下垂体腺腫 pituitary adenomas

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なすび医学ノート

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ホルモン非産生腫瘍(非機能性腺腫)は,下垂体腫瘍の25~ 30%を占め,腫瘍からのホルモンの過剰分泌による症候を欠き,視野異常,下垂体機能低下症,頭痛などの占拠性症候を呈する腫瘍.

病態

当初,この腫瘍は病理学的には嫌色素性腫瘍で免疫染色上も既知の前葉ホルモンのいずれにも陰性で,発生起源不明なnull cell adenomaと呼ばれる超微形態像を示す腫瘍と位置づけられてきた.
but その後の研究により,非機能性腺腫は単独の病理学的疾患ではなく,種々の組織形態像を呈することが判明した.
→既知の前葉細胞に類似する腫瘍細胞からなるsilent GH adenoma,silent ACTH adenoma, silent gonadotroph adenomaや,その細胞起源が未だ明確でないnull cell adenomaやsubtype3腺腫が含まれる.

Silent typeの腫瘍は,本来機能性腺腫と同様の病理所見を呈するが,①ホルモン産生量が極めて少ない,②免疫学的活性はあるもののホルモン活性を有さないホルモンが分泌されている(big ACTHの分泌や,FSH,LH等での非結合型ゴナドトロビンサブユニットの過剰産生)などにより,非機能性となるものと考えられている.

症候

症状

通常macroadenomaで発見され,視力視野異常(43~84%),下垂体機能低下症による症状(22~61%),頭痛(8~36%)などを呈する.

GH分泌障害はほぼ100%で,LH/FSH分泌障害(81~87%),TSH分泌障害(18~81%),ACTH分泌障害(36~62%)と続く.

稀に腫瘍によるstalk section effectから高PRL血症,乳汁分泌を認めるが,血中PRLは250ng/mL以下と軽度上昇に留まる.

初発例の下垂体腫瘍でDIを呈することはなく,DIが認められれば,通常下垂体腫瘍は除外できるといっても過言ではない.

その他,稀に下垂体卒中を併発し外眼筋麻痺や複視などを認める.
腫瘍が極めて大きな場合には,片麻痺や記銘力障害などの高次機能障害などを呈することがある.

視機能の異常は,両側の上外側から始まり進行すると典型的な両耳側半盲となるが,自覚症状に乏しく眼科的精査にて初めて視野異常を指摘されることも稀ではない.

基礎ホルモン,負荷試験

本来,下垂体機能低下の評価には負荷試験による予備能の状況まで確認することが必要であるが,稀に負荷試験が原因で下垂体卒中を呈することが判明し,大きな腫瘍が一般的な非機能性腺腫では,術前に負荷試験をルーチンに行うことはなくなっている.

早朝安静空腹時に採血を行い,GH,IGF-1,PRL,TSH,FT3,FT4,LH/FSH,テストステロン(男性),エス卜ロゲン(女性),ACTH,コルチゾールを測定し,機能低下や術前の補充の必要性を判定している.
・必ず下垂体ホルモンとその標的器官のホルモンを同時に測定する.

視機能検査

視機能の評価については,眼科に依頼することとなるが,下垂体疾患の視野異常の評価には従来の動的視野検査(ゴールトマンの視野検査)よりも静的視野検査(ハンフリーの視野検査)の方が鋭敏でより適切.

頭部MRI

腫瘍の大きさ,性状,周囲組織との関係の把握にはMRI検査が最も適している.

通常3mmスライスでトルコ鞍とその近傍部の冠状断,矢状断での単純,造影T1強調画像と冠状断(時に矢状断)での単純T2強調画像が基本となる.

googleで画像検索「下垂体腺腫+MRI」

診断

問診

占拠性症候としての視機能障害および下垂体機能低下症の有無を確認する必要がある.
・視機能障害について自覚的に異常があるかどうか,あるとすればどのような症状で,いつ頃から自覚したのか,進行性かどうかなどを聴取する.
・下垂体機能障害については男性では性欲の低下,インポテンツ,女性では無月経など性機能の状況を確認,さらに腋毛,陰毛の脱落,乳房の萎縮,筋力・運動能力の低下,易疲労感,全身倦怠,筋力低下,食欲不振,低血圧,体重減少,耐寒性の低下,鬱気分の有無など下垂体機能低下の自覚症状を聴取する.
・一般に汎下垂体機能低下症の患者では,元気がなく,皮膚に張りや光沢がなく乾燥し,眉や髭が薄い特徴的な顔貌を示す.
・その他,頭痛の有無,多飲多尿の有無なども同時に聴取する必要がある.

治療

非機能性下垂体腺腫のほとんどはmacroadenomaで,治療の第一選択は外科的腫瘍摘出.

外科的腫瘍摘出

その際,ほかの頭葉内病変の合併や著しい血管への浸潤を伴うなど極めて稀な場合を除き,まず経蝶形骨洞的腫傷摘出(TSS)を第一選択とする.

初回手術で不十分な場合には腫瘍の下垂を待って再度TSS (staged surgery)を行うか,開頭術による摘出を考慮する。また,腫瘍極めて浸潤性が強い場合や,線維性で硬く大きな腫療の場合には拡大TSSや開頭術とTSSを同時に行う方法などが考案されている.

残存腫瘍に対する放射線照射については,下垂体機能障害の危険性から,その治療頻度は低下している.

一般に本腫瘍の成長は極めて緩徐ではあるが,再発を繰り返している症例や,増殖能の高い腫瘍(Ki-67スコアリング〔MIB-1index〕が高く,p53陽性細胞比率が高いもの)では,放射線照射を行うのが無難である.

腫痕が限局している場合には,γナイフやサイバーナイフなどのradiosurgeryが有効である.病変が広範囲に及ぶ場合はリニアック照射が適応となる.

薬物療法

ドーパミン作働薬,オクトレオチドなどが症例を選んで試されており,視野異常の改善や腫瘍サイズの縮小などが報告されているが,現在その有効性が確立されている薬剤はない.

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