神経内分泌腫瘍 neuroendocrine tumor;NET

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

○神経内分泌細胞に由来する腫瘍を神経内分泌新生物(Neuroendocrine neoplasm;NEN)と総称し,分化度に応じて神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;NET)と神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma;NEC)に大別される.

○神経内分泌腫瘍(NET)は神経内分泌細胞に由来し,ペプチドホルモン産生能を有する腫瘍で,細胞内の頼粒の形状やその分泌機構に神経細胞との共通性がある.
 神経内分泌腫瘍は内分泌臓器のみではなく全身に分布しており,diffuse neuroendocrine system(DNES)として全身臓器に発生する.
 膵臓以外では,NETは下垂体,甲状腺,副甲状腺,副腎,消化管,胸腺,肺などに発生する.

○多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)の部分症として発生することも多い.
 MEN1型の膵・十二指腸病変は,膵・消化管の神経内分泌腫瘍であり,ガストリノーマ,非機能性腫瘍,インスリノーマが多く,これ以外にもグルカゴノーマ,VIPoma,ソマトスタチノーマなどができる.
 ガストリノーマは十二指腸の粘膜下腫瘍として発生することが多い.
 多発性であり,それぞれの腫瘍が小さいため局在診断が困難なことが多い.

分類

○2010年のWHO分類においては,主に病理学的な見地から従来の病理組織学的分化度や血管浸潤や転移の有無などの生物学的悪性度による分類ではなく,細胞増殖動態(核分裂像数・Ki-67 index)に基づき,膵臓と消化管のNETが分類されるようになった.

疫学

○2005年のわが国の調査では,10万人あたりの有病患者数は,膵臓周囲のNETが2.2人,消化管NETが3.5人であり,1年間の新規発症率は膵NETが1.0人,消化管NETが2.1人と推定された.
→本邦の発症数は欧米と比較し膵NETが約2倍,消化管NETが1.4倍と高い.

○膵NETの内訳は,機能性NETが47.7%(インスリノーマ31.7%,ガストリノーマ8.6%,グルカゴノーマ4.9%など),非機能性NETが47.7%であり欧米と差がない.

○MEN1の合併率としては,わが国ではガストリノーマは27.3%,インスリノーマは7.4%,非機能性腫瘍は5.3%.
 欧米ではMEN1に合併する非機能性腫瘍が30%と本邦とは大きく異なっている.

○消化管のNETの腫瘍径は平均1.3cmで個数は平均2個であった.
 患者の平均年齢は60歳で,診断契機は有症状例が31%で,偶然発見された例が44%と多い.
 欧米に比較して後腸(hindgut)由来のNETが多いのが特徴.
 carcinoid症候群(紅潮,下痢,喘鳴,心疾患など)の頻度は1.7%と少ない.
 さらに遠隔転移も5.6%と低率.

症候

症状

○問診でホルモン症状の病歴を注意深く聴取し,NETの疑いを持ったならば,常にMEN1型の併存を疑う.
 膵神経内分泌腫瘍に関連したホルモン症状がある場合には,下垂体腫瘍と副甲状腺のスクリーニングが必要.

○「症状あり」で来院した症例が全体の60%で,最も頻度が多いのはインスリノーマの低血糖由来の症状.無症状で検診で偶然発見された症例は全体の24%.他にはガストリノーマの胃酸過剰分泌による症状(難治性消化性潰瘍や水様性下痢)が代表的.

検査

○膵消化管ホルモン検査と同時に,血中カルシウム濃度を含めた副甲状腺機能検査,下垂体機能検査を行う.

○MEN1を合併する頻度が高いことから,初診時にスクリーニングで血清Ca,P値を測定し,副甲状腺ホルモン過剰分泌がないか推定する.

○腫瘍マーカーとして神経内分泌細胞から合成/分泌されるクロモグラニンA(CgA)の有用性が知られている.
 NSEも用いられるが感度は低い.

○血清ガストリン値
 PPIやH2 blocker内服で増加するため,内服薬の聴取が重要.

診断

画像診断

○腫瘍の局在診断.多血性で内部均一な腫瘍であり,典型例では診断は容易であるが,乏血性を示すものや嚢胞変性を伴うような非典型例では,膵癌や嚢胞性膵腫瘍など他の膵腫瘍との鑑別が問題となり,診断が困難.
・副甲状腺,下垂体前葉腫瘍のスクリーニングも.

腹部超音波検査

○内部均一な低エコー腫瘤として描出される.
 腫瘍径が大きくなると内部の出血や嚢胞変性を反映して不均一に描出されることもある.
○最も低侵襲であり,画像検査のfirst stepであるが診断率は低く,むしろ検診時のスクリーニングとして重要.

腹部CT

○典型例ではダイナミックCTにて動脈相で非常に強く造影される.
 膵癌との大きな鑑別点であり,多血性腫瘍という点からは稀ながら転移性膵腫瘍(特に腎癌)と鑑別する必要がある.

○診断率は80%前後であるが,近年のMDCTの発展で更に検出感度が向上している.肝転移やリンパ節転移の検出にも優れており,ステージングの際に必須.

<非機能性内分泌腫瘍> 膵体部に辺縁整,内部均一な腫瘍.

腹部MRI

○T1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈する.
○CT同様,造影MRIでは腫瘍濃染を呈する.
○診断率は70%前後でCTにやや劣る.

超音波内視鏡 EUS:endoscopic ultrasound)/EUS-FNA(fine needle aspiration

○EUSでは辺縁整,内部均一な低エコー腫瘤として描出される.
○膵全体を観察でき,1cm以下の小病変も同定できる.
○診断率は80~95%程度とCTやMRIより優れており,原発巣の局在診断において非常に有用.
○EUS-FNAを併用することで組織診断が可能となった.組織型は治療方針決定に極めて重要.

ERCP;endoscopic retrograde cholangiopancreatography

・膵管と腫瘍の関係を評価し,細胞診が施行できることから診断に有用であるが,近年の診断的ERCP減少の流れを受けて,施行例数は減少している.

選択的動脈内カルシウム注入法(ASVS,SACI)

○腹部動脈造影の際に肝静脈内にカテーテルを留置し,膵の各領域を支配する動脈からカルシウムを注入後,肝静脈血中のインスリン(ガストリン)値を測定し,その上昇(>2倍)から腫瘍の局在を判定する.

○腫瘍の栄養動脈を同定することで他のmodalityでは描出困難な腫瘍の存在領域診断が可能であり,インスリノーマやガストリノーマの術前検査として特に有用.

ソマトスタチンレセプターシンチグラフィー SRS

オクトレオスキャン®

○PNETではソマトスタチンレセプター(SSTR),特にSSTR2が高率に発現している.SSTR2に強い結合能を持つオクトレオチドを用いたSRSが海外では広く行われており,転移巣を含めた全身検索に有用.

○本邦では保険適応がないため,臨床試験として限られた施設でした施行されていない.

病理診断

・進行性,切除不能PNETの治療方針決定には,腫瘍の組織型の情報が非常に重要. ・2010年のWHO分類ではKi-67指数が非常に重要.

治療

○腫瘍が放出するホルモンによる症状を来すという側面と,転移性のものは悪性腫瘍として生命予後に関わるという2つの側面から診療をすすめる必要がある.

○高分化型腫瘍と低分化型腫瘍で異なる.
 日常臨床で経験するものの多くが高分化型腫瘍では転移巣も含めた切除術を第一に考慮する.
 切除不能例でも減量手術を含む集学的治療が予後改善に寄与する.

○多発性内分泌腺腫症に伴う膵神経内分泌腫瘍は切除によって,症状の寛解と良好な生命予後が得られるので,切除を中心とした治療計画を立てることが望ましい.

高分化型pNET

○基本は切除術.

○悪性腫瘍を疑う場合,あるいはMEN1型にみられるような多発病変が存在する場合で術式が変わってくる.膵周囲リンパ節は頻度の高い転移部位であり,悪性腫瘍を疑う場合には膵周囲リンパ節郭清を含めた膵切除術を行う必要がある.教科書的にはインスリノーマ以外は悪性腫瘍である頻度が50%以上と高い.

○高分化型pNETは進行が緩徐であるため,遠隔転移があっても切除可能病変には積極的に切除を行う.

○切除不能例には各種薬物療法を行うが,腫瘍減量によりホルモン過剰症状や予後の改善が見込める場合には,減量手術を行った上で薬物療法を行う.

○抗腫瘍薬については,腫瘍量と増殖速度に応じた治療選択が提唱されている.
 腫瘍量が少なく緩徐な増殖→経過観察もしくはソマトスタチンアナログ
 腫瘍量が多く緩徐な増殖or腫瘍量が少ないが急速な増殖→分子標的薬
 腫瘍量が多くかつ急速な増殖→化学療法

低分化型pNET

○発見時に全身に広がっていることが多く,急速な転帰をたどる予後不良な疾患.
○切除可能例にも術後補助化学療法や放射線療法を行うことが勧められている.
○化学療法のレジメは,肺小細胞癌に準じたエトポシドあるいはイリノテカンとシスプラチンの併用が推奨されている.

非機能性腫瘍

○これまで小さなものは経過観察されることが多かったが,特に米国では1cm以下の小さなpNETでも悪性化のポテンシャルを持っているとの認識から,本邦でも同様の傾向になりつつある.

○画像診断や術中所見で明らかな悪性所見を認めなければ,小さな非機能性pNETは核出術,あるいはリンパ節郭清を省略した膵部分切除術でよい.
 リンパ節郭清の必要性を術前に判断することは難しいが,腫瘍径は一つの目安であり,2cm以上の非機能性pNETにはリンパ節郭清を行う必要があるとの報告が多い.

○近年,鏡視下手術が膵切除にも応用されるようになり,特に低悪性度の小さなpNETは腹腔鏡下腫瘍核出術や尾側膵切除術の良い適応になると思われる.

MENに伴う多発pNET

○MEN1型患者の予後規定因子はpNETであるため,その治療が重要になる.
○非機能性腫瘍とガストリノーマの合併頻度が高く,ガストリノーマは十二指腸原発の悪性腫瘍の頻度が高い.
○十二指腸のみに腫瘍が存在すれば核出術あるいは膵頭温存十二指腸切除術とリンパ節郭清を行うが,膵頭部にも腫瘍が存在する場合には膵腫瘍核出術を併せて行うか膵頭十二指腸切除で対処する.
○非機能性腫瘍は微小なものも含めると膵全体に無数に存在するといわれており,膵機能温存の観点から1~2cm以上の腫瘍のみを切除し,それより小さな腫瘍は経過観察を行う.

抗腫瘍薬

○本邦のガイドラインでは,膵NET(G1/G2)に対する抗腫瘍薬として,エベロリムスまたはスニチニブが推奨(グレードB).
 ストレプトゾシンは治療オプションとして,あげられるのみ(グレードC1)

エベロリムス

アフィニトール® 経口mTOR阻害薬

○2011年に膵NETに対して保険承認されていたが,2016年8月に消化管や肺原発を含むすべての神経内分泌腫瘍に対する効能が追加承認された.

ストレプトゾシン Streptozocin;STZ

○膵ランゲルハンス島のβ細胞に発現しているグルコーストランスポーター2(glucose transporter 2;GLUT2)を介して細胞内に取り込まれ,アルキル化でDNA合成を阻害することで腫瘍増殖を抑制する細胞障害性抗癌剤.
・腫瘍縮小効果が強い.

○5-FUなどの他剤を併用することがほとんどだったが,単剤療法の妥当性も評価されてきている.

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