非アルコール性脂肪性肝疾患 nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

主にメタボリックシンドロームに関連する諸因子とともに,組織診断 or 画像診断にて脂肪肝を認めた病態.

アルコール性肝障害,ウイルス性肝疾患,薬物性肝障害など他の肝疾患は除外する.

NAFLDは,病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver;NAFL,以前の単純性脂肪肝)と,進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎( nonalcoholic steatohepatitis;NASH)に分類される.

①肝臓の脂肪沈着は,組織学的に5%以上を有意とする.
②NASHは,病理診断による脂肪変性,炎症,肝細胞障害(風船様変性)が特徴である.
③NAFLとNASHは,相互移行がある.NAFLの一部は,進行速度は遅いが線維化が進行することもある.
④飲酒の上限は,エタノール換算男性30g/日,女性20g/日が基準である.
⑤薬物に起因する脂肪性肝疾患は,基本的に薬物性肝障害として取り扱う.
⑥いわゆる小滴性脂肪変性を呈するライ症候群,急性妊娠性脂肪肝などは,NAFLDからは除外する.
⑦NASH肝硬変の中に,進行とともに脂肪変性や風船様変性などのNASHの特徴が消失し,burned-out NASHを呈するものがある.

生命予後に最も関連する病理所見は,肝線維化であり,線維化の程度に応じて経過観察方法・治療法を考慮すべきである.

注目されている理由
①肥満は肝癌発症の危険因子[N Engl J Med 2003;348:1625-38]
②日本人の糖尿病患者の13.5%が肝疾患(肝癌・肝硬変)で死亡している[糖尿病2007;50:47-61].
③肝炎ウイルスに感染していない肝癌患者が増加している.

疫学

成人で約30%,男性で41%,女性で18%とされ,約2300万人と推定されている.
・男性では中年層,女性では閉経後に多い.
・NASHは全体の10~20%とされ,全人口の3~5%で約400万人と推定される.

NAFLDには脂質代謝異常70%,高血圧40%,高血糖20%を合併し,メタボリックシンドロームとしての合併率は約40%であることがメタ解析より報告されている.

通常20~30%が軽快,30~35%が悪化,40~50%が不変とされる.

性・年齢を一致させた一般人口と比較すると,NASHでは生存率が低下し,死因としては心血管系イベントと肝関連死が増加する.
・619人のNAFLD/NASH患者を平均12.6年観察した研究では,33.2%の患者が死亡or肝移植を受けたが,死因としては心血管疾患による死亡が38.3%と最多.

線維化の進行に寄与する因子は,肥満・糖尿病・年齢(高齢)と報告されている.

肝細胞の風船様変性より,肝線維化stageが唯一生命予後に関わる病理学的所見である報告が多数ある.

原因

two-hit theory

the 1st hit
肥満,糖尿病,脂質異常症などのインスリン抵抗性によって,肝臓にトリグリセライドが過剰に蓄積して,脂肪肝になる.
肝組織所見では肝細胞の30%以上に脂肪滴が認められる.

①食事に含まれていた脂肪由来のTGが肝臓に蓄積する.
②糖質の過剰摂取によって,TCA回路(クエン酸回路)で処理されたアセチルCoAが遊離脂肪酸を経て,TGとして蓄積する.
③末梢や内臓脂肪からホルモン感受性リポ蛋白リパーゼによって分解された遊離脂肪酸がTGとして蓄積する.
④ミトコンドリアにおけるβ酸化障害によって遊離脂肪酸が代謝されずにTGとして蓄積する.
⑤TGがアポ蛋白B100と結合し,ミクロソームトリグリセリド輸送蛋白(MTP)により超低比重リポ蛋白(VLDL)として肝細胞から分泌される経路が障害され,TGが蓄積する.

the 2nd hit
肝臓が外界からの刺激に易感受性になったところに,酸化ストレス・脂質過酸化・PAMPs(病原体関連分子パターン:pathogen-associated molecular patterns)などにより惹起されるサイトカインの放出,インスリン抵抗性などの肝細胞障害性因子が加わることで,肝細胞壊死・アポトーシスが,肝実質の炎症とともに進行する.

multiple parallel hits hypothesis

主に脂肪組織や腸管由来のサイトカイン,PAMPs,食事因子などの多くの因子により,肝臓に惹起される炎症が,脂肪化と同時,あるいは先行して起こり,NAFLDを進展させる.

the 1st hit
メタボリック症候群
・肥満,高血圧,脂質異常症,糖代謝異常

the 2nd hit
インスリン抵抗性

the 3rd hit
インスリン抵抗性,活性酸素の増加,抗酸化物質の不足,肝臓への鉄沈着,レプチンの増加,腸内微生物の増殖

遺伝的背景

近年のGWAS解析により,PNPLA3(patatin-like phospholipase domain-containing protein 3),TM6SF2など複数の遺伝子多型が,NAFLD病態進展と関与していることが示されている.
PNPLA3は,白色人種に比し日本人はリスクアレルを持つ頻度が高いことが注目されている.

病態

遊離脂肪酸

肝細胞における遊離脂肪酸の供給増加は,腸管/脂肪組織由来の遊離脂肪酸の輸送量増加および肝内のde novo脂肪酸の増加によってもたらされる.
・カロリー供給過剰の状態ではdo novo脂肪酸合成が亢進している.

過剰な遊離脂肪酸はインスリン抵抗性を惹起するだけでなく,肝細胞のミトコンドリア機能障害,小胞体ストレス,脂肪酸酸化を惹起してラジカルを増加させ,酸化ストレスを増加させる原因となる.

肝臓へ過剰に流入した脂肪酸が小胞体ストレスを誘導し,そのストレスの強さに依存してアポリポ蛋白B(apoB)の分解が促進し,超低比重リポ蛋白(VLDL)の分泌が減少する結果,肝臓内に中性脂肪が蓄積し脂肪肝が促進する.

特に食事中の飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を惹起し,酸化ストレスを増大させる.

不飽和脂肪酸は一般に炎症細胞の活性を抑制することにより,炎症性疾患や動脈硬化疾患を予防,改善させる効果があるとされるが,2重結合部分がトランス型に結合したトランス脂肪酸は動脈硬化の危険因子.

インスリン抵抗性

NASHの63%が糖尿病や耐糖能異常を合併している.J Gastroenterol 2014;49(11):1477-1484

インスリン抵抗性=血中のインスリン量が維持されている状態であっても,肝細胞や筋組織におけるインスリンに対する感受性が低下している.

「過剰な糖の流入→インスリン分泌の増加→肝臓でのトリグリセリド合成の促進→脂肪肝→食後高血糖や夜間(空腹時)高血糖→インスリン分泌の増加」の悪循環

肥満患者では,血中の遊離脂肪酸が増加することが知られており,遊離脂肪酸はインスリンシグナルを阻害する(インスリンレセプター基質[IRS]のセリンリン酸化を誘導することにより,IRSのチロシンリン酸化を抑制し,インスリンシグナルを阻害する).

肝臓では遊離脂肪酸のβ-酸化に伴い,糖新生,ケトン体の産生が増加する.

夜間から早朝までの肝臓から放出されるグルコースの約75%は,グリコーゲン分解により供給され,約25%は糖新生(骨格筋由来のアラニンなどのアミノ酸や脂肪組織由来のグリセロールなどが原料になる)により供給される.
→肝臓に脂肪(トリグリセリド)が蓄積すると,食後の肝臓での糖取り込み率が低下し、食後高血糖になり,夜間の肝臓での糖放出率が増加し,空腹時高血糖になる.

肝硬変・肝癌

HCC発癌については,約5%/10年と報告されている(NASH肝硬変では,11~13%/5年).

酸化ストレスはDNAを直接傷害し発癌を促進し,鉄も発癌を促進する要因となる.

すべての慢性肝疾患で,肝線維化の進行は最も有意なHCC発癌危険因子であり,一般的には高度線維化例,特に肝硬変例に発現することが多いと報告されている.

男性,高齢,AST高値,血小板数低値,脂質異常症,糖尿病などが危険因子とされる.

腫瘍マーカーはPIVKA-Ⅱでより鋭敏(AFP高値26%,PIVKA-Ⅱ高値38%).

NAFLD/NASH患者で,肝硬変や肝癌発症の最も強い予測因子は糖尿病であり,発症リスクを約2倍に上昇させる.

動脈硬化

心血管イベントとNAFLDはインスリン抵抗性など,リスク因子が重複している.

NAFLD患者では脂肪蓄積した肝臓や脂肪細胞由来のアディポサイトカインである炎症性サイトカインやplasminogen activator inhibitor type-1(PAI-1)などが炎症や血栓形成を生じ,冠動脈や脳動脈などの動脈硬化を促進させること,血管内皮機能の障害,心肥大や拡張機能障害を引き起こすことも報告されており,心臓関連死亡が増加する要因となっている.

タイトルとURLをコピーしました