原発性胆汁性胆管炎 primary biliary cholangitis;PBC

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なすび医学ノート

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中高年女性に好発する慢性進行性の胆汁うっ滞性疾患

当初,原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis;PBC)と提唱されていたが,AMAなど早期診断技術の進展,ウルソデオキシコール酸の第一選択薬としての確立などにより,現在では診断時ほとんどの患者は肝硬変ではなく,その後肝硬変へと進展していく症例も少なくなり,2016年より原発性胆汁性胆管炎に変更された.

疫学

健康診断などを契機に診断される無症候性PBCの増加と予後改善から有病者数は増加している.
・2016年を調査年とした疫学調査では,患者数は37045例と推定され,人口10万人あたりの有病率は33.8と報告されている(2004年の調査と比べ,2.9倍増加).

中年以降の女性に好発する.
・男女比も2004年の1:7.1から,2016年は1:3.9と男性患者の増加も認めている.
・男性において,診断時年齢の高齢化がみられる.

無症候性PBCから症候性PBCへの累積移行率は,10年17.4%,20年37.3%となっている.

病因

中年女性に好発すること,自己抗体の一つであるAMAが高頻度に陽性であること,関節リウマチなどほかの自己免疫性疾患を合併する頻度が高いことなどから,本症の発生機序には自己免疫が関与しているものと想定されている.

炎症性サイトカインによるmiR-506(micro ribonucleic acid-506)の過剰発現が,AE2発現低下やミトコンドリア機能障害を引き起こし,重炭酸保護効果の減弱やPDC-E2(pyruvate dehydrogenase complex-E2)の胆管上皮膜上への異所性発現,あわせて疎水性胆汁酸によるストレス,細胞老化・アポトーシスが誘導され,胆管障害が惹起されることが示されている.

遺伝性要因

GWASにより,IL-12/IL-12レセプターシグナル伝達,TLR/TNF-α-NF-κBシグナル伝達,B細胞の成熟・分化,上皮細胞の分化・アポトーシスなどに関する多くの遺伝子多型が報告されている.

本邦においても,疾患感受性遺伝子として,TNFSF15(TNF superfamily member 15),POU2AF1(POU class 2 homeobox associating factor 1)などが同定されている.

臨床経過

本邦における全国調査の結果によると,最近PBCと診断される症例の約70%は無症候性で,無症候性PBC(asymptomatic PBC;a-PBC)と呼称される.

残りの約30%は何らかの症状を呈するが,もっとも頻度の高い症状は皮膚そう痒感で,黄疸がこれに次いで多い.
少数例で消化管出血を初発症状とする症例が存在する.

病変の進行とともに皮膚そう痒感,黄疸の増強を認め,次第に腹水,浮腫,肝性脳症など肝不全症状を呈するようになる.

高脂血症が持続する場合,黄色腫xanthomaあるいは黄色板xanthelasmaの出現をみる.

検査所見

血液生化学

胆道酵素(ALP,γ-GTP)の上昇が特徴的(正常値の2倍以上).
AST,ALTの上昇はみられないか,軽度であることが多い.
血清ビリルビン値は病初期には上昇しないが,病変の進行とともに上昇し,肝不全に至ると高度の上昇をみる.

赤沈値の亢進が高頻度にみられる.

総コレステロール値,血清銅,IgM値も上昇する.

抗ミトコンドリア抗体 antimitochondrial antibody;AMA

自己抗体として抗ミトコンドリア抗体が90%以上に陽性となる.

AMAに対応する抗原としてはM1-9抗原の存在が報告されているが,このうちPBCと関連のあるものはM2,M4,M8,M9抗原で,中でもM2抗原が最も特徴的.
・M2抗原は細胞内のミトコンドリア内膜に存在する酵素複合体で,pyruvate dehydrogenase(PDH),branched chain α-keto acid(BCKD),oxoglutaric dehydrogenase(OGDH)から成り立っている.
・この酵素に対する抗体である抗PDH抗体(抗M2抗体)が約90%の症例で陽性となる.

肝線維化マーカー

M2BPGi:Mac-2 binding protein glycosylation isomer

C型慢性肝炎の線維化マーカーとして発見され,線維化のみならず,発癌予測や肝切除後の予後予測因子となることも確認されている.

PBCにおいても,肝線維化・予後予測因子として有用なマーカーとなることが報告されている.

オートタキシン

リボホスファチジン酸の産生酵素.

PBCの組織評価である中沼stage分類と関連することが示されている.

オートタキシンが肝線維化に伴い上昇する機序は,肝類洞内皮細胞の表現型の変化によることが示唆されている.

病理

慢性非化膿性破壊性胆管炎chronic non-suppurative destructive cholangitis(CNSDC)として表現される胆管の破壊性の病変が認められる.
・隔壁胆管,小葉間胆管などの中等大胆管に胆管上皮細胞の変性壊死所見,基底膜の破綻と上皮内へのリンパ球浸潤が認められ,その周辺にリンパ球形質細胞の浸潤が認められる.
・肉芽腫の形成を認めることも多い.

肝小葉内の変化は比較的軽微で,ピースミール壊死(切り崩し)も軽度のことが多い
→自己免疫性肝炎との鑑別点となる.

上記の所見はPBCの初期にみられることが多く,病変の進行とともに肝の組織所見も変化し,終末期には肝硬変像を呈することとなる.

治療

ウルソデオキシコール酸 ursodeoxycholic acid;UDCA

第一選択薬であり,臨床検査値と予後の改善効果を有している.
・多くの症例で皮膚そう痒感の軽減,消失,ALP,γ-GTPなど胆道系酵素の低下,AMAの力価の低下あるいは陰性化などがみられる.

本邦では,UDCA 900mg/日投与でも効果が不十分の場合は,ベザフィブラートを使用することがある(脂質異常症がなければ保険適応外).
・作用機序が異なるため,併用投与が望ましいとされている.
・欧米では,UDCA不応例を対象としてベザフィブラートの前向き試験が実施され,生化学的改善効果および非侵襲的線維化評価による線維化改善効果が示されている.

UDCA治療効果判定として,ALPなどの検査値から判定するBarcelona基準やParisⅡ基準がこれまで報告されている.

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