家族性若年糖尿病(MODY)

医学ノート(なすび用)

Maturity-onset diabetes of the young;MODY

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Maturity-onset diabetes of the young 糖尿病2019;62(8):461~463

単一遺伝子異常の若年発症成人型糖尿病(MODY)は,膵β細胞の機能異常により,若年でインスリン分泌不全型の糖尿病を発症する.

MODYは,常染色体優性遺伝形式をとり,糖尿病全体の0.1~0.2%程度を占めると考えられている.

MODY遺伝子は,現在まで1~14まで報告されているが,日本で複数家系による再現性があり確立されているのはMODY 1,2,3,5,6 である.

MODYの典型例は,当初発端者あるいは家系内の少なくとも1人の罹患者が25歳以下の若年発症で,3 世代以上の濃厚な家族歴を有する痩せ型の糖尿病症例とされている.

どのような場合に,MODYを疑うか?

生後早期(生後6ヵ月頃まで)に糖尿病と診断された.

若年発症の糖尿病である.
(典型的には35歳未満,25歳未満はさらに可能性が高まる)

両親のどちらかがMODYの罹患者であること

1型糖尿病としては,非典型的な,以下の所見を認める.
・診断時に膵自己抗体が陰性である(可能であれば,抗GAD抗体,抗IA-2抗体,ZnT8抗体の3種類を測定する).
・治療に必要なインスリン量が少ない(1日インスリン合計0.5単位/kg未満)
・発症後3~5年経過しても内因性インスリン分泌が証明される(血糖72mg/dLより高いときのCペプチド>0.6ng/mL)
・インスリンを中止してもケトアシドーシスに陥らない.

2型糖尿病としては非典型的な,以下の所見を認める.
・45歳未満に肥満がない状態で糖尿病を発症する.
・黒色表皮腫を伴わない.
・血中TG値が正常範囲 and/or HDL-Cが正常or高値(MODY1 or MODY3の場合)

軽症の空腹時高血糖が持続し,薬剤治療に反応しない(MODY2の場合).
・空腹時血糖100~150mg/dL程度 and HbA1c 5.6~7.6%程度.
・特に,体型がやせ型である.

SU薬への反応が極めて良い.

膵臓以外の臓器に症状を認める(腎臓,肝臓,消化管).

新生児糖尿病か or 新生児低血糖症の家族歴がある.

新生児期に一過性高インスリン性低血糖症を呈している(MODY1).

常染色体優性遺伝と判断できる家族歴がある.
・1型糖尿病の患者で両親のどちらかが1型糖尿病を有するのは2~6%とされる.
・家族歴は可能な限り3世代以上の情報を集めるのが望ましい.

MODY3(HNF1A-MODY)

遺伝子診断されるMODYの中では最も多い
平均診断時年齢 13.2±4.5歳.
・欧米におけるHNF1A遺伝子変異の浸透率は25歳までで約60%と報告されているが,日本人での診断年齢は10歳前後に集中している.

転写因子であるHNF1A遺伝子が原因遺伝子.
・HNF1Aは,肝臓や膵臓に発現する転写因子で,膵β細胞ではインスリン合成や分泌に重要な遺伝子群を制御する.
→インスリン分泌能の低下を伴う糖尿病として発症することが多い.

尿細管における糖再吸収閾値が低下しているため,学校検尿が診断のきっかけとなることが多い.
・HNF1A遺伝子がSGLT2遺伝子の転写促進因子

新生児期に低血糖症(高インスリン性低血糖症)にて輸液を受けた既往を認める場合がある.

高度の高血糖を来たすことが多く,糖尿病合併症の発症頻度は,1型糖尿病や2型糖尿病と同等とされる.

治療においては,スルホニル尿素薬(SU)に対する感受性が高いことが特徴.
・発症初期は,遺伝子診断に基づき,インスリン注射からSU薬内服への変更が可能な場合がある.
・SU薬内服にて血糖コントロールが不十分になる場合は,GLP-1受容体作動薬やインスリンの投与が選択肢となる.

MODY3変異は肝腫瘍におけるファーストヒットとなるため,診断後は年に一度程度の腹部エコー検査が望ましい.

MODY2(GCK-MODY)

2番目に遺伝子診断される頻度が高い.
平均診断時年齢 10.3±6.8歳.
・日本人では長らくMODY2が稀と考えられてきたが,欧米人と同様に日本人でも,MODY3と同程度の頻度で認められている.

原因遺伝子のGCK遺伝子がコードするグルコキナーゼ(GCK)は,解糖系のグルコースリン酸酵素であり,肝・膵でグルコースセンサーの役割を果たしている.
→GCK遺伝子に片アリル性機能喪失型変異が発生すると,インスリン分泌の契機となる血糖の閾値が上昇する.
→MODY2では空腹時血糖値が軽度上昇するのみで,グルコースの恒常性維持機構は保たれている(HbA1c 5.6~7.6%).
・MODY2症例の70%において,OGTTの2時間値における血糖上昇幅が54 mg/dL以内であるとされている.

生下時より高血糖を呈する.
空腹時血糖値の軽微な上昇.

糖尿病細小血管障害や大血管障害はほとんど出現せず,欧米では妊娠時を除いて,糖尿病の薬物治療は必要なしとされている.
・空腹時高血糖により軽症糖尿病として治療されることがあるが,MODY2と診断された後は,原則,治療の中止が勧められている.
・例外的に治療を必要とするのは,経過中に1型糖尿病や2型糖尿病に罹患した場合,罹患している女性が妊娠した場合

MODY2に罹患した女性が妊娠した場合,胎児がGCK遺伝子変異を有していると推測するかどうかで周産期管理が異なる.
・GCK遺伝子変異を有していない胎児では,母体の高血糖を反映して過体重となることがあり,定期的な胎児体格評価により胎児の体重増加過多が認められた場合,巨大児となる前に分娩を行うのが望ましい.
・胎児がGCK遺伝子変異を有すると,周産期にインスリン投与などで母体の血糖管理が図られた場合,明らかに低出生体重となる場合がある.
→MODY2は妊娠糖尿病を指摘された母体の約1%を占めると推測されるため,軽症糖尿病の女性に対して,MODY2の遺伝子診断は非常に重要.
・父親がMODY2であった場合,胎児がGCK遺伝子変異を有している場合のみ,低出生体重となる可能性があるが,治療は不要とされる.

MODY1(HNF4A-MODY)

頻度は稀.平均診断時年齢 15.3±7.1歳.

原因遺伝子であるHNF4A遺伝子は,膵臓においてHNF1A遺伝子と転写を相互に制御しており,MODY1 の表現型は生下時体重以外MODY3と類似
・HNF4αはホモダイマーを形成し,出生後の肝臓における遺伝子発現の調節において中心的な役割を果たす.
・肝臓において合成されるタンパク質の遺伝子のうち,約40%がHNF4A遺伝子結合配列を有しており,それらは糖・脂質代謝に関係している.
膵臓における遺伝子プロファイリングにおいても主要な役割を持ち,11%の膵島遺伝子発現を調整すると推測されている.

他に巨大児,低HDL血症,一過性新生児低血糖が特徴.

治療については,MODY3と同様に少量SU薬に対する感受性が良いとされている.
・大部分の症例でインスリン分泌能低下が進行し,GLP-1受容体作動薬やインスリンの投与を必要とする.

MODY5(HNF1B-MODY)

原因遺伝子はHNF1αとヘテロダイマーを形成するHNF1B遺伝子で,点変異よりも全エクソンあるいは一部のエクソンの片側欠損が多い(約40%)という特徴があり,それを反映して孤発性が多い.
HNF1Bは17q12に位置し,非常に相同性の高い配列が重複してみられる(segmental duplication)ため,減数分裂の際の組換えのミスが起こりやすい.

平均診断時年齢 17.9±8.0歳.

HNF1B遺伝子がコードするHNF1βは,特に腎臓において発現する転写因子であるが,その他,膵臓,肝臓,胆嚢,内性器,肺など多くの臓器で発現する.
→糖尿病以外に多彩な表現型を合併し,最も多いのは腎疾患 HNF1B nephropathy(多発性腎嚢胞,腎形成異常,腎機能低下など)であり,MODY5 はrenal cysts and diabetes(RCAD)とも呼ばれる.
・胎児エコーにて,多発腎嚢胞が指摘されるなど,腎奇形は糖尿病の発症に先行して指摘されることがある.
・双角子宮などの性腺形成異常,膵奇形(膵体尾部欠損,膵低形成),肝機能異常,高尿酸血症,低マグネシウム血症,胆管拡張,気管支拡張,下顎骨奇形などの報告がある.

同一変異の家系内メンバーにおいても異なる表現型を呈することが知られており,低浸透率な変異の集合からなる少数遺伝子疾患的な特徴が認められる.

通常の遺伝子シークエンスだけでは変異はみつからず,ゲノムコピー数異常を調べられるMLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)などの検査が必要.

欧米人ではインスリン抵抗性を呈するが,日本人では病初期からインスリン分泌は低下している.
・HNF1βは,膵臓の発生やインスリンの合成にも関与する.
・肝のインスリン抵抗性に,日本人のインスリン低分泌能と発生期の膵形成の障害による膵β細胞量の低下が重なるためと考えられている.
→SU薬への反応が乏しく,糖尿病発症初期からインスリン治療を必要とする症例が多い.

MODY6(NEUROD1-MODY)

NEUROD1は,膵内分泌細胞, 消化管内分泌細胞,神経細胞に特異的に発現する転写因子であるが,その変異は極めて稀.

平均診断時年齢 12.0±1.4歳.

欧米では,報告されているMODY6ヘテロ接合変異の糖尿病患者のうち約6割が35歳以上で糖尿病を発症しているが,インスリン分泌能の低い日本人ではほぼ全員が非肥満にて35歳未満で発症している.
ケトーシスで発症

中枢神経系症状

MODY6変異は低浸透率で民族固有のインスリン分泌能や子宮内環境など遺伝的背景や環境因子に影響され発症形態が変化することが示唆されている.

食事療法~インスリン.

MODY4(PDX1-MODY)

原因遺伝子の転写因子PDX1(=IPF1)は,膵臓,膵β細胞の発生/機能に非常に重要な役割を果たしている.

ホモ接合変異では膵無形成,膵外分泌不全が認められるが,これまで日本人での報告はなく,世界でも4家系しか報告がなく頻度は極めて稀と考えられる.

ヘテロ接合体では,IGT~late-onset DMまでさまざま.

食事療法~インスリン

新生児糖尿病 neonatal diabetes mellitus;NDM

出生後6か月以内に発症する糖尿病.

一過性 transient neonatal diabetes mellitus;TNDM

約40%は後に再発し,2型糖尿病の表現型を示す.

6q24領域のimprinting異常が最も多く,日本人の報告でも約7割を占める.

永続性 permanent neonatal diabetes mellitus;PNDM

KATPチャネルを構成するKir6.2サブユニットをコードするKCNJ11とKATPチャネルのもう一方の構成分子のSUR1をコードするABCC8の活性化変異.

稀に,DEND(developmental delay, epilepsy and neonatal diabetes syndrome)と呼ばれる神経学的症候群を呈する.

遺伝子診断によってインスリン離脱可能となり,SU薬治療に移行できるばかりでなく,中枢神経症状にも効果が期待できる.

KATPチャネル不活化変異は,新生児では高インスリン血症で低血糖(persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy;PHHI)を呈するが,成人期で糖尿病を発症する.

遺伝子変異の減弱により,糖尿病発症が学童・青年期にずれた場合,MODY12(ABCC8-MODY),MODY13(KCNJ11-MODY)の表現型になる.

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

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