褐色細胞腫 pheochromocytoma

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なすび医学ノート

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副腎髄質のクロム親和性細胞が腫瘍化したもので,カテコラミン等の種々の生理活性物質を生成分泌し,高血圧等の多彩な臨床症状を呈する.

1)手術で治癒可能な内分泌性高血圧症.
2)典型例の診断・治療は容易で,血中・尿中カテコールアミンと代謝産物の増加および画像検査で腫瘍を確認する.
3)多くの場合,腫瘍摘出により高血圧,カテコールアミンは正常化する.
4)最大の課題は悪性例で,内分泌性高血圧のなかで悪性の割合が最も高い.
5)当初は鑑別が困難なため全身検索,摘出組織の検索,定期的経過観察が必要である.悪性例では集学的治療を行う.

疫学

1)発生頻度は高血圧患者の0.1~0.6%と稀.
2)2008年度の本邦の疫学調査では推計患者数は約2,920人.
3)男性47.1%,女性52.9%
4)平均年齢は良性例で55.3 歳,悪性例で53.0 歳と10 代から80代まで広く分布していた.
5)不明例を除く腫瘍の局在は,副腎82.7%,副腎外17.3%(腹部76%,膀胱12%,胸部4%)であり,他臓器に転移する悪性例の割合は副腎で約11.4%,副腎外で33.3%.
6)褐色細胞腫の10~20%は副腎偶発腫瘍として発見されており、その内訳は高齢者が多数を占める.J Clin Endocrinol Metab 2003;88:4533-4539

病態

両側性,多発性,悪性例,遺伝性が各々約10% を占めることから,10%病ともよばれていた.

近年,褐色細胞腫の遺伝子変異が多数明らかになり,約40%の褐色細胞腫が,遺伝性で胚細胞変異により発症することが明らかになった.
・特にコハク酸脱水素酵素サブユニットBおよびD(SDHB,SDHD)の変異との関連が示唆されている.

extra-aderenal:副腎外

・腹部大動脈周囲,膀胱部,腎動脈周囲,Zuckerkandl小体(腹部大動脈分岐直上の大型の傍神経節)の順に多い.
・その他に縦隔,頸部,心,腎,脾,睾丸にも発生する.

malignant:悪性

・病理的に悪性度を判定するのはしばしば困難で,臨床的にクロム親和性細胞の本来存在しない組織,たとえば肝臓などに発生すれば悪性であり,転移と判定される(リンパ節・肝・肺・骨に多い).
・周辺組織への浸潤も悪性の所見.

familal:家族性

コハク酸水素酵素(SDH)のサブユニットBあるいはDの遺伝子変異が原因.
・SDHはミトコンドリアの電子伝達系の酵素で,機能異常は低酸素,血管新生を介して腫瘍を発生する.
→悪性ではSDHBの変異頻度が高いと報告されている.

1)低酸素シグナルに関わるもの:SDHx,VHL遺伝子など
→ノルアドレナリンの過剰産生
2)リン酸化酵素シグナルに関わるもの:RET,NF1遺伝子など
→アドレナリンの過剰産生
・家族性の場合は両側病変の頻度が高い.

Sipple症候群(MEN2A型)(常・優)の部分症

・RET遺伝子
・甲状腺髄様癌を合併
・50%の症例で両側性副腎褐色細胞腫を認め,アドレナリン優位.

von Recklinghausen症

・カフェオレ斑,神経線維腫症

von Hippel Lindau病(常・優)

・小脳網膜血管芽細胞腫
・VHL遺伝子(癌抑制遺伝子)
・10~20%の症例で両側性副腎褐色細胞腫を認め,ノルアドレナリン優位

悪性褐色細胞腫

・約10% は悪性で,当初は良性とみえた腫瘍が,後年,悪性と判明する例も少なくない.
・初発後1~ 2年で診断,手術,その後平均5年で再発し,その後約7年の経過で死亡する例が多い.
・非クロマフィン組織(骨,肺,肝,腎など)の病変や局所進展があれば悪性と診断できるが,多くは初回診断時の診断は困難である.
・ノルアドレナリン優位がほとんど.
・悪性例の原発巣は約3/4が副腎・腎門部,ついで膀胱,心臓の順であり,再発部位は骨,肺,肝への転移,腹腔内腫瘍,局所再発が多い.
→副腎・腎門部の腫瘍は悪性の可能性に注意する.

褐色細胞腫クリーゼ

カテコールアミンの過剰分泌により,急激な血圧上昇を示す.

クリーゼを発症した際の致死率は15%との報告もあり,血圧だけでなく全身の循環動態の管理が必要.

症候

カテコールアミンは交感神経受容体のα受容体の方に強く作用する.

・無症候性33.7%,症候性66.3%.
・頭痛,動悸,発汗,顔面蒼白,体重減少など多彩な症状を示す.
・高血圧,高血糖,代謝亢進をHoward三主徴とよぶ.
・心筋梗塞類似の胸痛を示すことあり,肥満はまれである.

5つのH
hypertension and orthostatic hypotension
headache
hyperhidrosis(多汗)
hypermetabolism→やせ,頻脈,振戦,発汗過多,FFA↑(Basedowと類似),TC↑,便秘(Basedowと相反)
hyperglycemia

高血圧 hypertension and orthostatic hypotension

・高血圧を約85%に認める.発作性高血圧48%、持続性高血圧29%、正常血圧13%.
・収縮期血圧・拡張期血圧ともに上昇する(Basedow病は収縮期↑,拡張期↓)
 カテコールアミンのα1作用→末梢血管が収縮
 カテコールアミンのβ1作用→腎傍糸球体装置でのレニン分泌が促進
・血管収縮→血管容積縮小→循環血漿量は低下
・起立性低血圧を示すこともある(カテコールアミン過剰状態の継続→自律神経の血圧調節能力↓).
・悪性高血圧→高血圧性脳症,左室肥大,視力障害,眼底変化はKWⅢ・Ⅳ度と高度のことが多い.
・各種刺激(運動,ストレス,過食,排便,飲酒,腹部触診)で高血圧発作が誘発される(褐色細胞腫クリーゼ,高血圧クリーゼ),メトクロプラミド(プリンペラン®)静注による高血圧発作に注意する.

耐糖能障害 hyperglycemia

・本邦では59%
・インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の両者が関与する.
・インスリン分泌は,抑制系のα2アドレナリン作動性受容体と促進系のβ2アドレナリン作動性受容体により制御されるが,通常は抑制系が優位であることから,カテコラミン過剰となる褐色細胞腫では多くの場合α2アドレナリン作動性受容体を介してインスリン分泌の抑制につながる.
・カテコラミンはβ受容体を介してグルカゴン分泌を促進し,肝グリコーゲン分解と糖新生を促進する結果,肝糖放出を増加する作用を有する.
・脂肪組織での脂肪分解,筋でのグリコーゲン分解と糖輸送低下を惹起する.
・カテコラミンはインスリン受容体,チロシンキナーゼ,糖輸送担体,解糖系などの各レベルを障害することで,インスリン抵抗性が悪化すると考えられている.

一般検査

・白血球増多,高度の高血圧性眼底, ECG異常(不整脈,虚血性所見,心肥大)がみられる.
・約半数に脂質異常症,耐糖能障害を認める.後者にはインスリン抵抗性,インスリン分泌抑制が関与する.

診断

内分泌学的検査

1)バニラ,バナナ,コーヒー,チョコレート,柑橘類は検査に影響を与えるため,入院精査では禁止.
2)脳梗塞,心筋梗塞,心不全,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合には,カテコールアミンやメタネフリン分泌は亢進してよいので,シンチグラフィやMRIも参考に総合的に診断する.
3)偶然発見されたPPGLは高血圧やカテコラミン過剰症状等の臨床徴候がない無症候例が多く,血中カテコラミン測定によるスクリーニングは有用性が低い.
→最初に随時尿MN+NMN測定で複数回スクリーニングを行う.

低リスク群(治療抵抗性高血圧,アドレナリン過剰分泌による発作症状[動悸・発汗過多・頭痛・振戦・蒼白など])
→24時間尿中メタネフリン,ノルメタネフリンでスクリーニング

高リスク群(PPGLの家族歴,MEN2などに伴う家族性PPGL,PPGL術後,副腎偶発腫瘍[脂肪含量が少ない]
→血漿遊離メタネフリン,ノルメタネフリンでスクリーニング

血中カテコールアミン

血漿ノルアドレナリン+アドレナリンが1000pg/mL以上で褐色細胞腫の疑いとする.

1)血中カテコールアミン増加を認めるが,血中値は生理的にも変動幅が大きい(体位・ストレス・運動など).
2)ノルアドレナリンからアドレナリンへの変換酵素は副腎髄質にのみ存在するため,アドレナリン優位の腫瘍の多くは副腎原発,ノルアドレナリン優位の腫瘍は副腎外原発(パラガングリオーマ)が多い.
3)DOPA,ドパミンの増加,ノルアドレナリン有意の増加(アドレナリン/ノルアドレナリン+アドレナリン比低下)は悪性を示唆する.
4)約10%はホルモン非産生性で,クロモグラニンA(カテコールアミンのキャリア蛋白)が診断,治療効果の判定に有用だが,測定は特殊な施設に限定される.

尿中カテコールアミン

尿中カテコールアミン三分画

尿中ノルアドレナリン 170μg/日以上 or 尿中アドレナリン 35μg/日以上 or 尿中ドーパミン 700μg/日以上で陽性

1)感度,特異度が高い.
2)確定診断には24時間蓄尿中(塩酸蓄尿)のカテコールアミンを測定し,増加を確認する(正常の10倍以上が多い).
→入院したら24時間塩酸蓄尿し,総カテコールアミン,カテコールアミン三分画,総メタネフリンとメタネフリン分画の測定をする.

尿中メタネフリン,ノルメタネフリン

代謝産物メタネフリン,ノルメタネフリンは安定しており,随時尿でも高値なため,スクリーニング,発作型の診断に有用.

1)外来では総メタネフリン(メタネフリン+ノルメタネフリン)が500μg/gCrで褐色細胞腫の疑いとする.
2)確定診断には24時間蓄尿中(塩酸蓄尿)のカテコールアミンを測定し,増加(正常上限の3倍以上)を確認する(正常の10倍以上が多い).
→入院したら24時間塩酸蓄尿し,総カテコールアミン,カテコールアミン三分画,総メタネフリンとメタネフリン分画の測定をする.
3)尿中総メタネフリン 1300μg/日以上で陽性.感度90%,特異度98%.
4)海外では血中遊離メタネフリン分画の有用性が報告されており,2019年1月よりスクリーニング目的で保険適用となった.
 感度96~100%と高感度であるが,特異度85~89%とやや低い.

尿中HVA(ホモバニリン酸,homovanillic acid),VMA(バニリルマンデル酸,vanillylmandelic acid)

・ドーパミンは代謝されて,最終的にHVAになり尿中に排泄される.
・アドレナリンとノルアドレナリンは代謝されて,最終的にVMAになり尿中に排泄される.

機能試験

・誘発試験やレギチン試験(血圧降下を指標)は特異性,安全性の観点から実施は推奨されない.
・クロニジン試験(中枢α2受容体に作用)でノルアドレナリンは低下しない.

CT

・腫瘍は円形,辺縁平滑で径3cm以上が多い.
・単純CTでは低吸収あるいは腫瘍内の出血,壊死,嚢胞性変化のため内部不均ーとなり,低~高吸収域が混在,まれに小石灰化もある.
・充実性成分は血管に富み,早期の造影効果が特徴である.

褐色細胞腫における造影剤使用はクリーゼ誘発の可能性があるため原則禁忌になっており,“やむを得ず実施する際にはフェントラミン(レギチーン®),プロプラノロールを準備する必要”がある.

18F-FDG PET/CT
 悪性褐色細胞腫は,86~100%の感度および100%の特異度を有する.

MRI

・T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号あるいは低~高信号域の混在が特徴.
・内部は不均ーなことが多い.
・腫瘍内の出血,壊死,嚢胞変性はT2強調画像で著明な高信号として摘出される.
・充実性成分は早期相で強く造影される.
・副腎近傍の交感神経節から発生した場合は副腎原発か否かの診断が困難である.

123I-MIBG(131I-MIBG)シンチグラフィ

・123I-mela-iodobenzylguanidine(MIBG)(131I-MIBG)はノルアドレナリンと構造が類似し,交感神経終末や副腎髄質の貯蔵頼粒に集積する.
・皮質腫瘍との鑑別,副腎外病変,悪性褐色細胞腫の転移巣の検索に有用である.
・転移巣の検索では全身スキャンを行う.
・約10%の偽陰性がある(未分化な腫瘍や副腎外腫瘍では陰性となることがある)
・悪性の場合,約50%が陰性を示す.
・123I-MIBGは半減期が短く,131I-MIBGよりも画質が良好で,CTとの組み合わせでSPECT画像が可能である.
*甲状腺への無駄な被爆を防ぐために前処置(ヨードブロック)として,静注前日にKI末1回100mgを1日3回で経口投与する.

診断

・高血圧,耐糖能異常,動停などの症状から疑う.
・カテコールアミンと代謝産物の過剰を証明する.
・時にクロニジン試験でノルアドレナリン分泌の自律性を評価する.
・約90%は副腎原発で局在診断は容易であり,約10%は副腎外原発で時に局在診断が困難である.
・頭蓋内病変は頭部MRI,CT,脊椎に沿った交感神経節はMRI縦断像,後縦隔(左心房後面など)は胸部単純X線,胸部CT,膀胱後壁は骨盤CTやMRIで検索する.

診断基準

確実例:必須項目①+副項目① or 必須項目①+副項目②+副項目③-1
疑い例:必須項目①+副項目②+副項目③-2 or 必須項目①+副項目③-1
除外項目:偽性褐色細胞腫

必須項目
①副腎髄質または傍神経節組織由来を示唆する腫瘍[注1]

副項目
①病理所見:褐色細胞腫の所見[注2]
②検査所見:1-3のうち1つ以上の所見があるときを陽性とする.
1.尿中アドレナリンまたはノルアドレナリンの高値[注3]
2.尿中メタネフリンまたはノルメタネフリンの高値[注3]
3.クロニジン試験陽性[注4]
③画像所見
1.123I-MIBG(131I-MIBG)シンチグラフィで腫瘍に取り込み
2.MRIのT2強調像で高信号強度

[注1] 現在,過去の時期を問わない.副腎髄質由来を褐色細胞腫,傍神経節組織由来をパラガングリオーマと称する.
[注2] 腫瘍細胞の大部分がクロモグラニンA陽性であること.
[注3] 基準値上限の3倍以上を陽性とする.偽陽性や偽陰性があるため,反復測定が推奨される.
[注4] ノルアドレナリン高値例のみ.負荷後に前値の1/2以上あるいは500pg/mL以上の場合を陽性とする.

遺伝子診断

近年の報告では,PPGL例の約3割に遺伝子変異が認められている.
→特にPPGLの家族内発生例や若年者,遺伝性腫瘍症候群を疑う例では,MEN2A・VHL等疑われる疾患の遺伝子変異検査を実施する.

遺伝子変異陰性例で腫瘍組織の予後予測スコア値の高い例や若年者では,悪性経過の推測に有用なsuccinate dehydrogenase complex subunit B(SDHB)変異検索を遺伝カウンセリング体制の整った施設で行うことが推奨される.

病理

被膜・脈管浸潤は良性でもみられる.

Kimuraら(2005)は組織学的所見にカテコールアミンプロフイルを加えた10点満点のスコアリングスケールを提案しており,低分化型(7~10点)では転移率100%,5年生存率0%,高分化型(1~2点)では転移率13%,5年生存率92%であったと報告している.

細胞増殖関連因子

Ki67(腫瘍増殖能の指標:MIB-1)免疫染色が有用.
 陽性率が2~ 5%以上の場合,悪性を示唆する.

細胞の不死化に関連するテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase:hTERT)のmRNA発現,テロメラーゼ活性発現に関与するheal shock protein(HSP)90,腫瘍抑制遺伝子p53,アポトーシス抑制遺伝子bcl-2,VEGF,cyclooxygenase(COX)-2の免疫染色陽性,テロメラーゼ活性増加なども悪性を示唆する.

PASS:Pheochromocytoma of the Adrenal Gland Scaled Score

組織所見に基づいてThompsonらが提唱し,PASS 20点中4点以上の多くは悪性経過,4点未満の症例は良性経過を示す. Am J Surg Pathol 2002; 26: 551-566

GAPPスコア

Kimuraらが組織所見にカテコラミン分泌所見を加味したもので,低分化型(7~10点)は転移率100%,高分化型(0~2点)では転移率13%・5年生存率92%と報告している. Endocr Relat Cancer 2014; 21: 405-414

経過観察時に極めて有用.

治療

手術療法

腹腔鏡下腫瘍摘出術が原則である.

1)手術時間,出血量,血行動態への影響は開腹手術と同等~若干良好で,回復期間は短い.
2)巨大腫瘍,周囲との癒着,副腎外腫傷では開腹手術を行う.
3)術後,血圧,カテコールアミンは急速に正常化する.
4)術後,血糖も急速に正常化するため,低血糖に注意!

*手術中の血圧コントロールの際には,患者の血圧レベルに応じてフェントラミン[レギチーン®]の持続静注が行われることがあるが,より副作用が少なく用量調節が容易であるニカルジピンやニトログリセリンの持続静注が選択可能.

薬物療法

術前

・減少している循環血漿量を回復させるため,術前にα遮断薬であるドキサゾシン(カルデナリン®)を1mgより開始し,徐々に増量する.
・上部消化管内視鏡などの侵襲的な検査前には3mg/日,手術前には10mg/日以上を最低でも数週間は内服して,あらかじめ血管を十分に拡張させておく(最高16mg/日まで).
・目安4週間.循環血漿量が増加するにつれて,Htが低下するため,Htの低下はα遮断薬の効果の指標となる.血漿レニン活性も参考になる(<2.0ng/mL/hr).
*起立性低血圧を伴い,α1遮断薬で増悪するため,立位をとるとき・洗面・入浴・用便時は要注意!
・手術困難例や術中のクリーゼ防止のため,α1遮断薬を投与するが,ノルアドレナリン遊離を抑制するα2受容体を阻害しないため,頻脈が起こりにくい.
・β遮断薬(インデラル®やメインテート®)はα遮断薬を使用開始後一週間以上してから必要であれば併用する.
*頻脈,不整脈治療目的.β遮断薬の単独投与は高血圧クリーゼをきたすため,禁忌である.
・血圧管理が困難な場合はCa拮抗薬,ACE阻害薬,ARBを適宜併用する.

食事療法(塩分負荷)

・減少している循環血漿量を回復させるため,高塩分食が推奨される.

禁忌

グルカゴン
・カテコールアミンの遊離を刺激して,急激な血圧の上昇を招くおそれがあるため,禁忌.

β受容体遮断薬(単独)
・α受容体遮断薬と併用することなしに単独で用いるのは禁忌.
・α受容体の血管収縮作用を相対的に増強させるため,逆に血圧が上昇してしまう危険がある.

メトクロプラミド(プリンペラン®)
・カテコラミン遊離促進作用があり,高血圧クリーゼをきたし,褐色細胞腫を顕性化させる.

抗うつ薬,オピオイド
・褐色細胞腫の顕性化をきたす.

腹部圧迫

ヨード造影剤
ガドリニウムは可

α遮断薬を投与してない状態での全身麻酔手術など
胃カメラなどの検査が必要な場合は,レギチーン®20mg+生理食塩水20mLを前もってオーダーしておき,検査に同伴する.発作性高血圧が起きたら,1mgずつ静注する.

悪性褐色細胞腫の治療

各種治療を集学的に行う.
病理組織での鑑別が困難であるため,術後も一生涯にわたり経過観察を要する.

1)転移巣でも手術による腫瘍容積減少は予後改善に有効である.
2)化学療法(シクロホスフアミド+ピンクリスチン+ダカルパジン:CVD療法)は腫瘍縮小効果を認める例がある.
・副作用として白血球減少,眠気,点滴局所の疼痛があるが,重篤ではない.
3)α-methylparatyrosine(Demser®)はチロシン水酸化酵素(チロシン→DOPA)を阻害しカテコールアミン合成を阻害するが,国内未承認薬で,医師,患者が個人輸入で購入する必要がある.
4)131I-MIBG療法はシンチグラフィで腫瘍への集積が高い場合に適応となる.
 骨転移巣よりも軟部組織に有効である.
 保険適用がなく,実施可能な施設も限られる.
5)骨転移に対し骨折予防,疼痛軽減目的で,放射線外照射も行う.肝転移巣には,経肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)の適応も考慮する.
6)急激な腫瘍崩壊に伴うクリーゼ予防のため,必ずα遮断薬の投与を行う.

褐色細胞腫クリーゼの治療

降圧の初期目標は,発作性血圧上昇をコントロールすることであり,収縮期血圧は治療開始1時間以内に140mmHg未満まで降圧する.

1)フェントラミン2~5mgを1mg/分のスピードで,血圧の反応をみながら3~5分毎に静注する.
・初回量の静注後は,持続静注を行ってもよい.
2)同時に選択的α遮断薬であるドキサゾシンなどの内服薬も開始する.
・頻脈に対してはβ遮断薬が有効であるが,十分量のα遮断薬を投与した後に使用する.
・β遮断薬の単独投与はα受容体を介した血管収縮を亢進させ,かえって血圧上昇を引き起こすため禁忌.
3)α遮断薬投与後は生理食塩水などを十分量輸液して低血圧を予防する.

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