発作性上室性頻拍 paroxysmal supraventricular tachycardia;PSVT

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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当ブログは一切の責任を負いません.

心房あるいは房室接合部を起源として3拍以上連続して出現する頻拍.

HRは100~240/分までであり,Adams-Stokes発作や心不全,動悸,胸苦しさなどが生じうる.

病態

・PSVTは機序によって,リエントリー性と異所性(自動能亢進性)に大別される.

リエントリー性頻拍

・食道ペーシングあるいは心臓ペーシング(早期刺激法,高頻度刺激法)により,再現性をもって誘発,停止が可能.

明らかな基礎心疾患を伴わないことが多い.

洞結節リエントリー sinus nodal reentry

P波形は洞調律時のP波と同一であり,QRSに先行する.

心房内リエントリー intra-atrial reentry

QRS波に先行するP波形は洞調律時のP波と異なる.房室ブロックが生じても頻拍は停止しない.

房室結節リエントリー A-V nodal reentry

P波形はII,III,aVF誘導で陰性を示す.

通常型 common type
房室結節遅伝導路slow pathway(α路)を順行性伝導し,速伝導路fast pathway(β路)を逆行性伝導する.
PQ時間の著明な延長後に頻拍が開始し,QRS-P時間はP-QRS時間よりも短い.

稀有型 uncommon type
fast pathwayを順行性伝導しslow pathwayを逆行性伝導する.
PQ時間の延長なしに発作は出現し,QRS-P時間はP-QRS時間よりも長く,房室ブロックにて頻拍は停止する.

房室結節リエントリー A-V reentry

WPW症候群
副伝導路を介する

異所性(自動能亢進性)頻拍

心房頻拍ectopic atrial tachycardiaと房室接合部頻拍A-V junctional tachycardiaがある.

心筋症,僧帽弁膜症など基礎心疾患を伴うことが多い.

症候

臨床症状

・最も多い症状は動悸である.さらに胸内苦悶感や尿意(心房利尿ホルモン分泌による)を伴う.時に頻拍発作により心拍出量ないし血圧が低下する結果,脳血流量が減少あるいは途絶するため,眩暈発作から意識消失に至る種々の脳虚血病状(Adams-Stokes症候群)をきたす.また,基礎心疾患を有する場合に長時間持続すると心不全が惹起される.明らかな基礎心疾患がなくても,頻拍が長時間持続すると心機能低下ないし心不全をきたしうる(tachycardia-induced cardiomyopathy;頻脈誘発性心筋症と呼ばれる).虚血性心疾患を有する場合も,頻拍により心仕事量は増大し,心筋虚血が起こり,狭心症が惹起されうる.

心電図

幅狭いQRS波形を示す100/分以上の頻拍でRR間隔は一定である.
・頻拍による心室内変行伝導を伴う場合には幅広いQRS(右脚ブロックあるいは左脚ブロックパターンを示す)となり,心室頻拍との鑑別が重要となる.
・リエントリー性頻拍と異所性頻拍の鑑別は心電図上は困難.

治療

頻拍の停止と予防に大別される.

頻拍停止

頻拍停止には迷走神経刺激操作,薬物治療およびペースメーカ療法がある.

迷走神経刺激

房室結節あるいは洞結節をリエントリー回路に含むPSVTに有効であり,頸動脈洞マッサージ(Czermark操作),眼球圧迫(Ashner操作),Valsalva操作(深吸気時の息こらえ),Mueller操作(深呼気時の息こらえ),深呼吸,嘔吐反射,潜水反射(水に顔をつける),冷水(水)を飲む,体位変換などがある.

Valsalva手技
 Valsalva手技で10秒ほど息むと,胸腔内圧が上昇し,静脈還流量が減少する.
 静脈還流量の減少は左室容積を次第に減少する(最大50%まで減少).その結果,血圧低下・1回拍出量低下が生じ,反射的に交感神経が緊張し,頻脈となる.
 息こらえを解放するとはじめの数拍の間血圧は低下する.これは虚脱した肺血管からの血流は数秒間減少したままだからである.
 その後,血圧はValsalva操作前の値を上回るように上昇する.これは交感神経緊張による末梢血管抵抗の増大により引き起こされる.加えて,胸腔内圧上昇により抑えられていた静脈血が一気に心臓に戻る.数秒後にはこの増大した血液が左室に到達し,1回拍出量を増加させる.その結果,頚動脈洞の圧が上昇し,逆に反射性の徐脈を引き起こす.

頸動脈洞マッサージ carotid sinus massage
・総頸動脈の外頸動脈分岐部にある頚動脈洞を圧迫し,頸動脈反射を誘発することで迷走神経を刺激する.
・必ず片側ずつ行い,両側同時には圧迫しないようにする.
・Valsalva法を併用するとさらに効果的なことがある.

薬物療法

洞結節および房室結節リエントリーの場合にはジギタリス,IV群(ベラパミル,ジルチアゼム),ATPの静注.

著明な血圧低下を伴う場合には,昇圧薬(ネオシネジンなど)による急激な血圧上昇に伴う迷走神経反射で頻拍は低下する.

その他の場合にはIa群(プロカインアミド,ジソピラミド,シベンゾリン),Ic群(フレカイニド,ピルジカイニド)の薬剤を静注する.

ジギタリス中毒による房室接合部頻拍ではIb群(特にジフェニールヒダントイン)が静注される.

洞結節リエントリー頻拍や心房頻拍ではジギタリスやIV群(ベラパミル)の薬剤で房室結節の伝導を抑制し,心室拍数を減少させる.

塩酸ベラパミル
①ワソラン®1A5mg+生理食塩液100mL
→30分かけて点滴静注(緊急性がない場合)
②ワソラン®1A5mg+生理食塩液20mL
→5分かけてゆっくり静注

アデノシン三リン酸二ナトリウム
アデホスL注3号® 1A20mg
半減期が10秒前後と非常に短いため希釈せずにone shotで静注する(喘息患者には禁忌).

塩酸プロカインアミド
アミサリン® 1A 100mg
100~500mgを50mg/分くらいでゆっくり静注.

塩酸プロプラノロール
インデラル® 1A 2mg
1~4mgを1mg/分くらいでゆっくり静注.

ペースメーカ療法

リエントリー性頻拍ではペーシングによる電気刺激がリエントリー回路内に進入し,順行性伝導および逆行性伝導がともにブロックされ,頻拍は停止する.

一時的ペーシング
経静脈性心内膜ペーシングや食道ペーシングが行われる.

永久的ペーシング
抗頻拍ペースメーカとは頻拍発作の停止を目的とする永久的ペーシングシステム.
頻拍発作をペースメーカが感知した後,自動的に種々のプログラム刺激(早期刺激や高頻度刺激)が作動し,リエントリー回路を遮断し,頻拍を停止させる.

頻拍発作の予防

頻拍発作の増悪・誘発因子の除去

精神的,肉体的ストレス,飲酒,喫煙およびコーヒーなど.

薬物療法

発作停止に有効な薬剤が経口投与される.
・頻拍発作の引き金となる期外収縮の抑制にはIa群,Ic群が有効.
・運動や情動で誘発される頻拍にはⅡ群が有効である.

カテーテルアブレーション

房室結節リエントリー性頻拍に対してカテーテル電極を介して高周波通電を行い,slow pathwayを選択的に焼灼し,根治させる.

・心房頻拍に対しても発生源にカテーテル電極をあて高周波通電により焼灼し,根治可能.
・手術に比べ侵襲が少なく,成功率が非常に高い根治療法であるため広く普及しつつある.
・合併症としては完全房室ブロックがある.

ペースメーカ療法

・洞不全症候群を伴う場合,徐脈による興奮消退過程の不均一性により期外収縮が生じ,頻拍が惹起されやすい.
その徐脈の予防としてペースメーカ植込み術が適応となる.

手術療法

心房頻拍に対する心房筋切除(凍結凝固術),房室結節リエントリー性頻拍に対する房室結節周囲切離術(凍結凝固術)があるが現在では特殊例に限られる.

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