非アルコール性脂肪肝炎(NASH),非アルコール性脂肪肝(NAFLD) 治療

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

一般療法(減量)

生活習慣の改善.

BMI>25の場合は,10%の体重減少を図る.
・ガイドラインでは7%の体重減少を一つの目安.

過体重のNASH患者が減量に成功すると,肝酵素の改善,肝組織所見の改善がみられる.
・10%以上の減量で肝線維化改善効果が認められる.
・Harrisonらの検討におると,5%の体重減少でインスリン抵抗性の改善および肝脂肪沈着の減少を認め,9%の減量で炎症,肝細胞膨化といった肝細胞傷害所見の改善がみられた.

急速な体重低下は逆に肝の炎症,線維化の誘因となることがあるため,注意.

急激な体重減少に起因する急激な脂肪分解は,ときにNASHの病理を増悪させることがある.

運動療法を伴わない急激な体重減少は,タンパク異化亢進から骨格筋量の減少と基礎代謝量低下を招き,リバウンドを作りやすい状態になる.

7%の体重減少が得られる症例は約9%程度に留まる.

なすび院長
なすび院長

減量療法は,可能であれば運動療法と併用して,ゆっくりと進めることを原則

食事療法

カロリー

目標体重としては,非現実的な理想体重(標準体重)ではなく,受容可能な体重設定を行う必要がある.
→具体的には調節体重(adjusted body weight)で1 日の総エネルギー量(25~35kcal/kg/日)を決めることが望ましい

調節体重=標準体重+(現体重-標準体重)×1/4

もとより栄養学的リスクを有している肝疾患患者の減量は慎重に行う必要がある.
→適宜栄養アセスメントを行いながら進め,骨格筋を減らさない減量が理想.
→実際には減量効果をみながら,ゆっくり減量できるように指示エネルギーを加減する.

エネルギーバランス

エネルギー比率として炭水化物50~60%,脂質20~25%と脂質が制限されることが多い.

極端な糖質制限はケトン産生に傾くため少なくとも糖質は100 g確保する.

タンパク質は体タンパクの崩壊を防ぐため1.0~1.2 g/kg/日は確保する.

脂質の制限は脂溶性ビタミンの不足につながるため,エネルギー比20~25%を基準とする.

脂質を控えることよりも,脂質の質を改善させることが重要.

beyond triglyceride仮説
肝に蓄積する中性脂肪は脂肪酸から変換・合成されたものであり,中性脂肪として貯蔵されることによって脂肪酸の蓄積による障害を防御する意味があり,またそれ自体は全身のインスリン抵抗性を増大させない.
→中性脂肪自体はリポトキシティを起こす本体ではない

地中海食
オリーブ油,ナッツ類,野菜,果物を摂取する地中海型の食事や低炭水化物食が,低脂肪食よりも,体重減少と代謝異常改善に有効であることが報告された.
・オリーブオイルやナッツ類は高カロリーだが,オレイン酸などの不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸)を豊富に含んでいる.
・飽和脂肪酸は血清脂質を上昇させて動脈硬化を促すのに対し,多価不飽和脂肪酸は血清脂質低下,血小板の凝集能抑制などの作用を有する.
・ナッツ類に含まれる食物繊維には,食後の血糖値上昇や,コレステロール増加を抑える作用がある.

食後高血糖を見据えた食事療法

ゆっくり食事すること,高繊維含有食や低glycemicindex食等が推奨される.

食物繊維を十分摂取することは血糖上昇を抑制させるほか,腸内細菌叢を整えることで,bacterial translocationとこれに続発する肝での炎症性サイトカイン産生亢進がNASH病理を増悪させる仮説にも有効と想定される.

生理的な血糖コントロールのためには,食事摂取パターンに応じた適切なインスリン補充療法により食後高血糖を抑制し,肝脂肪化を促進する「不必要な高インスリン血症」を来さない工夫が必要になる.

運動療法

運動療法がNAFLD患者の肝機能異常と肝病理を改善させることを示した研究報告は多い.

肝脂肪化には主に脂肪組織由来の血漿FFAが寄与することを考えると,運動療法による脂肪組織の量的減少が最も治療価値を有するように思えるが,実際にはそれらの報告で体重減少の程度は-3~-10% と様々.

運動の効果は多面的であり,体重減少,基礎代謝亢進,脂肪組織の量的低下,骨格筋での脂肪酸酸化促進,骨格筋量の増大,骨格筋への糖取り込み促進等を介して全身のエネルギー代謝を促進する.


最大心拍数の60~70% 程度の有酸素運動を無理のない計画で継続することが推奨されている.

無酸素運動となるレジスタンストレーニングもBMI低下と独立してNAFLD患者の肝脂肪化を改善する.

肝細胞癌のサーベイランス

肝生検で線維化F0-1 or エラストグラフィーでF0-1であった場合
→生活習慣の改善を指導し,エラストグラフィーは1年後に再評価を考慮する.

肝硬変であった場合
→6カ月毎の超音波検査,6ヵ月毎の腫瘍マーカーの測定を行い,肝細胞癌のサーベイランスを推奨する.

男性で線維化ステージF2以上 or エラストグラフィーでF2相当以上
女性で線維化ステージF3以上 or エラストグラフィーでF3相当以上
→肝細胞癌のリスクであり,6-12ヵ月毎の超音波を考慮する.

薬物療法

現在,ゴールドスタンダードはない.

現状では,生活習慣病のない場合はビタミンE(抗酸化療法)を,糖尿病・脂質異常症・高血圧などのメタボリックシンドロームと関連する合併症が存在する場合にはその合併症に対する薬物療法を行う.

抗酸化剤

ビタミンE,ビタミンC

肝臓では酸素を使った糖代謝の過程で活性酸素が発生し,大量発生した場合その酸化ストレスから細胞が傷害される.

ビタミンEは,RCTで肝組織学的な改善が報告されている他,高度線維化NAFLDのコホート研究で生命予後の改善も報告されている.

α-トコフェロール ユベラ®
ビタミンEの中でも特に強い抗酸化作用を有する.
生体膜に発生した活性酸素を防ぎ,過酸化脂質を消去する.
ビタミンCとの併用により抗酸化作用が増強される.

糖尿病治療薬

ピオグリタゾン
クッパー細胞や肝星細胞に存在するPPARγに直接作用し,炎症や肝臓の線維化を軽減する.
NASHにおけるALTを有意に低下.
使うなら少量より.
・インスリン抵抗性を有するモデル動物や,2 型糖尿病患者では顕著であるが,糖尿病を合併していないNASH患者に対しては極めて限定的であり,とりわけ肝線維化に対する有効性は明確でない.

メトホルミン
アセチルCoAカルボキシラーゼ活性の抑制,マロニルCoAの減少,カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)-1活性の上昇,脂肪酸β酸化の促進,ステロール調節エレメント結合蛋白質(sterol regulatory element-binding protein-1c)の発現抑制などが関与し,脂肪肝やインスリン抵抗性が改善する.
・臨床的にも,12 カ月のメトホルミン投与(2 g/日)は,糖尿病非合併NAFLD患者のALT値とNAFLDの組織学的所見を有意に改善させた.
・しかし,NASHの線維化は改善効果が得られなかったため,ガイドラインでは推奨されていない.
・メトホルミンの発癌抑制効果,NASH由来肝硬変患者への継続投与による予後改善効果が報告されている.

ナテグリニド
早期2型糖尿病を合併するNASHに対し,270mg/日を投与したところ,ALTと組織学的所見の改善がみられた.

インクレチン関連薬
・NASH患者では,DPP-4の発現亢進もしくはGLP-1の発現低下が報告されているため,期待されている.
・脂肪肝炎モデルマウスを用いた実験では,DPP-4阻害薬による肝脂肪化,肝の炎症所見の改善効果が報告された.
・リラグルチドは,二重盲検無作為化第Ⅱ相試験で,有意な病理所見の改善とともに,肝線維化進展抑制が証明された.
・デュラグルチドでも肝機能,体脂肪,VICEでの肝硬変低下改善効果が報告されている.
・ヒトのNASHにおける改善効果に関しては評価は一定しない.

SGLT2阻害薬
・全身疾患としての側面を持つNAFLD/NASHに対し,心腎の臓器保護を期待し,ガイドラインで推奨されている.
・組織学的検討をされた研究が少なく,比較的短期間な検討が多い.
→データはまだ不十分

脂質異常治療薬

ベザフィブラート
PPARαだけでなく,PPARδ(β)やPPARγの活性化作用を有することが報告されている.

フェノフィブラート
RCTにより,ALTと脂肪肝の改善を認められている.

スタチン
プラバスタチン,アトルバスタチン,ロスバスタチン,ピタバスタチンでは肝機能と組織学的所見の改善が認められている.
→欧米ガイドラインでは,肝疾患の改善よりも心血管リスクを下げることが目的とされる.

エゼチミブ
RCTでは肝機能と肝組織像の改善が認められている.
・最近の臨床試験の結果からは線維化の改善は認められていない.

肝庇護剤

ASTやALTを下げて肝臓の炎症を鎮静化させることにより,肝硬変や肝癌への進展を抑制する.

ウルソデオキシコール酸(UDCA) ウルソ®
疎水性胆汁酸置換作用による細胞保護作用,免疫抑制作用,抗酸化作用,抗炎症作用などを有する.
・無作為割付臨床試験で,NASHに対する有用性が証明されなかった.
・糖尿病非合併NASH患者を対象とした最近の報告では,ビタミンEはNASHの総合的病理スコアを改善するが,肝線維化は改善しない.

タウリン タウリン®
解毒作用,胆汁酸排泄促進作用,活性酸素抑制作用など.

ポリエンホスファチジルコリン(EPL)
不飽和細胞酸を有するリン脂質を主成分とし,細胞内における脂質代謝異常の改善により,糖代謝・蛋白代謝などの細胞機能を改善する.

降圧薬

RAS阻害薬
肝星細胞にはアンジオテンシンⅡタイプ1受容体が存在し,アンジオテンシンⅡはインスリン受容体基質(IRS)-1のセリンリン酸化を介して,インスリン受容体下流のシグナル伝達を抑制し,インスリン抵抗性に関与することが知られている.
テルミサルタン,バルサルタンでは,RCTにより肝機能と肝組織像の改善がみられている(テルミサルタンはPPARγを25~30%活性化する).

除鉄療法

肝臓に鉄が過剰に蓄積することにより,炎症や線維化の促進,インスリン抵抗性の増強がみられる.

瀉血療法
1回に200~400mLの血液を2週毎に抜く.
・まだRCTがない.

鉄制限食
1日の食事中の鉄を6~7mg以下にする.

外科的治療

減量手術

現在の適応は,BMI≧32で糖尿病などの生活習慣病を合併するNAFLDの場合.

成功すれば,耐糖能と肝機能の両方の改善が期待できる.

Mathurinらは減量手術を受けた成人381名に対し,観察研究を行い,5年間のfollowで肝組織上の脂肪沈着および肝細胞傷害所見に有意な改善効果が得られたと報告した.

肝予備能が低下している肝硬変患者に対しては基本禁忌.

肝移植

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