原発性アルドステロン症 primary aldosteronism;PA

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なすび医学ノート

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副腎皮質からのアルドステロン過剰分泌により,高アルドステロン・低レニン性高血圧,低K血症をきたす病態.

アルドステロンは腎臓の遠位尿細管細胞に存在するミネラルコルチコイド受容体(type1)に作用
→Na再吸収亢進
→体液量増加,末梢血管抵抗の増大,血管の昇圧反応性の亢進
→高血圧
→レニンの合成と分泌は抑制,立位や利尿薬によるレニン分泌反応も抑制
→尿中へのKと水素イオンの排泄が増加(Naと交換)
→低K血症・代謝性アルカローシス

本症の発見が遅れると,非可逆性の若年発症の心血管系,腎臓障害を合併する.

  1. 疫学
  2. 病態
    1. 片側性副腎病変(手術対象)
      1. アルドステロン産生腺腫 aldosterone-producing adenoma;APA
      2. 片側副腎過形成 unilateral adrenal hyperplasia;UAH
      3. アルドステロン産生副腎癌(aldosterone producing carcinoma;APC
      4. 片側多発性副腎微小結節性アルドステロン症 unilateral multiple adrenocortical micronodules;UMN
    2. 両側副腎病変
      1. 特発性アルドステロン症 idiopathic hyperaldosteronism;IHA,両側副腎過形成
      2. コルチコイド反応性アルドステロン症 glucocorticoid-remediable aldosteronism;GRA
    3. 病理
    4. コルチゾール産生腫瘍(Subclinical Cushing症候群)合併
    5. 心血管系合併症
    6. インスリン抵抗性
    7. 副甲状腺機能亢進症
    8. アルドステロン関連高血圧(aldosterone-associated hypertension)
  3. 症候
    1. 高血圧
    2. 非特異的症状
    3. 低K血症(約50%)
    4. 血液検査
  4. 診断
    1. スクリーニング対象
    2. ホルモン検査
      1. ARR(aldosterone-renin ratio,PAC/PRA)を計算
      2. 降圧薬の休薬
      3. Cushing症候群の合併の検索
    3. 機能確認検査 confirmetory tests
      1. カプトプリル負荷試験
      2. フロセミド立位負荷試験
      3. 生理食塩水負荷試験
      4. 経口食塩負荷試験
      5. 迅速ACTH負荷試験
    4. 画像診断
      1. 腹部CT
      2. 腹部MRI
      3. 131I-アドステロール副腎シンチグラフィー
    5. 副腎静脈サンプリング:adrenal venous sampling;AVS
      1. ACTH投与の目的
      2. 副腎静脈へのカーテーテル挿入の成功判定基準 Selectivity Index;SI
      3. アルドステロン過剰分泌・左右差の局在判定基準
  5. 治療
    1. 片側副腎摘出術
      1. 術前
      2. 術後
    2. 薬物療法
      1. スピロノラクトン spironolactone;SPRL
      2. エプレレノン eplerenone;EPL
      3. エサキセレノン Esaxerenone
    3. 合併症の評価

疫学

高血圧患者総数の5~15%と考えられており,二次性高血圧の重要な原因の一つとされ,治療抵抗性高血圧患者の20%は本症と考えられている.

高血圧性の臓器障害に加えて,アルドステロンの心血管系の直接作用による心血管系合併症(心筋梗塞・狭心症・心房細動,脳出血,脳梗塞など)の頻度が高いことが報告されている.

1)若年および高血圧罹病期間が短い症例でも合併症の出現率が高い.
2)同程度にコントロールされた本態性高血圧症と比べると,脳血管疾患,虚血性心疾患,心肥大,不整脈,慢性腎臓病,動脈硬化性疾患などの合併症が約3~6倍.
3)脳血管障害の頻度は,本態性高血圧に比して約5倍高く,脳梗塞に比して脳出血の頻度が高かった.

早期診断・早期治療が重要!!

病態

片側性副腎病変(手術対象)

アルドステロン産生腺腫 aldosterone-producing adenoma;APA

35%(本邦では約70%)

片側副腎過形成 unilateral adrenal hyperplasia;UAH

2%

アルドステロン産生副腎癌(aldosterone producing carcinoma;APC

<1%

片側多発性副腎微小結節性アルドステロン症 unilateral multiple adrenocortical micronodules;UMN

<1%

両側副腎病変

特発性アルドステロン症 idiopathic hyperaldosteronism;IHA,両側副腎過形成

60%(本邦では約20%)

コルチコイド反応性アルドステロン症 glucocorticoid-remediable aldosteronism;GRA

<1%

病理

 アルドステロン産生腺腫の大きさは通常6g以下,径3cm以下が多いが,数mm程度のものもある.
 数mmの腫瘍でも症状を認め,これらの腫瘍は現在の画像診断法では検出が困難でmicroadenomaと呼ばれる.

 腺腫は被包され,その割面は肉眼的に黄金色を呈する.

 組織学的には主に多形性の核と脂質に富み,正常の束状帯細胞に類似した形質を示す明細胞から構成され,胞巣状ないし索状の増殖像を示す.

 腺腫周辺および対側副腎の球状帯細胞には結節性またはびまん性の軽度の過形成がみられることが多い(高血圧症の持続に伴う変化と考えられる).

コルチゾール産生腫瘍(Subclinical Cushing症候群)合併

 腫瘍サイズが大きいほど,コルチゾール分泌の自律性が獲得される頻度が増加する.
 1割程度.
 コルチゾールを産生するAPAも存在するが,頻度は比較的少ない.

心血管系合併症

 脳心血管疾患は,単に高血圧のみで起こるのではなく,高アルドステロン血症によるミネラルコルチコイドの活性化を原因としている.

 約50%の症例で心血管系臓器障害を合併し,同等に血圧がコントロールされた本態性高血圧に比べて,心肥大の頻度が高い.

 若年および高血圧罹病期間が短い症例でも合併症の出現率が高い.

インスリン抵抗性

 アルドステロンは骨格筋や脂肪組織および肝臓におけるインスリンシグナルやグルコース取り込みを阻害し,インスリン抵抗性を惹起する(脂肪細胞からのサイトカインの産生,酸化ストレスを介するインスリン作用の抑制).

 一方,高インスリン血症はアルドステロン合成を刺激する.

副甲状腺機能亢進症

 腎や糞便からのカルシウムやマグネシウムの喪失が増えることで,PTHの分泌が刺激される.

 PTH上昇すること自体も心血管イベントのrisk factorと考えられている.
 PTH自体がRAS系を刺激し,アルドステロンを増加させることも考えられている.

アルドステロン関連高血圧(aldosterone-associated hypertension)

 高血圧症でアルドステロン/レニン比が高値であるが,カプトプリル負荷試験などの負荷試験の結果,原発性アルドステロン症と診断されない.

 治療抵抗性高血圧を呈する.
 原因として肥満,糖尿病,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病などがあり,組織のミネラルコルチコイド受容体が活性化されている.

症候

 高血圧以外には特異的な徴候や症状が認められないことが多い.

高血圧

高血圧の程度はSBP 160~220mmHg,DBP 100~120mmHgが多く,血圧の変動は少ない.治療抵抗性.
1)典型例では,本態性高血圧患者に比べて若く(30~50歳代),高血圧の家族歴なし,低K血症(多飲・多尿・夜間尿など)が特徴.
2)アルドステロンによるNa・水貯留のため,循環血漿量が増加するが,浮腫を伴わないことが特徴.

 妊娠中は比較的血圧コントロールがよいことが多く,出産後に高血圧が悪化するのが特徴.
→妊娠中は,アルドステロン作用に拮抗する何らかのホルモンが母体血中に存在していると考えられている.

非特異的症状

 高血圧に伴う頭痛や,低K血症に伴う多尿・夜間尿・筋力低下・筋痙攣などがみられる.

低K血症(約50%)

1)アルドステロンは,腎臓の皮質集合管細胞において,尿細管腔側に発現する上皮性Naチャネル(epithelial sodium channel;ENaC)を活性化させ,尿中Naの再吸収が亢進し,血管側ではNa+-K+ATPaseが活性化される.
→血液内にNaが取り込まれ,上皮細胞にKが排泄される.

2)上皮細胞尿細管腔側のROMK(renal outer medullary potassium channel)を通じて,尿中にKが排泄される.

 筋細胞は過分極状帯になるため,筋力低下や四肢麻痺を生じる.
・K≦3.0mEq/Lの高度低K血症を呈した場合は四肢麻痺・テタニー・不整脈が生じることがある.

 周期性四肢麻痺(periodic paralysis)は左右対称性で,下肢に強い傾向にある.
 過労などが原因となり,安静のみで数時間から1週間くらいで自然に回復することが多い.

 塩分制限や降圧薬内服により低K血症は改善する.

血液検査

1)Na濃度は正常上限程度の上昇

2)低Mg血症

3)代謝性アルカローシス:近位尿細管でHCO3-の再吸収亢進
 近位尿細管でHCO3-の再吸収亢進→代謝性アルカローシス→蛋白がH+を離す→蛋白が陰性となり,Ca2+と結合=Caのイオン型が減り,蛋白結合型が増える→低Ca2+血症→テタニー

4)糖代謝異常(約20%)
 低K血症によるインスリン分泌低下とアルドステロンによるインスリン抵抗性の二つの機序の関与が示唆されている.

診断

スクリーニング対象

1)高血圧+低K血症(利尿薬誘発性を含む)
2)高血圧を伴う副腎偶発腫瘍 (原発性アルドステロン症であることは少なく,非機能性腺腫やコルチゾール産生腫瘍が多い)
3)二次性高血圧が疑われる場合(40歳以下など比較的若年)
4)グレードⅡ以上の高血圧(160/100mmHg以上)
5)難治性の高血圧(3種類以上の降圧薬を服用しても目標血圧まで低下しない)
6)40歳代までの高血圧患者で臓器障害(脳卒中・心肥大・心不全)を伴うケース.
7)睡眠時無呼吸症候群
8)第1度近親以内に原発性アルドステロン症の家族歴を有する(2016年米国ガイドラインで追加)

ホルモン検査

血漿レニン活性(plasma renin activity;PRA,ng/mL/hr)
・レニンのアンジオテンシンを作る能力を評価する.

血漿レニン濃度(renin concentration;PRC,pg/mL)
・レニンそのものの濃度を測定する
・血漿レニン活性と異なりアンジオテンシノーゲンの量に影響されず,レニンの絶対量を特異的に測定可能
・今後,主流になる?

血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration;PAC,pg/mL)
・測定方法により,pg/mLとng/dLの両者が行われており,pg/mL表記の値はng/dLの値の10倍に相当することに注意!ARRを計算する場合はpg/mLに換算する.

1)採血は塩分制限をしない状態で,早朝から午前9時,空腹,約30分の安静臥床後での条件でできるだけ行う.
2)スクリーニングの複数回実施が単回実施よりも,診断の感度・特異度が優れていることを示すエビデンスはない.しかし,測定間変動が大きいことから,適宜,再検査の実施が推奨される.
3)ARR単独では偽陽性が多くなることから,ARR高値(>200)とPACが一定値以上(>120pg/mL)であることを組み合わせたスクリーニングを推奨される.
4)塩分摂取量が多い症例や高齢者、糖尿病患者ではPRAが低下し、偽陽性になりやすい.

ARR(aldosterone-renin ratio,PAC/PRA)を計算

PAC/PRA比>200,PAC/PRC比>40~50 かつ PAC>120pg/mLであればスクリーニング陽性

低PRA(<1.0ng/1hr)と高PAC(臥位>100pg/mL,座位>120pg/mL)
→機能確認検査(負荷試験)へ
・低レニン血症による偽陽性を防ぐため,ARR高値かつPAC>120pg/mLを目安としてスクリーニング陽性とする.
・PAC<120pg/mLでもPAは完全には否定できない.

PRA<0.6ng/mL/hrかつPAC>300pg/mL
→PAとほぼ診断できる

降圧薬の休薬

多くの降圧薬は,レニンやアルドステロンの値に影響するが,β遮断薬や直接的レニン阻害薬以外の降圧薬でレニン抑制(PRA≦1ng/mL/hr)のときは,降圧薬の変更や休薬の必要はない.

レニン非抑制(PRA>1ng/mL/hr)でARRがカットオフ値の境界域を示すときには,可能な限り降圧薬を比較的影響の少ないCa拮抗薬(ニフェジピン,アムロジピンなど),α遮断薬(ドキサゾシン)に変更して,2週間後以降に再検査を実施することが推奨される.

昔はRAS阻害薬などは休薬して測定していたが,現在は内服したままで検査することになっている!

1)アルドステロン拮抗薬は影響が大きいため,2カ月以上影響が残ることがある.
2)サイアザイド系利尿薬はレニンを上昇させ,アルドステロンも上昇させるが,ARRは相対的に低値になることが多い.

Cushing症候群の合併の検索

デキサメタゾン1mg抑制試験

機能確認検査 confirmetory tests

1)2種類の機能確認検査の陽性確認は1種類のみの陽性確認よりも特異度が高いと考えられるが,陽性検査数と診断の感度・特異度,費用対効果に関するエビデンスはない.
2)機能確認検査は少なくとも1種類の陽性の確認が推奨される.
3)機能確認検査のいずれかの検査が他と比較して感度・特異度でより優れていることを示すエビデンスはない.
4)検査の容易さ,安全性の面からまずカプトプリル試験の実施が推奨されるが,症例ごとに個別に実施検査を選択する必要がある.
5)PAC/PRA比>1000,PAC200pg/mLのときは,機能確認検査は省略可能.

カプトプリル負荷試験

感度:66~100%,特異度:68~90%

カプトプリル50mg経口投与→ARR(60分 or 90分)≧200であれば陽性

 健常人ではACE阻害薬内服によりアンギオテンシンⅡ・アルドステロンが減少し,レニン活性が増加する.

 原発性アルドステロン症ではアルドステロンが過剰自律分泌しており,強力かつ持続的にレニン活性が抑制されているため,ACE阻害薬内服後もレニン活性は増加しない.

フロセミド立位負荷試験

感度・特異度データなし

フロセミド40mg静注・2時間立位→PRAmax≦2.0ng/mL/hrであれば陽性

 健常人では利尿剤による循環血液量減少(腎灌流量減少)と立位による交感神経系の刺激で ,レニン・アンギオテンシン系の賦活およびアルドステロン分泌増加がおこる.

 原発性アルドステロン症では、アルドステロンが過剰自律分泌しており,強力かつ持続的にレニン活性が抑制されているため,フロセミド立位負荷後もレニン活性は増加しない.

生理食塩水負荷試験

感度:83~83%,特異度:75~100%

生理食塩水 2L/4hr点滴静注→PAC(4時間)≧60pg/mLで陽性

 健常人では生理食塩水により循環血液量が増加し,レニン活性・アルドステロンが抑制される.原発性アルドステロン症ではアルドステロンが過剰自律分泌しており,生理食塩水負荷後もアルドステロンは抑制されない.

経口食塩負荷試験

外来にて24時間畜尿→尿中アルドステロン≧8μg/day(ただし,尿中Na≧170mEq/day)

迅速ACTH負荷試験

感度:約98%,特異度:約91%

 アルドステロンの分泌刺激は正常では主としてレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系に支配されるが,ACTHも若干の刺激因子となる.

 レニンの著明に抑制された原発性アルドステロン症ではACTHが主要な調節因子に変わり,ACTH刺激にアルドステロンは過剰反応する(腺腫で多い).
 特発性アルドステロン症ではアンギオテンシン依存性のアルドステロン分泌を示し,過剰反応は認めない.

画像診断

腹部CT

1)APAは腺腫サイズが小さいことから,腫瘍の有無と局在の確認のため,まずthin slice(5mm幅以下)でのSDCT(multi-detector row CT)の撮影が推奨される.
・アルドステロン産生腺腫(APA)を検出するのが目的.1~2cmと小さい場合が多い.
・5mm以下ではCTでは判断しにくく,APAの20~30%はCTで判断されないとの報告がある.
・特発性アルドステロン症(IHA)は両側副腎皮質の過形成であり,CTで評価できるほどのものではない.

2)典型的な所見としては,造影前の腺腫は脂肪成分を含むため,低吸収値を示す(CT値は+15以下~マイナス).造影後CTでは正常副腎部分に造影効果が認められるが,腺腫部分は造影効果が弱く,コントラストが著明になる.
・APAとその他の腺腫(非機能性腺腫,subclinical Cushing症候群)との鑑別はCTでは困難.
・稀ではあるが,予後不良な副腎癌の除外診断に有用.

3)臨床的にAVS実施が予想される場合は,空間分解能が高く,撮影時間の短縮による患者負担の軽減と副腎静脈の確認が可能な造影MDCT(multi-detector row CT)が推奨される.

4)CKDステージG3b以上の例で造影CTを実施する場合は,造影剤腎症の発症リスクを考慮して,検査前の生理食塩水の点滴静注が推奨される.

手術を考慮する症例では過大評価せずに,副腎静脈サンプリングによる局在診断を施行し,診断を確実にしたほうが望ましい.

腹部MRI

1)T1強調画像,T2強調画像ともに低信号の腫瘍として描出されるが,解像度はCTに劣る.
・APAは腫瘍径が小さく,また非機能性結節とIHAの合併症例も多く存在することから,画像診断のみでは20~50%は局在診断を誤る可能性がある.

131I-アドステロール副腎シンチグラフィー

1)AVSが実施困難,不成功あるいは患者が希望しない場合は,DEX抑制下副腎シンチグラフィSPECTあるいはSPECT/CTを実施する.
2)副腎腫瘍の検出感度は造影CTが副腎シンチグラフィSPECTより優れているが,APA診断の特異度,陽性的中率,陰性的中率は後者がより優れている.

副腎静脈サンプリング:adrenal venous sampling;AVS

1)機能的局在診断法で,適切に遂行された場合はCT/MRIより感度・特異度に優れていることから,手術を考慮する場合はAVSの実施が推奨される.
2)患者の年齢など一定の要件を満たす明らかな片側副腎腫瘍症例やAVS実施不可能な場合,十分な説明の上でAVSを省略されることも考慮される.
3)造影MDCTは右副腎静脈の解剖学的走行の確認に有用であることから,右副腎静脈でのカテーテル挿入の成功率を向上させる.
4)迅速コルチゾール測定はAVS術中にカテーテル挿入の成否を判断できることから,経験の少ない施設におけるAVSの成功率を向上させる.
5)微小副腎病変による原発性アルドステロン症の場合,ACTH刺激を行なわない場合患側副腎からのアルドステロン過剰分泌が明らかでないことがあり,診断精度を向上させるためにACTH刺激を行なってからサンプリングを施行する.

ACTH投与の目的

・検査中のストレスにより引き起こされるアルドステロン分泌変動の緩和
・下大静脈末梢と副腎静脈のコルチゾールの格差を増大し,AVS成功の有無を確認しやすくなる.
・アルドステロン産生腺腫においてアルドステロン分泌を最大まで刺激することで左右差を明確にする.

副腎静脈へのカーテーテル挿入の成功判定基準 Selectivity Index;SI

1)ACTH刺激後の副腎血中コルチゾールが200μg/dl以上
2)ACTH刺激後の副腎血中コルチゾールが下大静脈血中コルチゾール濃度の5倍以上

アルドステロン過剰分泌・左右差の局在判定基準

1)ACTH負荷後のアルドステロン濃度が14000pg/mL(1400ng/dL)以上の場合,アルドステロン過剰分泌があると判定する.
・片側アルドステロンが14000pg/mL以上であれば,その副腎が手術適応となる.
・両側副腎静脈血中アルドステロンが14000pg/mL以上の場合は特発性アルドステロン症が最も可能性が高いが,稀に両側腺腫,グルココルチコイド奏功性アルドステロン症の可能性もある.

2)ACTH負荷後LR(Lateralized ratio:LR=[A/C高÷A/C低]),次いでCR(Contralateral ratio:CR=[A/C低÷A/C下大静脈末梢側])が最も一般的で,LR>4かつCR<1をカットオフ値として手術適応を決定することが推奨される.
*コルチゾール産生腫瘍を合併している場合は使えない.

3)ACTH負荷後LRが境界域(2~4)である場合,ACTH負荷前後あるいは判定基準間で局在判定が乖離した場合は,CR<1,副腎静脈PACおよび臨床所見(低K血症,副腎CT所見,年齢など)を考慮して総合的に局在判定し,慎重に手術適応を決定する.

治療

早期診断,治療ができれば予後は良好

 副腎摘出術がMR拮抗薬よりも長期的な臓器障害の改善および生命予後の点で優れていることを示す明確なエビデンスはない.
 しかし,手術例では約45%が治癒することが報告されているのに対して,薬物療法では通常,治療を生涯継続する必要がある.
→APAでは副腎摘出術が第一選択であり,手術希望や手術適応がない場合に薬物療法が代替治療となる.

片側副腎摘出術

 アルドステロン産生腺腫の局在診断ができた場合.

 高血圧は改善し,35~60%は改善する.
 術後の高血圧の治癒を予測する因子として,服薬している降圧薬数,高血圧の罹病期間,性別が重要であるが,年齢・腎機能・BMIなども関与する.

 腹腔鏡下での副腎摘出術が望ましい.

術前

1)術前にK製剤あるいはスピロノラクトン(アルダクトン®A)やエプレレノン(セララ®)を用いて,低K血症や高血圧をコントロールする.
2)血圧コントロールが不十分なら,Ca拮抗薬を使用する.
3)良好な周術期管理のために術前に脳MRIや心エコーなどで臓器障害に関する全身評価を行い,心血管系合併症を評価しておく.

術後

1)術後にはK補充やスピロノラクトンは中止する.
2)術後には血中アルドステロン低下により,循環血漿量が減少する.術前に腎機能障害がある場合は,Cr・Kが上昇するため,注意が必要.
3)血圧は週から年単位で改善する.高血圧歴が5年以上,本態性高血圧の合併,腎障害の合併,スピロノラクトン不応例では血圧低下が不良だが,降圧薬が減量できるなどコントロールは改善する.
4)レニンの抑制は,術後1-3ヶ月程度遷延する.

薬物療法

1)SPRLはEPLより降圧作用が強く,高血圧や心不全での臓器保護作用が示されている.
2)EPLはMRへの選択性が高いことから,女性化乳房などの性ホルモン関連副作用が少ない.
3)PAの長期予後に対して両者の治療効果に差があることを示すエビデンスはない.

降圧効果が不十分な場合は,他の降圧薬を積極的に使用する.
・Ca拮抗薬→副腎からのアルドステロン分泌に関与する細胞内へのCa流入を阻害する
・ACB/ACEI→効果は少ないが,IHAではAngⅡに対する分泌反応性が亢進しているので有効
・塩分制限

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 Mineralocorticoid receptor antagonist;MRA
腎臓の遠位尿細管および接合集合管の基底側細胞膜を通って,細胞内に入り,ミネラルコルチコイド(アルドステロン)の...

スピロノラクトン spironolactone;SPRL

12.5~25mg/日より開始(最大400mg/日).

1)安価で,作用時間が長く,1日1回の投与でよい.
2)MRに対する親和性が高く強いMR拮抗作用がある.
3)アンドロゲン受容体拮抗作用やプロゲステロン受容体刺激作用のため,男性には女性化乳房,閉経前女性では月経不順などの性ホルモン関連副作用が多い.

エプレレノン eplerenone;EPL

セララ®
添付文書上は1日1回25mg(最大100mg/日).

MRに対する親和性が低く,MR拮抗作用は弱いが,MR選択性が高く,性ホルモン関連副作用は極めて少ない.

1)投与量は血圧ではなく,血清Kに基づいて決定する.
2)蛋白尿を呈する糖尿病患者には投与禁忌とされる
3)降圧効果以外に臓器保護および代謝改善作用を有する.

エサキセレノン Esaxerenone

ミネブロ®

エプレレノンと同様にK製剤との併用は禁忌だが,アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者や中等度の腎機能障害(eGFR 30~59)のある患者には慎重投与となっている.

合併症の評価

・脳MRIや心臓超音波検査などの臓器障害に関する系統的な評価が必要.

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