軽度認知障害 mild cognitive impairment;MCI

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

認知症のハイリスクグループとして注目されている概念.

認知症は,認知機能正常であった人が突然発症することは基本的にはなく,ある一定の期間をかけて,認知機能に関する中枢やネットワークを次第に破壊されていくことによって発症している.
→正常ではないが,未だ認知症に至っていないという状態が必ず存在する.

認知症の前駆状態と考えられる病態であり,Clinical Dementia Rating(CDR)のスコア0.5に相当する.

疫学

厚生労働省研究班の推計では、65歳以上の高齢者において認知症は15%(462万人),MCIは約13%(約400万人)いると報告されている.

病態

アルツハイマー型認知症を含めた多くの認知症は,健常な状態からMCIを経て,認知症へ移行する.
・物の置き忘れや語想起の困難など軽微な物忘れは加齢現象としてしばしばみられるが,MCI患者では,以前には容易に記憶できた重要な情報に関する記憶障害を呈することが多い.

MCIはアルツハイマー型認知症の前駆状態を指す用語として用いられることも多いが,レビー小体型認知症や血管性認知症など他のタイプの認知症へ進展する場合もある.

MCIの背景には他に,正常圧水頭症,慢性硬膜下血腫,脳腫瘍,うつ病,薬の影響など様々な病態がある.

MCIと診断された例の10%以上は認知症に進展せず,健常状態に回復する例も認められる.

記憶障害が前面に出るamnestic MCIは,アルツハイマー型認知症の前段階であることが多く,年間平均12%の割合でアルツハイマー型認知症を含めた認知へ進行し,約6年でおよそ80%が認知症に至るとされる.

症候

問診

以前に比べてできなくなったこと,あるいは理由もなくやらなくなったことはないか?
・本人が自覚し,家族が気づかない場合はMCIに多い.
・認知症は家族が気づき,本人の自覚はなく否定する.
→正常とMCI,MCIと認知症のどちらの鑑別にも有用

症状を取り繕ったり否定したりしないか?
→MCIと認知症の鑑別に有用

認知症の早期症状がないか?
(Lewy小体型認知症におけるレム睡眠行動異常や嗅覚障害,原因不明の失神発作,うつなど)
→正常とMCIの鑑別に有用

評価ツール

MoCA-J,MMSE,HDS-R,DASCなど
→合計点だけでなく,どの領域が低下しているかが重要

一領域だけでなく,多領域が障害→MCIから認知症へ

DASCでは手段的ADLの低下がみられる→MCIから認知症へ

血液検査

他の身体疾患による認知機能低下の除外
→甲状腺機能異常,ビタミンB群欠乏

脳形態画像

CT,MRI
→大きな脳腫瘍,脳血管障害,慢性硬膜下血腫の除外

診断

1.以前の水準と比べて認知機能の低下がみられる.
2.年齢や教育歴を考慮しても明らかな1つ以上の領域で認知機能の低下が客観的にみられる.
3.日常生活の認知機能は保たれている.
4.認知症ではない.

診断は問診に加えて,高次脳機能検査と画像所見を総合しておこなう必要がある.

頭部MRI

amnestic MCIでは,頭部CTやMRI画像で側脳室後角の拡大や下角の拡大を軽度に認め,がやや目立つ場合が多い.

治療

認知症の早期診断・治療の重要性が認識され,単に「年のせい」,「まだ認知症ではない」で片付けず,MCIの時点で診断,対応することが求められる.

軽度認知障害は必ず認知症になるわけでなく,正常に戻る場合もある(15~16%).
→治ったわけでなく,境界領域では状態が変動している.

認知症に進行する率は正常の人に比べて高いため,進行していかないかどうかを見極めることが重要!
→定期的に受診させる(半年に1回)

MCIの治療や予後は背景病態によって大きく異なるため,早期に病因を推定して対応することが重要であり,治療可能な背景疾患を見逃さない.

生活習慣

週2回20分以上の歩行

今できていることをやめない.

他人と接することを避けない.

教育

「将来,認知症になってしまうのではないか」という強い不安
「認知症ではないのだから病気ではない.だから通院する必要がない」という誤解
→経過観察の必要性を十分に説明する.

タイトルとURLをコピーしました