腹膜炎(腹膜透析) peritonitis

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

対応マニュアル

排液混濁を呈したPD患者は腹膜炎であると考え,診断が確定するまで,もしくは除外されるまで腹膜炎治療を継続することを推奨する.

PD患者より腹痛・排液混濁の連絡

①混濁した排液を持参し,新たに貯留しないよう指示
②外来主治医へ連絡

来院後

①排液を受け取り,性状を観察.

②排液バッグをイソジンで消毒後,20ccを採取し,滅菌カップにいれて,細菌検査室へ提出.
・腹膜透析液細胞数(分画含む)
・細菌培養

③バイタルサインの測定,血液検査(血算・生化学)を行う.

④医師の診察
・全身状態,腹部(圧痛や出口部の観察)

⑤腹腔内洗浄
・ダイアニール-N PD-2 1.5% 2L(ヘパリン2000単位混注)を注液してすぐ排液

⑥排液細胞数の確認(100個/㎥以上で腹膜炎の診断)

⑦抗生物質腹腔内投与
・ダイアニール-N PD-2 1.5% 2L(ヘパリン2000単位+セファメジン®1g+アミカシン® 2mg/kg)を最低6時間貯留

⑧入院の準備

原因

本邦での2013年における114施設,腹膜炎患者544例を対象とした報告では,腹膜炎の原因別に,①不明37.7%,②バッグ交換時汚染23.7%,③内因性感染10.7%,④出口・トンネル感染10.1%,⑤デバイス不備・処理操作4.4%とされている.

出口部感染を有する患者は有さない患者に比べ,適切な治療にもかかわらず腹膜炎の発症のリスクが高いとされ,出口部感染予防の重要性が示唆される.

外因性感染

経カテーテル感染
・接続時のタッチコンタミネーション
・接続チューブ/カテーテルの損傷
・透析バッグの破損/汚染

傍カテーテル感染
・出口部/トンネル部感染の波及

カテーテル挿入時のカテーテル感染

内因性感染

経腸管感染:消化管穿孔,憩室炎,胆石症

血行性感染

経膣感染

症候

症状

腹膜炎を起こしている患者は通常,混濁した排液と腹痛を呈する.
混濁を呈する患者であってもほとんど腹痛を伴わない場合もある.

PD患者が腹痛を訴えた場合、たとえ排液が混濁していなくても腹膜炎も鑑別診断に含めるべき.

症状についての質問とともに便秘や下痢はなかったか,菌の混入する機会はなかったか,誤った切り離しはなかったか,内視鏡や婦人科的処置がなされていなかったかを問診する.
+腹膜炎やESIの既往についても質問する.

身体所見

腹部の圧痛は典型的な場合に腹部全体に,時には筋性防御を伴う.

限局する疼痛や圧痛が存在するときは外科的な病因が隠れていることも疑う.

注意深くカテーテルのトンネル部位や出口部観察を行う.
→出口部から排膿があれば培養する.

腹痛や圧痛の程度は患者が入院する必要があるかを判断する重要なポイント.

診断

排液中の白血球増加(>100個/㎥,2時間以上の貯留),好中球分画の増加(>50%)を認めた場合は腹膜炎と診断する.

・排液中の白血球数はある程度貯留時間の影響を受ける.
→高頻度サイクルのAPDの患者では,白血球の絶対数より好中球の比率(%)を腹膜炎の診断に用いるべき.好中球の比率が50%以上であれば,たとえ白血球数が100/μL以下であっても腹膜炎と診断する.
・腹痛を呈する昼間交換のないAPD患者は排液を得ることができない.
→1Lの透析液を注入し,1~2時間貯留して排液し,混濁の所見確認とともに臨床検査を実施する.

細菌塗抹検査・細菌培養検査は,血液培養ボトルを用いた培養を推奨.

・50mLの透析液排液を遠心して得られたペレットを,細菌検査シャーレで培養する方法も併用するのが望ましい.

腹部X線は通常必要としない.

血液培養は通常必要としない.
*臨床的に敗血症症状が存在すれば行う.

鑑別診断

・培養陽性の感染性腹膜炎
・無菌性腹膜炎
・化学物質による腹膜炎
・Ca拮抗薬
・好酸球性腹膜炎
・血性排液
・悪性新生物(稀)
・乳糜排液(稀)
・腹腔を一定期間「空」にした後に残存する透析液を排液したとき
(12~24時間程度の空の状態で排液を先に行った場合にも認められる)

治療

治療開始が遅れないために,抗菌薬治療は臨床検査データを待つことなく,排液を適切に採取したら直ちに開始する.

抗生物質

経験的治療

培養結果が判明するまでの経験的治療としてISPDガイドラインでは,グラム陽性菌をカバーするセファゾリンなどの第1世代のセファロスポリンに加え,緑膿菌を含むグラム陰性菌を広域にカバーするため,アミノグリコシド,セフタジジム,セフェピム,カルバペネムなどの組み合わせが適しているとされている.

グラム陽性球菌が陽性

グラム陰性桿菌,複数菌が同定

推奨される腹腔内への投与量

推奨される全身への投与量

開腹術

細菌培養の結果で,複数の腸内細菌や嫌気性菌が生えてきた場合には,消化管の問題を疑い,試験回復も視野に入れて,積極的に外科にコンサルトすることが推奨される.

メトロニダゾールとバンコマイシンの腹腔内投与とともに,アミノグリコシドまたはセフタジジムの腹腔内投与を,最低3週間継続することが勧められている.

開腹術が必要な状況であれば,一般的には腹膜透析留置カテーテルは同時に抜去し,その後の抗菌薬治療は経静脈的投与で継続する.

カテーテル抜去

カテーテル抜去が必要とされる状態
・難治性腹膜炎=“適切な抗菌薬が投与されているにもかかわらず,5日以内に好転しないもの”
・再燃性腹膜炎
・難治性出口部感染,および難治性トンネル感染
・真菌性腹膜炎

腹膜炎治癒後2週間が経過した場合には腹膜透析カテーテルの再挿入を考えてもよい.
*真菌性腹膜炎の場合は,治癒後十分に時間を空けることを推奨する.

タイトルとURLをコピーしました