膵性糖尿病 pancreatic diabetes

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

膵疾患の進展や外科的切除後などにより,膵外分泌能だけでなく,膵内分泌能も低下し,糖尿病に至るもの.

慢性膵炎の非代償期は膵内外分泌機能の低下によって,耐糖能障害や消化吸収不良を,さらにはそれらの病態による重篤な合併症を生じる.

疫学

糖尿病全体のうち,0.5~1.2%.日本では1.69%.

膵石灰化が危険因子.
・石灰化を有する膵炎は石灰化を有しない症例より糖尿病を合併する頻度が高く,膵石出現以前に膵外内分泌機能低下がすでに生じている.

原因

2005年の全国調査では,慢性膵炎40.0%,膵癌24.6%,膵切除後10.2%,急性膵炎7.5%,自己免疫性膵炎6.1%.

慢性膵炎

インスリン分泌障害が主体.外分泌組織の病変が先行し,間質の線維化やそれに伴う血流障害を介して膵島が障害される.
・膵β細胞機能の検討では,糖尿病型を示す慢性膵炎の60%に血中インスリンの低反応がみられ,アルギニン刺激に対するグルカゴンの反応も低く,α細胞の障害も考えられる.

2大原因は,アルコールと胆石
・アルコール性膵炎の57%,特発性の39%,胆石性の36%に糖尿病型を認める.

糖尿病合併率は38.1%程度.
・OGTTで糖尿病型を示す症例の頻度は膵外分泌機能障害の程度に比例.

病型では,非石灰化膵炎に比べ石灰化膵炎で糖尿病型の頻度が高い.
・慢性石灰化膵炎では70~80%と高率に糖尿病を合併する.

細小血管合併症の合併は比較的少ない.

急性膵炎

発症機序は,まず膵β細胞障害によるインスリン分泌低下が考えられる.

急性膵炎発症時には血中インスリン値は必ずしも低値を示さず,血中グルカゴンの上昇や,痛みなどのストレスによるカテコールアミン分泌亢進の関与も考えられている.

膵外傷,膵摘出術

臨床的に90%以上切除により明らかな糖尿病発症.
・耐糖能低下やインスリン分泌低下は50%以下でもみられる.

グルカゴンも消失しているため,インスリン必要量は低下しているが,血糖の変動が激しい.

膵外分泌機能の低下による栄養障害のため,やせが強い.

膵癌

糖尿病既往歴は15.7%で,一次性糖尿病のおいて膵癌の合併する頻度が高いともいわれている.

OGTT施行例では,糖尿病型55%,境界型21%.

主因はインスリン分泌障害で早期から認める.グルカゴンはむしろ上昇傾向.
・機序としては,膵島への直接浸潤に加え,主膵管閉塞による膵管内圧の上昇や,随伴する炎症による障害の可能性が示唆されている.

病態

インスリンを産生するβ細胞だけでなく,グルカゴンを産生するα細胞も破壊される.
・DKAにはなりにくい.
・低血糖は遷延する傾向.
・通常の1型糖尿病患者の場合に比べて,インスリン所要量はかなり少ない.

膵臓でのpolypeptide分泌低下→肝臓でのインスリン受容体の発現低下や機能低下

やせ→末梢のインスリン感受性の増大

外分泌能低下→インクレチン分泌も低下

膵酵素分泌不全に加え,重炭酸分泌も低下し,上部小腸のpH が4以下になると膵消化酵素は容易に失活し,脂肪を中心とした消化吸収障害を来たす.
→脂肪便が50g/日であると糞便へのカロリー喪失は450kcalになり,体重減少する.
→血中コレステロールも低い.

飲酒の習慣は膵内分泌機能低下には関係ないが,膵外分泌機能低下が低下する症例が多い.

脂肪動員が低下し,ケトン体産生が少ないためケトアシドーシスになりにくい.

診断

グルカゴン負荷試験

BT-PABA試験

国内な唯一施行可能な膵外分泌機能検査

BT-PABA内服後の尿中PABA測定により,膵から分泌されたキモトリプシンの十二指腸内活性を間接的に測定する.

・異常低値を認めれば,確実な膵外分泌機能障害と診断できるが,感度・特異度で評価には注意が必要.
・セクレチン負荷試験で2因子以上の障害を認める慢性膵炎の診断には有用性が高いが,軽度な外分泌機能障害の検出は困難であり,また慢性膵炎以外の病変でも膵病変でも異常値で示すことから,診断能に限界がある.

治療

インスリン療法

インスリン療法では,インスリン感受性が高く,低血糖が遷延しやすいので注意が必要.
・basalインスリンの量が多くなる.
→1型糖尿病で使用するインスリン必要量より少ない.

血糖が不安定で,低血糖の自覚に乏しい.

低血糖治療には,膵消化酵素剤(高力価パンクレアチン)を十分量使用上で,上部小腸でのpH を上昇させるために,酸分泌抑制剤(PPI)の併用と強化インスリン療法が有用.
 パンクレリパーゼ(リパクレオン®) 1800mg/day(600mg×3:毎食直後)

経口血糖降下薬

*経口薬でのコントロールが難しいなら,インスリン療法へ以降する.

SU薬:遷延性低血糖に注意

ビグアナイド:アルコール中毒には使用しない[乳酸アシドーシスの危険]

α-GI:膵外分泌能低下により,消化器症状が起きやすい

タイトルとURLをコピーしました