メトホルミン metformin

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

○肝臓での糖新生の抑制が主であるが,その他,消化管からの糖吸収の抑制,末梢組織でのインスリン感受性の改善などのさまざまな膵外作用により,血糖降下作用を発揮する.
○血糖コントロール改善に際して体重が増加しにくいので,過体重・肥満2型糖尿病例では第一選択となるが,非肥満例にも有効.
○単独使用では低血糖をきたす可能性はきわめて低い.

薬理

肝臓におけるインスリン抵抗性改善と糖新生(乳酸)の抑制が主な作用.

①メトホルモンの作用は,主に肝細胞および骨格筋のAMPキナーゼ活性化を介している.
・骨格筋において活性化されたAMPキナーゼは糖輸送担体の発現を増加させ,その細胞膜上への移行を促進し,ブドウ糖取り込みを増加させる.
・肝臓では糖新生系酵素の発現を抑制することでブドウ糖放出を低下させ,またaccetyl-CoA carboxylase(ACC)の活性や,fatty acid synthase(FAS)発現を抑制することで,肝臓での脂肪合成の減少と脂肪酸酸化をもたらし,脂肪改善作用を示す.

②グルカゴンシグナルの抑制と関連する肝細胞のcAMP産生を減少させる可能性も指摘されている(Nature2013;494:256-260).
・肝臓に発現しているグルカゴン受容体のシグナルを調節しており,グルカゴンによるアデニル酸シクラーゼの活性低下により糖新生を抑制することが明らかになった.

③肝のミトコンドリア酸化還元状態を変化させ,代謝物の糖への変換を低下させることにより,AMPKに依存しないメカニズムを介して,肝・ブドウ糖放出率を抑制する.

④慢性投与は肝臓の脂肪生成を阻害して,脂肪の蓄積を抑制し,インスリン感受性を改善する.

⑤十二指腸投与は門脈内・静脈内投与に比べて血糖値をより低下させる.

⑥活性型GLP-1濃度上昇や膵臓におけるGLP-1効果増幅作用 Diabetologia 54 219-222 2011

⑦腸においてAMPKを活性化させる.

有効性

UKPDS34

・治療介入中,メトホルミン投与群は従来投与群に対し有意に大血管障害リスクを低減した.
・SU薬併用群では有意な心筋梗塞の抑制効果を認めなかったのに対して,メトホルミン併用群は心筋梗塞が39%減少し,大血管障害の抑制効果を認めた.
・UKPDS80のいても大血管障害のリスク低減は維持されていた.

DPP

・肥満IGT患者に対する糖尿病発症の一次予防を検討.
・メトホルミン投与群がプラセボ投与群に対し31%の2型糖尿病発症遅延・抑制効果を認めた.

適応

・欧米では第一選択薬に位置づけられている.
・SU薬の効果不十分例に併用.インスリン治療例にも併用で効果が期待できる.

慎重投与・禁忌

○まず,経口摂取が困難な患者や寝たきりなど,全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし,以下の事項に留意する.

脱水、シックデイなどの患者への注意・指導が必要な状態

・全てのメトホルミンは,脱水,脱水状態が懸念される下痢,嘔吐等の胃腸障害のある患者で禁忌である.
・循環不全や低酸素状態により嫌気的解糖が亢進するため,乳酸産生が増加する.また,肝臓での乳酸処理能が低下し,乳酸が蓄積する可能性がある.
・利尿作用を有する薬剤(利尿剤,SGLT2阻害薬等)との併用時には,特に脱水に対する注意が必要である.

 以下の内容について患者に注意・指導する(患者の状況に応じて家族にも指導する).
・シックデイの際には脱水が懸念されるので,いったん服薬を中止し,主治医に相談する.
・脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける.

腎機能障害

・メトホルミンはほとんど代謝されずに,未変化体のまま尿中に排泄される.
・腎機能障害患者に係る禁忌は重度の腎機能障害患者(eGFR<30)のみとする.

■腎機能障害患者にかかる1日最高用量の目安
・60≦eGFR<90:2,250mg
・45≦eGFR<60:1,500mg
・30≦eGFR<45:750mg
・eGFR<30:禁忌

心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者

・全てのメトホルミンは,高度の心血管・肺機能障害(ショック,急性うっ血性心不全,急性心筋梗塞,呼吸不全,肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態),外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)前後の患者には禁忌である.

肝機能障害

・軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である.
・AST又はALTが基準値上限の2.5倍以上の患者,肝硬変患者は禁忌

アルコール摂取

・過度のアルコール摂取の患者で禁忌.
・過度のアルコール摂取は,乳酸からの糖新生,肝臓での乳酸代謝を減少させる可能性がある(NAD+が少なくなり,NADHが多くなる).
・抗利尿ホルモンの分泌を抑制することにより脱水が起こりやすくなる.
・アルコール摂取については,過度の摂取を避け適量にとどめ,肝疾患などのある症例では禁酒する.

高齢者

・メトホルミンは高齢者では慎重に投与する.
・高齢者では腎機能,肝機能の予備能が低下していることが多いことから定期的に腎機能(eGFR),肝機能や患者の状態を慎重に観察し,投与量の調節や投与の継続を検討しなければならない.
・特に75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要である.

使い方

○500mg/日(分2)より開始し,投与2~4週後に忍容性に問題なければ,750mg or 1000mg/日へ増量する(2回内服と3回内服では効果に有意差なし).
○増量してから4~8週後に目標HbA1cを達成していなければ,1500mg/日へ増量.
・効果不十分であれば,2250mg/日まで増量可.
・用量依存性に効果がある(2000mgまで).

○1日1回内服の有用性の報告あり.
・Met1 回投与後の,薬剤の高い組織移行性と,組織における長時間の薬剤効果持続が寄与している可能性が考えられる.

次の選択肢

メトホルミンの次の選択肢については,どれがいいかははっきりしていない.
病態に合わせて,選択する.
JAMA2016;316(3):313-324

インスリンとの併用

・インスリン療法にメトホルミンの併用は血糖値の改善,インスリン必要量の減少,インスリン誘発性体重増加の抑制,低血糖エピソードの少なさの点で優れている.
・併用していく場合は,500~750mg/日より開始し,インスリン使用量を70%くらいに減らす.

ヨード造影剤使用時

・ヨード造影剤の投与により一時的に腎機能が低下した場合,メトホルミンの排泄が遅延し,乳酸アシドーシスが起こりゃすくなる.
・検査前は本剤の投与を一時的に中止する(緊急検査時を除く).可能であれば2日前から休薬する.
・ヨード造影剤投与後48時聞は本剤の投与を再開しない.

副作用

消化器症状

乳酸アシドーシス

・メトホルミンは主に肝臓での乳酸やアミノ酸からの糖新生を抑制することで血糖降下作用を示す.
・ミトコンドリアの電子伝達系を抑制することも報告されており,乳酸を増加させる傾向にある.
・TypeB(明らかな組織の循環不全を伴わない).

疫学

・ビグアナイド薬による乳酸アシドーシス発現例が多く報告された1970年代を中心とする調査では,フェンホルミンでの頻度は10万人・年あたり20~60例,メトホルミンでの頻度は10万人・年あたり1~7例程度と報告されている.
・禁忌症例を除外した試験のメタ解析結果では,メトホルミンは他の血糖降下薬に比べて血中乳酸濃度を増加させず,乳酸アシドーシスの発現リスクも増加させないと報告されている.

乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴

①腎機能障害患者(透析患者を含む)
②脱水,シックデイ,過度のアルコール摂取など,患者への注意・指導が必要な状態
③心血管・肺機能障害,手術前後,肝機能障害などの患者
④高齢者
・高齢者だけでなく,比較的若年者でも少量投与でも,上記の特徴を有する患者で,乳酸アシドーシスの発現が報告されていることに注意.

病態

■乳酸産生の増加:循環不全などの酸素が供給されない病態やアルコール
・解糖系の最終産物であるピルビン酸は酸素が十分ある状態ではミトコンドリアでATP産生に利用されるが,酸素が十分に供給されない状態では乳酸に変換される.
・アルコールは分解の過程でNAD+を産生し,NADH/NAD+比を上昇させるため,ピルビン酸から乳酸への転換を亢進させる.

■乳酸代謝の低下:肝機能障害
・産生された乳酸の大部分では肝臓に取り込まれ代謝されるが,肝機能障害では乳酸代謝が低下するため,蓄積する.

■メトホルミンの蓄積:腎機能障害
・メトホルミンは未変化体のまま腎臓から排泄されるため,腎機能障害では体内蓄積し,作用が増強する可能性がある.

症候

・初期症状:胃腸症状(悪心,嘔吐,腹痛,下痢など),筋肉痛,筋肉の痙攣,倦怠感,脱力感,腰痛,胸痛

・進行した症状:アセトン臭を伴わない過呼吸,脱水,低血圧,低体温,傾眠,ショック状態,全身痙攣,Kussmaul呼吸
⇒数時間放置すると昏睡状態に⇒死亡率約50%

■検査
・血清乳酸値:上昇(>5mmol/L) *正常:0.44~1.78mmol
・血清pH:低下

対処法

○メトホルミンの投与中止
○血液透析,輸液による強制利尿:メトホルミン・乳酸の除去
○炭酸水素ナトリウム静注
→アシドーシス補正のための投与によって死亡率が改善したというデータはなく,逆に肺水腫,高浸透圧,反跳アルカローシス(rebound alkalosis)などを引き起こすことがしられており,安易に行ってはならない.
○pHが7.1未満の場合に,pH7.2ないし7.25を目標に最小限の補正を行う

ビタミンB12欠乏

○メトホルミンの使用がビタミンB12欠乏と関係することを示す研究結果が、米国の共同研究グループによりJ Clin Endocrinol Metab(2016; 101: 1754-1761)に発表された.
・この報告は、米国内の27施設が参加したDiabetes Prevention Program(DPP)とDPP Outcomes Study(DPPOS)の二次解析結果に基づく.
・DPPでは空腹時血糖高値,耐糖能異常または過体重・肥満の1,073例をメトホルミン群,1,082例をプラセボ群にランダムに割り付け,3.2年間投与.
・その後のオープンラベルのDPPOSではメトホルミン群のみ服薬を継続し,両群を9年間追跡した.
・二次解析の主要エンドポイントはビタミンB12欠乏,貧血,末梢神経障害とし,血清ビタミンB12の測定は5年目と13年目に行った.
・結果,5年目の測定におけるビタミンB12欠乏(203pg/mL以下)の頻度はプラセボ群の2.3%に対し,メトホルミン群では4.3%と有意に高かった(P=0.02).
・13年目の測定では有意差はなかった(5.4%対7.4%、P=0.12).
・境界域(298pg/mL以下)まで含めた場合には,ビタミンB12低値の頻度は5年目,13年目ともメトホルミン群が高かった.
・メトホルミンの使用年数はビタミンB12欠乏リスクの上昇と関係していた.
・貧血と末梢神経障害の有病率はいずれもメトホルミン群で高かった.

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