多発性筋炎 polymyositis(PM),皮膚筋炎 dermatomyositis(DM)

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なすび医学ノート

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多発性筋炎は骨格筋の炎症により,四肢近位筋や体幹,頸筋や咽頭筋などの筋力低下を来たす原因不明の慢性炎症性疾患.

筋炎症状に加え,典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)と呼ばれる.

ともに関節炎,間質性肺炎,心筋障害など骨格筋以外の臓器障害も合併する.

疾患特異的な自己抗体が認められることより,発症に自己免疫学的機序が関与していると考えられる.

疫学

本邦2009年の臨床調査個人票の解析結果によれば,PM/DMの推定患者総数は約17,000人.

PMとDMはほぼ同数,男女比は1:3 .

毎年1,000~2,000 人が新規発症.

好発年齢は50歳代であるが,あらゆる年齢層に発症する.

症候

全身症状

発熱,全身倦怠感,易疲労感,食欲不振,体重減少などが出現する.

筋症状

主要徴候で,四肢近位筋,体幹,頸筋,咽頭筋や喉頭筋の筋力低下が多い.
・四肢遠位筋の筋力低下も低頻度ながら認める.
・四肢近位筋の筋力低下→しゃがみ立ち,階段の昇降,歩行,腕の挙上および保持が困難となる.
・頸筋や咽頭筋,喉頭筋の筋力低下→仰臥位からの頭部挙上困難や嚥下障害,発声障害が起こる.
・重症例では横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の障害により呼吸困難となる.
・筋自発痛や把握痛もしばしば認める.
・筋炎が遷延すると筋萎縮が起こり,日常生活動作の制限がもたらされる.

臨床経過としては発症から診断までが3 カ月以内の亜急性型の症例が多いが,筋力低下が緩徐に進行する慢性型の症例もある.

皮膚症状

約半数の症例は特徴的な皮疹を呈し,DMと診断される.

ヘリオトロープ疹
眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑.

Gottron丘疹
手指関節背面の落屑を伴う隆起紅斑.
・肘や膝などの関節背面でも認められ,手指の落屑性紅斑と合わせてGottron徴候と総称される.

落屑性紅斑
前上胸部(V徴候),肩から上背部(ショール徴候),大腿外側(ホルスター徴候)でも認める.

機械工の手
手指の指腹の裂溝を伴う角質化と色素沈着もしばしば認められる.

その他
Raynaud現象,爪周囲紅斑,爪床部の毛細血管拡張,梗塞も認めるが,DMに特異的ではない.
小児例では皮膚の多発性石灰化を高頻度に認める.

無筋症性皮膚筋炎 amyopathic DM;ADM
筋炎所見がなく典型的な皮膚症状のみの症例.
臨床検査では筋炎を示唆するものの筋症状のないhypomyopathic DMと合わせて,臨床的無筋症性皮膚筋炎(clinically amyopathic DM;CADM)と総称される.

関節症状

約3分の1の症例は,大関節を中心に骨破壊を伴わない多発関節痛,関節炎を合併する.

呼吸器症状

間質性肺炎は約半数の症例で認められ,生命予後に関連する.

自覚症状として乾性咳嗽,労作時呼吸困難を認め,理学所見では両側背部で下肺野を中心に捻髪音を聴取する.

臨床経過から急性/亜急性型および慢性型に分類される.

CADMでは,大量のステロイド薬や免疫抑制薬に反応せず,症状出現後6カ月以内に死亡する,極めて予後不良な急速進行性間質性肺炎を高頻度に合併する.

心病変

心筋炎による心機能低下や心膜炎による心囊水貯留を認めることがある.

心筋炎に伴う線維化が刺激伝導系に及ぶとブロックや期外収縮等の不整脈が出現する.

悪性腫瘍

一般人口と比してDMでは約3 倍,PMでは2倍弱悪性腫瘍の合併率が高く,PM/DM診断後2年以内に発症することが多い.

あらゆる種類の悪性腫瘍を合併する.

検査所見

血液検査

筋炎により血清CK,アルドラーゼ,LDH,ASTなどの筋原性酵素が筋障害の程度を反映して上昇する.

急性期には赤沈亢進,CRP(C反応性蛋白)の上昇などの炎症所見を認める.

筋炎特異的自己抗体 myositis-specific autoantibodies;MSAs

PM/DM患者で多種類の疾患特異的自己抗体が認められる.

診断や病型分類,治療方針決定に有用である一方,多くは限られた施設でしか測定できず,簡便な測定法の開発と保険収載が望まれる.

抗MDA5抗体,抗TIF1-γ抗体,抗Mi-2抗体は2016年に保険収載された.
→抗ARS抗体陰性DMの診断に有用

抗ARS抗体

PM/DMで最も高頻度に検出される筋炎特異的自己抗体.

まず抗Jo-1抗体の対応抗原がヒスチジルtRNA合成酵素が報告された.
その後,7種類のアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl tRNA synthetase;ARS)に対する自己抗体が同定された.

本抗体陽性例は筋炎,間質性肺炎,関節炎,発熱,Raynaud現象,機械工の手を高頻度に認めるという臨床的特徴があり,“抗ARS抗体症候群”と呼ばれる.

抗Jo-1抗体,抗PL-7抗体,抗PL-12抗体,抗EJ抗体,抗KS抗体の5つを同時に測定できる「抗ARS抗体」が保険適応となった.

抗Jo-1抗体
15~20%と比較的高頻度に検出され,その対応抗原はヒスチジルtRNA合成酵素.
・筋症状や関節症状が出やすい.
・単独で保険適応があるのはこれだけ.

抗MDA5(melanoma differentiation-associated gene 5)抗体

DM特異的で,陽性者は筋症状に乏しく,高頻度に急速進行性間質性肺炎を合併し予後不良.
・抗ARS抗体陰性のCADMで検出され,抗体価は病勢をよく反映する.
・ステロイド,カルシニューリン阻害薬,シクロホスファミド大量静注の三者併用や血漿交換などの強力な治療を早期に行わないと予後不良.
・半年~一年を超えて寛解に至った例は,予後は比較的良好と報告されている.

抗Mi-2抗体

ヒストン脱アセチル化に関与し,DMの10~20%で陽性.

特徴的な皮疹と筋症状を認める典型的なDM.
・間質性肺炎や悪性腫瘍の合併が少ない.
・ステロイド反応性が良好な症例が多い.

抗TIF1-γ (transcriptional intermediary factor-γ)抗体

DM特異的で,悪性腫瘍合併DMと関連する.
・間質性肺炎の合併は比較的少ない.

筋炎関連自己抗体 myositis-associated auto-antibodies;MAA

抗RNP抗体,抗SS-A抗体,抗PM-Scl抗体,抗Ku抗体など

最近は抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial antibody;AMA)が注目されている.
・特発性炎症性筋炎の中にAMA陽性筋炎が存在する.
・PBC合併/非合併例のどちらもある.
・慢性進行性で,不整脈や心不全,呼吸筋障害による呼吸機能の低下を来たしやすい.

特殊検査

筋電図
神経疾患による筋病変との鑑別に有用である.
PM/DMでは随意収縮時の低振幅電位,安静時の自発電位など筋炎を反映する所見を認める.

筋MRI
骨格筋の炎症性浮腫を反映してT2強調画像で高信号に描出される.

筋生検
血管周囲や筋線維への炎症細胞浸潤,筋線維の大小不同と変性,壊死,再生,間質の線維化を特徴的所見として認める.

筋外病変検査

皮膚生検
表皮基底層の液状変性,真皮血管周囲の炎症細胞浸潤,真皮ムチン沈着などの特徴的所見を認める.

間質性肺炎合併例
胸部X線写真,胸部高感度CTにおいて下肺野を中心に網状影とスリガラス状陰影を認める.
呼吸機能検査では拘束性障害と肺拡散能低下を認める.

心病変
血清CK-MB,心筋トロポニンT測定や心電図,心エコー検査,心筋シンチグラフィーなどで評価する.

診断基準

1992年の厚生省(当時)自己免疫疾患調査研究班による診断基準が用いられてきたが,2015年1 月の難病医療費助成制度改正に伴い,診断基準が改訂された.

変更点はGottron丘疹など皮疹の定義が変わったこと,無筋症性皮膚筋炎が診断可能になったこと,筋電図所見では筋炎による安静時自発電位が重視されるようになったこと,抗Jo-1 抗体以外の抗ARS抗体も診断項目に組み入れられたことなど.

診断基準項目

皮膚筋炎 : (1)の皮膚症状の(a)~(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)~(9)の項目中4項目以上を満たす
*皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは、無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む。

多発性筋炎 : (2)~(9)の項目中4項目以上を満たす

(1)皮膚症状
 (a)ヘリオトロープ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
 (b)ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹
 (c)ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑
(2)上肢又は下肢の近位筋の筋力低下
(3)筋肉の自発痛又は把握痛
(4)血清中筋原性酵素(CK or アルドラーゼ)の上昇
(5)筋炎を示す筋電図変化
(6)骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛
(7)全身性炎症所見(発熱,CRP上昇,又は赤沈亢進)
(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性
(9)筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

まず患者は筋力低下,筋肉痛,皮疹などを主訴に来院

病歴は筋症状および皮膚症状の経過,呼吸器症状の有無,家族歴,薬剤摂取歴,先行感染の有無,悪性腫瘍合併の有無などについて聴取する.

身体診察では皮疹の観察,胸部聴診などの標準的診察に加え,徒手筋力テスト(Manual Muscle Testing:MMT)が必須.

血液検査では筋原性酵素,筋炎特異的自己抗体(保険適用は抗Jo-1 抗体を含む抗ARS抗体),炎症反応を含める.

典型的皮疹がなく,抗ARS抗体も陰性の場合には,筋電図や筋生検により他の原因による筋疾患を鑑別する必要がある.

鑑別診断

多発性筋炎では筋力低下や筋痛を来たす疾患を鑑別する必要がある.

インフルエンザウイルスやコクサッキーウイルスなどによる感染性筋炎
D-ペニシラミン,プロカインアミド,スタチン系抗高脂血症薬などによる薬剤誘発性筋症
甲状腺機能低下/亢進症などの内分泌異常による筋症
筋ジストロフィーその他の先天性筋疾患
封入体性筋炎など

皮膚筋炎では湿疹・皮膚炎群を含むその他の皮膚疾患が鑑別疾患.

治療

国際的に認められた治療のガイドラインはない.

筋炎の治療

副腎皮質ステロイドが第一選択薬.

筋炎に対してプレドニゾロン(prednisolone:PSL)換算1 mg/kgの高用量で開始し,2~4 週間継続後,筋力の改善とCK値を指標として1~2 週ごとに約10%の割合で漸減する.

維持量はPSL 5~10 mg/日とする.

ステロイド療法で全く筋力回復がない場合には,封入体性筋炎など他の筋疾患を再度鑑別する.
・高用量副腎皮質ステロイドによる治療中,CK値の改善にもかかわらず筋力低下と筋萎縮が進行する場合には,ステロイド筋症の鑑別が必要になる.

ステロイド療法単独では効果不十分,減量中の再燃傾向,精神症状等の副作用のため副腎皮質ステロイドの減量・中止が必要な場合には免疫抑制薬を併用する.
・免疫抑制薬としてはメトトレキサート(methotrexate:MTX),アザチオプリン(azathioprine:AZA), タクロリムス(tacrolimus:TAC), シクロスポリン(cyclosporine:CsA),シクロホスファミド(cyclophosphamide:CY)など.
*AZA,CY以外は筋炎に対しては適応外使用になる.
*MTXは副作用として間質性肺炎を来たし得るので,間質性肺炎合併例では使用を避けるべきである.

免疫グロブリン大量静注療法は免疫グロブリン400 mg/kgを5 日間連続点滴静脈注射する方法で,副腎皮質ステロイドおよび免疫抑制薬に抵抗性の筋炎や嚥下障害では適応となる.

皮膚病変の治療

筋炎に対する副腎皮質ステロイド内服に伴い皮膚症状も改善するが,減量とともに皮膚症状のみ再燃する例も多い.

紫外線は増悪因子なので避けるべきである.

皮膚病変が主体の場合には局所ステロイド療法を優先する.

間質性肺炎の治療

急速進行性間質性肺炎はCADM,抗MDA5抗体陽性,血清フェリチン高値と関連している.

極めて予後不良であるため,診断後速やかにパルス療法を含む高用量ステロイド療法(PSL 1 mg/kg/日)に免疫抑制薬を併用する.
・免疫抑制薬はカルシニューリン阻害薬(TACまたはCsA)やCYまたは両者の併用が行われる.

慢性間質性肺炎は抗ARS抗体と関連しており,進行する例ではTACが適応となる.

悪性腫瘍合併例の治療

悪性腫瘍に対する根治的治療により,筋症状や皮膚症状が改善することがあるため,原則として悪性腫瘍合併例では悪性腫瘍の治療を優先する.

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