リウマチ性多発筋痛症 polymyalgia rheumatica;PMR

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

1)平均発症年齢が70~75歳と高齢者に多いリウマチ性疾患である.
2)PMR発症時あるいは経過中に,20%前後の患者で巨細胞性動脈炎(giant
cell arteritis;GCA)を合併するとされている.
3)肩関節の上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎,三角筋下滑液包炎,股関節の大転子部滑液包炎,座骨結節や恥骨結合,寛骨臼の関節包外の炎症病変を特徴とする.
4)診断には分類基準が参考となるが,PMR様の症状を呈する類似疾患の除外診断を必要とする.
5)末梢関節病変を伴うPMRは,関節リウマチとの鑑別が困難な場合がある.
6)ステロイド療法は有効であるが,再発率は30~50%程度と高い.

疫学

1)通常50歳以上の中高年に発症し,平均発症年齢は70~75歳と高齢者に多い.
2)患者の男女比は1:2~3 で女性に多いと報告されており,近年は発症頻度の増加が指摘されている.
3)以前は悪性腫瘍の合併も指摘されていたが,近年欧米で行われた前向きのコホート研究の結果では,年齢を一致させたコントロール群と悪性腫瘍発現の頻度に差を認めなかった.

病態

両肩関節では上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎,三角筋下滑液包炎,肩甲上腕関節滑膜炎,股関節では大転子部に骨液包炎,座骨結節や恥骨結合,寛骨臼に関節包外の炎症病変を認める.

・関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)が関節内の増殖性滑膜炎を特徴としている点と異なる.
・多発性筋炎・皮膚筋炎のような筋炎は伴わない.

症候

症状

肩,股関節及びその周囲の持続性の疼痛あるいは朝のこわばり

1)急性発症を特徴とするため,患者が発症した日付も訴える場合がある.
2)自覚症状としては,肩,股関節の疼痛を特徴とするが,疼痛よりもこわばりが主体となることもある.
3)こわばりが主体である場合は,患者が肩関節痛を訴えないことがあるため,慢性炎症に伴う全身症状が前面に立って,リウマチ性疾患であることに気付かない場合があることに注意が必要.
4)疼痛が安静の姿勢から動き出しのときに自覚され,夜間痛が強いのもPMRの特徴.
5)睡眠中,寝返り時に肩や股関節の疼痛を自覚し,睡眠障害を伴うことが問診で確認されることがある.
6)夜間や起床時の症状が強く,日中は疼痛が軽減しているケースもある.

3分の1程度では発熱,全身倦怠感,体重減少,食欲不振等の全身症状を認める.

感染症疾患と比べると,炎症反応高値にもかかわらず,全身状態が良好な印象を受けることが多い.

身体所見

PMRの肩関節病変は,両肩関節の上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎,三角筋下滑液包炎,肩甲上腕関節滑膜炎を特徴とするため,肩の挙上制限,上腕二頭筋腱付着部の圧痛,肩峰下の棘上筋腱付近の圧痛,三角筋の把握痛を確認する.

1)関節エコーはこれらの病変同定に有用である場合がある.
2)疼痛を訴えなくても,患者に上肢の挙上を指示すると可動域制限があり,肩関節病変の存在を認識できる場合がある.
3)通常,PMRは両肩に病変を認めるが,病変の程度に左右差があり,疼痛は片側のみで,対側はこわばりや肩関節可動域制限のみであることがある.

大転子部滑液包炎,座骨結節や恥骨結合,寛骨臼の関節包外の炎症病変を特徴とするため,触診で大転子部,腸骨,座骨結節付近の圧痛や把握痛の有無を確認する.

1)股関節病変は,診察室で椅子から立ち上がらせて疼痛を自覚するか確認する.
2)疼痛がなくても,椅子からスムーズに立ち上がれなくなったと訴える場合もある.

頸椎,腰椎の棘突起間の滑液包炎が認められると,後頸部痛,腰背部痛が自覚される

筋把握痛や圧痛として確認できることもある.

肩,股関節以外に末梢関節症状を認めるケースは20~30%程度存在する.

1)関節炎よりも腱鞘炎と腱周囲の反応性の浮腫を特徴とするため,手関節から手指に圧痕性浮腫を伴い,こわばりと運動時痛を自覚する.
2)手関節,MCP関節,PIP関節の圧痛はRAほどはっきりしない場合が多い.
3)手関節屈筋腱の腱鞘滑膜炎と周囲の浮腫から手根管症候群を合併するケースもある.
4)高齢発症のRAでも関節滑膜炎と腱鞘滑膜炎を両方伴うことがあるため,両者の鑑別に注意が必要である.

血液検査

炎症反応(CRP高値,赤沈亢進等)を認める.

診断

明確な診断基準はなく,疫学研究目的で作成された分類基準を参考にして診断することが多いが,同様の症状を呈する疾患を除外する必要がある.

1)両肩の関節症状があることと血液検査で炎症反応が認められることが必須である.
2)以前使用されていたHealeyの診断基準には,20 mg以下のPSL(prednisolone)に治療反応性が良好なことが項目として挙げられていたが,近年は診断的治療として安易にPSLを開始することは推奨されていない.

2012年分類基準

必須項目に加えてスコア4点以上の場合,リウマチ性多発筋痛症と分類する(特異度78%,感度68%).

必須項目
年齢50歳以上
新規発症の両肩関節痛
CRP あるいは赤血球沈降速度の異常

スコア
1.45 分以上持続する朝のこわばり(スコア2 点)
2.股関節痛あるいは股関節の可動域制限(スコア1 点)
3.リウマトイド因子陰性,抗CCP 抗体陰性(スコア2 点)
4.肩関節,股関節以外の関節病変を伴わない(スコア1 点)

症状が類似する疾患

リウマチ性疾患
高齢発症関節リウマチ
偽痛風
結晶誘発性関節炎
高齢発症乾癬性関節炎
脊椎関節症
巨細胞性動脈炎
ANCA 関連血管炎
高齢発症全身性エリテマトーデス

 末梢関節症状を伴ったPMRとリウマトイド因子陰性の高齢発症RAを鑑別することは困難な場合があり,PMRはステロイド療法主体,RAはメトトレキサート(methotrexate:MTX)主体に治療を行うため,両疾患の鑑別はリウマチ専門医に依頼するのが望ましい.
 関節エコーやMRIは,手関節,MCP関節,PIP関節の滑膜肥厚と滑膜炎を同定することで,末梢関節症状を伴うPMRと高齢発症RAを鑑別するのに有用である場合がある.

 偽痛風は高齢者で頻度が多く,急性発症でPMRと類似した臨床像を示し,NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)が著効する.
 ステロイドへの治療反応性も良好であるため,PMRと偽痛風は混同されやすい.
 膝,手関節,肩関節,股関節,恥骨結合,足関節等で軟骨石灰化像を確認できる場合,PMRよりも偽痛風を先に疑う.
 頸部痛を伴っている場合は頸部の偽痛風の場合があり,CTで歯突起周囲に石灰化像を確認できる場合がある.

炎症性筋疾患
非炎症性疾患線維筋痛症
変性疾患

悪性腫瘍
固形がん
血液腫瘍

 悪性腫瘍は慢性炎症,CRP(C-reactive protein)持続高値,非特異的な筋骨格症状を伴うケースがあり,注意が必要.

感染症
ウイルス感染
敗血症
細菌性心内膜炎
敗血症性関節炎
抗酸菌椎体炎

非特異的な筋骨格症状あるいは関節炎を合併することがある.

その他
甲状腺疾患
Parkinson 病
うつ病
薬剤関連(スタチン等)
ミオパチー

巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis;GCA)の確認

PMR診断時,PMRのステロイドへの治療反応性が悪いとき,PMR再発時にはGCAの大動脈炎型を合併している可能性に留意が必要である.

必ずしも側頭動脈病変を伴わないケースがあり, 造影CTや造影MRI,PET-CT(現在のところ保険未収載)で病変が同定される場合がある.

治療

ステロイド

1)EULAR/ACRガイドラインでは合併症,ステロイド関連の副作用のリスク,治療反応性に関連する因子を考慮して,ステロイド投与量を12.5~25 mgで選択・開始することが推奨されている.
・欧米のプロトコールであり,日本人と欧米人の体重差に留意する必要がある.
2)PSLの漸減は,関節リウマチと比較するとゆっくりで,長期に使用することが推奨されている.
・PSLの長期使用に関しては安全性の観点から問題点が指摘されている.
・初期ステロイドの投与量が多いほど,また,累積投与量が多いほど,ステロイド関連の合併症(感染症,骨折,白内障,糖尿病,消化管出血等)のリスクが高くなると考えられている.

PMRに対する標準的なプレドニゾロン(PSL)投与方法
1)12.5~25mg(0.25~0.3 mg/kg)で開始
2)4~8週で10mgまで減量
3)10mg×4週
4)9mg×4週
5)8mg×4週
6)7mg×4週
7)6mg×4週
8)5mg×4週
9)4mg×4週
10)3mg×4週
11)2mg×4週
12)1mg×4週
13)中止

ステロイドの中止について
 実臨床においてステロイドの中止がどの程度可能であるかを検討した英国の前向き観察研究報告では,再発率は2年で50%であったが,再発例に対してはPSLの増量で再寛解導入され,5 年後に約70%でステロイドを中止できたことが報告されている.

再発率と再発予測因子
1)ステロイド減量中の再発率は,ステロイドの減量速度や再発の定義により異なるが,30~50%程度である.
2)治療開始後にCRPが正常化しないと再発しやすいことは前向きの観察研究で報告されている.
・ステロイド減量中に症状を伴わずにCRPのみ増加した場合は,感染症や悪性腫瘍を念頭に内科的な鑑別診断が大切となる.
3)治療開始時の再発予測因子はベースラインのESR,女性,末梢関節病変が挙げられているが,否定的な研究結果もある.

ステロイド抵抗例に対するMTXの使用(本邦では保険適用なし)

2015 年のEULAR/ACRでMTXの使用を考慮することが具体的に明記された点で,再発例,ステロイド関連の副作用が問題となる症例,ステロイドの長期継続が必要なケースで,MTXを検討することが推奨されている.

1)エビデンスレベルはmoderate highと位置付けられ,その根拠はRCT(randomized controlled trial)により,MTX+ステロイド群はプラセボ+ステロイド群よりも有意に寛解率が高く,再発率が低く,ステロイドを中止できる頻度が増すことが示されている.
2)安全性を主要評価項目とする研究はなく,MTX併用によるステロイドの副作用の軽減効果は証明されていない.

タイトルとURLをコピーしました