真性多血症 polycythemia vera;PV

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

○多能性ないし造血幹細胞の腫瘍性増殖により主として赤血球の絶対量が増加すると同時に白血球,血小板も増加する疾患.
・赤血球のみの増加を示す純赤血球増多症も含まれる.

疫学

○中年以降に多く,男性にやや多い.
○年間発生頻度は欧米に比し本邦では低く,人口10万対0.2程度.

予後

○慢性の経過をとり平均生存期間は10年以上.
・死因は血栓症が多い.

○本症の約1/4では,経過中に骨髄線維症に移行し,骨髄の造血能が低下し,脾腫が増大する.この時期は消耗期と呼ばれる.
・長期のフォローによる急性白血病への移行は10~20%.

病態

○赤血球系前駆細胞BFU-E・CFU-Eはエリスロポエチンに非依存性の増殖を示す.
→エリスロポエチンに増殖感受性が高く,培地に含まれる微量のエリスロポエチンに反応して増殖する.

○インスリン様増殖因子-1(IGF-1)に高い感受性を示す.

○エリスロポエチン非依存性にアポトーシスも抑制され赤芽球の増殖に関与している.

血栓症

○脳血栓,心筋梗塞など動脈血栓症が起こりやすくなり,高血圧を伴うことが多い.
・血液粘稠度が増加するため.

皮膚掻痒感

○増加した好塩基球などの血球からは,ヒスタミンが放出されるため,皮膚そう痒感の原因となる.
・特に風呂上がりに多い.

臨床症候

○初発症状としては頭痛,倦怠感を訴える.
・無症状で検診にて見いだされる症例も多い.

○皮膚および粘膜の紅潮(赤ら顔)がみられる.
・口唇,鼻尖は深紅色を呈する.

○眼瞼結膜,眼球結膜は充血する.

検査所見

○赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリットのいずれも増加する.
・ヘモグロビン合成による過剰な鉄消費のため,あるいは瀉血などの処置の結果,赤血球は小球性低色素性を示す例が多い.
○白血球数も好中球が主として軽度~中等度増加するが,幼若顆粒球を認めることは比較的少ない.
○血小板数も増加する.
・血小板凝集能などの血小板機能異常を示す例もある.

○血球数増加に伴い高尿酸血症,高LDH血症が生ずる.
・二次性痛風もみられることがある.
○好中球アルカリホスファターゼは増加する例が多い.
○血清エリスロポエチンは赤血球造血の亢進に対するフィードバック機構により低値となる.

○骨髄は過形成像を示し,赤芽球系,顆粒球系の各成熟段階の細胞,巨核球の増加がみられる.
・高齢者の場合,腸骨では本来低形成のため過形成を示さないこともある.
・骨髄染色体検査は通常正常であるが,del(20q),+8,+9などの異常もみられる.

画像所見

○脾腫が触診あるいはエコー検査で認められる.

診断

○循環赤血球量を51Cr標識自己赤血球を用いて測定し,絶対的増加を確認する(男性では36mL/kg以上,女性では32mL/kg以上,あるいは予想赤血球量の25%以上の増加).
・本検査の実施が不可能な施設もあることが難点.

○血清エリスロポエチン濃度を測定して,高値でなければ本症と診断できる.

○試験管内での赤芽球コロニー形成(BFU-E,CFU-E)において,エリスロポエチン非依存性のコロニー形成を観察することは重要であるが,実施可能な施設は限られる.

二次性赤血球増多症

○相対的赤血球増多症に分類されるストレス多血症は日常よく遭遇し,血漿量が減少することにより,見かけ上,赤血球数の増加を認めるもので,白血球数,血小板数の増加はみられない.

エリスロポエチンの適切な増加によるもの

○高地滞在,慢性閉塞性肺疾患,心疾患,異常ヘモグロビン症などが含まれる.
○動脈血酸素飽和度の低下がみられる.

異常産生によるもの

○エリスロポエチン産生腫瘍,腎疾患が含まれる.

治療

○一般人口と比較したPVの5 年,8 年生存の割合は0.93(0.89~0.96),0.84(0.77~0.90),ETのそれは0.97(0.93~1.00),0.91(0.84~0.97)と比較的良好であり,その治療目標は合併する血栓症の予防となる.

○年齢≧60歳,または血栓症の既往がある場合が血栓症の高リスク群.
・喫煙・高血圧・糖尿病などの心血管系リスクファクターの存在,白血球数上昇,JAK2 変異の存在なども血栓症のリスクを上昇させるとの報告もあるが,まだはっきりとした結論は出ていない.

リスクファクターの管理

○喫煙,高血圧,高脂血症,肥満,糖尿病などのいわゆる血栓症の一般的なリスクファクターがある場合は,これらの治療を行う.

アスピリン投与

○血小板数が著増しているなどアスピリン投与が禁忌の例を除き,低用量のアスピリンを投与する.
・低リスクPVに対しアスピリン100 mg/日,あるいはプラセボを投与した無作為試験の結果,アスピリン投与は出血のリスクは増大させず,非致死的な心筋梗塞,脳血管障害,肺梗塞,重篤な静脈血栓症,あるいは心血管病変に伴う死亡リスクを0.40に減少させることが報告されている.

瀉血

○Ht(ヘマトクリット)<45%を目標に,血圧,脈拍などの循環動態をみながら1 回200~400 mlの瀉血を月に1~2度のペースで行う.
・高齢者や心血管障害を有する例では,循環動態の急激な変化がないように,少量(100~200 mL),頻回の瀉血が望ましい.
・瀉血後に同量の補液を行うと,血行動態の変化を抑えられるのみでなく,Ht値が希釈により低下することも期待される.

○瀉血の目標値に関しては議論があったが,2013 年にHt<45%を目標に治療する群(低Ht群)の方が,45%≦Ht≦50%を目標に治療する群(高Ht群)と比較して,心血管障害または主要血栓症による死亡が少ないという前向き無作為比較試験の結果が報告されている.

骨髄抑制療法

○年齢≧60歳,または血栓症の既往がある場合は,血栓症の高リスク群であり,ハイドロキシウレア(hydroxyurea:HU)を用いて骨髄抑制療法を行う.

○妊娠中や挙児希望者あるいは40 歳未満の場合は,interferon(IFN)-αの使用を考慮する.

タイトルとURLをコピーしました