骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndromes;MDS

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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造血幹細胞(hemotopoietic stem cell;HSC)にさまざまな遺伝子変異が生じることにより発症する難治性造血器腫瘍.

高齢者に多い疾患であり,人口の高齢化に伴て疾患人口は増加している.

慢性進行性の血球減少を特徴とし,症状は非特異的で,軽症例では無症状であることも多い.

疫学

罹患率は,人口10万人あたり約3人で,日本の推定患者数は約7000人.

男女比は2:1で男性に多い.

診断年齢の中央値は65歳で,60歳を超えると罹患率が急激に上昇する.

原因

遺伝子変異の原因としては,加齢・放射線・化学療法などが考えられているが,ほとんどの症例で正確な原因は不明.

遺伝子変異

RNAスプライシング因子,エピゲノム制御因子の変異頻度が高いのが特徴.

MDS発症には複数の遺伝子変異が必要であることが明らかになっている.
→低リスクMDSから高リスクMDSに進展する際には,タイプ2変異が多くみられ,MDSから二次性AMLに進展する際には,タイプ1変異が多くみられることが報告されている.

RNAスプライシング

DNAから転写されたRNAからイントロンを取り除き成熟したメッセンジャーRNAを作るプロセスで,50種類以上の蛋白からなる複合体が関与している.

SF3B1変異(約30%)は,環状鉄芽球を伴うMDSに特異的・高頻度(約70%)で診断的意義が高い.

エピゲノム制御因子

DNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノム修飾を制御する因子で,遺伝子の転写を調節する働きがある.

TET2変異(10~30%),DNMT3A変異(十数%)

ヒストン修飾因子

ポリコーム群複合体(polycomb repressive complex 2;PRC2)と呼ばれる蛋白複合体の構成因子で,ヒストンのメチル化を介して遺伝子発現を負に制御している.

ASXL1(23%),EZH2(6%)の変異頻度が高い.

病態

遺伝子異常を蓄積したHSCが骨髄中でクローン性に増殖する疾患であり,無効造血による血球減少および形態異常を特徴とする.
一部の症例は,高率に白血病に移行するため,MDSは前白血病状態ともいわれる.

異常クローンが骨髄中でゆっくりと増幅し,正常の造血細胞を凌駕・駆逐することで発症に至る.
・MDSクローンは,遺伝子変異によって分化能・増殖能に異常をきたしており,成熟過程で多くの細胞がアポトーシスにより骨髄中で死滅する(無効造血).

末梢血では血球減少を呈し,成熟血球は,形態のみならず,機能的にもさまざまな異常を持つのが特徴.

クローン性造血 clonal hematopoiesis with indeterminate potential;CHIP

単一ないしはごく少数のクローンが造血を維持している状態.

限られた数の(多くは1種類の)遺伝子変異を有するHSCが造血を行っており,見かけ上,末梢血に異常がない.

CHIP陽性の人は,CHIP陰性の人に比べてAMLに進展する確率が高いことが知られ,MDSやAML発症の基盤となる前白血病状態とも考えられている.

分類(2016年WHO分類)

臨床経過

症状は,基本的に血球減少によるもので,特徴的な症状はない.無症状であることも多い.
→健康診断や一般診療で偶発的に発見されることが多い.

貧血症状→全身倦怠感,動悸,息切れなど

血小板減少による出血傾向→点状出血,紫斑,鼻出血,歯肉出血など

検査所見

約半数は汎血球減少を呈し,残りは貧血のみ,貧血+血小板減少,貧血+白血球減少が約1/3ずつを占める.

骨髄内溶血に伴うLDH上昇を認めることが多い.

貧血

最も多くみられ,正球性から軽度の大球性を呈する.

血球異形成

末梢血では,好中球の脱顆粒,Pelger核異常などの好中球核奇形,巨大血小板などの形態異常(異形成),赤血球の大小不同・奇形赤血球がみられる.
→診断的意義が高い.

骨髄

正形成,過形成であるが,十数%の症例では低形成を示す.

赤芽球系→巨赤芽球様変化,多核赤芽球,環状鉄芽球など

骨髄系→脱顆粒,低分葉核などの核奇形

巨核球系→微小巨核球,核の分離異常など

芽球の増加を認め,特に骨髄球の芽球が5%以上に増加している症例では,白血病への移行に注意が必要.
→骨髄中の芽球が20%以上の場合は,白血病と診断される.

染色体異常

約半数の症例で染色体異常がみられる.
→患者の予後と密接に関連する.

欠失・トリソミーなどの数的な異常がほとんどで,白血病と異なり転座型の異常は稀.

5番染色体欠失(ー5 or 5q-) 約10%→予後良好
・5番染色体長腕欠失のみを認めるMDSは,5qー症候群(MDS with isolated del(5q))と呼ばれ,大球性貧血を呈する一方で,血小板減少を認めないのが特徴.
・レナリドミドが著効し,平均生存期間は10年以上と予後良好

7番染色体欠失(ー7 or 7q-) 約10%→予後不良

20番染色体長腕欠失(20q-) 約4%

予後予測システム

造血不全による血球減少を主体とする低リスクMDSと,高率に白血病に移行する高リスクMDSの2群に分けられる.

2012年に発表されたIPSS-R(Revised International Prognostic Scoring System)が頻用されている.
・染色体異常に加え,骨髄中の芽球の割合,末梢血の血球減少の程度をそれぞれスコア化し,very lowからvery highの5群に分類している.
→全生存率,白血病への移行率が層別化される.

治療

低リスクMDS

白血病化のリスクは低く,骨髄不全による血球減少への対応が治療の主体.
→輸血,鉄キレート薬,抗生剤などの支持療法,免疫抑制療法,蛋白同化ステロイド,エリスロポエチン製剤,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などのサイトカイン療法,DNA低メチル化薬など

貧血

Hb 7~8g/dL以下の症状を有する場合は赤血球輸血.

頻回の赤血球輸血による鉄過剰症(輸血後鉄過剰症)は,さまざまな臓器障害を引き起こし,予後を悪化させるため,血清フェリチンが2ヵ月以上にわたって1000ng/mLを超える場合は,鉄キレート療法(デフェロキサミン酸塩:デスフェラール®,デフェラシロクス:ジャドニュ®)を開始する.

持続作用型Epo(ダルベポエチンアルファ:ネスプ®)の高用量投与が保険適用となっている.
・50~70%の症例で輸血量減少効果がみられる.
・特に血清Epoが低値(200 or 500IU/mL未満)の症例で有効性が高い.

好中球減少

G-CSF(グラン®,ノイトロジン®)が保険適応となっており,感染症を反復する場合に使用を考慮する.

免疫抑制療法

芽球増加のない低リスク症例の一部でシクロスポリン,ATG(anti-thymocyte globulin)などの有効性が報告されている.

HLA-DR15陽性,若年例,赤血球輸血歴が短い,高感度フローサイトメトリーで末梢血中にCD55,CD59陰性の赤血球・顆粒球(PNH血球)が検出されることが治療反応性と相関するとされる.

レナリドミド(5q-症候群)

レブラミド®

5q-症候群に対して著効を示し,約70%の患者で貧血の改善,輸血依存からの脱却が認められる.

(DNA低メチル化薬)

アザンチジン:ビターザ®

高リスクMDSの標準治療薬.
一部の低リスクMDS症例においても造血回復効果が報告されている.

高リスクMDS

同種造血幹細胞移植 allogenetic hematopoietic stem cell transplantation;allo-HSCT

白血病移行のリスクが高く,移植適応例では同種造血幹細胞移植(allogenetic hematopoietic stem cell transplantation;allo-HSCT)を積極的に行う.

55歳未満で,HLA一座不適合内の血縁ドナーが存在すること,全身状態良好であることが最も良い移植適応.
・血縁ドナーがいない場合は,HLA一致非血縁ドナーからの移植も積極的に考慮する.

55~65歳でも,適切なドナーが得られる場合には,全身状態・予後を勘案し,骨髄非破壊的HSCT(reduced intensity hematopoietic stem cell transplantation;RIST)が考慮される.

DNA低メチル化薬

アザンチジン:ビターザ®

第Ⅲ相臨床試験で生存期間延長効果・白血化までの期間延長効果が示されている.
→allo-HSCTが行えない高リスクMDSでは第一選択.

効果出現まで4コース以上の投与が必要とされており,有効性の判定は最低でも4~6コース施行した後に行う.

有害事象として,血球減少(貧血・好中球減少・血小板減少)が高頻度にみられる(70~90%).
→投与量・投与スケジュールの調節を余儀なくされることが多い.

多剤併用化学療法

芽球の増加を認める症例では,急性骨髄性白血病に準じて,施行されることがある.第一選択にはならず,限定的(アザンチジン不応例・不耐用例).

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