栄養補充療法(透析)

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

栄養療法には,①経口摂取,②経腸栄養,③静脈栄養がある.

栄養管理目標

栄養療法施行中は体重や血液生化学検査などによる総合的な栄養アセスメントを週1回程度,定期的に行うことが推奨され,栄養療法施行中の透析患者では,血液生化学検査と合わせ,少なくとも2週間に1回程度の定期的な栄養モニタリングを行い,総合的な栄養アセスメントを行うことが望ましい.

透析患者の低栄養は,筋肉や脂肪などの蛋白質やエネルギーの貯蔵が減少している状態であり,このような低栄養をprotein‒energy wasting(PEW)と定義されている.
・日本透析医学会栄養問題検討ワーキンググループは,血清アルブミン,血清総コレステロール,血清クレアチニン,BMIから1年後の生命予後に関する栄養学的リスクを低中高の三段階のリスク群に分類して評価するツール(nutritional risk index for Japanese hemodialysis patients;NRI‒JH)を開発しており,治療開始前の栄養状態の参考になる.

身体計測(上腕周囲長・上腕三頭筋皮下脂肪厚・上腕筋囲)も有用であるが,透析患者の場合には浮腫の影響を受けるため,透析後のDW の状態で測定する.

エネルギー

エネルギー 30~35 kcal/kgBW/日

透析間などの短期間の体重の変化は,体液バランスの変化を示し,約1か月以上などの長期間での体重(≒DW)の変化は,エネルギー摂取不足やエネルギー摂取過剰などの栄養状態を反映する.

身体活動度の変化による必要エネルギー量の変化にも注意しながら,エネルギー投与量の過不足を考慮する.

糖質

糖質の1 日投与量は,総投与エネルギーからアミノ酸と脂肪によるエネルギーを差し引いて算出する.
・血液透析では1 回の透析で25g程度のブドウ糖が喪失される.
・腹膜透析では腹膜透析液から100~150 g/日程度のブドウ糖が腹膜を経由して吸収される.
・血糖値の推移をモニタリングする.

蛋白質

たんぱく質量 0.9~1.2 g/kgBW/日

透析療法に伴うアミノ酸・蛋白の喪失量を考慮して投与量を決定する必要がある.

・アミノ酸含有輸液製剤を投与する場合には,各製剤の配合成分や濃度に留意し,生体のアミノ酸利用効率および窒素バランスを考慮し,十分なエネルギー摂取のもとで投与する.
・海外の一般用アミノ酸製剤の多くは,透析患者が禁忌から除外されているが,透析患者にキット製剤を使用する際の注意点として,海外の製剤の添付文書には,①必要量を満たすために追加でたんぱく質投与が必要となる可能性がある,②血清電解質および体液バランスに基づいて投与量を加減して調整する,③腎不全患者では高リン血症および高カリウム血症を予防するために注意深く管理する必要がある,と記載されている.

透析患者では非透析患者と比較し,本来BUN値が高い水準で推移する点に留意する.
・透析前のBUN が高くない場合には低栄養が示唆される.
・食後変動で起こる程度を超えてBUN値が上昇し続ける場合には,エネルギー不足や炎症(筋肉などの異化亢進)がないことを確認のうえ,アミノ酸含有輸液を減量または中止し,NPC/N 比を増加させることを考慮する.

脂質

脂肪の1 日投与量は通常総エネルギーの20~30%が推奨されている.
経腸栄養の場合20~40%が推奨されている.
TPN 施行時には総エネルギー量の10~20%を脂肪乳剤として投与することが推奨されている.

・短時間に脂肪を経静脈的に投与するとエネルギー基質として十分に代謝されないため,0.1 g/kg BW/時以下の速度での投与が推奨される.
・脂肪の投与中は血中トリグリセライド値の上昇に注意し,頻回に評価する.
・L‒カルニチンが極端に不足していると脂肪酸の利用(β酸化)ができないことがある.
・脂肪乳剤には卵黄レシチンに由来するリンが500 mg/L 程度含まれている点にも注意.

食塩,水分

食塩6 g/日(Na 102 mEq/日)未満

水分摂取量は食塩摂取制限を行ったうえで,透析間の体重増加が中2日でdry weight(DW)の4~6%以内に留めるように調整する.

電解質

カリウム2,000 mg/日(K 51.2 mEq/日)以下

リンは,たんぱく質摂取基準(g/日)×15 mg/日以下

一般的に慢性維持透析患者では,血清電解質濃度が変動しやすく,透析液の電解質組成によっても影響を受けやすいため,リン,カリウムなどの血清電解質の過剰および不足,体液バランスに留意する.
・特にカリウム値,リン値,ナトリウム値,マグネシウム値,カルシウム値の異常に注意し,定期的に検査を行い個別の投与量を調整する必要がある.

長期間栄養不良状態が続いている患者に積極的な栄養補給を行うことによりRefeeding症候群を呈することがあるため,1 日1 回など頻回にモニタリングを行う.

ビタミン・微量元素

輸液のみで栄養管理を行う場合は,ビタミンや微量元素を補充することが望ましい.

透析による水溶性ビタミンの喪失および脂溶性ビタミンの過剰,微量元素の喪失に留意する.
・ワルファリン内服患者などでは,ビタミンK 不足による出血傾向にも注意する必要がある.

TPN 用微量元素製剤には,鉄,マンガン,亜鉛,銅,ヨウ素が含まれており,1 アンプルの含有量は成人男性の1日必要量として設定されている.

慢性的な高度の低栄養状態にある患者に対して栄養介入をする際には,必要に応じてビタミン投与も考慮する.

微量元素の多くは蛋白質と結合しているため,透析による影響は少ないものの,高カロリー輸液や経腸栄養剤を使用した場合などに微量元素の欠乏症が起こりうる.

外科手術後に銅非添加の高カロリー輸液や経腸栄養剤を使用した場合に,銅欠乏によるエリスロポエチン抵抗性貧血や顆粒球減少症をきたすことが報告されている.

亜鉛欠乏がエリスロポエチン抵抗性貧血の原因として知られているが,亜鉛製剤によって銅の吸収障害が起こり得る.

高カロリー輸液および微量元素の長期投与においては,セレン欠乏症や肝硬変患者などにおける鉄・銅の過剰症にも注意が必要である.
・セレン欠乏では心筋症,不整脈,筋力低下,皮膚炎などが出現することが知られており,補充による改善が報告されている.

食事サポートのアルゴリズム

栄養管理はできる限り経口・経腸で行い,不必要な静脈栄養,特にカテーテル敗血症などの重篤な合併症をきたす可能性のある中心静脈栄養を安易に行わない.

中等度低栄養

食事からの経口摂取≦30kcal/kg/day
蛋白質≦1.1g/kg/day

食事カウセリング

改善がなければ,経口栄養補助(ONS)へ
*ONSが摂取できない場合は透析時静脈栄養(ISDN)

改善がなければ,経管栄養
*経腸栄養ができない場合,中心静脈栄養(TPN)

重度低栄養

BMI<20
体重減少>10%(6カ月以内)
アルブミン<3.5g/dL
トランスサイレチン<30mg/dL

食事からの経口摂取>20kcal/kg/day

食事カウセリング or 経口栄養補助(ONS)

改善がなければ,経口栄養補助(ONS)へ
*ONSが摂取できない場合は透析時静脈栄養(ISDN)

改善がなければ,経管栄養
*経腸栄養ができない場合,中心静脈栄養(TPN)

食事からの経口摂取<20kcal/kg/day or ストレス状態

経管栄養
*経腸栄養ができない場合,中心静脈栄養(TPN)

ONS やIDPNでは十分な栄養補充にはならず,経管栄養またはTPN を考慮する必要がある.

経腸栄養

経腸栄養は,経口で栄養素を補給する経口栄養補助とチューブを用いて栄養素を補給する経管栄養に大別される.

経腸栄養剤の水分含有量は必ずしも製剤の容量とは等しくなく,おおよそ70~80%が水分とされてい
る.

過度のたんぱく質摂取が不良な予後と関連する可能性や体脂肪の増加と関連する報告もあるため,過栄養にも注意.

泥状便になるため,便の性状にも留意する.

誤嚥性肺炎に注意し,発熱などの症状や白血球数,CRP などの臨床検査,胸部X 線写真などのモニタリングをする.

経口栄養補助 oral nutritional supplements;ONS

経管栄養

腎不全用経腸栄養剤

一部製品を除き,ナトリウム,リン,カリウムの含有量が抑えられている.
→電解質のモニタリング,必要に応じた補充が必要

透析患者では,たんぱく質摂取の減少は,予後不良と関連しており,たんぱく質含有量が少ない製剤は避ける.
・保存期CKD患者で用いられることを念頭に,たんぱく質含有量を抑えているものもある.

エネルギーは一般用に比較すると高濃度であるものが多いため,投与水分量が制限される残腎機能がない透析患者においては使用しやすい.

食品の半消化態栄養剤であり,窒素源はたんぱく質であるため,消化管機能がある程度保たれている必要がある.
・高浸透圧の経腸栄養剤に比べると,下痢は起こしにくいという利点がある.

一般用経腸栄養剤

カリウム,リンが多く含まれるものもあり,投与量に見合った透析による除去が行われない場合には,高カリウム血症,高リン血症を生じることがある.
・血清カリウム・リン濃度は綿密なモニタリングを行う.
・特に経管栄養施行の透析患者では,カリウム吸着薬,リン吸着薬は投与が困難なため,予防が重
要.

一般用経腸栄養剤のうち単位用量あたりのエネルギーが低い製剤(1 kcal/mL)は,必要栄養量を確保するには栄養剤の投与量が増加する.
→水分負荷の原因となることに留意する.

成分栄養剤には,脂質の含有量が少ないことがあり,成分栄養剤を単独で長期に投与していると必須脂肪酸欠乏がみられる場合がある.
→脂肪乳剤の静脈投与を検討する.

特殊製剤

微量栄養素補給,アミノ酸配合飲料などがある.

特殊製剤はすべての三大栄養素を含まないものもあり,他の製剤と併用することが前提.

アミノ酸含有量が多いものを使用する場合には,BUN 上昇に留意する.

経静脈栄養

静脈栄養の使用は,消化管の使用が困難か望ましくない病態を有する症例に限定される.

透析患者に静脈栄養を行う際は,体液・電解質異常を含めた恒常性が維持されていない点を念頭に置き,少なくとも2 週間に1 回程度の血液生化学検査を含めた総合的な栄養アセスメントを行うことが望ましい.

特に血清カリウム値,血清ナトリウム値,血清カルシウム値,血清マグネシウム値,血清リン値,BUN 値,血糖値の動態に注意してモニタリングを行い,静脈栄養の投与量の調整を行う.

本邦の透析患者においては,腎不全用アミノ酸輸液製剤や高カロリー用基本輸液以外は使用禁忌となっていたため,透析患者に対する一般用アミノ酸輸液製剤(標準組成)使用による効能や合併症のリスクに関するエビデンスが存在しないのが現状.

透析時静脈栄養 intradialytic parenteral nutrition;ISDN

輸液ポンプを用いて血液透析回路の静脈側から投与する方法

血液透析回路は血流量が多いため,高カロリー輸液の投与が可能.
*従来は50%ブドウ糖液や腎不全用アミノ酸輸液製剤が繁用されてきたが,添付文書改訂に伴い,症例に応じて一般用アミノ酸輸液製剤や,アミノ酸と糖を含む一般用のキット輸液製剤も利用可能となるかもしれない.

アミノ酸を投与する場合はアミノ酸の利用効率や窒素バランスを考慮し,十分な投与エネルギー量を確保するために,糖液や脂肪乳剤の併用などを決める必要がある.
・20%脂肪乳剤100 mL(エネルギー200 kcal)を追加することにより,必須脂肪酸を補充するとともに,非蛋白カロリー窒素比(NPC/N比)を増加させることができる.

比較的短時間で,高濃度の成分を投与することになるので,血糖および血中トリグリセライド値の上昇にも注意する.

単独では必要栄養量を満たすことはできず,食事や経腸栄養の併用状況を考慮しながら調整を行う.

末梢静脈栄養 peripheral parenteral nutrition;PPN

栄養状態が比較的良好な透析患者に対する静脈栄養が必要とされる期間が2 週間未満の場合には末梢静脈栄養が選択され,長期の静脈栄養が必要な症例ではTPNが選択される.

PPN 製剤のみでは,1 日に必要なエネルギーが補給できない点にも留意する.個々の患者の病態や変化を考慮せず,安易な長期連用を行わないように注意する.

中心静脈栄養 total parenteral nutrition;TPN

キット製剤は簡便で衛生的である反面,組成が固定され,個々の患者の病態に合わせた調整ができない.
→キット製剤を投与する場合は,水分,電解質などを含めた配合成分ごとの投与量を確認し,必要に応じて投与量の調整や不足成分の補給を行う.

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