腹膜透析 peritoneal dialysis;PD

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

メリットは多いものの,PDを受けている患者は透析患者総数の2.8%,PD患者全体における75歳以上への実施率は22.1%.

メリット

身体面では,循環動態への影響が少なく,食事制限が緩やかで残腎機能の保持に有効.

心理面では,高齢者の自立能力を活かすことができ,自己効力感を高めることができる.

高齢者には難しい部分も

高齢の腎不全患者は,心不全・脳梗塞・心筋梗塞などを合併していることが多い.
要介護状態に陥るリスクが高い.

ふとしたことがきっかけで,生活全般に介助を要する状態になる可能性が高い.

加齢に伴う記憶力の低下からPDに関するセルフケアが困難になり,支援を要することが多い.

介護を支える家族のマンパワーが不足することが多い.
医療依存度が高いケアを要するために,介護サービスの利用が困難であることも多い.

Assisted PD

家族や訪問看護師などさまざまな人の助けによって提供されるPD.

欧米では,医療費や合併症の発生率の抑制といった効果があることが報告されている.

活用法

PDファースト

腹膜透析から透析を開始し,後に血液透析への移行する.

PDラスト

腎臓移植や血液透析などのさまざまな腎代替療法の後,最終的にPDに移行して人生を全うする終末医療.

腹膜透析の除水のメカニズム

圧力

静水圧

単純な圧力=血液中では毛細血管内圧(一般的には17mmHg)
腹腔内では体動・体位・貯留液などにより発生する力(横臥位8mmHg)
→9mmHgの圧差が血液より腹腔内へ水を移動させる圧になる.

浸透圧

膠質浸透圧→蛋白濃度に依存.血清Alb濃度が3.4mg/dlであれば,21mmHg.腹腔内では蛋白濃度が低いため無視される.
晶質浸透圧→溶質の分子数に依存.水移動に最も関与.安定したPD患者では血液中305mOsm/kgH2O程度に.1.5%ブドウ糖液では350,2.5%ブドウ糖液では400,4.25%ブドウ糖液では460mOsm/kgH2O.
→血液と透析液の晶質浸透圧較差により血液中から腹腔内へ水が移動し,除水が行われる.
*腹腔内のブドウ糖は水の移動により希釈され,腹腔内から血液中へブドウ糖が吸収されるため,貯留時間とともに除水が減少する.

水が透過する経路

血液側から腹腔内へ:内皮細胞間隙.3つの細孔がある.
・ultra small pore→半径は3Aで水以上の分子量物質の透過は困難であり,圧力勾配が直接水移動に反映.総除水量の40%が通過.
・small pore→半径は45Aで,容易に物質が透過しやすく,圧力が分散するため,圧格差は時間とともに低下.
・large pore→数が少ないため,無視
腹腔内から血液中へ:リンパ管を介したり,間質を直接通過.
リンパ管→主に静水圧
間質→膠質浸透圧と静水圧の格差で移動

CAPD開始から数年経つと腹膜硬化の状態が生じ,病理学的にも腹膜の肥厚が目立つようになるが,物質の透過度は予想に反して逆に亢進する.
→クレアチニン,BUNに代表される尿毒症物質は腹膜透析液に流出し血中濃度は低下する.
→ブドウ糖は,再吸収量が増加(透過度が亢進)することになり,浸透圧物質のブドウ糖が体内に取り込まれるために除水量は低下する.

体液過剰

体液過剰は残存腎機能を低下させる.

原因と対策

1)Comobid diseases(心不全・肝硬変・糖尿病など)→原疾患の厳格な管理

2)Input dependent
・過剰な食塩および水分摂取→食塩制限,PDによる除水強化

3)Output dependent
・残存腎機能の低下→脱水,腎うっ血の予防,腎毒性物質の曝露回避
・不適切なPD処方 or 処方のアドヒアランス低下
・不十分な利尿薬の投与→フロセミド,MR拮抗薬,トルバプタン
・リンパ管吸収→トラネキサム酸?
・腹膜機能不全→併用療法導入,HDへの完全移行
・カテーテル機能異常(位置異常・閉塞など)→外科的介入
・非感染性合併症(ヘルニア・横隔膜交通症など)→外科的介入

透析効率

溶質除去

溶質除去については,尿素を指標として,残存腎機能を含めた総Kt/V≧1.7が推奨されてきたが,全身状態を考慮せずに小分子溶質の除去効率だけを増加しても,死亡リスクを低減できるわけではない.

尿素Kt/Vは除去効率のみが考慮され,患者の食事摂取量は考慮されていない.

中分子量溶質除去

β2MGは生命予後に強いインパクトを与えるが,その濃度は残存腎機能と相関し,PDの処方でこれを調節することは困難.

β2MG以上の大きさの溶質を除去するためにはPD+HD併用療法が有用.
・HD1回のβ2MGの除去量はPDの約5日分に相当する.

β2MGが1mg/L上昇する毎にPD離脱のリスクが8%上昇する.

合併症

腹膜炎

陰嚢水腫

通常PDに関連する陰嚢水腫は,腹膜鞘状突起(processus vaginalis;PV)の開存による腹腔との交通を原因とした交通性陰嚢水腫であり,外科的治療を要する.

PVの開存自体では通常無症状だが,先天的因子(肥満など)にPDによる腹腔内圧(intraperitoneal pressure;IPP)の上昇が加わることにより交通性陰嚢水腫の病態が形成され,陰嚢腫大が顕在化することが考えられている.

透析液の漏液は,導入後30日以降に生じるlate leaksであることが多い.

診断

理学所見に加え画像診断としてperitoneal scintigraphy(PS)やcompueted tomographic peritoneography(CTP)の有用性が報告されている.
・PSの利点として費用が安価なこと,放射線被爆量が少ない,ヨード造影剤によるアレルギーや造影剤誘発性の腹膜炎が少ないことがあげられる.
・PSの問題点としては,解剖学的な情報量が少ない
・CTPの正診率はPSより劣る可能性があるが,PDカテーテルの位置や漏液量などの解剖学的情報量はPSより多く,手術計画を立てる上で重要な検査される.

治療

ヘルニア修復術後のPD休止期間については標準化されたものはないが,報告の多くは1週間の休止期間でPDを再開し,再発なく経過している.
・より短い期間でも安全にPDが再開できる可能性がある.

陰嚢浮腫

ヘルニアなどの腹膜脆弱部や,PDカテーテル挿入部からの腹膜透析液の漏出や,低蛋白血症が原因となる.

腹膜透析の休止や栄養状態の是正による保存的治療で改善を認めることがあるが,治療抵抗性であれば除水不全や透析不足などをきたすため,一時的な血液透析への移行が必要となる.

被嚢性腹膜硬化症 Encapsulating peritoneal sclerosis;EPS

血液透析併用療法

1週間 or 2週間に一度HDを併用する治療法.

PD患者の2割強が施行している.

PD単独療法で溶質除去不足,水分過剰の症例においてHD療法による補完は重要.
PDによって確保されていた患者のQOLを維持する面でも有益.

適正透析を維持できない例,適正透析量(総Kt/Vが1.7以上)を確保されているものの腎不全症候を呈する例が適応となる.

一般的な治療モードは,週5~6日のPDと週1回のHD(4~5時間,high flux透析器使用).

併用療法の中止・禁忌として,腹膜透析平衡試験でHighを呈する例,被嚢性腹膜硬化症が疑われる例,週に2回以上のHDを必要とする例.

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