多発性骨髄腫 治療

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多発性骨髄腫は,従来の化学療法による反応性が不良で,治癒困難な疾患であった.
1990年代に自家造血幹細胞移植併用化学療法(自家移植)が確立し,65歳以下の若年症例の標準的治療として位置付けられるようになった.
2000年に入り,プロテアソーム阻害薬,免疫調整薬などの新規薬剤が次々と登場し,治療方針は大きく変貌している.

多発性骨髄腫 multiple myeloma;MM
B細胞の終末分化した形質細胞が腫瘍化し,単クローン性増殖により惹起される難治性造血器腫瘍.全身の骨髄内外で増殖し,その...

治療の適応

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)やくすぶり型骨髄腫(無症候性)では,無治療経過観察が原則であり,M蛋白量を治療開始の指標とはしない.

骨髄にクローナルな形質細胞を10% or 生検で骨や髄外の形質細胞腫が確認され,骨髄腫事象(myeloma defining event;MDE),すなわちCRABと称される臓器障害(高カルシウム血症・腎不全・貧血・骨病変)を有している症候性多発性骨髄腫に移行した場合が治療適応.

2014年に改訂されたIMWGの診断基準において,SLiMと称される骨髄腫診断バイオマイカー(骨髄中形質細胞≧60%,involved/univolved遊離軽鎖比≧100,MRIで2ヶ所以上の5mmを超える巣状病変あり)のいずれか1つ以上を有する場合(SLiM-CRAB)も多発性骨髄腫の治療の適応に入った.

治療目標

新規治療薬により生存期間は延長しているが,生存曲線は右肩下がりであり,治癒を期待するのが難しい.
→①生存曲線の延長,②長期間の疾患コントロール,③QOLの向上を目指す

治療効果判定基準

深い奏功の指標には,骨髄のMRD(minimal residual disease:微小残存病変)の評価が重要.

現在では,アレル特異的PCR法,マルチパラメーターフローサイトメトリー法,次世代シークエンサー法により10-4~10-5レベルのMRDが検出可能.
・保険承認されているのは,マルチパラメーターフローサイトメトリー法によるMRD測定のみ.

FLCは汎用性が高いバイオマーカーであり,治療後の効果判定や予後予測においても有用性が高い.
・血清を用いて測定できることも有用性が高い.

CR(complete response) 完全奏功

血清および尿免疫固定法陰性,かつ軟部組織形質細胞腫の消失,かつ骨髄形質細胞<5%

・FLCのみが評価可能である患者ではFLC比の正常化が必要
・連続する2回の評価が必要

sCR(stringent CR)

CRの定義に加え,「血清FLC比(κ/λ)の正常化(0.26〜1.65)」 and 「免疫組織化学 or 2~4カラーのフローサイトメトリーでクローナル形質細胞の消失」

・連続する2回の評価が必要

iCR(immuno-phenotypic CR)

sCRの定義に加え,最低100万個の骨髄細胞をマルチカラーフローサイトメトリー(>4カラー)を用いて解析し,異常なクローナル形質細胞が消失

mCR(molecular CR)

CRの定義に加え,allele-specific oligonuclreotide PCRで陰性(感度10−5

VGPR(very good partial response)

「血清,尿の免疫固定法ではM蛋白陽性であるが,蛋白電気泳動では陰性」or「血清M蛋白の90%以上減少 and 24時間尿M蛋白 100mg未満に減少」

・FLCのみが評価可能である患者ではdFLCが90%以上減少
・連続する2回の評価が必要

PR(partial response)

「血清M蛋白の50%以上の減少」and「24時間尿M蛋白が90%以上減少 or 200mg未満に減少」

・もし血清・尿M蛋白が測定不能の場合,dFLC(involved FLCとuninvolved FLCの差,difference)が50%以上減少
・もし血清・尿M蛋白およびFLCが測定不能の場合,ベースラインの骨髄形質細胞が30%以上の場合は50%以上の減少
・上記に加え,診断時に軟部組織形質細胞腫陽性の場合は50%以上の縮小
・連続する2回の評価が必要(画像検査を行っている場合は骨病変の進行や新規骨病変を認めない).

治療アルゴリズム

M蛋白の消失を認める完全奏功達成後のMRD陰性化は,全生存期間(overall survival;OS)や無増悪生存期間(progression-free survival;PFS)を延長することが知られている.

初回治療には治療強度を高めできるだけ腫瘍量を減らしCRを目指す.

65歳以上や,65歳未満でも合併症がある場合,原則として移植は適応にならない.
→移植の適応はない場合,化学療法を行う.

移植適応

65歳未満で重篤な感染症や肝・腎合併症がなく,心肺機能に問題ない.

1st 移植前寛解導入療法

ボルテゾミブを基本骨格として用い,デキサメタゾンを加えた2剤療法(BD療法)や,さらにシクロホスファミドやドキソルビシンなどの化学療法薬,あるいはレナリドミドを加えた3剤による治療が用いられる.

<推奨①>
新規薬剤を含む2剤導入療法:BD,Ld(3~4コース)

<推奨②>
新規薬剤を含む3剤導入療法:BAD,BCD,BLD,BTD(3~4コース)

<その他>
VAD,大量Dex

B:bortezomib,間質性肺炎や重篤な末梢神経障害を有する場合は不適
D:Dexamethasone
L:Lenalidomide,血栓症や進行性の腎障害を有する場合は不適
A:Doxurubicin
C(CPA):cyclophosphamide
T:thalidomide,血栓症や重篤な末梢神経障害を有する場合は不適
V:vincristine
HDD:high-dose dexamethasone

目的は,移植前にできる限り腫瘍量を減少し,臨床症状・徴候を改善させ,移植に必要な自己造血細胞を確保すること.

本邦で多く用いられているのは,BLD療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン).

2nd 末梢血幹細胞採取

G-CSF単独,HD-CPA+G-CSF or G-CSF+Plerixaforなどで末梢血幹細胞採取

G-CSF:granulocyte-colony stimulating factor
HD:high-dose

自家末梢血幹細胞採取に関しては,G-CSF,CXCR4(CXC chemokine receptor 4)受容体拮抗薬プレリキサホルの併用で,必要量(CD34陽性細胞2×106/患者体重kg)は効率よく採取できるようになった.

3rd HDT(HD-MEL)/AHSCT

HD:high-dose
MEL:melphalan
AHSCT:autologous hematopoietic stem cell transplantation

4th 経過観察 or 臨床試験による地固め・維持療法

奏効率,微小残存病変のどちらについても,多くの臨床試験で効果を認めている.

通常は寛解導入療法と同じレジメン,治療効果が乏しかった場合は薬剤を変えて2~4コースを行う.

地固め・維持療法:B, T, L±ステロイド or タンデム移植
・Len継続維持療法でPFS,OS延長

移植非適応

65歳以上
重要臓器の障害あり
移植拒否

新規薬剤を含めた2剤もしくは3剤併用療法により,深い奏功を得ることが長期生存に必要.

1st 多剤併用療法

<推奨治療>
Dara-MPB(VMP)療法(9コース継続)
Dara-Ld療法(18コース以上継続)

<新規薬剤レジメン>
Bd,BLd,MPB,Ld,MPL

<従来の治療>
MP,CP,VAD,大量Dex

Dara:daratumumab ダラツムマブ
M:melphalan
P:predonisolone
B:bortezomib,間質性肺炎や重篤な末梢神経障害を有する場合は不適
L:Lenalidomide
d:low-dose dexamethasone
C(CPA):cyclophosphamide
V:vincristine
A:Doxurubicin
D:dexamethason
HDD:high-dose dexamethasone
L:Lenalidomide,血栓症や進行性の腎障害を有する場合は不適
T:thalidomide,血栓症や重篤な末梢神経障害を有する場合は不適

75歳以上の高齢者においては,患者因子としての脆弱性を評価し,適切に減量する.

初発多発性骨髄腫に対して,D-MPB療法はMPB療法より,D-Ld療法はLd療法よりPFSを延長することが示された.

2nd 経過観察 or 維持療法

Len継続維持療法でPFS,OS延長

再発・難治例

通常は初回治療の後に再発を繰り返す.

一般に,初回治療から9~12ヵ月以上経過した後の再発であれば,初回治療の感受性が残存している可能性があり,初回治療で用いたキードラッグによる救援療法を考慮してもよいとされる.

腫瘍細胞,宿主,これまでの治療に関する要因を考慮して,治療法を選択する.

腫瘍細胞
①染色体異常(高リスク染色体の有無),②血清LD,③急速な進展か,④骨病変,⑤髄外病変,⑥形質細胞性白血病,⑦遺伝子発現パターンなど.

宿主
①年齢,②全身状態(PS),③frailty(フレイル),④合併症の有無(腎障害・血栓症・末梢神経障害など),⑤骨髄の造血能

これまでの治療
①前治療歴,②前治療への反応性,③前治療からの期間,④前治療における副作用,⑤自家移植の有無,⑥実際に可能な治療,⑦臨床試験の可能性
・レナリドミドやボルテゾミブにも耐性のdouble refractory症例が増加しているのが問題.ポマリドミドは有用とされる.

治療各論

プロテアソーム阻害薬(NF-κB阻害薬) proteasome inhibitor;PI

ボルテゾミブ bortezomib

プロテアソームのβ5サブユニットに可逆性に結合し,プロテアソームに取り込まれたさまざまなユビキチン化蛋白質の分解を阻害することでアポトーシスを誘導し,強い抗腫瘍効果を引き起こす.

当初,静注で投与されていたが,有害事象として末梢神経障害の頻度が高く,皮下投与により,効果を減弱せずに末梢神経障害が軽減することが示され,最近では皮下投与が多い.

腎障害に対しても積極的に使用されている.
→腎障害に対する効果発現が速やかで,治療開始2-3サイクルの間に反応がみられる.
→薬物代謝が腎非依存性であるため,腎機能にあわせて用量の調整を必要としない.

代表的な有害事象として,末梢神経障害やヘルペスウイルス感染,消化器症状などが挙げられる.

VISTA試験(MPB療法 vs MP療法,ランダム化比較試験)→無増悪期間の中央値 24ヶ月 vs 17ヶ月,寛解率や生存率などもMPB治療群のほうが有意に優れていた.

カルフィルゾミブ

末梢神経障害の頻度が非常に低い.

イクサゾミブ

経口投与.

免疫調整薬 immunomodulatory drugs;IMiDs

1)セレブロンと結合することでB細胞のマスター制御性転写因子であるIKAROS family zinc finger 1(IKZF1)やIKZF3等の基質のユビキチン依存性の分解を促進し,IRF(interferon regulatory factor)-4やc-Mycの発現低下を誘導して直接的抗腫瘍効果を有する.
2)免疫細胞ではIL(interleukin)-2産生の抑制が解除されることで抗腫瘍免疫賦活化作用を有する.

レナリドミド

ポマリドミド

ボルテゾミブ,レナリドミド両剤に耐性の症例でも有効性を持つ.
腎障害でも減量せずに使用することができる.

レナリドミドとは交差耐性が存在せず,IMiDsの標的分子であるセレブロン(cereblon;CRBN)への依存度が低く,CRBN以外の標的因子としてTP53RK(p53-released protein kinase)やARID2などが同定されている.

自己末梢血幹細胞移植 Autologous Peripheral Blood Stem Cell Transplantation;ABSCT

・比較的若年者で化学療法の反応性が良好な場合には同種骨髄移植により分子生物学的寛解が得られ治癒したと考えられる症例もある.
・移植後の合併症による死亡が多いことが知られており,その適応については十分な検討を要する.

抗腫瘍抗体薬

エロツズマブ

細胞膜糖蛋白であるSLAMF7を標的とした完全ヒト化モノクローナルIgG1抗体薬.

1)抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity;ADCC)活性の誘導
2)骨髄間質細胞との接着阻害
3)NK細胞活性化
など

SLAMF7の発現は,造血系細胞に限られ,形質細胞の他,NK細胞やCD8陽性T細胞等において低レベルで発現しているが,CD34陽性造血幹細胞では発現していない.

ダラツムマブ

CD38を標的としたヒト化モノクローナル抗体.
免疫賦活作用が報告された.

1)抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity;ADCC)活性の誘導
2)補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity;CKD)
3)CD38クロスリンキングを介した直接的な殺細胞効果

イサツキシマブ

CD38モノクローナル抗体.

CAR-T細胞療法

骨髄腫細胞に高発現するB-cell maturation antigen(BCMA)が標的.

補助療法

水分付加(3L/日)

尿のアルカリ化

血漿交換

血液透析(腎不全に対して)

高Ca血症がなければ,ループ利尿薬も使わない(尿細管腔内のNaCl濃度を上げないため)

酸性抗炎症薬や造影剤を使用しない

ビスホスホネート製剤(高Ca血症)
・骨マトリックスに存在するヒドロキシアパタイトに結合して破骨細胞活性を阻害するパミドロネートなど,ビスホスホネート製剤の投与が骨髄腫患者における病的骨折などの骨事象や高カルシウム血症の発生を減少させ患者のQOLを改善することが知られている.

疼痛コントロール
・背部痛,腰痛を有する患者にはコルセットの着用や鎮痛薬投与,放射線療法も考慮する.

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

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