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拡張期血圧120mmHg以上のⅢ度高血圧を認め(230/130mmHg以上が多い),腎機能障害が急速に進行し,放置すると全身症状が急激に悪化し,心不全・高血圧性脳症・脳出血などを発症する予後不良の病態
従来は,乳頭浮腫(Keith-Wagener分類Ⅳ度)を伴う悪性高血圧と,出血や滲出性病変のみ(Keith-Wagener分類Ⅲ度)を伴う加速高血圧を区別していたが,両者の臓器障害の進行や生命予後に差がないため,加速型-悪性高血圧と呼ばれている.
疫学
1)高血圧患者の1%未満で起こり,黒人の頻度が高い.
2)発生率のピークは,男性では40〜50代,女性では約10年早い.
3)近年,降圧薬治療の普及,社会・生活環境の改善などにより発症頻度は減少している.
病態
最初に高血圧を指摘された時点の血圧が高いこと,降圧治療の中断,長期にわたる精神的・肉体的負荷が悪性高血圧の発症に関与するとされる.
悪性高血圧の原因疾患
○本態性高血圧 54.3%
○慢性腎炎ないし原因不明の腎疾患 27.1%
○慢性腎盂腎炎 10.8%
○腎血管性高血圧 3.6%
○原発性アルドステロン症 0.9%
○褐色細胞種 0.9%
○その他 2.4%
内皮細胞障害と虚血によってレニン分泌の活性化が起こり,糸球体虚脱・硬化,尿細管障害・萎縮,間質線維化をきたし,血圧はさらに上昇してRA系亢進の悪循環を引き起こすと考えられる.

悪性腎硬化症 malignant nephrosclerosis
加速型高血圧-悪性高血圧の際に細動脈のフィブリノイド壊死を伴い,壊死性動脈内膜炎や壊死性糸球体炎などを認める予後の悪い腎硬化症.
1)長期の高度な高血圧による細動脈の内皮障害,血管壁への血漿成分の侵入に続くフィブリノイド壊死,増殖性内膜炎が病理学的特徴.
2)血圧コントロールにより,大部分の患者は腎機能を回復するが,発症後平均5.6年の経過で31%が末期腎不全に至るとの報告もあり,腎予後はよくない.
症候
高度の高血圧による症状
血管障害によって血流の自動調節能が破綻する.
視力障害,頭痛,悪心・嘔吐,全身倦怠感,心不全
⇒ときに高血圧性脳症(意識障害、痙攣発作)
腎障害
ネフローゼ症候群を呈するようになると腎機能は急激に悪化.
→BUN・Cr・UA
・蛋白尿の特徴として重要なのは高血圧の診断の後に蛋白尿が発症してくる点.
→蛋白尿が高血圧症に先んじて認められる場合は腎炎などを疑う.
・尿沈渣では,赤血球・白血球・硝子円柱・顆粒円柱などが認められる.
良性高血圧から進展したものでは,腎臓は萎縮傾向.
・急速に進行したもの,特に一次性悪性高血圧によるものでは正常か腫大していることが多い.
・腎症(IgA腎症が多い)が基礎疾患としてあった場合には多くは腎萎縮・皮質菲薄化.
腎血管性高血圧から悪性高血圧を示してくることもあり,腎動脈に狭窄のスクリーニングもする.
急性左心不全
動悸、息切れ
*心筋梗塞を呈することもある。
眼底
Keith-Wagner分類Ⅲ度以上の変化.
網膜出血
軟性白斑
網膜浮腫
眼底の乳頭浮腫(拡張期血圧の上昇による脳脊髄圧の上昇)
血栓性微小血管症
1)約40%の症例に合併
2)正球性正色素性貧血,血小板減少,LDH↑,ハプトグロブリン低下,破砕赤血球
RA系亢進(二次性高アルドステロン症)
血漿レニン活性・アンジオテンシンⅡ・アルドステロンの高値などが認められる.
低K血症
代謝性アシドーシスは軽度
診断
高血圧の基礎疾患に関係なく,次の症候を示す重症高血圧をいう。
1)拡張期血圧が130mmHg以上である
2)眼底に乳頭浮腫(KW4度)がある
*最近では,乳頭浮腫がなくても出血斑や滲出性病変すなわちKeith-WagenerⅢ度でもよいとしている.
3)急速に進行する腎不全がある
4)全身状態が急激に増悪する。
⇒4所見がみられるものを悪性高血圧A群
⇒3所見がみられるものを悪性高血圧B群と分類している.
腎病理
腎組織は急性期の変化として,血栓性微小血管症と同様に細動脈のフィブリノイド壊死や内膜の浮腫状拡大を伴う壊死性動脈内膜炎や壊死性糸球体炎を認める.
・強い血圧を受ける小葉間動脈から細動脈にかけて,フィブリノイド壊死や血栓など強い変化を伴う.
・虚血に伴う腎皮質の虚血性変化として、さまざまな尿細管障害が生ずる。
慢性期になると,内膜の浮腫状変化部位が線維化し,有名なonion skin lesion(弾性線維、コラーゲン線維の同心円状の輪)を呈する.
フィブリノイド壊死
傷害が糸球体に及ぶ場合は,糸球体の血管極部の輸入細動脈からの移行部を主体とした壊死性・融解性変化を伴うこともある.
輸入細動脈の内膜が破壊され、血管透過性が亢進
→フィブリンや血漿成分が血管壁内へ滲出
→細動脈の中膜が核を失って壊死に陥り好酸性物質で満たされた状態を指す.
最も特徴的
係蹄基底膜の二重化
TMAに伴う糸球体病変として,内皮細胞の腫大を認め,糸球体毛細血管管腔の狭小化と内皮細胞が係蹄基底膜から解離した結果,内皮細胞下に基底膜構造が形成される.
二次性メサンギウム融解病変
内皮細胞障害
壊死性細動脈炎
細動脈周囲に好中球・リンパ球を主体とした細胞浸潤
タマネギ殻様病変 onion skin appearance,求心性動脈炎,閉塞性動脈内膜炎
小葉間動脈が層状,同心円状の線維性増殖性病変により,内膜が著明に肥厚する.
糸球体半月体形成,分節状増殖
糸球体に起きたフィブリノイド壊死
尿細管萎縮・消失,間質の線維化
電子顕微鏡
フィブリンが糸球体・細動脈・小動脈で陽性,C3やIgMも陽性となることが多い.
治療
切迫症として扱われているが,細動脈病変が進行する病態であり,緊急症に準じて治療をする.
1)多くは経口薬で治療が可能.
2)最初の24時間の降圧は,拡張期血圧100~110mmHgまでにとどめる.
・高血圧の病歴が長い患者が多いため,急速な降圧は重要臓器の虚血をきたす危険を伴う.
3)ACE阻害薬やARBの効果が期待できる.
・多くは圧利尿によって体液減少状態にある.
・RA系の亢進が病態の形成に深く関与している.
・過度の降圧のリスクがあるため,少量から開始し,腎機能の悪化に注意する.
4)体液管理
・体液減少が著しい場合は,生理食塩水補液.
・Na/水貯留を伴う場合は,ループ利尿薬
発症直後のみならず長期的な血圧管理が重要