多発し,直腸に限局してみられる場合にはクラミジア直腸炎に類似する.

治療

抗生物質の中止

○まずは,原因と思われる抗生物質を中止する.
○抗菌薬を中止できないケースや48時間以内に改善を認めない場合,重症例は抗生物質を開始.
○止痢剤は,症状を悪化させて麻痺性イレウスに発展する恐れがあるため原則として禁忌!

乳酸菌製剤の大量投与(10~20g/day)

○軽症例では腸内細菌叢の回復をねらって行う.
○耐性乳酸菌が偽膜性腸炎の予防に有効かはエビデンスがない.

抗生物質

○抗生物質投与により,通常48時間以内に下痢や発熱などの全身状態の改善をみ,一般に7日程度で下痢は消失する.
○便中のCD毒素が陽性であっても,下痢が治まれば抗生物質は予定通りの日数で中止する.
○再発は10~25%に起こりうり,治療終了後数日以内が多いが,1~2ヵ月後に起こることもある.
・再発した症例は約45~ 65%がさらに再発を繰り返していく.

軽症~中等症

WBC≦15000/μL+S-Cr通常の1.5倍以下
○metronidazole(1.2~1.5g/day,分3回)を経口投与する.
・フラジール® 500mg×3回/day or 250mg×4回/dayを10日間(透析患者は50%に減量)
・1回目の再発であれば,初回と同様にメトロニダゾールで加療する.

重症

WBC≧15000/μL or S-Cr通常の1.5倍以上
・1回目の再発まで、バンコマイシン125mg×4を10日間(培養結果,関係なく中止)
・2回目の再発以降はバンコマイシンパルス.
125mg×4を14日間,125mg×2を8日間,125mg×1を8日間,125mg×4を2日おき4回投与,125mg×5を3日おき5回

メトロニダゾール1錠37.3円,バンコマイシン3244円

フィダキソマイシン

ダフクリア®

○放線菌Dactylosporangium aurantiacumによって産生され,細菌RNAポリメラーゼ阻害作用を示す18員環のマクロライド骨格を有する.
○C. difficileをはじめとする一部のグラム陽性菌に抗菌活性を示し,ほとんどのグラム陰性菌には抗菌活性を示さないなど抗菌スペクトルが狭く,消化管吸収もほとんどなく,腸管内のみで作用する.
・特にC. difficileに抗菌的に作用するほか,芽胞形成や毒素産生を抑制する.

感染予防

○Clostridium difficileに対しては接触感染予防が必要.
○芽胞となって医療従事者の手などを通じて感染しうるため,速乾式のアルコール製剤では不十分で,各患者のケアの間の流水による手洗いが望ましい.
○不要な抗菌剤の使用を避けることも予防効果がある.
○接触感染予防は患者症状改善ののち,解除としてよい.

ベズロトクスマブ

ジーンプラバ®点滴静注625mg MSD

○toxin Bを標的とし,その活性を直接中和するヒトモノクローナル抗体.
○クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制に有効.
・C. difficile の強毒性流行株を含む幅広いリボタイプに対して有効.
○10mg/kgを60分かけて単回点滴静注する.

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