骨軟化症 osteomalacia,くる病 rickets

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

骨基質の石灰化障害により骨石灰化などの低下を来す全身性の代謝性骨疾患

成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものはくる病と呼ばれ,それ以降は骨軟化症と呼ばれる.

1)成長期には骨の変形や成長障害,運動障害の原因となる.
2)成人発症では,骨強度の低下により骨折や疼痛の原因となる.

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症

病態

多くのくる病・骨軟化症では慢性の低P血症が認められる.

病因は,ビタミンD代謝物作用障害,腎尿細管異常,線維芽細胞増殖因子23(fibroblastgrowth factor 23: FGF23)作用過剰,およびP欠乏に大別される.
1)FGF23は,腎尿細管リン再吸収と腸管リン吸収の抑制により,血中リン濃度を低下させるホルモン.
2)過剰なFGF23活性により,いくつかの低リン血症性くる病・骨軟化症が惹起される.

ビタミンD代謝物作用障害

・ビタミンD欠乏
→アレルギー疾患の増加に伴い,厳格な食事制限を受ける小児が多くなっている.
・薬剤(ジフェニルヒダントイン,リファンピシンなど)
→ビタミンDの代謝促進
・ビタミンD依存症1型(CYP27B1遺伝子変異,常染色体劣性遺伝)
・ビタミンD依存症2型(VDR遺伝子変異,常染色体劣性遺伝)など

腎尿細管異常

・高Ca尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病・骨軟化症(hereditary hypophosphatemic rickets with hypercalciuria;HHRH) SLC34A3遺伝子変異,常染色体劣性遺伝
・Fanconi症候群(アデホビル,テノホビル等による薬剤性含む)
・Dent病(CLCN5遺伝子変異,X染色体劣性遺伝)
・腎尿細管性アシドーシス
・薬剤(イホスフアミド,バルプロ酸)
・含糖酸化鉄(フェジン®)静注

FGF23関連低P血症性くる病・骨軟化症

・X染色体優性低P血症性くる病・骨軟化症(XLHR) PHEX遺伝子変異
→日本では最も多い.
・常染色体優性低P血症性くる病・骨軟化症(ADHR) FGF23遺伝子変異
→稀.FGF23の活性化型変異が原因.
・常染色体劣性低P血症性くる病・骨軟化症(ARHR1) DMP1遺伝子変異
→基質蛋白の異常
・常染色体劣性低P血症性くる病・骨軟化症2(ARHR2) ENPP1遺伝子変異
・歯の異常,異所性石灰化を伴う低P血症性疾患 FAM20C遺伝子変異
・McCune-Albright症候群/線維骨異形成症
→骨病変からのFGF23産生過剰
・線状皮脂腺母班症候群に伴う低P血症性くる病・骨軟化症
・腫瘍性くる病・腫瘍性骨軟化症(Tumour-induced osteomalacia;TIO)
・含糖酸化鉄,ポリマルトース鉄による低P血症性くる病・骨軟化症など

P欠乏

P摂取不足,腸管吸収障害など

ビタミンD欠乏

ビタミンD欠乏性くる病などでは,低P血症ではなく低Ca血症が主徴となることがある.

その他の原因による石灰化障害

薬剤(アノレミニウム,エチドロネートなど)

症候

骨軟化症では,骨痛や筋力低下に加え,胸郭の変形(鳩胸),脊柱の変形,偽骨折(Looser’ s zone)が生じることがある.

くる病では,成長障害・0脚・X脚などの骨変形,脊柱の弯曲,頭蓋癆,大泉門の開離,肋骨念珠,関節腫脹が認められることがある.

血液検査

1)骨軟化症患者の生化学所見では、高骨型ALP血症が特徴的であり,一部を除いて慢性の低P血症も認められる.
2)くる病患者では,低P血症ではなく低Ca血症が主な異常となる場合がある.
3)血中FGF23 30pg/mL以上であれば,FGF23関連.
4)ビタミンD欠乏では,二次性副甲状腺機能亢進症により血中PTHが高値となる.
5)ビタミンD欠乏の診断は,血中25-水酸化ビタミンD[25 (OH) 2D]濃度の低値(20ng/ml未満)によりなされる.
6)ビタミンD欠乏患者の1,25-水酸化ビタミンD[1, 25 (OH)2D]濃度は種々の値を示しうることから、血中1, 25(OH)2D濃度の測定はビタミンD欠乏の診断には有用ではない.

単純骨X線

1)くる病変化には,骨幹端の杯状陥凹,骨端線の拡大や毛ばだちがある.
2)低石灰化領域を示すLooser’ s zoneは,骨軟化症に特異的.

骨塩定量

二重エネルギーX線吸収測定法などによる骨密度の測定では,骨中のカルシウム含量が測定される.
→骨軟化症では,骨密度の低下が認められる.

骨シンチグラフィー

肋軟骨への数珠状の取り込みなど,多発性の取り込みが認められることが多い.

診断

 骨石灰化障害の確定診断は,骨生検による類骨の増加,テトラサイクリンの2回骨標識での二重標識の消失を始めとする骨標識の異常パターン(類骨形成と成熟、石灰化障害)が確認されることによってなされる.
・骨生検は侵襲的検査であるが,臨床的に診断に難渋する場合には腸骨生検による骨形態計測も考慮される.

 くる病の臨床診断は,単純X線所見でのくる病所見と生化学所見,および臨床症状によりなされる.

 骨軟化症は,骨粗繋症などの各種他疾患と混同される場合が稀ではないものの,症状とともに,大部分の症例で低P血症や高骨型ALP血症が存在し,骨シンチグラフィーでの多発性取り込みや単純X線像でのLooser’ s zoneが認められることが診断の一助となる.

腫膚性骨軟化症 Tumour-induced osteomalacia;TIO

1)成人発症の場合,血清FGF23の高値は腫瘍性を強く疑わせる.
2)腫瘍は多くの場合良性であり,間葉系起源のことが多い.
3)四肢や頭頚部に好発するMRIなどの画像検査を駆使して原因腫瘍の検索を行うが,微小腫瘍で検索が困難なことが多い.
・選択的に末梢静脈血のサンプリングを行うことにより,FGF23の局所的な高値を認めれば,その静脈の還流領域に限局して念入りに腫瘍を探索することが可能となる.
・FDG-PETやオクトレオチドシンチグラフイにより腫瘍局在が診断された例も報告されているが,これらには保険が適用されない.

鑑別

低骨密度:骨組軽症,腎性骨異栄養症など
骨変形:骨系統疾患
骨痛:リウマチ’性多発筋痛症,強直性脊椎炎など
筋力低下:神経・筋疾患
骨シンチグラフィーでの多発取り込み:骨転移
くる病様骨変化:低ホスファターゼ症

治療

それぞれの病態に即した治療を行う.

ビタミンD欠乏

1)十分量の天然型ビタミンD製剤を補充すればよいが,現在わが国では処方可能な天然型ビタミンD製剤が存在しないので,活性型ビタミンD3を処方する.
2)ビタミンD依存症1型では活性型ビタミンD3の補充を行う.
3)問題点として,長期間継続すると三次性副甲状腺機能亢進症を発症し,稀に腎不全に進行することがある.
→経時的に血清Ca値とPTHに注意が必要

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症

X染色体優性低P血症性くる病・骨軟化症

1)活性型ビタミンD3(アルファカルシドール 1.0~1.5μg)に加えて中性リン製剤を投与して血中P濃度の改善を図る.
2)中性リン製剤も処方薬が存在しないので,各施設の薬剤部で試薬から調製する必要がある保険承認外の使用になるが,続発性(あるいは三次性)副甲状腺機能充進症が併発する例ではシナカルセトの併用が有効であるとする報告がある.

腫瘍性骨軟化症

1)責任病巣を摘除することで治癒が期待できるが,微小腫瘍が多く,骨や軟部組織に多いため,特定するのが困難.
2)根治手術ができない場合は,XLHに準じた内科的治療を行う.

ブロスマブ Burosumab

クリースビータ皮下注®協和キリン

・FGF23を標的とするヒト型IgG1モノクローナル抗体で,過剰産生されたFGF23に対して直接的に作用し,阻害する.

タイトルとURLをコピーしました