多発性骨髄腫 multiple myeloma;MM

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なすび医学ノート

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腫瘍化した形質細胞が全身の骨髄内外で増殖し,その産物である単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)および骨髄腫細胞と骨髄間質細胞から産生される種々のサイトカイン・ケモカインにより,多彩な臓器障害,臨床症状を呈する疾患.

MMは細胞遺伝学的にヘテロなクローナルな形質細胞の増殖であり,そのほとんどが意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance;MGUS)から発症すると報告されている.
・約80%のMMはIgM以外の免疫グロブリンMGUSから発症し,約20%はlight-chain免疫グロブリンMGUSから発症する.
・IgM免疫グロブリンMGUSは,進展すると原発性マクログロブリン血症を発症すると考えられる.

多発性骨髄腫 治療
多発性骨髄腫は,従来の化学療法による反応性が不良で,治癒困難な疾患であった.1990年代に自家造血幹細胞移植併...

疫学

African Americanにおいては人口10万人あたり9.5人と高頻度に認められ,Caucasianでは4.1人である.
Asianでは最も低頻度であり,本邦での罹患率は人口10万人当たり1.7人程度であるが,年々増加傾向にある.

発症年齢は65~70歳にピークがあり,男性にやや多い傾向がある.

原因

原因は不明であるが,放射線被曝者やダイオキシンなどの環境因子への過度の曝露により発症率が増加することが指摘されている.

HIV陽性患者においては4.5倍発症率が増加することが知られている.

分類

MGUSの状態から腫瘍細胞が増加し,臨床症状を伴わないくすぶり型骨髄腫となり,最終的に高カルシウム血症(calcium),腎不全(renal),貧血(anemia),骨病変(bone)の4症状(CRAB)のいずれかを合併し,骨髄腫となる.

くすぶり型多発性骨髄腫 smoldering multiple myeloma;SMM

病態

骨髄腫細胞は骨髄微少環境と密接に関連しながら増殖する.
・増殖様式は骨に腫瘤を形成する場合もあれば骨髄にびまん性に増殖する場合もあるが,多くは結節性増殖を主体とする.
・時に1か所のみに限局した孤立性骨髄腫,骨髄以外の軟部組織から発生する髄外性形質細胞腫,末梢血中に20%以上の形質細胞が出現する形質細胞性白血病などの亜型もみられる.

骨髄腫細胞の起源は骨髄内preB細胞の段階なのか,リンパ節胚中心における成熟B細胞であるのかは明らかではない.
・腫瘍化したB細胞が形質細胞にまで分化し骨髄を増殖の場としているのは,骨髄ストローマ細胞からパラクラインparacrine供給されるIL-6が初期の骨髄腫細胞にとって必須の増殖因子だから.

骨髄腫細胞の多くは,その単クローン性増殖を反映して1種類のM蛋白を産生する.

・免疫グロブリンのタイプによりIgG型,IgA型,IgD型,IgE型と呼ばれる.
・軽鎖のみを産生する場合をBence Jones(BJP)蛋白型に分類する.
・特殊な例としてM蛋白を認めない非産生型や非分泌型骨髄腫も存在する.

骨髄腫腎 myeloma kidney

BJPは軽鎖が2分子結合した小さな蛋白であり,糸球体で濾過され尿細管に沈着するため腎障害をきたしやすい.
骨髄腫でみられる腎の変化はBJPの沈着による尿細管内の硝子様物質,尿細管上皮内の蛋白滴や結晶などが認められと呼ばれる.

骨病変

多くの患者で骨粗鬆症や骨融解像が認められる.

骨髄腫細胞やストローマ細胞などから分泌されるサイトカインやケモカインから成る破骨細胞活性化因子osteoclast activating factor(OAF)による骨吸収の亢進に基づくものである.

骨吸収の亢進と腎障害による高カルシウム血症や,まれに骨髄腫細胞から分泌されるアンモニアによる高アンモニア血症によって意識障害を呈する場合もある.

ALアミロイドーシス

骨髄腫細胞が産生する免疫グロブリン軽鎖が臓器に沈着する.
巨舌や多発神経炎症状を呈することがある.
心アミロイドーシスが著明な場合は難治性の心不全症状や不整脈.
腸管アミロイドーシス合併例では吸収不良症候群や蛋白漏出性胃腸症.

POEMS症候群 Crow-Fukase(クロウ-深瀬)症候群,高月病

まれな病態であるが多発神経炎,臓器腫大,内分泌症状,皮膚症状を伴うM蛋白血症と形質細胞の増殖を伴う.
骨硬化性変化を伴うこともある.

症候

症状

緩徐に発症する腰背胸部の疼痛,全身倦怠感,発熱などが初発症状であることが多い

骨折や下肢の対麻痺などで発症したり,高カルシウム血症によるはきけや意識障害でみつかることもある.

全身倦怠感,息切れ,動悸などの貧血症状や皮膚の紫斑などの出血傾向を示すこともある.

骨病変による症状

病気の進展に伴い多くの患者が疼痛を訴える.
腰椎,胸椎の圧迫骨折が多い.時に腫瘤を形成し対麻痺や馬尾神経症状などの神経圧迫症状を呈する.

M蛋白血症による症状

・BJPを有する骨髄腫では骨髄腫腎による浮腫や,進行すると尿毒症を呈する.
 異常免疫グロブリン増加に伴い正常免疫グロブリン産生低下をきたすため易感染性を有する.
 また多量体を形成しやすいIgA型やIgG3型骨髄腫では過粘稠度症候群hyperviscosity syndromeを呈することもある.
 M蛋白がクリオグロブリン活性を有していれば寒冷じんま疹やRaynaud(レイノー)症状を呈する.

血算

・正球性正色素性貧血を認めることが多い.
・白血球と血小板は軽度低下する場合が多い.
・血液粘稠度が高まるため末梢血塗抹標本で赤血球連銭形成rouleau formationがみられる.
・まれに末梢血中に骨髄腫細胞がみられることがあり形質細胞性白血病と呼ばれる.

貧血の発生機序
・骨髄中での骨髄腫細胞増殖
・10~15%の症例で赤血球寿命の短縮がみられることから,溶血に伴い貧血が発症する可能性が報告されている.骨髄腫のM蛋白が赤血球表面に付着し自己免疫機転による溶血が発症することによると推測される.

血液生化学

・ZTTやTTTの高値,腎障害を伴う場合には血清Cre,BUNの上昇や高カリウム血症,高尿酸血症を認める場合もある.
・骨吸収と腎障害の存在する場合は高カルシウム血症をみる.
・腎尿細管障害や骨髄腫細胞自身からの分泌を反映してβ2ミクログロブリンが高値を示すことが多い.

蛋白異常

総蛋白の増加とアルブミンの減少を認める.

血清あるいは尿中のM蛋白血症の存在とともに重要なのは,M蛋白以外の正常免疫グロブリンが減少する所見.

スクリーニング時の免疫グロブリン検査では,IgG,IgA,IgMが行われ,1 つの免疫グロブリンが増加し,他の2つが抑制されている場合はM蛋白の存在が強く疑われる.
・これらのグロブリンが低値である場合は,BJP型,IgD型,IgE型,非分泌型の可能性を疑う.
・M蛋白による分類ではIgG型が約半数を占め,IgA型とBJP型が15~20%ずつを占める.
IgD型は数%,IgE型はきわめて稀.

免疫電気泳動

M蛋白はセルロースアセテート法による蛋白電気泳動上のMピークとして確認し,そのクラスは免疫電気泳動または免疫固定法で同定する.
・電気泳動でM蛋白を認めた場合は形質細胞異常症の可能性が高く,M蛋白定量はこのピークの蛋白量を測定する.
・M蛋白が少量のため電気泳動でピークがみられない場合,M蛋白の重鎖,軽鎖を決定するために免疫固定法(免疫電気泳動),sFLC検査を行う.
・M蛋白を認めた場合は骨髄検査を行うが,MM患者は骨が極めて脆弱で,針が骨を突き抜けることや骨折する場合があり,腸骨からの穿刺・生検が望ましい.

尿所見

蛋白尿
・全体の70~80%で尿蛋白が出現する.
 通常は軽鎖(BJ蛋白)が主体であり,尿中アルブミンはわずか.
・試験紙法とスルホサリチル酸法で測定した場合と乖離が生じる.
 血尿はほとんどにおいてみられない。

骨変化

・赤色髄の多い頭蓋骨,肋骨,脊椎,骨盤などに高頻度にみられる.
 X線検査上,骨融解による打ち抜き像punched-out lesion,骨粗鬆症,骨萎縮像などをみる.
・数%の例で骨硬化像を認めることもある.
・脊椎骨の圧迫骨折などの病的骨折をしばしば認める.
・骨髄腔からの骨皮質への侵食,骨梁の破壊,軟部組織への進展や腫瘤形成の診断にCTやMRIによる画像検査も有用である.

骨髄検査

骨髄検査では,病理組織学的診断に加えて骨髄腫細胞表面抗原解析と染色体検査を行う.

一般に正常造血は抑制され異型性のある形質細胞が10%以上認められるが,びまん性増殖を伴っていない場合には骨髄腫細胞の増加が確認できないこともあり再検査を要する.

骨髄腫細胞の形態は楕円形で核が偏在しており,Golgi(ゴルジ)体の発達により核周明庭を有するといった正常の形質細胞に類似しているが,一般に大型で2核や多核の細胞もみられ,核小体が目立つといった特徴がある.

May-Giemsa(メイ-ギムザ)染色で赤く染まる火焔細胞flaming cellやグロブリン封入体を多数有するブドウ細胞grape cellといった特徴的な形態を示す場合もある.

一般に未熟型の骨髄腫細胞を有する場合は成熟型の形態を有する場合よりも予後が悪いことが報告されている.

フローサイトメトリーを用いた表面抗原検索

骨髄腫細胞は正常形質細胞同様にCD38,CD138(syndecan-1)抗原は陽性を示すことが多いが,正常形質細胞には通常認められないCD56(NCAM)抗原を有している例が多く,さらに正常形質細胞には通常発現がみられるCD19抗原を消失している例が多い.

染色体検査

MMの染色体異常と予後との関係については様々な報告がある.
染色体検査では,分染法に加えて,リスク分類のため,FISH(fluorescence in situ hybridization)解析(del 17p,(t 4;14),(t 14;16))を行う.

画像検査

MRI,CT,PET/CTの有用性が報告され, 病変の数やPET/CTのSUV(standardized uptake value)により予後が予測できることが報告されている.

組織生検

アミロイドーシスが疑われる場合は,組織の生検を行い,アミロイドの沈着の有無を診断する.

診断

MM診断のために,まずスクリーニング検査(CBC,一般生化学検査,蛋白分画,血清免疫グロブリン値,血清・尿免疫固定法(免疫電気泳動),sFLC,骨X線検査などを行い,血清または尿中M蛋白の存在などの異常を認めた場合は,さらに確定診断のため骨髄検査や腫瘤の生検によるクローナルな骨髄形質細胞BMPC(bone marrow plasma cell)を証明する検査,腫瘍量や予後評価のための検査,臓器障害の評価のための検査へと進む.

多発性骨髄腫の診断

 CRABの診断条件がそろった症例であれば,診断は比較的容易であるが,MGUS,SMM,形質細胞性白血病,骨髄中に異常形質細胞を認めず,骨あるいは軟部組織などに形質細胞が腫瘤形成する形質細胞腫などきわめて多彩な臨床症状を呈するため,診断基準の策定は極めて難しく,これまでに複数の診断基準が報告・改訂されてきた.

診断基準には,簡潔であり,国際的にも頻用されていることから, 主にIMWG(International Myeloma Working Group)診断基準が用いられている.
・これまでは臓器障害が認められた時点で治療が開始されていたが,最近の新規薬剤による治療成績の向上により,早期治療介入による高リスクSMM患者の生存期間の延長,さらには画像診断技術や検査法の進歩,新たなバイオマーカーの登場により,臓器障害出現前に治療介入する意義が明らかになりつつある.
・2014年にIMWG診断基準がupdateされ,従来のSMMの一部が治療適応を有する骨髄腫に含まれることになるため,臓器障害の有無にかかわらず,治療適応のある骨髄腫をMMとして定義している.

骨髄におけるクローナルな形質細胞比率≧10%または生検で証明された髄外形質細胞腫の存在,加えて下記の骨髄腫診断事象(myeloma defining events;MDE)を1つ以上を満たす.

形質細胞の増殖に伴う臓器障害
1)高カルシウム血症:血清Ca 11mg/dLまたは基準値上限より1mg/dL以上高い.
2)腎障害:Ccr<40mL/min or 血清Cr>2mg/dL
3)貧血:Hb<10g/dL or 正常下限が基準値より2g/dL以上低い.
4)骨病変:全身骨X線写真,CT,PET-CTで溶骨性病変1ヶ所以上.

悪性度を示すバイオマーカー
1)骨髄のクローナルな形質細胞割合≧60%
2)Involved:uninvolved 血清FLC比≧100
3)MRIで局所性骨病変(径5mm以上)>1個

くすぶり型骨髄腫の診断基準 

以下の 2 つの基準を満たす.

1)血清M蛋白(IgGまたはIgA)≧3g/dLまたは蓄尿中M蛋白≧500 mg/24 時間 or 骨髄のクローナルな形質細胞割合10~60%
2)MDE及びアミロイドーシスの合併がない

改訂国際病期分類 Revised International Staging System;R-ISS

予後を推測するための病期分類として,血清β2-ミクログロブリン値とアルブミン値を用いた国際病期分類(ISS)が提唱され,さらに高リスク染色体異常の有無と血清LDH値を追加したR-ISSが用いられる.

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